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ゼロの登竜門-03

ゼロの登竜門 第二章 『土から鉄、そして鋼へ』前編


トリステインの城下町、チェルノボーグの牢獄にフーケは捕らわれていた。
魔法学院から破壊の小箱を盗んだモノの使い方がわからず。
使い方を知るため生徒をおびき出し、結果そのもくろみは成功したのだが。
ありのままあの時起こったことを話すわ。
『私はチビどもの前で秘宝を使ったと思ったらいつの間にかぐるぐる巻きになっていた』
な…何を言ってるのかわからないと思うけどあたしも何をされたのかわからなかった。
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなものじゃ断じてない!
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ………
それから、なぜかやたら眠くなってしまう、なぜかしら………
いまも………ねむ……
「『土くれ』だな」
何よぉ……確かにそう呼ばれてるけど眠いのよ……
「話をしに来た」
話ぃ?聞いてあげるから言いなさいよ………
その後のことはよく思い出せない
夢うつつになっていたから、どんな話をしたのかは覚えていない。
気付いたらあたしは牢獄から出ていて、隣には仮面の白マントが居た。
「マチルダ・オブ・サウスゴータ。お前を出したのは契約の前払いだ。我々と一緒に来い」
アルビオン王族を斃そうという。レコンキスタ。
やれやれ………またなんか厄介なモノに巻き込まれそうな予感がするよ。
ねむい。

