あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのぽややん 9

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 翌朝。
 学院の秘宝、破壊の杖がフーケにより強奪されるの報により、教師陣を含めた上層部では、てんやわんやの大騒ぎになっていた。 
 責任追及から、果ては罪のなすりつけ合い。
 ……醜いもんだ。 
 アオは、右手を左手で動かないように固定して、湧き上がる衝動を抑えながら、顔をしかめた。気を抜くと、目の前の汚物を一掃したくなる。
 事の顛末の目撃者として待たされている身としては、ここを離れるわけもにもいかないのが辛かった。
 せめて視線だけでもこの不快なものから逸らせようと、自分と同じように待たされている三人、ルイズ、キュルケ、タバサに目を向ける。
 キュルケはそ知らぬ顔で、自分の髪をいじっている。
 タバサは……いつもの無表情で、正直なにを考えているかわからない。 
 だが。
「ルイズ……」
 下を向き、唇を噛み締めている主人に対し、かける言葉が見つからなかった。

「まったく、いい大人がそろいもそろってみっともない」
 開口一番、呆れたように教師陣を見回しながら、オスマン氏が現れた。
 オスマン氏の登場に、騒ぎたてていた者たちが、バツが悪そうに顔を見合わせる。
「オールド・オスマン!」
「ん?」 
「すみません! わたしたちが至らなかったせいで、盗賊を取り逃がしてしまいました!」
 思いつめた表情で頭を下げるルイズ。だが、オスマン氏はにこやかに笑いながら、ポンポンとその頭を叩いた。
「ミス・ヴァリエール。そう気負うもんではない。聞けばここに進入したのは、かの『土くれ』。
 君ら生徒に怪我がなかったのを喜ぶべきじゃろ」
「でも」
「むしろ責任があるとすれば、この魔法学院が賊に襲われる事など無いと、高をくくって何の対策も講じなかった我らにこそある」
 オスマン氏は、ジロリと教師たちを睨む。
「それでミスタ・コルベール。肝心の『土くれ』、フーケの足取りはどうなっておる?」
「それが、ミス・ヴァリエールたちの目撃証言と現場を徹底的に検証したのですが……残念ながら」
「手がかり無しというわけか……」
「いえ、手がかりならあります」
「おお、ミス・ロングビル」
 全員の視線が、現れたミス・ロングビルに集まる。
「ミス・ロングビル! どこに行っていたんですか! それに手がかりって一体?」
「申し訳ありません。今朝早くにこの惨状を知り、調査していたんです。そして見つけました、フーケの居所を」
「おおなんと!!」
 コルベールが素っ頓狂な声を上げて驚く。
「彼女は誰なの?」
 事情がわからないアオが、ルイズに耳打ちする。
「ミス・ロングビル。オールド・オスマンの秘書よ」
「優秀なんだ」
「みたいね」
 オスマン氏に報告するミス・ロングビルの堂々たる姿を、ルイズは羨望の眼差しで見ていた。  

「さて、ミスロングビルのおかげで、フーケの居所も発覚した。
 そこで私は捜索隊を編成したいと思う。我こそはと思う者は杖を掲げてほしい」
「まず王宮に報告して、応援を要請すべきでは?」
 コルベールの言葉に、オスマン氏は目をむいて怒鳴った。
「なにを言っておる!! 事は緊急を要するのに、王宮からの応援など待っておったら、フーケに逃げられてしまうわ!
 なによりこれは我ら魔法学院の問題じゃ! 我らの手で解決するのが道理よ!」
 その言葉を聞いてミス・ロングビルがうっすら笑ったのを見て、アオは目を細めた。
「さあ、フーケを捕まえて名を上げようという貴族はおらんのか!」
 オスマン氏が皆を鼓舞するよう、声を上げる。
 だが、誰も杖を上げない。皆、尻ごみしていた。
 ルイズは考え込むように俯いていたが、オスマン氏の「貴族」という言葉に反応し、意を決して顔を上げた。
 杖を掲げようとするが、しかし、アオの右手に押さえられた。
 心外そうな顔をするルイズに対して、首を振るアオ。
「お願い」
 真剣な目でアオを見るルイズ。
 この目は、知っている。けっして折れず、諦めることのない目。
 ああ、あの娘と同じ目だ。
 アオは溜息を吐くと、手を引いた。
 この目に、勝てる気がしない。
 肩をすくめるアオに目配せしたあと、ルイズは高々と己の杖を掲げた。

