あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

『使い魔くん千年王国』 第十九章 ワルド子爵

前のページへ   /   一覧へ戻る   /   次のページへ

「『グリフォン隊』の隊長…!!」
トリステイン魔法衛士隊の中でも、最上級のエリートだ。怒りより憧れが優先する。
ワルドはそんなギーシュの様子を見てグリフォンを降り、歩み寄ってにこりと笑いかける。
「済まない。いくらモグラであろうと、『婚約者』が襲われているのを、見て見ぬ振りは出来なくてね。
 ミスタ・ギーシュ・ド・グラモン」
「『婚約者』!?」
「え、ええ。ワルド子爵様と私は、互いの両親の決めた許婚なの。お久しぶりですわ」
浮いた噂ひとつ聞かないと思ったら、おそらく十歳も上の許婚がいたとは。
これでは同年代の男が子供に見えるだろう。『ゼロ』と呼ばれて苛められていたのだし。

「ええと、きみがルイズの『使い魔』だったね、マツシタくん」
「はい。よろしくお願いします、ワルド子爵」
まだ若いが、そのまとう雰囲気は並みの青年ではない。トライアングル以上の使い手だろう。
(これでしばらく、ルイズの子守からは解放されそうだ)
松下はほっとしたが、ワルドを信用したわけではなかった。
一瞬ワルドの背後に、黒い毛むくじゃらの巨大な目玉が見えた気もするが…。
「さあ、自己紹介はこれぐらいにして出かけよう。港町『ラ・ロシェール』で一泊だ」
ワルドはルイズを抱え上げ、自分のグリフォンに乗せた。ルイズの馬は厩へ戻らせる。
「ははは、相変わらずきみは軽いな。羽根のようだ」

ワルドとルイズの乗るグリフォンを先駆けに馬を飛ばし、走る事一日。
二人は出会えなかった時間を取り戻すようにイチャイチャしている。なんかいやだ。
「子爵様は相当の使い手とお見受けしますが、系統は何でしょう」
「僕の系統は『風』。二つ名は『閃光』さ。一応『スクウェアクラス』のはしくれにはいる」
全然謙遜になっていない。さすが吸血鬼エリートである。吸血鬼じゃないが。
「ああ、憧れの魔法衛士隊の隊長が護衛して下さるなど、光栄だ…」
ギーシュがさっきのことも忘れて心酔している。気障どうし気が合うのか。

その日の夕暮れに、山の中の『港町』ラ・ロシェールの入口についた。谷底のような道だ。
「なんで『港町』なのに山の中なんだ?」
「おや、きみはアルビオンを知らないのか? 『浮遊大陸』にあるから、フネで行くのさ」
そういえばそうだった。この世界では飛行船(フネ)が主要なのだ。
ギーシュに指摘され、松下は少しイラッとした。

突然、崖の上から『松明』が何本も投げ込まれた。
松明は勢いよく燃え上がり、暗い足元が照らされる。ギーシュの馬が驚いて跳ねる。
「な、なんだ!?」
その火を狙って、無数の矢が襲い掛かる! まずは威嚇のようで、地面に突き刺さるが…。
「敵襲だ! 気をつけろ!」

一陣の風が舞い起こり、小型の竜巻が矢を弾き飛ばす。ワルドが『風』を放ったのだ。
「野盗の類か? まあグリフォンに乗っているから目立ってしまうが、命知らずな」
「まさか……アルビオンの『貴族派』の仕業かも!」
「ルイズ、貴族なら魔法を使ってくるだろう? 弓矢なんか使わないさ」
「傭兵を雇って、野盗の仕業で済ませようというんだろう。ぼくならそうする」
ギーシュの反論を松下が封じる。ワルドがいるとは言え、たった四人では多勢に無勢、地勢も悪い。

その時、後方の上空から羽音が聞こえた。振り返ると、大きな風竜がいる。
崖の上から男達の悲鳴が聞こえた。上空にいる風竜を迎撃するため、矢が放たれる。
しかし、風竜からは小型の竜巻が放たれ、男達を崖から突き落とした。
「おや、あれは『風』の呪文ではないか」
ワルドが呟く。突き落とされた男達が目の前へと転がってきて、気絶した。十人ほどだったようだ。

それに続いて風竜もこちらへとやってくる。月明かりが照らし、ルイズが吃驚して叫んだ。
「シルフィード!? じゃあさっきのはタバサ?」
「こんばんはルイズ! いい男とグリフォンにタンデムなんて、お姉さん妬けちゃうわ」
やはりキュルケも一緒だ。まあ彼女たちなら裏切る理由もメリットもないし、立派な戦力になるだろう。

任務だとは知らず、『いい男』についてきたキュルケとタバサを迎えて、一行は六人となる。
ラ・ロシェールは、スクウェアクラスのメイジにより岩を刳り貫いて作られた町だという。
夜は一番上等な宿で泊まる事になった。食事も豪勢だ。
ワルドが乗船の交渉を行った結果、アルビオンへの出港は明日の夜半と決定した。
部屋割りはワルドとルイズ、キュルケとタバサ、そしてギーシュと松下だ。
また奇襲があるかもしれないので気は抜けない。ギーシュは疲れて早々に寝てしまったが…。