☆★

白い袋を地面に置くと、中に入っている物がガチャリと音を立てる。
そしてルイズは朝靄の中、キングを呼んだ。
呼ばれたキングは咆吼もせず静かにやってくる。
キングの咆吼は大きいため自制するように言いつけたからだ。言うことをよく聞くいい子である。
ルイズが撫でると、すり寄ってくる。
魚だったときはともかく、これだけ大きいとスキンシップも大変である。
キングを呼んだのは、アルビオンへと向かうための移動手段としてだ。
それは、昨夜トリステインのアンリエッタ姫殿下がこっそりとルイズの部屋に来たからである。
ゲルマニアの皇帝との政略結婚に表情を暗くし、俯きながら。
国を守るためには致し方ないこと、しかしその同盟を破棄させようと暗躍しているモノがいるらしい。
そしてその材料が、遠き浮遊大陸、アルビオンに存在するとのことだった。
アルビオンでは今内乱が起こっており、貴族派と王党派で争っている。
アンリエッタは、そこへ言って、王党派のリーダーであるウェールズ皇太子から手紙を受け取ってきて欲しいと言ったのだ。
戦争真っ最中のそんな危険な場所へ、しかし幼い頃から親友だと想い続けているルイズにしか頼めないことだと。
それをルイズは快く承諾した。
アンリエッタからの封書を受け取り、いざ行かんと準備をしているところなのだ。
そこへ、カサカサと足音を立てて近づいてくる音があった。
「だれっ」
ルイズの警戒がキングへと伝わり、即座に攻撃態勢へと移った。
「待った、待ってくれルイズ。ぼくだ、ギーシュだよ」
慌てるような声と共に朝靄の中から現れたのは、金髪の美少年。ギーシュ・ド・グラモンだった。
かつて二股がばれて、魚の時のキングに一撃でやられた哀れな少年である。
なぜこんなところにギーシュが居るのか、見知った相手だが、ルイズは少しだけ警戒しておく。
「そんなに警戒しないでくれたまえ………その、実は折り入って頼みがあるんだ」
「朝早くからご苦労な事ね。でもあいにくわたし達用事があるの帰ってからにしてくれる?」
「いや、君のその用事に関することなんだ………」
「わたしの用事………って、ギーシュ貴方まさか!」
「この通りだっ、すまない、盗み聞きしたのは申し訳ないと思っている。だが姫殿下のお役に立ちたいんだっ」
凄い勢いでギーシュは両膝を付き、手の平を地面について額を地面にこすりつける。
そのギーシュの様子に、ルイズは怒るよりも呆れてしまった。
「……いいわ。連れてってあげる。キングも大丈夫よね?」
「Gyaooooooon」
キングはルイズの問いに肯定する。
「大丈夫みたいね。姫様へは帰ってからわたしから言ってあげるわ……だから頭上げて、男の子はそう簡単に頭下げないで」
ルイズの言葉にがばっとギーシュを顔を上げた。
「あぁ、ミス・ヴァリエール。なんて君は優しいんだ。いつもゼロと言ってすまなかった。それに………」
ギーシュが立ち上がりつつズボンの埃を払って、キングを見上げる。
「これホントに君の使い魔かい、ずいぶん成長したんだね。なんでもフーケのゴーレムを一撃で破壊したとか………」
強面なキングの顔にすこし物怖じしながら言う。
「そうよね。わたしもビックリよ………」
「でもこう大きくなるとぼくの使い魔の方が可愛いけどね」
「………あんたそれが言いたかったの?」
ルイズが言うと、ギーシュは照れくさそうに頬をかいた。
「まぁ、確かにこんな外見してると『可愛い』とは言えないかもしれないけど。それでもわたしにとっては『可愛い使い魔』であることには変わらないわ」
「……ところで、ぼくの使い魔も一緒に連れていって良いかい?」
「あんた使い魔いたの」
ルイズの言い方に思わずギーシュは苦笑する。
「いるに決まっているじゃないか」
「なら呼んだらいいじゃない、何処にいるの?」
ここに、と言ってギーシュは薔薇の造花で地面を指す。
するとその地面がモコモコと盛り上がり、そこから一匹の動物が現れた。
「それって……」
「すごいだろう? ぼくの使い魔『ヴェルダンデ』だ。あぁぼくの可愛いヴェルダンデ。甘い木の根を一杯吸ってきたかい?」
ルイズは目を見張る。白い胴体に茶色い腕、緑色の瞳に小さな羽。
「ここハルケギニアで見たこと無い生き物なんだ。きみのその大蛇……」
「竜よ」
「竜? そう、その竜と同じように。ぼくのヴェルダンデも図鑑に載っていないんだ」
ギーシュに言われなくてもルイズはそれを理解していた。
勉強は人一倍していた、動物図鑑、幻獣図鑑も穴が開くほど見た。
キングも、そしてヴェルダンデの姿も見た記憶がない。
もそもそと地面の中から抜け出てくると、ギーシュが抱きついた。
大きさはおおよそ50サントほどだろう。小型犬程度の大きさだ。
顔に付いている触覚がひくひくと動き、ギーシュの頬を撫でている。
「でも見た限りでは『蝉』の幼虫に似ているわね」
「でもこんなに大きな蝉はさすがにいないだろう?」
ギーシュにそう返されてはルイズは何も言えない。
「……まぁ良いわ、キングに乗っていけばすぐだし……今日中にはラ・ロシェールの町には着きたいから、そろそろ行くわよ。」
傍らに置いてあった袋を拾い上げ、ギーシュに渡した。
「これは……?」
「乗せてあげるんだからこれくらい持ちなさいよ。男でしょ」
そう言われては返す言葉もなく、ギーシュは素直に受け取った。
そして、ルイズの意図をキングは即座に把握、しっぽに乗るように促す。
その後を袋とヴェルダンデを抱いたギーシュが続く。
ゆっくりと飛行するキングの上で、ギーシュは袋を抱いたまま聞いた。
「ところでルイズ聞いても良いかい」
「なによ」
「この袋の中身はなんだい?」
「破壊の小箱よ」
ルイズはさらっと応えた。

☆★

突然空に現れた蒼い影に、ラ・ロシェールの町はざわめき立つ。
しかしそこから降り立ったモノの格好を見て全て把握した。
なんだ、メイジの使い魔か、と。
ただ、その使い魔がどれほどのモノかを理解できるモノがそこにいいなかったのは、幸か、不幸か。