 魔法温存のために用意された馬車に揺られながら、捜索隊は一路、フーケのアジトを目指す。 
 捜索隊の顔ぶれは、ルイズ、アオ、キュルケ、タバサ、それに案内役のミス・ロングビルである。

 ルイズが杖を掲げたあと、キュルケはルイズには負けられないとしぶしぶ、タバサは友達が心配だからと、それに続いた。
 結局、教師たちの中から杖を掲げる者は無く、それどころか、やれ生徒だ、能力に不安だと、口だけ出す始末だ。
 オスマン氏は教師たちを一喝し、
 タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士、
 キュルケは炎の魔法の強力な使い手、
 ルイズは……まあその将来有望なんじゃない? と曖昧に、
 そしてドットとは言えメイジを倒した使い魔のアオ(興奮したコルベールが「ガンダー……」と口走ろうとするの、慌ててオスマン氏が口を塞いだ。)、
 その実力、素性を語り、反対意見を黙らせた。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
 こうして、ルイズたちは送り出されたのだった。

 屋根の無い荷台のような馬車の御者台席にアオとミス・ロングビル、荷台側にルイズたち他三人が座る格好だった。
 手綱は、ミス・ロングビルが握っている。
 最初、アオも一緒に荷台にいたのだが、キュルケがしつこくちょっかいをだすため、ルイズに移動させられたのだ。
 アオを背に、ルイズがキュルケに睨みをきかす。
 つまらなそうにキュルケは、黙々と手綱を握るミス・ロングビルに話しかけた。隣にいるタバサは本を呼んでいるため、話し相手になってくれそうもなかったからだ。
「ミス・ロングビル……、手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」
 その言葉にミス・ロングビルはにっこりと笑った。
「いいのです。わたくしは、貴族の名をなくした者ですから」
 キュルケはきょとんとした。ルイズも意外そうな顔をし、タバサは本からわずかに顔を上げた。
「だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」
「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘らないお方です」
「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」
 ミス・ロングビルは優しい微笑を浮かべた。
 だが目は、それを言うことを頑なに拒んでいる。
「いいじゃないの。教えてくださいな」
 興味津々といった顔のキュルケ。
「よしなさいよ。昔のことを根掘り葉掘り聞くなんて」
 咎めるルイズに、頷くタバサ。
 キュルケは、自分一人が悪者のような雰囲気に憮然とすると、足を組んで空を見上げた。

 途中で馬車を降り、徒歩で森を抜けた先、開けた場所が広がった。
 真ん中に、元は木こり小屋だったのだろう、朽ちた廃屋がある。
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
 ミス・ロングビルが廃屋を指差して言った。
「作戦」
 タバサの言葉に、皆が首を縦に振る。
 いや、一人だけ横に振った者がいた。
 アオだ。
「その必要はないよ」
 アオの言葉に不思議そうな顔をするタバサ。
「僕と」
 がしっと、ミス・ロングビルの腕を掴む。
「え?」
「ロングビルさんとで様子を見てくるから、皆は周囲を見張っていて」
 にっこり微笑みながら、有無を言わさずに引っ張る。
「え、え、えええ!?」
 アオの見た目とは裏腹な力に、ミス・ロングビルは抵抗する事もできずに引きずられていった。
「……行っちゃった」 
 鼻歌を歌いながら、ミス・ロングビルを引きずるアオを、三人は呆然と見送った。

