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ゼロの大魔道士-1


ある洞窟の最深部。
暗闇の中、一匹の竜が眠っていた。
その皮膚からは淡い光がこぼれるようにぼんやりと輝いている。
竜自身の美しさも手伝ってか、その光景は見るものに神秘的な印象を与える。

「やっと…やっと見つけたぞ!」

震える声を押さえつけるように口から漏らす一人の人間がいた。
人間――少年は十代後半といったところの年齢を思わせる風貌だった。
少年と青年の境目に立っていると思われるその顔は可もなく不可もなくといった普通の造形。
頭にはバンダナを巻き、背にはマントをたなびかせ、右手には黒いリストバンドのようなものが身につけられている。
杖こそ持ってはいないが、パッと見はいわゆる魔法使いの格好だった。

「はっ…はははっ!」

少年の両目からは涙が滝のように流れ落ちていた。
歓喜にほころんだ顔はクシャクシャに歪み、不細工な表情を作り出す。
だが、この場にいる人間が少年一人である以上それを笑うものはいなかった。
いや、仮に誰かが――少年の仲間がいたとしても、彼を笑う者はいなかっただろう。
何故ならば、少年が今までどんな想いでいたのかを彼の仲間たちはよく知っていたからだ。

「間違いない。この竜は…マザードラゴン!」

マザードラゴン。
聖母竜と呼ばれるその存在はすぐ傍で興奮する人間に気付いていないのか、目を閉じたまま眠り続けていた。
その丸まった体の中央部、両手の中には直径二メートルくらいの光の珠が大事そうに抱きかかえられている。

「ダイ…!」

光球を目に映した少年は感極まったように叫んだ。
球の中で蹲るように眠り続けている少年。
その少年こそが彼が捜し求めていた人物だったのだ。

「…っと、いけねぇ。早いトコ戻ってマァムとメルルに、そんでもって皆にこのことを伝えないと!」

涙を両手でぐしぐしとぬぐいながら少年はその場を離れようと一歩後退する。
本当ならば今すぐにでも光球から親友を引っ張り出したいところだが、詳しい状況もわからないまま迂闊なマネは出来ない。
下手なことをしてマザードラゴンが逃げ出したり、光球の中の少年に悪影響が起きては元も子もないのだから。

「うっし、ちょっと待っててくれよダイ。今……っな!?」

少年が名残惜しげに出口に向かうべく後ろを向こうとしたその瞬間に異変は起こった。
突然、竜の頭上に鏡が出現したのである。
それだけではない。
鏡は光を放ったかと思うとその面の中にマザードラゴンを引きずりこみ始めたのだ。

「ダ、ダイ!」

鏡に飲み込まれるようにしてその巨体が目の前から消え去っていく光景に少年は呆然とする。
が、それも数瞬のことだった。
少年はすぐさま正気に戻ると一目散に駆け出した。
出口へ、ではない。
進路は前、親友のいる場所へだった。

「待てよ、ダイを…何処へ連れて行く気だよ…!」

この瞬間、少年の思考には前に向かうという選択肢以外は存在しなかった。
今までの人生、彼は逃げることばかりだった。
人に臆病者、卑怯者と呼ばれ、蔑まれる自分。
そんな自分を変えたいと願い、故郷を家出同然に飛び出し、勇者と呼ばれる男に押しかけ弟子になったあともそれは変わらなかった。
悔しかった、情けなかった。
だが、彼は光に出会った。
その少年――ダイは彼よりも幼く、純粋だった。
彼はダイと親友になった。
そして師である勇者が死んだ(と思われた)後、彼らは二人で魔王を倒すべく冒険に出発した。

数多の出来事があった。
数々の敵との遭遇。
新たな仲間たちとの出会い、そして別れ。
少年はその最中でも幾度となく逃げ出し、そして後悔を重ねた。
しかし、そんな彼の傍にはいつもダイがいた。
なんのとりえもない自分を友と呼び、ついには大魔王を倒すところまで共に歩んできてくれたのがダイだったのだ。

「届けぇーっ!!」

そんな親友が今目の前で消え去ろうとしている。
少年は必死に手を伸ばし、ダイの眠る光球へと追いすがる。
二度目はない。
伸ばした手が届かないということは二度とあってはいけない。
そう固く誓った少年の手は――



ぶんっ…
鏡が跡形もなくその場から消え去った。
暗闇に包まれたそこには、竜の姿も勇者の姿も、そして魔法使いの少年の姿もなかった。



かくして、二人の少年と一匹の竜が大魔王なき世界より消え去った。
消え去った少年の片方の名はダイ。
竜の騎士、勇者、英雄と呼ばれた少年。
そしてもう一人は

「し、仕方ないわね! アンタで我慢してあげるわ!」

資質と能力を持ちながらも、師匠と同じく生涯賢者を名乗らなかった少年。
世界最高の魔法使いと呼ばれたその少年の名はポップ。
後にハルケギニアにおいてその自称『大魔道士』という異名を轟かせることになる――メイジの名である。



――The second large adventure starts!


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