ラ・ロシェールでいちばん良い宿『女神の杵』亭にてルイズとギーシュは宿を取ることにした。
「ずいぶん早く着いてしまったね。君の竜はすごいな」
ギーシュの言葉にルイズはふふんと胸を張った。
「でもアルビオンへの船が出ないというのはちょっと痛いわね」
「考えても見れば。明日はスヴェルなんだから予想できなかったのがおかしいね。二人揃って」
「間抜けね二人揃って。明後日まで足止めか……はぁ~」
「………せっかくだから町でも見て回らないかい?」
ギーシュの誘いにルイズが眉を顰める。
「モンモランシーはどうしたのよ……」
「レディーをエスコートするのは貴族のたしなみじゃないか。無理にとは言わないけれど。どうぞお手を……」
要約すると目的は姫様の依頼であって下心はないという。
それはそれでなんかむかつくけれど。
「まぁいいわ。ミスタ。ぜひエスコートをお願いするわ」
差し出されたギーシュの手を取ると、ギーシュは嬉しそうに笑った。
しかしそんな至福のひとときは、宿を出ようとしたとき、先導するギーシュが丁度入ってきた男とぶつかることで終わった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ………ルイズ、ぼくのルイズ!」
息も絶え絶えで入ってきたオッサンの剣幕にギーシュは押され気味になった。
しかし、ルイズの名を呼んでいるからには知り合いだろうか、と思いつつ後ろを振り返ると目を丸くしていた。

☆★

ヴェルダンデを背負い、ギーシュは一人で町を見て回っていた。
宿に突然やってきた男、名をジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドといった。
爵位は子爵。婚約者だ、と言うことには少々驚いたけれど、十代で結婚する女子は珍しくはない。
領地はヴァリエールと隣とのこと、それを聞いてギーシュは納得する。
それほど感慨はなかった、ホントにすこし驚いた程度だった。
それよりも今気になるのは、両手に持つ小箱だった。
ルイズの使い魔、キングは宿には入れないため、屋根に鎮座している。
屋根の上でとぐろを巻いているその光景は圧巻だったが。
ルイズと話がある、と言うことでワルドと二人っきりにした。
宿から出たときに、屋根の上のキングに呼び止められ、この二つを落としたのだ。
破壊の小箱、ルイズが言うには、それを使った途端キングが眩い光の魔法を放ったとのこと。
だとしたら同じようにコレを使えば、魔法を使えるのだろうか。
けれどルイズは人間には使えないと言った。
どうやら自分で試したらしい。
君は元々使えないじゃないか、と言ったら。キュルケやタバサでもダメだったのよ、とのこと。ならば確実だろう。
横のスイッチを押すと起動するらしい、押してみる。
ぴんぽん。と音を立ててぱかっと開く

「わざマシンを起動します………中には『まもる』が記録されています。『まもる』をポケモンに覚えさせます。よろしければもう一度ボタンを押してください。キャンセルする場合はリセットボタンを押してください」

意味のわからない言葉の羅列ただルイズが『ポケモンと言う単語が気になる』と言っていた。
手の平の中で、もう一度押してみる。
ブブー、と言うエラー音がなり、何事かのアナウンスの後、ぱたりと閉じる。
もう一度押すと再度開いてアナウンス。しかし二回目を押すとブザー音。
「なんなんだろうねこれ」
ギーシュはそう笑いながら、小箱を持った手を背中のヴェルダンデへ見せようと伸ばす。
ててててん。

「『まもる』を覚えさせました」

さっきまでと違ったアナウンスがなり、ぱたりと閉じてしまう。
しかし、こんどは横のボタンを何度押してもうんともすんとも言わない。
「……まいったな、壊れてしまったのだろうか……ルイズになんて言おう………」

