あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

『ぶん♪ぶん♪ぶん♪』

 本日何度目かの失敗、ゼロのルイズは春の召喚の儀式で周りから笑われながらも再度爆発を引き起こす。
 他の生徒たちが飽きてあくびをし始めたころ、ルイズはとうとう召喚に成功した。

 煙の中から現れたのは、人間ほどもある巨大な蜂だった。

「ルイズが成功したぞ!」
「ありえねえ!」
「ていうか何あの蜂! でかっ!」

 感動に打ち震え名がら、ルイズはすばやく契約の口付けを行う。
 三つの節になっているからだの真ん中、胸の部分にルーンが浮かび上がった。


 蜂は怪我をしていた。
 何かと戦っていたのか足が二本しかなく、羽根が痛んでいるのかその飛行もおぼつかない。
 だがそれでもルイズはこの蜂をかわいがった。
 自分の始めての成功。自分の始めての魔法。
 その柔らかな体毛に顔を摺り寄せ、ルイズはうれしそうに笑った。

 まあ流石にその凶悪な顔には引いていたようだが。


 そんな状態ではあったが、そのルイズにより“ヴェノム”と名づけられた巨大蜂は非常に有能だった。
 使い魔の役目は三つ。

 1.視界と感覚の共有
 2.秘薬の材料になる薬草や鉱物などの収集
 3.主の護衛

 一つ目の視界の共有については行うことはできたが、虫の複眼を脳が処理し切れなかったのか酔った。
 二つ目の秘薬の材料は餌のキノコなどを集めては来るのだが、そもそも水の魔法で爆発を起こすルイズに魔法薬は作れない。
 だがこの使い魔は三つ目の、主の護衛において真価を発揮した。

 唐突だが魔法学園の周りには森がある。
 当然結界や壁に囲まれており安全だが、当然そのその外には自然の脅威が依然残っている。
 だからごくまれにそれを乗り越えてしまうものがいるのだ。
 普段なら教師たちが対応するのだが、この日は運悪く会議中であり、その場所は結界の解除された門扉の近くであり、さらにはそこにいたのがメイジとはいえ一年の新入生ばかりであったのだ。

 一匹のトロール鬼と数匹のオーク鬼が、人間で遊びにふらりと現れた。

 外でヴェノムに餌を与えていたルイズが、それに真っ先に気づいたのだ。
 慌てて杖を抜くも、己の魔法の特性に詠唱が止まる。
 どこに着火してしまうかわからないのだ、敵にならともかく生徒に当たった場合、その生徒は間違いなく鬼に襲われる。
 どうしようか迷っていたルイズより先に動いたのは、主の意思を汲んだヴェノムだった。

 キュウン、と耳の奥を揺らすような音を上げて、ヴェノムが視界から掻き消える。
 直後、先頭にいたオーク鬼が体の真ん中に風穴を開けて吹き飛んだ。
 驚きに固まる生徒たちとオーク鬼たちの前に、ヴェノムは静かに浮かんでいた。

 そこからは一方的といっていい展開だった。
 その空気の壁を打ち抜く高速飛行で、オーク鬼たちはまるで豆腐か何かのように吹き飛ばされ崩れ落ちる。
 その猛攻を唯一トロール鬼だけは片腕を犠牲に防御したが、腹部の針がかすった時点でもう終わりだった。
 人間よりもはるかに巨大ではるかに頑丈ではるかに頑強ではるかに抵抗力が高いはずのトロール鬼が、腕の傷口から紫色のミミズばれに侵食されていく。
 全身をかきむしってしばし苦しんだ後、トロール鬼はばたりと倒れた。
 時間にしてほんの二、三秒、心臓は完璧に停止していた。


 この日からルイズの生活はガラリと変わった。
 使い魔を中心に回る生活、まるでギーシュのように親馬鹿ならぬ使い魔馬鹿になってしまったのだ。
 傷の治療を丹念に行い、羽根を丁寧に拭いてやる日々。
 肉食なので高い肉を与えてみたり。
 少なくともルイズにとっては幸福な毎日だった。


 フーケは盗みに入ることはできなかった。
 予定ではゴーレムで宝物庫の外壁を叩き壊すつもりだったが、塔の下に来てそれをあきらめた。
 その理由は塔の天辺からぶら下がった大きすぎる蜂の巣。
 教師の側からトロール鬼たちを検分して、その毒のあまりの凶悪さを知ってしまったからだ。

「ま、命には代えられないしね」


 大きな蜂の巣の中にはたくさんの幼虫と、それより少し少ないサナギがいた。
 初めは少し気味悪がっていたルイズも、その人懐っこさに自分から抱きつくようになった。
 何でも幼虫は程よくやわらかくて抱き心地がいいらしい。
 何より彼女を喜ばせたのは、その虫たちすべてにルーンが刻まれていたことだった。

 視界の端で、世話をしてくれたメイドに譲った小さめの一匹が、可愛らしく揺れていた。


 アルビオンへのお使いは裏切りに終わった。
 ウェールズを貫いたその杖で、ワルドはルイズに魔法を唱え始める。
 悔しかった。裏切られた想いが全身を駆け巡り、ルイズは頭に血を上らせた。
 そして使い魔は、任務のために連れてきた小さな一体は主に答えた。
 高速で飛来したそれは、すべての遍在を穿ちぬき、本体の杖を持つ右腕を引きちぎる。

