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男達の使い魔 第五話半

朝日も登らぬ早朝。
メイド達もまだまだ深い眠りの中、学院にほど近い草原から気合の声が響いてきた。

「フン!」

右順突きを繰り出して静止した姿勢でしばらく止まる。
顔の辺りからうっすらと汗が流れてくるの見て取れる。
そのまま1分、2分と時間が流れていく。
しかし、その人影は動かない。汗が滝のように流れていく。
とうとう10分を超えたとき、その左手が動く。

「発!」

足を入れ替えての左順突きだ。
相当修練を積んでいたのだろう。
その一撃で全身の汗が弾け飛び、小さな霧を作る。

すると今度は両足をそろえ、手で大きな丸太を抱え込むような姿勢を作った。
そして不思議な呼吸を行い始める。
見る人が見ればわかるだろう。
気を練っているのだ。

五分ほどそれは続いた。
十分に気が練れたのだろう。
その一撃を右手に乗せ、解き放った。

「真空殲風衝!」

その一撃に周囲の空気が揺れ、草が弾け飛ぶ。
しかしその人影は不満そうに手を見つめると、一つため息を吐いた。
そこに声をかける男がいた。

「シエスタか?そこで何をしている?」

「Jさん!」

そうJであった。
どうやら日課のロードワークの途中のようだ。
その両手両足に、それぞれ重さ100キロはくだらないだろう鉄球を繋げているのを見て、
シエスタの顔が一瞬引きつる。
それを気にする様子もなく、周りを見渡したJは大体の事情を把握した。

「ニューブローは簡単に身につくものではない。絶え間ない訓練と命がけの実践。
 この二つがあって初めて身につくのだ。」

そうとだけ言葉を残して、再び走り去っていった。

それを見たシエスタは、自分の心が見透かされた恥ずかしさと、
彼ほどの男がアレだけの訓練をしているのにも関わらず、見た目だけで引いてしまった自分に
対する情けなさを叩きのめそうと、修練を再開することにした。

「それにしてもJさんって、あの鉄球気にいっているのかなぁ。」

図星である。人前でこそ滅多に付けないが、愕怨祭以来密かに愛用していたのだ。
どうやらそんな姿を見られたJも、少し恥ずかしかったようだ。



珍しく早起きをしたルイズは、自室でデルフリンガーと会話をしていた。
魔法を吸い取るインテリジェンスソードが、自分のことを虚無とっていたのが気になっていたのだ。

「なんでほとんど虚無について覚えていないのよ!」

「六千年も前だぜ!覚えてなくてもしょうーがねーだろーが!」

訂正。仲良く喧嘩をしていた。
流石に六千年も前では、デルフリンガーを攻めるのは酷というものだろう。
そう思い直したルイズは、大きく息を吸って気を落ち着けると、
もっともデルフリンガーに確認したいことを聴くことにした。

「私が虚無の属性であることは間違いないのね?」

「ああ。あの感じは間違いなく虚無のエクスプロージョンだったぜ。
 あんときはオデレータが、正式な詠唱じゃあないせいで助かったなぁ。」

そのことに気を良くしたルイズは、改めて考える。

「虚無の魔法なんて、どうやって覚えればいいのよーーーー!」

至言である。

その後ろで桃が笑いをこらえていた。
彼は彼なりに、この可愛らしい主人のことが気にいっているのだ。

そこへ、窓がコンコンとたたかれる。
どうやら散歩のお誘いが来たようだ。

「ルイズ、シルフィードが散歩のお誘いに来たぜ。」

そう言ってルイズの手を引くと、桃は窓から体を躍らせた。
タバサの許可を得て以来、こうして時々三人で空の散歩を楽しんでいるのだ。



マリコルヌは学院の門の影から、その集団を見ていた。

(あの男達みたいになりたい!)

生まれて初めてとも言えるほどの欲求が、その大柄な体に湧いていた。
今のマリコルヌは一味違う。
女性にもてるよりも、男を磨く方が素晴らしいことだと気がついたのだ。
自分の親友であるギーシュは一足先に男達の中に入っていった。
今度は自分の番だ。マリコルヌは強く己に言い聞かせた。
その視線の先には……


「一一が一!一二が二!……」

今日も休むことなく勉学に励む田沢や秀麻呂たちがいた。
朝の学院に野太い声の九九が響き渡る。
彼らは、まさしく全力で九九を唱えているのだ!

