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男達の使い魔 第六話

ルイズは夢を見ていた。幼き日の夢を。

小船の中でルイズは泣いていた。
魔法が使えないルイズは、つらくなるといつもそこに逃げ込んでいた。

いつもと違う点は一つ。その幼い日の自分の姿を、ルイズは空から眺めていたのだ。

(立ち上がりなさい!)

ルイズは声をかける。しかし、実体のないルイズの声は幼いルイズには届かない。
そのことにルイズは強く歯をかみしめる。今のルイズは、幼き日とは違う。

つらいこともあった。苦しいこともあった。
腹の立つこともあった。泣きたいこともあった。
しかし、それらをじっとこらえて己を磨いたのが今のルイズだ。
そして己の使い魔たちを召喚し、属性もわかり、自信もつけてきた。
だからこそ、今は昔の自分が歯がゆいのだ。

ルイズはふと思い浮かぶことがあった。これはいつも見ている夢だと。
いつも通り、自分はワルドに連れ出してもらうのだと。
(自分で夢だとわかるなんてはじめてね。)
そう思ったルイズは、成り行きを見守ることにした。

遠くの方から声が聞こえた。いつもと違うその声に、ルイズ達はそちらの方を向いた。

そこには

桃がいた。シエスタがいた。伊達がいた。キュルケがいた。雷電がいた。飛燕がいた。ギーシュがいた。
富樫も虎丸も、ルイズと関係の深い者達がせいぞろいしていた。
そうして、大きく息を吸うと、一つとなって声をだした。

「フレー!フレー!ルイズ!」

ルイズを応援しはじめた。その声援に思わず視界がにじむ。
(そっか。)
そうしてルイズははじめて気がついた。

(私は、誰かに応援して欲しかったんだぁ。)

ルイズの家族は暖かかった。
しかし、こと魔法という点では全員優秀すぎた。
ルイズの気持ちがわからないのも無理はない。
唯一魔法についても甘やかしてくれた小姉さまには心配をかけたくない。
彼女の体の弱さは、幼いルイズの目から見ても怖かったのだ。

その姿をじっと見ていた、幼いルイズもそろそろと動き始めた。
その姿を見たルイズも思わず叫んでいた!

「「「「フレー!フレー!ルイズ!」」」」

その声についに幼いルイズは……


そこでルイズは目を覚ました。

学院がざわめいている。
急に王女のアンリエッタが急遽学院に立ち寄ることになったのだ。

街道に人が集まる。
王女達一行がここを通ると聞いた人たちが集まってきたのだ。
最前列には、一号生達がいた。
祭り好きな連中が、そのガタイを生かして場所を取ったのだ。
ちょうど近衛兵の一人が花を摘んできたところで、
ユニコーンが引く馬車の中からアンリエッタの姿が見えた。

「ほー。流石にほんまもんの王女様は綺麗じゃのう。」

富樫がいう。

「わしはキュルケみたいなのがいいがのう。」

虎丸が反論する。
個人個人意外と好みにうるさいようだ。

「しかし、彼女は疲れているようですね。」

女心にもさとい男、飛燕がそういう。

「王女様ともなれば、色々と思うところもあるのだろう。」

桃がしめたところで、王女の姿は学院に消えていった。

(姫さま、どうしたのかしら。)

ルイズは自室で考え込んでいた。
そばにはJがいる。
不思議と安心感を与えてくれるこの男は、ルイズのお気に入りの使い魔の一人だ。
今も、ルイズが何か考え込んでいるのに気がついたこの男は、
壁によりかかって腕を組み、静かに目をつぶってたたずんでいた。

(何かお疲れのようだったけれど。)

いかに隠そうとも、かつての親友であり、他者のことを考える余裕の生まれたルイズの目はごまかせない。
肉体ではなく、精神が悲鳴をあげているのが見えたのだ。
そんな、(今でもルイズはそう思っている)親友の力になれそうにない自分が悔しい。
そう思ったところでルイズの脳裏に、朝見た夢がよぎった。
せめて、ここから応援だけでもしていよう、そして自分がわずかにでも力になれるならなろう。