☆★

「あら、ギーシュおかえり」
軽く三時間ほどの散策を終えて帰ってきたギーシュを向かえたのは、キュルケだった。
「なんで君がいるんだい?」
ギーシュの言葉にキュルケは応えず、代わりに他のテーブルに座っているルイズを指した。
「朝でかける時見てたって言うのよ。それでタバサ起こして追いかけてきたんだって。ホント迷惑……」
ルイズが嫌そうに説明する。
「何よぉ、心配して追いかけてきてあげたんじゃない」
「別にあんたに頼んでないわよ!それにコレはお忍びなのよ」
「お忍びぃ?その割にキングが看板になってるじゃない、目立ちまくりで遠目でもわかったわよ」
キュルケのその言葉にぐっとルイズは言葉を飲んだ。
それは確かにその通りだった、キングの巨体が屋根でくつろいでいるため、町のあちこちから確認できる有様。
ギーシュはそれを目印に散策をしていたのだ。
「そうだルイズ、ちょっと君に話したいことがあるんだが………」
ギーシュがそういうと、ワルドの目が光る。
ちなみにキュルケの瞳も、何か面白いモノを見つけたような輝きをもっている。
「ここではちょっと………外で良いかい?」
ワルドの目がなおさら光り、ギーシュが思わず身じろぎする。
「……何よ急に……まぁ良いわ」
ルイズが席を立って外へ向かう。
「ルイズ。何かされたらすぐ呼びたまえ。婚約者を守るのはぼくの義務だ」
ワルドの発言にギーシュもルイズも紅潮する。
ルイズは婚約者発言に、ギーシュは弁解のために、である。


「で、なによ。ワルドやキュルケに聞かれちゃまずい話なの?」
「………これを」
ギーシュは何か考えた仕草の後、マントの内側から小箱を取り出す。
「これって……破壊の小箱じゃない。あれ? キングに預けてたはずだけど……なんであんたが持っているのよ」
宿を出たとき落ちてきたことをギーシュが話す。
そしてキングに投げ返したら、息をふって吐いて跳ね返したことも。
「………キングの『持ってろ』って事かしら……あのこ使い方わかるみたいだし………」
キングに刻まれたルーン、フーケを捕獲した後、学院長室で話したことを思い出す。
神の知識『ミョズニトニルン』あらゆるマジックアイテムを使いこなしたとされる伝説の使い魔のルーン。
だから、キングは破壊の小箱の使い方を知っていたのだろうか。
ギーシュから渡された小箱を、かちっとスイッチを入れる。
「……………あら?」
カチカチと押すが全く反応を示さない。
「あぁ、その事なんだが………実はボタンを押したとき、ヴェルダンディに近づけた後で全く動かなくなってしまったんだよ……それでだね……」
ギーシュが言うには、学院に納められている破壊の小箱がどれほどの価値があるのかと言うことだった。
壊してしまったからには弁償する必要があるかもしれない、戦々恐々するのも仕方ない。
しかしルイズは手元の『故障』した小箱をじっと見つめている。
「………違う……」
「え?」
「コレは『使い捨て』なのよ。一回しか使えないの。フーケを捕まえたときの小箱もそうだったわ。全然反応しなくなっちゃうのよ」
でも、人間には使えない……フーケが使ったのはたぶん壊れていたんだろう。起動時のメッセージにノイズ入っていたし。小箱自体にもヒビ入ってたし。
じゃぁ、いったい何に使ったんだ?
ルイズは顔を上げて、ギーシュの背中に負ぶさっているヴェルダンデを見やる。
「………『ポケモン』……」
「なんだって?」
「この道具、小箱を使えるのはポケモンって言う生き物なのよ。きっとわたしのキングも貴方のヴェルダンデも『ポケモン』なのよきっと」
「………本当かい?」
「確証はないけど、たぶん壊れたんじゃなくて『使えた』だけなのよ。おそらくヴェルダンデに反応したんだわ」
「そういえば……ヴェルダンデに近づけた途端、こう……『ててててん』と言った音楽が」
「それよ、キングの時も同じ音が出たわ。間違いない、きっとそうよ」
「じゃ、じゃぁ。つかぬ事を聞くがミス・ヴァリエール。その………ぼくのヴェルダンデも君のキングみたいな姿になってしまうのかい?」
「………そこまでは知らないわ、ほとんど推測だもの。でも可能性はあるんじゃないかしら………ちなみにシルフィードにも使えなかったのよ?」
「そうか………変わってしまうのか………可愛いヴェルダンデ………」
呟きながらギーシュはキングの姿を思い浮かべる。
今思えば、赤い魚だった頃は愛敬があった気がする。それが今は蒼い鱗の大蛇……竜とのことだ。
確かに鱗は綺麗だが、可愛いとは言いきれない。
「………たとえヴェルダンデの姿が変わってもぼくは愛し続けるよ!」
ギーシュは改めて決意表明をすると、ルイズは苦笑した。
「小箱に関しては大丈夫よ、コレは姫様から学院長に直接言って貰って持ってきたモノだもの」
ルイズがそういうと、ギーシュはほっと胸をなで下ろした。
「そうかっ、いやーよかった………一時はどうなることかと……」
「話は終わり?」
「……いや実はもう一つあるんだ」
そう言ってギーシュはマントの中からまた別の小箱を取りだした。
「ギーシュ貴方……これって………?」
「町を歩いているときに見つけた。似てるな、と思って手にとったら……ほらここの文字、書いてる文字が違うだろう? 聞いてみたら使い方がわからないと言うことで格安で譲ってもらったんだ」
ルイズがその小箱を起動させる。

