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『使い魔くん千年王国』 第十八章 『友』の依頼 

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突然の王女の来訪に、さしものルイズもがばっとひざまずく。
松下も神妙に片膝をつけ、無言でうつむき礼をする。
「こ、このようなところにお忍びで来られるなど、いけません!」
「よいではないですかルイズ。私とは幼馴染の仲でしょう? 今はアンリエッタと呼んで欲しいの」
「しかし……今は……誰かに気づかれたら大事に」
「あの子が噂の使い魔くんね? フーケ捕縛の時も活躍したとか。
 あんな小さなメイジを召喚するなんて、あなたはやっぱり変わっているわ」

「…マツシタ、神妙にしているのは感心だけど、ちょっと部屋を出なさい」
「いいのですよマツシタくん。爵位が差し上げられず、済みませんでした。
 さあルイズ、まずは昔のように、楽しいおしゃべりをしましょうよ」
しばらく二人は楽しそうに昔話をしていた。一緒にふざけたり、遊んだり、笑いあったり、泣いたり。
思い出は尽きない。互いに数少ない遊び友達だったのだ。

松下には、そんな友達はほとんどいなかった。大人も子供も皆が『悪魔くん』と呼んで避けた。
母親は小さいとき、我が子の『異能児』ぶりに恐れをなし、心身を病んで死んだ。
実業家の父親も彼を持て余し、奥軽井沢の広大な別荘地に引きこもらせ、
別荘番夫婦や家庭教師をつけて好きなように振舞わせた。結果はこの通りだ。
別に寂しいとは思わなかった。低レベルな凡人など、近くにいるのもわずらわしい。

だがアンリエッタは、時折寂しげな表情を見せた。彼女も立場上、不自由な生活を送ってきたようだ。
やがて王女は意を決し、語調を硬くしてルイズに向き直る。
「ルイズ、あなたに話したい事があるの。…国家の大事ですから、誰にも話していけません」
「……はい。マツシタはやっぱりちょっと出てなさい」
「いいえ、使い魔と主は一心同体。席を外す必要などありません」
そしてアンリエッタは語り出した…。


「ご存知でしょうが、現在アルビオン国内では、貴族派によるクーデター騒ぎが起きています。
 目的は王制・王党派を打倒し、貴族連合組織による共和制を目指す政治革命。
 彼らの名は『レコン・キスタ』。代表者は『クロムウェル』という人物です」
レコン・キスタにクロムウェルか。なにやら西洋史に出てくる名前じゃないか。
アルビオン(白い国)とは英国の古名だが、レ・コンキスタ(再征服運動)はスペインではなかったか?

「伝え聞くところでは、彼らはアルビオンばかりか、始祖ブリミルの降臨した『聖地』をも奪還し、
 このハルケギニアを統一するつもりだとか。噂の真偽はともあれ、
 始祖が授けし栄えある王権の一つ、アルビオンのテューダー王朝が倒れようとしているのは事実なのです。
 そして彼らの矛先は、まずこの小さなトリステインに向く事でしょう。
 強力な『アルビオン艦隊』の力をもってすれば、トリステインなんて容易く制圧されてしまいます。
 そうなれば全て終わり。ですから、わが国は隣国ゲルマニアと同盟しなければならない…」
王女は可憐な顔に憂愁の色をますます深めた。
「つまり、私はゲルマニア皇帝・アルブレヒト三世陛下に嫁ぐ事になります」

ルイズが驚いて、王女の言葉をさえぎる。
「なんですって姫様! よりによって、あの野蛮な成り上がりなどと同盟を結ぶなんて」
「いいえ、ガリア王国やロマリアとは微妙な仲。援軍を出すかどうかは難しいし、
 アルビオン艦隊に対抗できるかはわかりません。ゲルマニアは新興国ですがそのゆえに強い。
 かの国と強固な同盟を結べば、心強い味方となってくれましょう」

『日米安保条約』のようなものか。政略結婚は王侯貴族の義務だ、是非もない。
そこまで話が進んでいながら、ルイズに内密に頼みたいことというのは…?

