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ゼロの名君 第1話

「抑えきれない……」
 アビスの果てで、『破壊するもの』に取り込まれた少年が呟いた。
だが、『破壊するもの』に対峙する者達の表情には、恐怖や絶望等と言った感情は微塵も感じられない。
 それどころか彼らは闇の翼から溢れる障気に蝕まれて満身創痍の状態だというのに、
諦めずに『破壊するもの』にそれぞれの牙を向けている。
 やがて、その戦いも終わりを迎える時が来た。

 玄武陣を敷く5人の内、リーダーである男が『破壊するもの』の核であろう部分に、
手に持った小剣、クリスナーガで『Z』の文字を刻みつける。
 小剣最強の技、ファイナルレター。この技を止めに『破壊するもの』は自壊を始め、
役目を果たしたと言わんばかりにクリスナーガが根本から折れる。
 その後、『破壊するもの』の全てを滅ぼさんとする破滅の力が全てを飲み込んでいく。
 全てが無に帰した次の瞬間、今度は創造の力が宇宙を再び形作っていった。この間はほんの数瞬でしか、無い。
 リーダーの男はその力の波に飲み込まれ意識が薄れ行く最中、鏡のような物を見たような気が、した。

 彼の者の名は『ミカエル・アウスバッハ・フォン・ロアーヌ』。
 金髪碧眼で容姿端麗、若くしてロアーヌ候を継ぎ、政治手腕も見事な物。
その上知将とも呼ばれ、戦となれば自ら指揮を執り様々な策などを用いて軍を勝利へと導く。
 領民からの信頼も厚く、彼がロアーヌを治めるようになってからは見る見るうちに領内の産業や国威は高まっていった。
 本来の物語ならば『破壊するもの』を倒したこの後、
ロアーヌ城へ帰還したミカエルは自らを王と名乗り上げ、終幕となる所なのだが、
今から語られるこの物語は、舞台がトリステインへと移る事で始まりを迎える。


 ここはトリステイン王国領内、トリステイン魔法学院から少し離れた草原。
 魔法学院に於いて2年生に進級する際の大事な『春の使い魔召喚の儀式』で、
桃色がかったブロンド髪の少女は、その二つ名の為か順番を最後に回されていた。
 彼女の名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』
そして二つ名は『ゼロ』のルイズ。
 既に『サモン・サーヴァント』の儀式を行う、そして爆発。かれこれくり返すこと十数回に上っていた。
 いい加減に疲れが見え隠れしはじめたルイズは、少しだけ祝詞を変えてみることにした。
「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!神聖で、高貴でいて、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ!私の導きに応えなさい!」
 少々変更された祝詞を唱え終わり杖を振った次の瞬間、世界が光に包まれた。
 眩しさにその場にいた全員が目を閉じる。
 彼女は、確かに高貴な『者』を呼び出すことに成功したのであった。

 光が収まり全員が目を開けた時には、ルイズの振った杖の先に一人の人間が倒れていた。
「『ゼロ』のルイズが人間を呼びだしたぞ!」
「流石ルイズだ、俺達とはひと味もふた味も違うぜ」
 他の生徒達にからかわれつつも、ルイズは中年の男性の方へと振り返る。
「ミスタ・コルベール!もう一度『サモン・サーヴァント』の許可を!」
 ルイズはコルベールと呼ばれた男性に抗議するが、
「『サモン・サーヴァント』は神聖な儀式、たとえ使い魔が人間であったとしても例外は認められません。おや、彼が気が付いたようですぞ」
 振り返ると確かに彼が上半身を起こしていた。

 気が付いたミカエルがひとまず目に入れたのは、視界一杯の青空だった。
 とりあえず先程までのことを振り返る。
アビスの最奥で『破壊するもの』と戦っていた。
そして『ファイナルレター』で止めを刺してそれから――
 そこまで考えたら少女の声が聞こえて来たので、とりあえず現状確認しようと上半身を起こす。