「わざマシンを起動します………中には『みがわり』が記録されています。『みがわり』をポケモンに覚えさせます。よろしければもう一度ボタンを押してください。キャンセルする場合はリセットボタンを押してください」

ルイズは小箱をヴェルダンデへ近づけ、ボタンを押した。

「『みがわり』を覚えさせました」

☆★

「部屋を三つとることにした。ぼくとルイズが相部屋、君と君が相部屋、それと……」
「ギーシュ・ド・グラモンです。子爵」
「ミスタ・グラモンは一人部屋だね、コレでよいだろうか?」
ワルドのその言葉に、キュルケは依存無しと頷き、タバサは興味が無さそうだった。
ただルイズだけが慌てていたが、正直ギーシュはどうでもよかった。
後から来て仕切られるのは正直癪だったが、相手がグリフォン隊の隊長では分が悪い。
だが一人部屋だと落ち着くし、考えたいこともあったから部屋割りに関しては異論はない。
懐の、キングから渡されたもう一つの小箱を握りしめながる。
部屋に入って肩を揺らすと、ヴェルダンデは大人しく床に降りる。
ベッドに腰掛けたギーシュの正面に向かい、じいっと見上げる。
「君は、一体何なんだい?」
ギーシュはヴェルダンデを見下ろしてそう呟くが、彼の使い魔はその問いに応えずじっと見上げるだけ。
ルイズは『蝉』に似ていると言った。たしかに、蝉の幼虫は地中に済んでいる。
『蝉』ならば、成長するのは当然だろう。
そう考えると、ギーシュの心臓は期待に高鳴っていくのがわかった。
世界でたった一つの自分の使い魔。
成長する使い魔。姿を変える使い魔。赤い魚だったルイズの使い魔は、今や空を自在に駆ける竜になっている。
自分の使い魔はどんな姿になるのだろうか………。
ベッドに横になると、ヴェルダンデがもそもそと上がってくるのがわかった。
「あぁ………可愛いヴェルダンデ、今日は特別に一緒に寝ようか……ぼくも疲れたし」
小箱をベッドの隣の棚の上に置き、指を鳴らしてランプを消す。
目を閉じると、眠気が急に襲ってくる。
隣はルイズと子爵か……声が聞こえる、まだ起きているのか………。
すう、とギーシュは眠りの深淵へと沈んでいった。

