あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

究極超人るいず 第5話.ウケるが勝ち!の巻(前編)

 第5話.ウケるが勝ち!の巻(前編)


 シャルロット・エレーヌ・オルレアンという本名を持つ少女――タバサは思う。
 トリステイン魔法学院は昨年まで、いや春先までとはまるで別物だ。

 ……だが、それにまるで違和感を感じない自分もまた、変わったのだろうか。 

 *  *  *


「「「先生! コルベールせんせー!!」」」

 学院の職員棟にある、一室の扉を叩く虚無部の面々。
 すぐに中から白衣を来た禿頭の中年男性、コルベールが姿を見せる。

「おやおや、これはこれは。皆さん、最近、よく来ますね。遊びに来てもらえるのはうれ

しいですが、勉強や部活はよろしいんですか?」

 のほほんとした口ぶりに、一同は脱力する。

「いや、いい加減、あ~る君を直してもらいたいんですが……」

 脱力感をこらえてワルド(当然のような顔をしてここにいる。仕事はどうした?)が、先

日首がモゲて動かなくなった部員のことをコルベールに問う。

「え……あぁ、そうですね、ミスタ・タナカイチローの修理ですね。いやいや、鋭意努力

してますよ、ウン」

 なぜかあらぬ方向に視線を逸らしながら答えるコルベールを見て、全員、「忘れてやがっ

たな、このヤロウ!」と思ったが、貴族の慎しみとして、そこは口にしない。
 ――少なくとも修理が終わるまでは。

「あーーっと…それで、いろいろ調べてみたんですが、ミスタ・タナカの身体はまさにオ

ーバーテクノロジーの宝庫でね。正直私の手には終えない部分も多いのですが……」

 4人を部屋に招き入れ、ビーカーでお茶を薦めながら―もっともタバサ以外は全員辞退

したが―目を細める、炎蛇の異名を持つ教師兼技術者。

「ただ、動かなくなった原因らしきものはわかりました。これは頭部内の重要な部品を基

盤にとめておくためのパーツなのですが、ここに……」

 と何か複雑な構造物が書かれた図を示す。

「これを固定するための12本のネジが、1本もありませんでした!」

 道理で頭を振るとカラコロ言うはずである。


「ただ、ネジらしきものの正確な形状がわからなくて……」

 と、残念そうに首を振るコルベールに、タバサがゴソゴソと懐から取り出したものを差

し出す。

「これ」

「? 何ですかな?」

「あ~るの頭から落ちた部品」

 先日の合宿の夜のアレである。
 たちまち、喜色を露にしてネジ(より正確にはボルト&ナットのボルトのほう)を受け取

るコルベール。

「おお、まさにそれです! これを複製して12個に増やせば……」

 らんらんと目を輝かせるコルベール。普段の落ち着いた教師の姿はすでになく、ほとん

ど新しい玩具を与えられた子供のようなはしゃぎっぷりだ。

「え、えーと……それじゃあ、頼みましたからね、先生」

 その様子に若干引きつつ、(一応)あ~るの主であるルイズから依頼し、一同は研究室を

去った。
 ゆえに、最後にに部屋を出たタバサを除き気づかなかったのだ。

「クックックッ……安心してください。私がこれ以上ないくらい、しっかりカッチリ直し

てみせますとも」

 コルベールが顔を伏せ、不敵な表情を浮かべていたことに。

 *  *  *

 ――ってなコトがあった翌日。

 本校舎前の掲示板に一枚の通知書が貼られていた。


「生徒会長選挙、かぁ。そう言えば、もうそんな時期なのね」

 あまり気のなさそうな素振りで呟くキュルケ。

「うーん……うん!? そうだ!」

 傍らにいたルイズは、ニヤリと人の悪い笑みを漏らす。

 かつては犬猿の仲だったルイズとキュルケだったが、虚無部(正確にはゼロ部)設立以来

、タバサも加えた3人でツルむことが多くなっている。
さまざまな”わるだくみ”にからむふたりは、はたから見れば、ほとんど親友ないし悪友

といってよい関係なのだが、本人たちに言えば、頑に否定するだろう。
 ……まぁ、彼女たちの片棒を担いでいるタバサに言えた義理ではないが。  

「あ~るのヤツを生徒会長にするってのは、どう?」

「……おもしろそうね」

 同じくニヤリと不敵な微笑で応えるキュルケ。
 ふたりがこうなった以上は仕方がない。珍しくこの場にいないワルド先輩も、制止する

どころか、煽るだけ煽って高見の見物に回るだろう。

「手伝う」

 本人不在で選挙出馬を決められたあ~るには不憫だが、タバサも協力を約束した。

 ところが……。

「ふむ。よかろう、その話乗ったぞ」

 3人の背後には、いつもより3割増しで怜悧な表情を浮かべたあ~るが立っていた。

 *  *  *


「いきますわよ……」

 緑色の髪の女性が詠唱を開始すると、ずもももーーーっと、土が盛り上がる。
 3メイル程度の高さまで隆起した土は、ひとりの少年の姿を形どった。
 ベンチに腰かけ、気取った仕草であらぬ方向にうつろな視線を向けている、学ラン姿の