「九九、八十八!」

とうとう唱え終わったようだ。
その全身からは湯気が立ち上っている。
その中にはギーシュも混ざっている。
主に新男根寮で働いている、シエスタに謝ろうと尋ねたのが切欠だった。
そして、自分とはまったく違う、その価値観に衝撃を受けてしまった。
男を磨くことの素晴らしさに目覚めたのだ。
唱え終わると彼はちらりと門を見た。

(早く来い、マリコルヌ!早くしないと、僕はもっと高みにいってしまうぞ。)

心の中で親友を励ましていた

その思いに応えるかのように、マリコルヌは一歩を踏み出した。


その光景をモンモランシーは涙を浮かべながら見ていた。

(ああギーシュ!あなたは変わってしまったのね。)

事実である。


(そんな輝いているギーシュ様も素敵!)

一方ケティは新しい趣味に目覚めたようだ。



学院のほとんどの生徒にとって、ルイズの使い魔達は近寄りたくない相手だった。
声が大きい。ガタイが良すぎる。むさ苦しい。
理由はいくつでも挙げられる。

一方平民達の見方は違う。
確かにそう言ったマイナス点もあるが、困った時には必ず力になってくれる頼れる男達なのだ。
たとえ、それで自分に不利益が及ぼうとも一切言い訳をしない。
その姿勢に好感をもたれているのだ。
特に料理長のマルトーは

「そこ!もっと早く手を動かせ!雷電を見習え!」

中華料理なるものを使う雷電のことがいたく気に入っていたのだ。
手の遅さを指摘された料理人が雷電の方を見て絶句していた。

「大往生!」

そう叫んで、残像が見えるほどの速度で包丁を振るっていたのだ。
その姿に満足した、マルトーが、いよいよ動き出す。
ヘキサゴンクラスと言われる料理人、料理大帝マルトーの出陣である。



キュルケの朝は遅い。
最近では思うこともあり、男遊びは控えているが、長年の生活習慣は簡単には変わらないのだ。
特に虚無の日ならばなおさらだ。
もぞもぞとベッドから起きたキュルケは、窓から外を眺めた。

(少し早かったかしらね?)

そう思ったキュルケだが、手早く身支度を整えると、部屋から出て行った。

「は~い、飛燕。何をやっているの?」

「ツェルプストー嬢ですか。少し、花を見ていました。」

最近のキュルケのお気に入りはこの飛燕だった。
ルイズの呼び出した使い魔達は、皆素晴らしい男達である。
それは極めて貴重なことだ。
男の価値がわかる女キュルケはそう思っている。
しかし、残念ながら彼らのほとんどは女の事がわかっていない。
同時にそうとも考えていたのだ。
その中でこの男は数少ない例外である。
そうと気づいたキュルケは、最近もっぱら飛燕と過ごすのが日課であった。

「一緒に見てもいい?」

「ええ。お構いなく。」

キュルケは思う。いつもの微熱も素晴らしいが、これはこれで悪くない、と。



昼過ぎ、タバサはいつも図書館で本を読んでいる。
最近のお気に入りは
太公望書房刊「これであなたも拳法マスター!」(眼陀亜瑠腑(がんだあるふ)著)
である。
このような本だけで強くなれるわけがない。
そのことは、実践経験豊富な彼女はよくわかっている。
そこへ

「この文章の読み方を教えてくれないか。」

伊達が声をかけてきた。
意外にも、伊達の知識欲は強い方である。
この学院の図書館の利用許可をオスマンよりもらってからは、こまめに立ち寄っているのだ。
しかし、いかに伊達といえど、まったく知らぬ言語を一から読めるわけではない。
ゆえに協力者を探していたとき、タバサの方から声をかけてきたのだ。
字を教えるかわりに、この内容を実践して欲しい、と。
伊達は二つ返事で引き受けた。
それ以来、タバサと二人で図書室にこもることが多くなったのだ。

「それは……」

タバサが簡単に解説した。
それで理解した伊達は簡単に礼を述べると立ち去ろうした。
そこで、タバサが袖を引っ張っているのに気がついた。

「これを実演して欲しい。」

そう言ってタバサが開いた本を見た伊達は絶句した。

(何で千歩気功拳なんて載っているんだ!)