☆★

翌朝ギーシュが起きてくると、ルイズがワルドの腕に包帯を巻いているところに遭遇した。
「ふわ………何があったんだい?」
あくびをしながらギーシュが訊くと、ルイズが応える。
「ワルドがキングの力を見たいって言いだしたのよ。直撃はしなかったんだけど破片が当たって……」
「この様というわけさ……ルイズの使い魔が彼女を守れるだけの力があるかどうしても気になったのでね」
「………任務前にするような事なのかい?」
ワルドが来た理由は既に訊いている。アンリエッタから護衛にと任命されたらしい。
昨日の朝で合流する予定だったらしいが、キングのことを話していなかったため、おいていってしまったのだ。
慌ててグリフォンで全速力で追いかけてきたらしい、到着直後の息切れはそれが理由とのこと。
だが、極秘任務を前に力量が見たいという理由で怪我をするのは隊長としてどうかと思った。
「………面目ない」
「それでどうなったんだい?」
「どうもこうもないわ。キングが口を開いたら………まぁ、見てきた方が早いわよ。外出て右、10メイル行ったところの路地の奥よ」
「ヴェルダンデ」
使い魔を呼ぶとぴょいっと飛んで背中にしがみつく。
言われた場所へ行くと、キュルケとタバサの後ろ姿があった。
足音に気付いたキュルケが振り返り「遅かったわね」と言った。
「これは…………一体」
唖然とするギーシュの目の前にあるのは、完全に凍り付いた樽や木材と、壁だった。
「氷………あの使い魔は風と水の魔法を使えるのかい………?」
「違う」
「違う? 違うってどういう事よ」
「魔法じゃない」
タバサの言うとおりだ。
風と水のスペルを混ぜて発動する魔法、ウィンディアイシクルは空気中の水蒸気を一瞬にして凍結、槍のようにして飛ばす呪文だ。
タバサが得意としているスペルもそれ、だがそのスペルとは全く違う効果が、目の前にあるのだ。
空気中の水蒸気を凍らせることはタバサでも出来る。
しかし壁一面を凍らせるのはどんなメイジでも不可能だろう。
これほどまでの大規模な凍結は、もはやエルフの先住魔法くらいでは…………。
誰が示し合わせるわけでもなく、屋根の上のキングに視線を向ける。
キングは何事もなかったかのように屋根の上に鎮座し、瞳を閉じている。

☆★

その夜、襲撃があった。
明日がアルビオンに渡る人言うことで盛り上がっているときの襲撃である。
突然衝撃音が外から鳴り響いた、そしてキングの咆吼。
窓から外を見ると巨大なゴーレムとキングがぶつかり合っているのが見えた。
「フーケ!」
ルイズが叫ぶと、高笑いが帰ってきた、嵌りすぎである。
「ほーっほっほっほ、またあったわねジャリガールズ。覚えてたのね、感激だふわぁ~~~~」
「あんた牢屋に入ってたんじゃ……」
「親切な人が出してくれたのよお、でわたしはその人のお手伝いって訳」
「お節介なひとがいたものね」
宿屋の一階は酒場、情報交換も兼ねている場所だが、そこは既に修羅場とかしている。
フーケに加え、多数の傭兵が押し寄せている。
それをキュルケやタバサ、そしてギーシュが応戦している。
応戦しながらワルドが言う。
「こういう場合は、半数が目的地に行けば勝利とされる」
タバサがこんな時まで読んでた本をぱたんと閉じる。
「囮」
己と、キュルケ、ギーシュを指して短く言う。
「桟橋へ、今すぐ」
と、ワルドとルイズを指していった。
「決まりだな。裏口へ回ろう、そこから桟橋へ向かう。今からここで彼女たちに敵を引きつけてもらう。程よく暴れて目立ってもらう」
「ま、仕方ないわね。あなた達が何しにアルビオンに向かうのかすら判らないし」
「うむむ、ここで死ぬのかな。どうなのかな……死んだら姫殿下とモンモランシーにあえなくなってしまう、それは辛いな…」
「行って」
キュルケ、ギーシュ、タバサからの後押しにもルイズはすこし躊躇する表情を見せたが結局はワルドに手を引かれてそのまま向かった。