 小屋の中は一部屋しかなく、床など所々に穴が開いていて地面が見えていた。他には崩れた暖炉とテーブル、その横にある大きめの箱―チェストだけだ。
「い、一体何のつもりですか!」
 小屋の中にまで連れてこられて、ようやく開放されたミス・ロングビルが、掴まれていた箇所をさすりながら非難の声をあげる。
「すいません。どうしてもあなたと二人っきりになりたくて、ちょっと強引にやらせてもらいました」
 アオは笑って頭をかきながら、後ろ手にドアを閉じた。
「ねえ、ロングビルさん……いや、フーケさんって言った方がいいかな」
「え? まさかそんな冗談を言うために、わたくしをここに?」
 ミス・ロングビルは愛想のいい笑顔を浮かべながら、訳がわからないといった様に首を振る。
「別にしらを切ってもかまいませんよ。ただ、ここでロングビルさんとして死ぬだけですから」
 冗談にしか思えないのだが、あまりに凄惨な言葉に、ミス・ロングビルの顔が引きつる。
「な、なに言ってるんですか、まったく!
 ……幸いフーケもいないようですし、皆さんを呼びましょう」  
 ドアに向かおうとした彼女の眼前を、何かが通り過ぎた。
 切れた髪の毛が数本、宙に舞う。
 ミス・ロングビルは、壁に突き立ったナイフを見て、凍りついた。
「そこから動かないでほしいな。あと大声もダメ。
 わかるでしょ? この狭い空間なら、あなたが杖を取り出すよりも早く、このナイフが刺さる」
 そう言ってアオは、袖口からナイフを取り出すと、ミス・ロングビルにその切っ先を向ける。
「な、なら証拠は? わたくしがフーケだという確たる証拠があるんですか!」 
「証拠、ね。まあ、無くもないかな」
 アオは、鞘から剣を抜くと、床に突き刺して自立させた。
「ねえデルフ。あの晩の盗賊はこの人かな?」
 ミス・ロングビルが、剣に喋りかけるアオの行動に、眉をひそめる。
「あーどうかな」
「なっ!?」   
 剣から発せられる声に、ようやくその正体に気づく。
「インテリジェンスソード!?」
 デルフは、しばらく考えをめぐらすように唸っていたが。
「わりぃ、相棒。こいつのような気もするんだが、なんせあん時の状態が状態だったからな。断言できね」
「そっか」
 べつだん落胆する様子もなく、アオが頷いた。
 ミスロングビルの声に怒気がこもる。
「まさかそんなあいまいな言葉が証拠だとでも言うつもりですか!」
「いや別に。もしかしたらって、今思いついただけだから。期待はしてなかった」
「ひでぇ!」
 笑顔であっけらかんと言うアオに、デルフが泣きそうな声をあげる。   
「さっきも言ったけどね。あなたが否定しようが、肯定しようが関係ないんだよ。
 まあ、あえて言うなら……嘘つきの勘、かな」
 アオが自嘲気味に笑う。
 理屈じゃないって事かい。
 ミス・ロングビルが諦めたように首を振ると、口調ががらりと変わる。
 もうそこにいるのはミス・ロングビルではなく、盗賊のフーケだった。
「いつから私がフーケだと思ったのさ」
「あなたを初めて見た時からかな。うん」
「はっ! そんな最初から私だってお見通しだったて言うのかい。なら、なんでその時に、私を告発するなり捕まえるなりしなかった」
「それこそ、さっきあなたが言った通り、証拠なんて無かったんだ。
 僕の言葉と、ロングビルさんとしてのあなたの言葉。信用されるのがどっちかなんて、言わなくてもわかるでしょ」
「ま、そりゃそうだわな」
 デルフが相づちを打つ。
「それで、まあ、チャンスを待っていたんですけどね」
「まんまとお膳立てにのっちまったてわけか。私としたことが、やきがまわったね」
「おかげさまでこうやって二人きりになれた事だし、フーケの罠にかかって死んだ事にして、あなたを消そうと思っていたんですけど」
 アオは言って困ったように肩をすくめる。
「私がこうやってまだ生きてる、って事は、どういう心境の変化だい?」
「あの馬車でのあなたの話。あれがどうしても気になって。あれだけが、嘘を感じなかった」
「はん、人の事情を詮索したいだなんて趣味が悪いね坊や……嫌だと言ったら」
「僕は、あなたに二つの選択肢を示しました。
 言わずに死ぬか、言って万に一つでも生を拾うか。
 選ぶのはあなただ」
「またずいぶんと、不自由な選択だな相棒」
「人生なんてそんなもんだよ、デルフ」
「ちげえねえ」 
 笑い合うアオとデルフ。
 たく。なんなんだいこいつらは。
 その選択を迫られている当の本人にとっては、笑う余裕などかけらも無かった。
 目の前の男、あのルイズとかいう貴族の使い魔。
 メイジを倒すほどの平民とは聞き及んでいたし、あの晩の動きから警戒もしていた。なのに道中の雰囲気からすっかり騙された。
 こいつは、私が拒否すればためらい無く殺すだろう。
 凄みも何も感じないのに、それだけがはっきりとわかった。
「……わかったよ。命には変えられないからね」
 自らの過去を語る苦々しさに、フーケの顔がゆがむ。
 だが、こんな所で死ぬわけにはいかなかった。


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