その時、Jがかすかに体勢を変えると一言声を上げた。

「客が来たようだ。」

その言葉を証明するかのように、ノックが響く。
ルイズがドアを開けると、そこには黒い頭巾を被った少女が立っていた。
その少女は、中に入り後ろ手にドアを閉めると、ディテクトマジックを使う。
ルイズにはその正体が、なんとなく予想がついていた。
いかに姿を隠そうと、今の今まで考えていた人物だ。
親友のルイズが見間違うはずがない。
そうして彼女は優雅に膝をついた。
とうとう黒い頭巾を脱いだ少女が、ルイズに声をかける。

「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ。」

神々しいばかりに光を放つアンリエッタであった。
余人ならば、その美しさに感激のあまり声もでないことであろう。
しかし、ルイズは

(ああ。やはり。)

己の考えがあたったことを感じていた。

そうして始まったルイズとアンリエッタの会話を、Jは目を細めて見守っていた。
立場が違う。身分が違う。
しかし、話している二人の様子はとても楽しげだ。
昼見ていた時は、Jには作り物にしか見えなかったアンリエッタであったが、
今は本当に、心の底から輝いていた。

(桃の言った通りのようだな。)

そう思ったところで二人の会話のトーンが変わった。
そうしたところでアンリエッタがJに気づいた。

「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら。」

アンリエッタが素っ頓狂な声を上げる。

「お邪魔?どうして?」

「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?いやだわ。わたくしったら、つい懐かしさに
 かまけて、とんだ粗相をいたしてしまったみたいね」

「はい?恋人?」

ルイズは一瞬言葉を失う。
確かにJは頼りになりそうな男ではあるが、ルイズの好みとは大きくずれているのだ。

Jはその言葉を訂正しようとした。
ルイズのことはある程度気に入っているが、恋人となると話は別だ。
もっとグラマーな女性が、Jの好みなのだ。

「姫さま!あれは使い魔の一人です!恋人なんかではありませんわ!」

「使い魔?一人?」

顔に疑問符を貼り付けたアンリエッタにルイズが説明する。
総計100人にせまる人数の男達を召喚したのだと。
しかも、全員暑苦しい男ばかりであることを。

その言葉にアンリエッタが思わず声をあげて笑う。
かつての幼い時の気持ちを思い出していたアンリエッタは、ついそのままルイズをからかう。
あいかわらず変わっているわね、と。
その言葉に思わずルイズは憮然となるが、何も言い返せない。
いかにルイズとて、自分の使い魔達を指して変わっている、という台詞には反論できないのだ。
そんなルイズの様子に、さらにアンリエッタは笑う。
ますますルイズは憮然とした。

そうして少し時間が流れた。

笑い終わったアンリエッタは、一つため息をついた。
これから、かつての親友を死地に赴かせなければならないのだ。
ため息の一つも出るというものだろう。

アンリエッタの表情が変わったことにルイズは気がついたが何も言わない。
そんな主人の様子をJは黙ってみている。

そうして語りだそうとしたアンリエッタであったが、なかなか本題に入ろうとしない。
その様子にルイズは悲しいものを感じていた。
アンリエッタは、かつての親友であるルイズの忠誠心を試そうとしていたのだ。
ふと朝の夢が頭をよぎったルイズは思う。
自分にさえ、このような態度をとらねばならないほど、王宮とはつらいところなのかと。
自分だけは、世界中の誰が敵に回ろうとも自分だけは、最後までアンを裏切るまい、と。
そしてルイズは万感の思いを込めて言った。

「わたしをおともだちと呼んでくださったのは姫さまです。
 どうかそのおともだちに悩みをお話ください、アン。」

ルイズの強い視線がアンリエッタを貫いた。

その視線に、アンリエッタの被った仮面が貫かれる。
アンリエッタの全身に衝撃が走った。

(ああ、ルイズ。あなたは、ほんとうにわたくしの親友なのですね。)