少年像だ。なかなかよくできている。

「ふむ。いまひとつ不満が残るデキではあるが、まぁよかろう」

 塑像そっくりな少年が扇子で口ともとを隠しながら、生意気なセリフを漏らす。

「何、エラそうなこと言ってるんですか! 大体、何で秘書の私がこんなこと……」

 ブツブツ言いながら杖を懐にしまう眼鏡をかけた緑髪の女性。

「すいません、ミス・ロングビル。お手数おかけしますわ」

 さすがに多少は殊勝に頭を下げて見せるルイズたち。
 いったい何をしていたのかと言えば、会長選出馬のためのPR活動の一環として、中庭

や寮の近くにあ~るの像を置くことにしたのだ。
 とは言え、ルイズは虚無?、キュルケは火、タバサとワルドは風の系統のメイジだ。
 寒い時期なら、"雪風"の異名を持つタバサに氷塊を出してもらって彫るという手も考え

られたが、いまはまだ夏まっ盛り。作ってもすぐに溶けてしまうだろう。
 そこで、知り合いの土メイジに土像を作ってもらうという案に落ち着いたのだが……。

「いやぁ、我々の知り合いで優秀な土メイジは少なくてね」

 こちらはまったく悪びれるそぶりも見せないワルド。

 学院長のオールド・オスマンの秘書であり、優秀な土のラインメイジだと言う
触れ込みのミス・ロングビルを、彼が無理矢理引っ張って来たのだ。


「それは、私もこの学院の職員ですし、生徒の方々に協力することもやぶさかではありま

せんけど……」

 まだブチブチ言っているミス・ロングビルだが、いきなり連れ出されて、立て続けに7

つも大きな塑像を錬金させられれば、多少は愚痴も言いたくなるだろう。

「まぁ、そんなに怒るなよ、マーちゃん」

「「「ま、マーちゃん!?」」」

 馴れ馴れしいワルドの言い草に驚く、ルイズたち。

「おや、知らないのかね? ミス・ロングビルのファーストネームは、”マチルダ”と言

うのだが……」

「ど、どこでその名前を!?」

 本気で驚いている様子のミス・ロングビル――マチルダ。

「はっはっは、私は腐ってもグリフォン隊の隊長だよ? 学院から王国に提出された職員

名簿をこっそり覗き見するくらいワケないさ」

 いくら学院がある程度独立した機関とは言え、王国に提出する職員名簿には、雇ってい

る人間のフルネームくらいは書くものだ。

「本当に”腐っても”なところがビミョーね~」

 一応婚約者であるはずの青年のスチャラカぶりに呆れつつ、ルイズが呟く。

「で、でもミス・ロングビルには、そのお名前は合ってますわ。こう、いかにも”マチル

ダさん”って感じで知的なお姉さんっぽくて」

 慌ててフォローに回るキュルケ。奔放な性格の彼女だが、濃過ぎるこのメンバーの中に

いると、多少は苦労性にならざるを得ない。

「”マチルダさん”。少年の憧れの才媛。……ただし、結婚関係には不遇。クス」

 タバサのセリフに、ルイズも頷く。

「なんか、いかにも婚約者に早死にされそうな名前よね~」

 ルイズ、惜しい。死亡じゃないけど婚約解消して逃げられました。

 あまりにも好き放題なふたりのセリフに、こめかみに井桁マークの青筋を立てる”マー

ちゃん”ことミス・ロングビル。


(こ、このふたりは……)