 辺りを見回すと数十人の少年少女と中年の男性と話し合っている少女が見える。
 少女はとその周囲にいる少年少女達は黒いマントを羽織り、似たような服装をしている。
 更に別の方向には、ロアーヌ城に似たような大きな石造りの建物がそびえ立っていた。
 少年少女の奥にモンスターらしき姿も見受けられるが敵意は感じられない。
 安全そうなのを確認するとミカエルはゆっくりと立ち上がる。
 立ち上がった瞬間、全身に痛みが走り膝をつく。『破壊するもの』から受けた傷は、そのままであったらしい。
コルベールとルイズが走り寄るが、
それを手で制止すると、傍に落ちていた自分の道具袋から一本の杖を取りだす。
 それを見た一同が一斉にざわめき始めた。
(生命の杖がそんなに珍しいのか?)
 そう思いつつミカエルは生命の杖を天に掲げ、『パワーヒール!』と叫びつつ自分に先端を向ける。
 すると様々な色の光がミカエルを包み込み、傷が見る見る内に治り塞がっていく。
それは鎧と小手の隙間からも傷が見えていたことで、ルイズを始めとする全員も視認できた。
 ミカエルは傷がほぼ治ったことを確認して立ち上がると、ルイズとコルベールの方へ歩み寄っていった。

 生徒達はルイズをからかっていたのが一転して、今度は動揺に変わっていた。
「わ……わたしメイジを召喚しちゃったの!?」
 と、愕然とするルイズとコルベールも同様であった。
 しかしそれもミカエルが近づいていく度、徐々に言葉を失っていった。

 先ず第一に、身に着けている物がハルケギニアでは見たこともないような品である事。
 先程の生命の杖はもちろん、竜麟の鎧、フェザーブーツ、銀の手。
 最も竜麟の鎧とフェザーブーツは遠目に見るのでは解らないが
『アビスの風』等の障気にやられてぼろぼろであり、
修理に出さなければとても実用に耐え得る状態ではなかった。
 しかしその二つに対し、銀の手は流石聖王遺物とも言うべきか、
障気を浴びていたにもかかわらず、劣化はほぼ見受けられなかった。
 第二に、ミカエルが王族にも劣らない美形であった事。その為少女達は皆ミカエルに見とれていた。

「済まないがそこの方、少しよろしいか?」
「あ、ああ。ミス・ヴァリエール以外の諸君は教室に戻って次の授業を受けなさい!」
 ミカエルに呼ばれたコルベールは、流石にメイジ、
しかも貴族かもしれない人間を呼びだしたのは想定外らしく、
ルイズ以外の生徒に先に教室に帰って次の授業を受けるように伝えた。
 すると生徒達が次々と浮かび上がって学院の方へと飛び去っていく。
 中には名残惜しそうにミカエルを見ていた生徒もいたようだが。
「……やはりここは私の知るところではないようだな」
 ミカエルはその光景を見て驚きながら呟いた。
 ルイズを除く生徒達が視界から見えなくなったのを期に、コルベールが話を切りだした。
「さて、私の名前はコルベール。このトリステイン魔法学院で教師をしております。所で、貴方は誰ですかな?」
「私の名前は……ミカエル。ミカエル・アウスバッハです。ここが学院というなら、
とりあえず最高責任者にお目通しを願いたい。詳しい自己紹介はそこにて致しましょう」


 トリステイン魔法学院の学院長室は、本塔の最上階に存在する。

「で、ミスタ・コルレル君、彼がミス・ヴァリエールの呼び出したメイジなのかね?」
 ルイズとミカエル、そしてコルベールと後一人、
長く白い口ひげが特徴的な学院長、オスマン氏を加えての四人がこの場にいた。
「コルベールです、オールド・オスマン。彼、ミスタ・アウスバッハは呼び出された
当初怪我を負っていたのですが、見たこともない魔法で自身の傷を治していったのです」
「失礼ですが、ミスタ・コルベール。貴方は少し勘違いをして居られます。
あれはこの『生命の杖』の力によるものであって、私の力ではありません」
 そう言うとミカエルは手に持っていた生命の杖を、セコイアのテーブルの上に置いた。
「なんと、その杖はマジックアイテムだったのですか!?となるとあなたはメイジはおろか、
貴族ではないと言うことですかな?」
「メイジとは、術者の事でしょうか?なら私は一応メイジと言うことになる筈です。
それと私はこことは違う、元居た地では貴族でした」
 成る程、ミカエルの物腰は確かに貴族のそれと変わらない。