☆★

ヴェルダンデを背中に負ったまま、ギーシュは目前の光景に目を丸くしていた。
キュルケに厨房の油を取ってくるようにいわれ、ワルキューレに取りに行かせた。
すぐさま外から矢が射られるが、青銅のゴーレムを貫通するには至らない。
ワルキューレが油の入った鍋を掴んで持ってくると、キュルケは化粧をしながら「入り口の方へ投げて」といったのだ。
言うとおりに投げると、キュルケは即座に魔法をかけて火の海に変えた。
化粧を終えたキュルケがテーブルの上に躍り上がった。
それはさながら、舞台に上がった売れっ子スターのように。
入り口を覆う炎が、キュルケを照らすスポットライトのように。
烏合の衆たる傭兵達は、そんな事態に右往左往するだけだった。

だらしない傭兵を眼下に望みながら、フーケはゴーレムの上で舌打ちした。
「ったく、やっぱり金で動く連中は使えないわね。あれだけの炎で大騒ぎとは」
「だがそれでよい。倒さなくても構わぬ。分散すればそれでいい」
フーケの言葉に、隣に立っていた白マントが応えた。
「あんたはよくてもこっちは構うわよ。あいつらのおかげで恥をかいたし」
それに、と呟きながらフーケは目の前に鎮座する蒼い竜を見つめる。
凶悪なその表情にほぼ膠着状態。
あのミス・ヴァリエールの使い魔。ゴーレムを一撃で倒したとんでもない魔法。
あんな魔法を撃たれたらゴーレムなんて一撃で破壊される。
いま撃ってこないのはおそらく、町を背後にしているからだろう。
撃ったら貫通どころか町一つ消滅しかねない。
「忌々しいねぇ……全くよくできた使い魔だよ……」
主の命に従い、主の意思をよく汲み取る。確かにあのミス・ヴァリエールは町の被害が増えるのを厭うだろう。
そう言う生徒だった、秘書をしていた頃に何度か会っているからそれはわかる。
「……後は任せた。俺はラ・ヴァリエールの娘を追う」
「わたしはどうしろって言うのよ」
「好きにしろ、残った連中は煮るも焼くもお前の勝手だ。合流は例の酒場で」
白マントはそう言い残し、ゴーレムの肩から風に包まれてふわりと消えた。
「全く勝手な男だね……しかし好きにしろって………いぃっ!?」
正面のキングに向き直った途端、その口にに淡い光りが収縮するのを見た。
「ちょっ、まさかこんなところで!」
思い出されるのは『破壊光線』。
ゴーレムを一撃で吹き飛ばしたあの破壊の光。
慌ててフーケはゴーレムから飛び降りる。
冗談じゃない、あんな攻撃、避けるのも耐えるのも不可能だ!
着地した途端、キングの口から蒼い光線が発射された。

☆★

「ほーっほっほっほっほ! おーっほっほっほっほっほ」
高笑い第二弾、酒場でキュルケがビシッとポーズを決めていた。
「見た? わかった? あたしの炎の威力を! 火傷したくなかったらお家に帰りなさいな~」
物凄く上機嫌である。
アンリエッタが学園に来る前、『疾風』のギトーの授業の時に吹き飛ばされたことを気にしていたようだ。
改めて火の威力を誇示できて大満足しているようだ。
「あっちも終わったようだね」
ギーシュの視線の先には、キングと相対するフーケのゴーレムが氷漬けになっているのが見えた。
ビシッ、と亀裂が入り崩れ落ちるゴーレムに、傭兵達は散り散りになって逃げようとする。
「逃げるんじゃないよ!」
そんな傭兵達にフーケからの一喝が入る。
そして、周囲の石を錬金、土へと変えて即座の新たなゴーレムを作り上げた。
「町中には石しかないと思ったかい? 石も岩も、突き詰めていけば『土』なのさ! いくよっ!」
そう言ってフーケはゴーレムをキングへ襲いかからせる。
てっきり倒したものと思ってゴーレムに背を向けていたキングは、その不意打ちに対処できずに地面へ落ちた。
「取ったっ!」
無骨な土で作られたゴーレムが、その腕をキングの頭へと振り下ろす。
「GYAOOOOOOOON」
ゴーレムを振り払おうとキングが体を動かすが、完全に腕を押さえつけられてしまって対処できない。
「油断大敵さ、くたばりなぁっ!」
その時だ。
ボコンッ
「………は?」
ぐらりとゴーレムの体が傾く。フーケが見下ろすとゴーレムの右足のあった場所にぽっかりと穴が開いている。
ボコンっ
フーケの足下から変な生き物が現れた。
「なんだいあんた……」
もそもそとはい出てきて、その生き物は腕のようなモノを振り上げて………。
フーケが慌ててそいつに攻撃しようとした瞬間、そいつはその腕をフーケの腹にぶち込んだ。