 人がせっかくフォローしたのに……と頭が痛くなる。
 ツンデレの代名詞のようなルイズはともかく、タバサが意外に毒舌キャラだということ

は、虚無部に入ってはじめてわかったことだ。親友の新たな一面を知れたわけだが、あま

りうれしくはない。

「な~に、マーちゃんにも何もタダで手伝ってもらおうというワケではないさ。塑像製作

のお駄賃として、この”魅惑の妖精亭 3時間飲み放題券”をあげやう」

「はぁ…あまり王都まで出る機会はないんですけどね……」

 そう言いながらもワルドから券を受け取るロングビル。オールド・オスマンのセクハラ

その他でストレスが溜まっているようなので、憂さ晴らしに飲みにいくのかもしれない。

「まぁまぁ、ミス・ロングビル、あ~るが生徒会長に当選した暁には、学院内のセクハラ

を取り締まるキャンペーンでも、実施してみるから」

 自分が会長になるわわけでもないのに、ルイズは無駄に安請け合いをする。

「ふむ。そのような些事に関わるのは本意ではないが、これも支配者の務めか。よきには

からえ」

 先日から、あ~るはいつもと違う方向に絶好調だ。まぁ、行動パターンが読みやすいぶ

ん、いつもよりはマシかもしれないが……。

「ふぅ、まぁ、いいです。ここまで乗りかかった船なんだから協力しますわ。ところで、

どうして急に会長選に出馬しようなんて思ったんですか?」

 諦めの境地に達したのか案外さっぱりした顔つきになったミス・ロングビルが、虚無部

の面々に問いかける。

「コレを見てください」

 よくぞ聞いてくれました! と言わんばかりに、ルイズは自信満々で勝手に引っぺがし

た例の壁新聞を差し出した。

 どれどれ、とワルドとミス・ロングビルが覗き込む。


「なになに……”錬金部が作ったエロいフィギュア、部室でお披露目”?」

「おおぉぅ、確かにこれはエロい!」

「そ、それじゃなーい!」

 スパンとハリセンで成人ふたりの頭をはたくルイズ。
 ……ハリセンを手にして以来、どうも目上に対しても尊敬だとか遠慮だとか言う概念が薄れているような気がする。

「えーと、”ギトー師、酒が入って深夜の塀際でご乱行!?”」

「”愛の狩人、ギーシュくんの本命は誰だ!”?」

「そっちも違う! コレよ、コレ!!」

 ルイズが指差す記事には、先日のあ~る首モゲ事件の顛末が記されていた

「……あ~る君が一度壊れたと聞いたけど、壊したのは君だったのかい、ルイズ」

「え!? あー、それはさておき。我々虚無部は、ここらでイメージアップ戦略をはかる必要があります」

 ワルドの微妙に呆れたような感心したような視線を避けつつ、ルイズが演説する。

「……と言うわけで、我々はイメージアップを図る必要があるんです!」

「自業自得と言う気がしないでもないが……その心意気やよし!」

「うむ。世界征服の第一歩は、まず学院から! というわけだな」

 ルイズのアジテーションに、ワルドやあ~るが追随するなか、

(余計逆効果じゃないかしら?)

 と身も蓋もないことを考えつつ、大人の分別ある女性として、ミス・ロングビルはあえて口に出さないことを選んだのだった。

 *  *  *


 校内での選挙活動―に名を借りた様々なパフォーマンス、あ~るの独裁者演説などのおかげで、あ~ると虚無部のメンバーの存在は、学院にじりじりと広まっていった。

「へー、目安箱にあ~る宛てのファンレターが入ってたわよ」

 放課後、あ~るの院内遊説(と言う名の大道芸)に出かけるまえ、部室に集った虚無部のメンバーは、これまでの広報活動の成果を確認していた。

「とぅおぅぜんよ! 何たって、このわたしが選挙参謀についているんだからね!」

 と、ナイムネ張ってエバるルイズ。

「下級生を中心に浸透中」

 タバサが冷静にあ~るの人気を分析する。

「ふん。私は将来このハルケギニアを統一する人材だぞ。この程度のカリスマがなくでどうする」

 パチン、と扇子を畳ながらクールに豪語するあ~る。相変わらず、独裁者モード絶好調のようだ。

 と、その時……。

「たいした自信だね、R・田中一郎くん」

 虚無部室の扉を開けて、逆光になった状態で姿を見せる人影。背後には薔薇の花びら。

「やぁ、虚無部の諸君。今日は対立候補として、ひと言あいさつに来たよ」

「!? 君は……」

 ハッとした表情のあ~るに見つめられて、少年は満足そうにうなずく。


「君は……誰だ?」

「ま、またまたぁ……まさかボクを知らないとでも?」

「うむ。」

 ガックリとうなだれる少年の肩を、続いて部室に入って来た小太りな少年がポンポンと叩き、代りに答えた。

「やれやれ、物を知らないと見える。彼が、有名な色魔、ギーシュだ」

「そうそう、ボクが……って、誰が色魔だよ、このマルコメ小僧!」

 胸ぐら掴んで揺さぶるギーシュに、マリコルヌは落ち着いて小声で囁く。

「おや、女生徒たちが見てるけど、いいのかい?」

 ハッと我に返り、キョロキョロと周囲を見渡して、カッコつけるギーシュ。

「しかし、キミの服のセンスはすさまじいな。塑像のほうは土一色だったから、そこそこ見られたが、本物がこれじゃあね。ボクの敵じゃない」

 どうやら、騒ぎを聞きつけ、部室の外に集まった他の部活の人々に、己れなりにアピールするつもりらしい。

「―あたりまえだ」

「へ?」

「私が相手にしているのは、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシだ。お前じゃない……貴様は、バカか?」

 パサリと扇子を開き、その影から蔑んだ目でギーシュを見下ろすあ~る。

「のわーーーーーっ、抜かしやがったな、このポンコツ! 決闘だ!」

 当然のことながら、ブチキレたギーシュは、あ~るに決闘を申し込む。

 ヤレヤレだぜ、と言った風情で肩をすくめるマリコルヌだが、止める気はないらしい。

 こうして、原作とはまったく異なる(情けない)経緯を経て、ギーシュとの決闘イベントへと雪崩込むのであった、まる。


 ~ウケるが勝ち!の巻(後編)につづく~

新着情報

取得中です。