もっともである。



学院長、コルベール、虎丸、富樫、松尾の五人は既にできあがっていた。
酔っ払っているともいう。
ゼロ戦を見に来たというコルベールは、運悪く学院長と塾生達との酒宴に鉢合わせてしまったのだ。
実は呑めるほうであるコルベールは、断りきれなかったのだ。

「ううっ。私だって好きで禿げているのではないんですよ~。」

コルベールが愚痴をこぼす。

「その気持ちよくわかるぜ。」

同じように頭髪の量に不自由している松尾はそう答える。
二人の髪の毛に対する話題はいつまでも尽きることはない。

「なあ富樫。俺達飲む場所を間違えたか?」

「言うな、虎丸。」

そう言いつつ、虎丸と富樫はハイペースで飲み続ける。
二人の前には一升瓶が一本、二本、……
ともかく無数に転がっていた。


「え?わしの出番はないの?」

何か聞こえたような気がするが、気にしない。
彼は立派な魔法使いであるから、描写の必要がないだけなのだ。



夜、フーケは月を眺めていた。

(あたしも焼きがまわったかもねぇ。)

両頬に傷のある男の姿を思い浮かべたフーケは、思わず胸を熱くした。

(まあ、廃業するいい機会かもね。)

そう考えたフーケは、マチルダは一度故郷に顔を出そうと決意した。
こういう夜は、一人だと寂しさがますばかりだ。

月を眺めていたフーケは、かつて自分に説教をしたハーフエルフの使い魔を思い出して苦笑した。

(あたしは悪人にはなれない、か。見事にあたっちまったねぇ。)

そう思いをはせていたところで、後ろから声をかけられた。

「『土くれ』だな。」

杖を反射的に握り締める。そんな様子など微塵も見せずにフーケは振り返る。
そこには、白い仮面を被った男がいた。

「『土くれ』はたった今廃業したばかりだよ。」

「では、マチルダ・オブ・サウスゴータとでも呼ぼうか。」

その台詞にフーケの顔色が変わる。
そんなフーケの様子など、微塵も気にするそぶりを見せずに男は説明を続ける。
自分達はアルビオン旧王家を打ち倒し聖地を取り戻す、と。
その目には絶対の自信と、黒い何かが渦巻いていた。

かつての自分ならば惹かれたかもしれない。
フーケはそう思う。
でも今は……

「はん!女一人口説くのに、仮面を付けてくるような根性なしは相手していないんだよ。
 出直し的な!」

伊達の強く悲しい視線が胸をよぎる。
その瞬間フーケの口は動いていた。
同時にゴーレムを作り上げる。

「このタイミング、取った!」

ゴーレムの拳を打ち下ろしたフーケはそう確信する。
命まで取るつもりはない。
しかし、正体は確認する必要があるのだ。

「さてさて、どんな面をしているかねぇ。」

その瞬間、フーケに油断が生じてしまった。

「ライトニング・クラウド!」

電撃がフーケの体を襲う。
そして、フーケは視界の端で、二人に増えている仮面の男を見た。

(風の遍在!そんなものにひっかかるとは、私も油断したものだねぇ)

意識が落ちていく中、フーケは、否マチルダは懐かしい声を聞いた。

「マチルダ!」

(結局あんたに迷惑をかけてばっかりだったねぇ。王大人。)

思わぬ乱入者に、フーケに止めを刺し損ねた仮面の男は、思わず一歩後ずさる。
それは奇妙な男であった。
まるで女性モノのようなゆったりとした服を身に纏い、髪の毛を複雑にまとめている。
年齢は50~60位であろうか。
王大人である。

仮面の男は油断したつもりはない。
しかし、一瞬のうちに間合いを詰めた王大人の攻撃に反応することができなかった。
一体の遍在をかき消された男は冷静に判断する。
遍在では相手にならない、と。

「次に会うときがお前の命日だ。」

そう言い残すと、仮面の男は姿をかき消した。
王大人は、その様子を黙って見送った。


「やはり虚像か。」

王大人は、そう言うと腕に抱いたマチルダを見た。
その顔は、かつて『土くれ』と呼ばれる前の顔に戻っているような気がした。
そう思った王大人は少し微笑むと、自分を召喚した少女の下へと帰ることにした。
嫌な予感がしたので飛び出してきたが、時間が時間である。
心配をかけるには忍びない。

王大人は、マチルダを背負い紐で固定すると、持っていた棍(コン)を頭上で回し始めた。
その勢いがまして、ついには突風が生じ始めたとき、彼らは空を飛んでいた。
アルビオンへと帰還するのだ。

男達の使い魔 第五.五話 完



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