そう思ったアンリエッタは、思わず天を見上げてブリミルに感謝の言葉をささげた。
その目には涙が浮かんでいた。

急に泣き出したアンリエッタに、ルイズは焦った。
自分が何かやってしまったのかと思って。
しかし、これはうれし涙というアンリエッタに、ルイズもまた喜びの涙を浮かべてアンリエッタを抱きしめた。
それをJは優しい瞳で見守っていた。

アンリエッタいわく、
アルビオンの皇太子の下にある手紙を取り戻して欲しい
それにトリステインの運命がかかっている、と。

「一命にかけても!」

ルイズは力強く言い切った。
今のアルビオンの情勢は聞き及んでいる。
間違いなく一筋縄ではいかないだろう。
だが、それがどうした。ルイズは思う。
親友とは親に等しい友と書く。それが困っているところを助けずして親友とは呼べないのだ。
おそらく、アンリエッタもそう思っているだろう。
ルイズは確信していた。

そこへ乱入者が現れる。ギーシュだ。
Jは気づいていたが放置していたのだ。

ここしばらく一緒の釜の飯を食った相手だ。
それで判断したのだ。こいつは信頼できると。

事実、シエスタとの決闘に敗れてからのギーシュは潔かった。
素早く自分の非を改めると、今は毎日一号生達と一緒に男を磨いている。
信用に足る男だ、Jはそう判断していたのだ。

「ひとつ、塾生は忠誠をつくすべし!」

そう言って、ギーシュはひざまずいてアンリエッタに嘆願した。
自分はグラモン元帥の息子であり、父のようにお役に立たせてください、と。
そのまっすぐな思いに戸惑ったアンリエッタはルイズを見やる。
ルイズは処置なし、とばかりに肩をすくめる。
ルイズは知っていたのだ。最近のギーシュの奇行を。

その様子にどこかおかしいものを感じたアンリエッタは(微妙にルイズの普段の苦労を感じたのかもしれない)、
くすりと笑うとギーシュとJに向き直った。
ルイズの使い魔であるJはもとより、ギーシュも信用することにしたのだ。

片手を伸ばしたアンリエッタにギーシュは感激し、カチカチに凍ったままキスをする。
一方Jは、意外にも優雅にキスをした。
この男、もとマリーン士官候補生だけあって、礼儀はしっかりと仕込まれている。
その大柄な体格と相まって、実に絵になる男であった。

最後にルイズに、ウェールズ皇太子宛の手紙と秘宝の水のルビーを渡したアンリエッタは去っていった。
Jにガードをするよう命じると、ルイズは旅支度を整えることにした。
なお、Jにはついでに明日もう一人か二人使い魔を連れてくるように頼んでおいた。
大人数では帰って目立つが、少人数過ぎても悪目立ちする可能性があるのだ。

旅支度を整えたルイズは早めに寝ることにした。
出立は明日。善は急げである。

男達の使い魔 第六話 完




NGシーン

雷電「あ、あれはまさか!」

虎丸「知っているのか雷電!」

雷電「これぞまさしく、中国において古代より伝わる癒仁胡雲(ゆにこうん)!」


癒仁胡雲、それは古代中国において伝説と詠われた生き物である。
角を生やした馬のごときその姿はあらゆる武人から恐れられた。
単純に強かったのである。
その蹴りの一撃は山をも砕き、一度走り出せば雲をも追い抜いたという。
そんな癒仁胡雲であるが、ある日一人の拳法家の前に敗れることとなった。
その拳法家の名前は羅於卯(らおう)と言った。
角を折られその強さに屈した癒仁胡雲は、羅於卯を己の主と定め、
生涯、主とその友以外の男を乗せることはなかったという。
この故事が当時の大秦帝国(ローマ帝国)やハルケギニアに間違って伝わり、ユニコーン
は清らかな女性以外は乗せない、と言われるようになったのはあまりにも有名な話である。
民明書房刊「世界、乗り物大辞典」(平賀才人著)



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