「『レコン・キスタ』の内通者は各地にいます。このトリステインの中にも。
 ですから、彼らはこの同盟計画を嗅ぎつけ、阻止しようとするでしょう…。
 そして、政略結婚を行うに当たって致命的な障害の材料があるのです」
そら、来なすったぞ。
「…それは、何でしょうか?」
「手紙です。よりによって、私が書いた…アルビオンの皇太子『ウェールズ殿下』への、恋文なのです」


ウェールズ殿下と言えば、次代のアルビオン王国を担う、文武に優れた凛々しき王子(プリンス)。
金髪の美青年で人柄も素晴らしく、その声望はトリステインにも響いていた。
アンリエッタとは従兄妹にあたるのだとか。まあ、恋仲でも不思議はなかろう。

(しかし、王国の元首が『国王』なのに、王位継承者の太子が『皇太子』なのはなぜだろう。
 『王太子』でいいじゃないか。外交儀礼によるものなのか?
 大体『プリンス・オブ・ウェールズ(ウェールズ大公)』は英国の太子の称号であって、人名ではない)
松下はどうでもいいことを考えた。異世界だから気にしてはいけない。
そもそも王女なら国王並みの『行幸』ではなく『行啓』のはずだ。やんごとなき方の用語は面倒くさい。

「このままでは、殿下は遅かれ早かれ反乱勢力に捕らえられてしまうでしょう。
 そうしたら、あの手紙も明るみに出てしまう。そうなったらゲルマニア皇帝との縁談は破談。
 結果として、トリステインは一国で反乱軍に立ち向かわねばならなくなります」

「では姫様、私に頼みたい事と言うのは…」
「そう、私の手紙を、戦場におられるウェールズ殿下から取り戻してきて欲しいのです。
 臣下であっても、アルビオンの貴族派と内通している可能性が否定できません。
 最早頼れるものは誰もいないのです。たったひとりのお友達である、あなたを除いて!」
『継子(ままこ)の尻拭い』という草の名前が、なんとなく松下の脳裏をよぎった。

「ああ…このような『お願い』をすることは、本当に恥ずかしく、情けないと思っています、ルイズ。
 私はあなたとの友情を利用しようとしているのです。どれほど軽蔑して下さっても構いません」
涙ながらにルイズの退路を断つ王女。意識的なのか無意識にか、王族としての権謀術数を身につけてはいる。

これは―――『受ける』べきだ。小国同士とは言え、伝統ある両国の王位継承者二人に多大な恩が売れる。
うまくすれば救国の英雄だ。任務が任務だけに表立っての褒章は難しいだろうが、
それだけに両国宮廷内の深いところまで踏み込める『コネ』が得られる。
貴族どもの革命ごっこなんぞどうでもいいが、つけいる隙があればどちらも利用は出来る。
(それにルイズが『お友達』だと言うのなら、『狡兎死して走狗煮らる』ということにはなるまい)
松下は、心中密かにほくそ笑んだ。しかし表情には出さない。


「姫様! そんな重要な任務をこの私めに……わかりました!
 どうぞこのルイズにお任せ下さい! 見事手紙を取り戻し、必ずや姫様のお手元へお届けに参ります」
「おお、なんて心強い! 頼んだわ、ルイズ・フランソワーズ」
ルイズは読みどおり『受けた』。ここまで言われて断る者はいまい。
「…はっ! そこにいるのは誰!!」
ルイズの声に、ガタリと廊下側の扉で物音がして、ゆっくりと開く。

「お話は全て伺いました、我らが麗しき姫様…」
「ギーシュ!! あんた盗み聞きを…てゆうかなにその凄いポーズ」
「どうか、このギーシュ・ド・グラモンにもお役目を仰せ付け下さい。
 ミス・ヴァリエールをお守りし、必ずやご依頼を果たします」
「ああ…あなたは、たしかグラモン元帥の息子ですね。でしたら信頼いたします」
「おお姫様! 感謝いたします!」
(やれやれ、面倒な奴に聞かれたものだ…。まあ、囮か盾にはなるだろう)