ゴーレムが完全に崩れ落ちたのを見るや、傭兵達は士気も皆無に等しく、クモの子を散らすように逃げていった。
そして、キングがふらふらと飛び上がって、宿へと向かってくる。
その頭にヴェルダンデが乗っているのを見て、ギーシュは激しく驚いた。
ヴェルダンデはぴょんとジャンプし、ギーシュに飛びつく、ずいぶん懐いているようだ。
「なるほど……地面の下を行って奇襲したのかい。フーケは……なるほど」
「なんですって?」
「フーケは気絶したようだ! ぼくのヴェルダンデがフーケを仕留めたんだ!ぼくの……」
大喜びするギーシュをよそに、キングはくるりと背を向けてルイズを追おうとする。
どうやら船は出たようだ。
アルビオンが近づくのは明日のはずだったが、早めに出向させたのだろう。
「まってくれ!」
飛び去ろうとするキングを、ギーシュが呼び止める。
ヴェルダンデを定位置、背中に負ぶさって、更に続ける。
「ルイズを追うんだろう!? ならばぼくも連れて行ってくれ!」
ギーシュはそう宣言すると、振り返ってタバサとキュルケに謝罪した。
「後のことを押しつけるような形で済まない。ワルド子爵も負傷しているし。ルイズは魔法が使えないから先にぼくは追うよ」
「構わない」
ギーシュの言葉にタバサは短く承諾する。
気絶しているというフーケもちゃんと捉えなければならない、その為すぐ全員で向かうのは好ましくない。
「しかたないわね……あんたは事情知ってるみたいだし。ま、ここはあたしらに任せておきなさい」
そう言ってキュルケは投げキッスを送り、ギーシュはすこし恥ずかしそうに笑った。

☆★

散り散りになった傭兵は正直どうでも良い。
重要なのはフーケの方であった。
キュルケとタバサはすぐさまフーケの倒れている場所へと向かう。
そこには、苦悶の表情を浮かべて倒れ伏しているフーケの姿があった。
「……にしても、あれだけでかいゴーレムをキングに倒されたのに、その直後に石を土に錬金して更にゴーレムをつくるってどういう手品を作ったのかしら」
そう、それが不思議だった。
あの質と大きさのゴーレムを作る場合はトライアングルクラス以上だろう。
しかし一度破壊されてもう一度作り直すならスクウェアは必須である。
ちなみに一度崩してもう一度組み直すのは問題ない。魔力は崩しても通り続けているからだ。
破壊された場合はもう一度魔力を込める必要がある、それをフーケは容易くやってのけたのだ。
「これ」
倒れているフーケの周りにコロコロと転がっている青と灰色の物体。
拾ってみると結構軽い、そして硬い。
「何かしらコレ……」
鼻を近づけて匂いを嗅ぐと、ふんわりとしたいい匂いがする。
「フーケなんでこんなモノを……」
「………美味しい」
タバサからのその言葉にキュルケは慌ててそちらを見ると、タバサがそれを歯で齧っていた。
「木の実」
「木の実? またえらく毒々しい木の実があったモノね」
「美味しい」
そう言ってタバサは齧りかけをキュルケに差し出した。
「さっぱりする」
さっぱりってどういう事よ、と思いつつキュルケはその皮を削って一口噛んでみた。
確かに目はさっぱりした気がするが、渋い。



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