翌朝。松下とギーシュの部屋に、ワルドが訪ねてきた。
「おはよう、使い魔くん。昨夜はよく眠れたかね?」
「おかげさまで子爵様。昨夜は『お楽しみ』でしたか?」
「ぷはっはははははは、まだ結婚もしていないのに手は出さないよ。まさかきみに言われるとはな」
だってロリコンではないのか。意外に紳士的なロリコンだ。ロリコンの鑑だ。
そんな思考を悟ったかは知らないが、ワルドは妙な事を言い出した。

「今夜の出港まで時間がある。暇潰しがてら、きみと『手合わせ』したい」
「…はて、こんな子供に何をおっしゃるのです、子爵様」
「フーケの一件で、僕はきみに興味を抱いたのだ。だからちょっと実力を知りたくてね。
 『東方』出身とのことだが、系統魔法は使えるのかい? 手加減はするよ」
好戦的な奴だ。こんなところで一文にもならない無用な争いをする気はない。

「ぼくはたいしたことはしていません。ほとんど御主人様とお友達のお手柄です」
「おやおや、ご謙遜を。そんなに臆病ではルイズを守れないぞ?」
「御主人様を守るべきなのは、あなたもじゃないのですか? 許婚なのでしょう?
 ぼくはただの『使い魔』にすぎませんし、あなたが子供に勝っても自慢になりますまい」
ワルドはやれやれと苦笑し、肩をすくめる。
「分かったよマツシタくん。僕が大人げなかったようだ」
子供であるという事は利点でもある。あいにく少年法はないが。

いよいよ今夜、アルビオンに渡る。午後からワルドたちは酒場で飲んでいる。
キュルケが誘いに来たが断り、岩作りのベランダで夕月を眺める。二つの月が重なる夜、フネは出港するという。
(内燃機関どころか蒸気機関もない以上、魔法で飛ぶようだが…月の魔力と関係があるのか?)
と、背後から声をかけられる。そこには、ルイズが腕を組んで立っている。ご機嫌斜めか。

「あんた、ワルドに何言っているのよ! 私の使い魔なんだから、死ぬまで私を守ってもらうわよ!」
どうやらワルドから聞いたらしい。ぼくなりの正論だったが、余計な事を。
「どうも彼がつっかかってくるのでな。それに、きっと彼の方が強いし、有能で親切だ。
 年の差はあるが、たいした障害でもあるまい。…気障な男だがね」
「……わかったわよ。私、この任務が終わったらワルドと『結婚』するわ。彼に申し込まれたの」
「ほほう、きっとそれが一番さ。祝福させてもらおう」
ルイズは少し寂しそうに微笑んだ。そろそろ出港だ、酒場に戻るとしよう。

その時、ずしんと地面が揺れ動いた。地震か!?
「……これは!?」
二つの月へと視線を戻した時、何かの巨大な影が月を覆い隠していた!
それは崖を刳り貫いてできたような、『岩のゴーレム』であった。
その頭上に黒いフードを被った誰かが乗っている。気づいたルイズが驚愕する。
「まさか、『土くれのフーケ』!?」

「こおおんばんわあ、お二方。また会えて本ッ当に嬉しいわ」
緑の髪の女盗賊、フーケは歯をむき出して笑う。目が笑っていない。
「お前、捕まっていたんじゃないのか? 縛り首が相当の刑だぞ」
「ところが、世の中はまだ私を必要としてね。ちょっと脱走しちゃったの」
建物の陰には、長髪で白い仮面を被り黒マントを羽織っている、見るからに怪しい人物がいる。
フーケを脱獄させた犯人であり、おそらく貴族派の刺客。そして強力なメイジだろう。
ルイズにタックルをかまし、一緒に部屋の中へ飛び込む。同時にゴーレムの巨大な拳がベランダを粉砕した。
「大きさは同じでも、今回は『岩』だからね! 前とは違うよ!」

下の階へ逃げ込むが、そこは矢玉の飛び交う戦場と化していた。
酒場にたむろしていた奴らは全員傭兵で、飲んでいたワルド達を囲むや襲ってきたのだ。
魔法で応戦するも、奇襲を受け、多勢に無勢。地の利もあり、防戦一方であった。
町中の傭兵が束になってかかってきているらしい。どれだけ金が動いたのやら。

ワルドたちはテーブルを立てて盾にして、傭兵達の弓矢をやり過ごしている。
松下は素早くルイズの手を引っ張ってワルドたちの元へと向かう。
「やっぱり、昨晩の連中はただの物盗りじゃなかったわね…」
彼らはメイジとの戦いに慣れている様子だ。緒戦で魔法の射程を見極め、射程外から弓を放っている。
平民でも数が集まれば、強力なメイジにも対抗できるのだ。