「なんと……今日は驚かされることが多いわい」
「元居た地ではロアーヌと言う小国の侯爵をしております。
名を『ミカエル・アウスバッハ・フォン・ロアーヌ』と申します。以後お見知り置きを」
 と言いミカエルは一礼をする。この一言にオスマンとコルベールは口をポカンと開け唖然としており、
ルイズはと言うとミカエルの方を見て「侯爵様を呼んでしまった……どうしよう」と、呟きながら震えていた。
「お二方ともお気を確かに。そしてミス・ヴァリエール、そう悲観せずに。
……さて、それでは何故私がこの地にいるのか詳しい説明をお聞かせ願いたい」

 それからミカエルは気を取り直させたオスマンとコルベールから、
ここハルケギニアの現状と『サモン・サーヴァント』についての説明を受けた。
「……つまり私はここにいるミス・ヴァリエールの『サモン・サーヴァント』によって、
このトリステインに呼び出されてしまい、彼女は私と使い魔の契約ができなければ進級できないし、
私を元の地へと帰す方法は今現在、全く解らないと言うことですか」
「そう言うことになるかの。いやはや申し訳ないとは思っておるのじゃが、
今まで人が呼び出された例もないしの」
 オスマンは口ひげを手で撫でながら、ルイズの方を見やった。ミカエルもそれにつられる。
 ルイズは先程よりは落ち着いたようだが、ミカエルがこちらを見ていることに気付くと、
目を背けるようにそっぽを向いてしまった。

「ふむ……その使い魔の契約、お受け致しましょう」
 このミカエルの一言に、三人は驚愕した。
「ただし、先程に申しました通り、幾ら私が影に後を任せているとはいえ、1,2年で帰れないと流石に厳しいでしょう。
その間に出来る限り早く契約を解除し、ミス・ヴァリエールが再召喚できる方法を見つける事。
そして使い魔の契約をしている間、私の住居を確保して貰える事、この二つを条件として呑んで頂きたい」
 この外交問題にまで発展しかねない非常事態を穏便に済ませたい魔法学院としても、
何としても使い魔を使役して2年に昇級したいルイズにしても、
この要求はもはや始祖ブリミルの助けとも言うべき所であった。
 一方のミカエルはと言うと、実の所影もなかなか優秀であったりするので、
ゆっくりしていっても問題なかろう、と言うのが本音であるのだが、この三人の知る由もない。

「それはこちらとしても願ったりかなったりですじゃ。
契約解除、再召喚方法及び元の場所へと帰る方法はトリステイン魔法学院の学院長として、責任を持って探しましょうぞ。
それに住処なら現在使われてない部屋をすぐにでも使えるように用意させますじゃ」
「そうと決まればかなり話し込んで時間も経ってしまったことだし、
今日の所は契約とやらを済ませて終わりとして、詳しい話は又明日と言うことにしましょう。
それと、私のことは異国の騎士とでもして於いて下されば結構です」

 立会人としてオスマンとコルベールが見守る中、ルイズの前にミカエルが立つ。
「そ、それじゃ宜しいですか?ミスタ・ロアーヌ」
「人前では使い魔と主の問題もあるし、ミカエルと呼び捨てにしてくれて構わない。
ただし、私もこれからミス・ヴァリエールのことはルイズと呼ばせて貰おう」
「分かりました。では少しかがんで下さい……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 そう言うとルイズの唇が、ミカエルの唇に重ねられる。暫くして唇が離れると、
ルイズは顔を真っ赤にしてオスマンの方へと振り返った。
 契約とはキスをすることで成されるのか。とミカエルが思っていたその時、
右手から激しい熱とも痛みとも思える感覚が身体を襲った。
「ぐっ!?……これはなかなかに……痛いな」
 ミカエルは右手に着けていた銀の手を外すと、自身の世界の字に似た文字が刻まれているのを確認した。

これはトリステイン王国を勝利へと導く『虚無の担い手』とその使い魔である『名君』の物語である

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