「アルビオンの貴族達は、王党派を国の隅にある『ニューカッスル城』まで追い詰めていると聞き及んでいます。
 国王陛下とウェールズ殿下の居場所もそこ。事態はもう一刻の猶予もありません」
「はい。ならば、明朝の早い時間に、ここを発つ事に致します」
「ええ、頼みましたよ、私のルイズ。トリステインの、もしかしたらハルケギニアの命運は、
 あなたの小さな双肩にかかっているのですから!」
プレッシャーのかけ方もまずまずだ。場数を踏めばいい女王になるかもしれない。

王女は涙を拭い、鮮やかな青い宝石の嵌った指輪をルイズに渡した。
「これは我が王家に伝わる始祖ブリミルの秘宝、『水のルビー』。
 たいした手助けは出来ませんが、これをお貸しします。殿下に出会ったら、
 これをお見せして証明としてください。それと、この書簡もお見せして下さい」
「これは……」
「お見せしたら、焼き捨ててかまいません。亡命をお勧めする機密文書ですから」
トリステインに匿う気か。王政復古の際はいい手駒になる。
「それと、信頼できる護衛の者を、一人付けます。アルビオンへの道案内は、その者に任せます」


翌朝早く。学院の門にて。
ルイズは用意された馬に跨り、いつでも出発できる態勢にいた。
松下も馬に乗っているが、『占い杖』と『魔女のホウキ』を背負っている。
ギーシュは…朝食のつもりか、果物や野菜をほおばっている。
「最近頭の中がモゾモゾするけど、土いじりをしていると落ち着くんだ…どうだい、この見事な収穫は?」
土のメイジだからって、そんなものなのか。

いきなりモコモコと地面が盛り上がり、茶色の大きな生き物が顔を出した。
ギーシュは大喜びで瞳を輝かせ、その小熊のぬいぐるみのような生き物を抱きしめる。
「ああヴェルダンデ! 僕の可愛いヴェルダンデ!」
すりすりと頬ずりするギーシュ。生き物はつぶらな瞳だが、むしろギーシュの方が可愛らしい。
「僕の可愛い使い魔のジャイアントモール(巨大モグラ)『ヴェルダンデ』だ。ついて来たいのかい?」

と、巨大モグラが鼻をひくつかせた。ギーシュの元から離れ、ルイズへと近寄る。
「な、何? …やあ、ちょっと! きゃっ」
巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体の隅々を嗅ぎまわり始めた。いろいろと危ない!
「やぁっ! ちょっと、どこ触ってるの!? このスケベモグラ!」
「どうやら、きみの持つ『水のルビー』に反応しているようだ。僕のヴェルダンデは、珍しい宝石に目がないのさ」
「もおおマツシタ! ギーシュ! さっさと助けなさいよ! 重いの重いの!! くすぐったい!」

その時、上空からごうっと一陣の風が吹き、ルイズに抱き着いていたモグラが吹き飛ばされた。
ごろごろと転がったモグラは、目をまわしてしまった。
「誰だッ!! 僕のヴェルダンデに何をする!!」
ギーシュは薔薇の杖を構え、怒鳴った。というかお前が怒鳴られるべきだろ。
すると朝もやの中から、鷲の前半身と翼、獅子の後半身を持つ幻獣『グリフォン』に乗った、
長身の男が現れた。頭には羽根帽子を被っている。
「まあまあ、僕は敵じゃない。姫殿下より、きみたちに同行することを命じられた者さ」
「あ、あなたは……!!」
舞い降りた髭の青年は友好的な口調で帽子を取り、ルイズに恭しく一礼をした。
「女王陛下の魔法衛士隊『グリフォン隊』隊長、ワルド子爵だ。
 よろしく、ミス・ヴァリエールご一行」

(つづく)

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