「フーケがいたって事は、やはりアルビオンの貴族派がバックにいるの?」
「向こうは精神力が切れたところを見計らって、一斉に突撃してくるわよ。そしたらどうするのよ!」
「ぼ、僕の『ワルキューレ』で防いでやるさ」
キュルケの質問にギーシュが青ざめて答える。酔いは醒めたか。
「あなたの『ワルキューレ』じゃあ、七体全部出しても一個小隊ぐらいが関の山ね」
「や、やってみなくちゃわからないだろ! この僕が後ろを見せるものか」

(いや、そもそも戦う必要などないのだ。この場は『逃げ延びればいい』。
 この『任務』の目的は、ルイズが皇太子に会うことが出来れば達成されるのだからな)
松下が戦況を分析する。そうするうちに、ワルドが皆に声をかけた。
「良いかな諸君、提案があるのだが」

ワルドの提案は、至ってシンプルな作戦であった。戦力の二分だ。
キュルケ・タバサ・ギーシュが敵を引き付け、ワルド・ルイズ・松下が桟橋へと向かう。
ワルドはグリフォンにルイズと松下を乗せ、急いで飛び出すと、外の階段を上り始めた。『桟橋』は上だ。
飛ぶように階段を上りきると、丘の上に出た。山のように巨大な樹が、四方八方に枝を伸ばしている。
樹の枝に何かぶら下がっているのが目に入る。木の実のように小さく見えるが、『フネ』だ。
船員たちが蟻のように群がっている。彼らも買収されていなければよいが…。

ワルドは、『桟橋』の巨樹の根元へとグリフォンを寄せる。根元はビルの吹き抜けのように空洞だ。
各枝に通じる階段には、鉄でできたプレートが貼ってあり、行き先を知らせる文字が書かれている。
ワルドは目当ての階段を見つけ、再び階段を駆け上がり始めた。空港ならエレベーターでもないのか。
というかグリフォンでフネまで飛べばいいだろ。そんなに高くは飛べないのか?

その頃、酒場に残ったキュルケたちは…。
「すごいな、僕の『錬金』で大量の油を作らせ、『火と風』で傭兵たちを追い払うなんて」
「あの坊ちゃんの作戦よ。さあ、フーケもついでに退治しちゃいましょう!」
キュルケたちは善戦していた。ちょっと酒場が全焼したが、どうということはない。
「やるね小童ども! でも、この『岩のゴーレム』は燃やせないよ!」
フーケが憎憎しげに叫ぶ。その陰にいた仮面の男は、姿を消していた。
「年増はひっこんでなさい! いま『消し炭』にしてあげるわ」
怒り狂うフーケを睨み、タバサが風竜を呼ぶ。すぐに追いつかなくてはならない。

松下は途中の踊り場で、後ろから追い縋る気配に気付いた。片側は断崖絶壁だ。
味方か、と思い振り返ると、黒い影がさあっと飛び上がり、
グリフォンの真ん中に座るルイズの頭上に来て、首根っこを引っつかむ。
男はルイズをさらうと身をひねり、そのまま地面へと落下していく!

曲者に気づき、振り向いたワルドが呪文を唱えて杖を振る。『風の槌』が作られ、男へと襲い掛かる!
男はたまらずルイズを手から離し、階段の手摺りを掴んだ。ルイズは真っ直ぐ地面へと落下する!
間髪いれずにワルドは階段の上から飛び降り、落下中のルイズを抱きとめて、空中に浮かぶ。
敵…『仮面の男』はまだいる。松下の方へと手摺りから跳び、二人は正面から対峙した…。
(フネまでもう少しだが…この刺客をどうにかせねばならないか。
 『ヴィンダールヴ』でこのグリフォンを操ってもいいが、敵に傷つけられると厄介だ)

金属製の杖が剣のように鋭く、松下の喉元を狙ってくる!
体を捻り、何とかやり過ごすと、敵はバックステップで距離を置く。
男は低い声で呪文を唱えた。空気が震え、男の周辺から稲妻が伸びる。
風の上位魔法『雷雲』だ! 松下はそれと悟り、これまた空中へ飛び出すと、
背負っていた『魔女のホウキ』に跨って上昇した。体格差があり、近接するのはまずい。
男はなおも『雷雲』を放つが、松下はホウキに乗って紙一重で避け続ける。
下手に反撃するより、攻撃力のあるワルドに任せた方がよい。どうせグリフォンも惜しかろう。

やがて、ルイズを抱き抱えたワルドが階段の上に降り立った。
ワルドは軽く舌打ちすると、たじろぐ仮面の男に向かって杖を振る。
『風の槌』が仮面の男を吹き飛ばす! 男はたまらず階段から足を踏み外し、墜落していく…。
「無事かマツシタくん! 今のは、下手したら命を奪う程の呪文だったぞ?」
「おかげさまで二人とも助かりました、子爵様」

しかし、ルイズも松下も、なんとなくワルドに違和感を抱き始めていた…。

(つづく)

前のページへ   /   一覧へ戻る   /   次のページへ

新着情報

取得中です。