 慌ててグリフォンで逃げるワルドを、ルイズは怒りに燃えた瞳でにらみつけていた。


 戦争というのは唐突に始まる。
 戦争というのは大体言いがかりで始まるものだ。
 その戦争ももちろん、壮大な言いがかりから始まった。

 トリステインに侵攻するレコン・キスタ擁する神聖アルビオン共和国。
 実質魔法で支配しているのに何が共和国か、と思わないでもないが、ともかく戦争は始まった。

 拠点を手に入れるためタルブの村を襲った彼らに気づいたのは、王国のものでも学園のものでもなくルイズだった。
 里帰り中のシエスタに譲った一匹の成虫を通じて送られてくる映像。
 焼き尽くされる草原、打ち壊される家々、ルイズの頭の中で何かが音を立てて切れた。

「よろしいですか皆さん、皆さんはこのまま待機して」

 話の途中で立ち上がりマントをまとうルイズ。
 そのままの勢いで、ルイズは戸を蹴破るように退室する。

「ミス・ヴァリエール、どこへ行くのですミス・ヴァリエール!」

 教師のとがめる声も、もう聞こえない。
 サナギたちの抜け殻から作ったかごを引きずり出し、ルイズは門扉の前で大声を上げた。

「ヴェノーーーーム!」

 森が、揺れた。

 黄色と黒の雲が、否、雲と見まがうばかりの量の蜂たちが、声にこたえてうごめき始める。
 森中の鬼を餌に繁殖を続けていた蜂たちが、主の命で動き出す。
 ルイズの載ったかごを拾い上げ、その真っ黒な雲はタルブへ飛んだ。


 タルブはひどい有様だった。
 家は焼かれ、壊され、略奪が行われている。
 村人たちの立てこもっている教会の扉も、つい先ほどから何かを叩きつける音が響いている。
 家族で抱き合って震える子供たちの耳にも響く轟音と怒声。
 それが突如悲鳴に変わった。

 何かから逃げる声と悲鳴、分厚いものを引きちぎる音と硬いものを咀嚼する音。
 何事かと視線が集まるその分厚い扉に、大量の槍状のものが生えた
 それが次々と突き刺さりつっかえ棒を壊す。

 開かれた扉の向こうには、桃色の髪の少女が大量の巨大な蜂を従えて立っていた。

「ルイズ様!」

 傷ついた小さめの蜂を抱きしめていた少女、シエスタが立ち上がる。
 ルイズは無言で近寄ると、その傷ついた蜂を後ろの大きな蜂に渡し、ただ黙ってシエスタの頭を抱きしめた。
 シエスタは少し驚いた後、声を殺して泣いた。

 グズグズとルイズの渡したハンカチで涙を拭くシエスタの頭を少し撫でた後、ルイズは振り返り教会の外へ。

「ル、ルイズ様! ダメです! 相手は「七万よ。知ってるわ」ルイズ様……」
「シエスタ」

 蜂たちに囲まれてその姿が見えなくなる直前、ルイズはシエスタに話しかける。

「クックベリーパイをたくさん焼いて待っていなさい」


 レコン・キスタはその妙な存在を前に恐慌状態に陥っていた。
 七万の軍に対抗しうる国軍はいまだ現れず、ただ侵攻するだけというときに戦場のど真ん中に一人の少女。
 少女はおびえることもなく、ただ胸を張り言い放つ。

「今すぐに軍を引きなさい。でなければ私は容赦しない」

 先頭の騎竜兵は笑いながら少女に杖を向けた。

「そう、残念ね、とても残念」

 それが男が人生の最後に聞いた言葉になった。


 それは恐怖の顕現、それは力の顕現。
 人が、竜が、亜人が、ゴーレムが、あらゆるすべてが貫かれ、砕かれ、滅びてゆく。
 その真っ黒な暴力にさらされたものは一瞬で巻き込まれ姿を消す。
 恐怖に駆られた傭兵たちは散り散りになって逃げ惑う。

 絶対なる“死”のイメージがそこにはあった。


 クロムウェルは焦っていた。
 あまりに予定とは違う状況に慌てふためいている
 寄せ集めも含むとはいえ七万という大軍、負けるはずなど無かったのだ。
 だが現実はどうか。一部の指揮官がやられるだけでその下の兵たちは散り散りになる。
 大軍ゆえの統制の無さが現れていた。
 なお、指輪をくれた美女は既に姿をくらませている。

 突如として響く重低音。
 音の方向に目を向けた瞬間、外壁をぶち抜いて蜂たちがブリッジに入り込む。

「久しぶりね、ワルド」
「あ、ああ、久しぶりだねルイズ」
「そっちが指揮官?」
「そ、そうなる、かな」

 その様はまるで女王のように、ルイズはクロムウェルに向き直る。

「あなたが指揮官ね? 最後通達よ、今すぐ退却しなさい」
「こここ断る! 我ら神聖アルビオン共和国は聖地奪っか「もういいわ」!」

 蜂が、蜂たちが、ルイズを包み込んでいく。

「船ごと餌になりなさい」

 直後、レキシントン号を黒雲が包み込み、アルビオンの誇る軍艦は、文字通りガラクタになった。


 後に虚無の魔法を身につけたルイズは、その歩みを止めることなく己の道を突き進む。
 船ごと蜂の巣になったレキシントン号のブリッジで、ルイズは生まれたばかりの幼虫を愛でながら今日もローヤルゼリーを飲む。

 何でも毎日飲んでいたおかげで胸が大きくなったらしい。

 世界中の女性に夢と蜂蜜を売りながら、『女王蜂のルイズ』は今日も空を飛んでいる。


 神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
 神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
 神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。

 そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……。
 滅ぶことなく増え続け、やがては空を、支配する。

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