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『使い魔くん千年王国』 第十七章 王女行幸

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マツシタを召喚してから、1ヶ月にもなるだろうか。もう初夏だ。
『土くれのフーケ』を逮捕してから、とりたてて大事件はないのだが…。
国際ニュースでは、アルビオン王国で国王派が貴族派に追い詰められ、王城が陥落寸前だとか。
なんだか時間の流れがすっごく早いような、遅いような感じがする。9割がたこいつのせいよ。
簡単なコモンマジックは使えるし、わけのわからない先住魔法も使える、この変な『使い魔』のせい。
布教活動を自重してからは、なんだか小汚いホウキやガラス壜を弄くっているけど…。

「おお、やっとできた。あとはこれを量産化すればいいな」
「なにそれ? ただのホウキじゃない」
「『魔女のホウキ』だ。これに跨ると平民でも空を飛べる。まだ『飛翔』の使えない御主人様もどうだ?
 ベラドンナ草を煎じて飲んで、ヒキガエルの香油を体に塗らなければならないが」
「草はともかく、誰がそんな気持ち悪い香油を塗るもんですか!」
「猫の皮とヤモリを食べると、もっと早く飛べるぞ」
「やめて……それにこの壜に入った、甘ったるい臭いのする液体は何?」

「これは『魔酒』とも『希望酒』ともいって、ミネラルの多い水に竹の花を集めて作った酒だ。
 飲んだ者は希望に満ちて大きな借金も平気になり、以後これがないと禁断症状が」
「麻薬じゃない!! そんな恐ろしいものを私の部屋で作らないで!!」
「例の『モット伯』や金余りの貴族連中に飲ませて、もっと資金を搾り取ろうと思っている。
 今度は吸い込んだ子供の知能を急激に発達させる『白い粉』を作」
「やめてお願い何でもするから世界征服とかそういうことはしないでこれこのとおりだから」

偉大なる『始祖ブリミル』よ、このルイズが何かあなたを怒らせるようなことをしましたか?

《『悪魔』とは、それを呼び出す力を有するものが、とりもなおさず悪魔ではないのかな…。
 『悪魔くん』の有する、この大きな知恵の力……おお、これこそ悪魔ではないか…。
 この小さな子供『悪魔くん』こそ、真の『悪魔』なのだ……》


今日も授業だ。松下も神妙に、分厚くなったノートを携えて講義に望む。
『使い魔』だから授業料は免除されているが、こいつはどんな系統魔法を使うのだろう?
教室の扉が開き、黒い服装の男性教師が現れる。生徒たちは慌てて席に着いた。

「うほん、では授業を始める。知っての通り、私の二つ名は『疾風』、『疾風』のギトーだ」
この授業の先生であるミスタ・ギトーは、酷薄かつ傲慢なので生徒には不人気であった…。
「さて諸君、さっそくだが『最強の系統』とは何か、分かるかね?」
「『虚無』、じゃないんですか?」
キュルケのその言葉に、ギトーは肩をすくめた。

「私は伝説の話をしているわけではない。四系統のうちでの現実的な答えを聞いているのだよ」
「じゃあ、この私の『火』に決まっていますわ、ミスタ・ギトー」
「ほほう、ではどうしてそう思うね? ミス・ツェルプストー」
「全てを燃やし尽くせるのは、炎と情熱。破壊こそが『火の系統』の本領、そうじゃございませんこと?」
「残念ながらそうではない。最強は我が『風の系統』さ。風こそは不可視の剣にして盾。
 きみの火ぐらいなら『風』で吹き消して見せよう」

ギトーは腰に差した杖を引き抜くと、かちんときているキュルケを指す。
「では試しに、この私に君の得意な『火』の魔法をぶつけてきたまえ」
「あらあら、『微熱』のキュルケをなめると、ただの火傷じゃすみませんわよ」
「なあに構わん、本気で来たまえ。でなければ証明になるまい」

どちらも傲慢という点では人後に落ちない。いきなり教室で決闘が始まり、
前の席の生徒はこそこそと後ろへ退避する。なにせ『トライアングル』同士の対決である。
キュルケは爆乳の狭間から杖を抜き、ケッと舌打ちして『火球』を放った。
だがギトーは、大きな火球を目前にして、手にした杖を横薙ぎに振るう。
すると、ざあっと『疾風』が巻き起こり、火球は掻き消されてしまう…。

(なあるほど、『系統魔法』には相性がある。火は土を焼き尽くすし、少々の水なら蒸発させる。
 だが実体のない『風』には効果がないということか。『トライアングル』同士でも実力差はあろうし)
勝負を観察していた松下は、間近で見た魔法同士の戦いに考察を加えていた。
(とはいえ、『土くれ』のフーケのゴーレムにはあまりタバサの『風』は効かなかったし、
 合体魔法といって異なる系統を組み合わせる強力な魔法もあると聞く。使い手しだいだ。
 あのギトーは、自分の系統を自慢したいだけなのかな。…では、『虚無』とはどんな…)

「ははは、やはり『風』の方が強いようだね、ミス・ツェルプストー。こうした疾風ばかりではなく、
 『風』系統の上位魔法には、他にも『遍在』と言って……」



突然教室の扉が勢いよく開き、緊張した顔で正装したミスタ・コルベールが現れた。
42歳独身にしては寂しいかぎりの禿頭には、ロールした金髪のカツラを被っている。
「ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ!」
「ミスタ・オレンジ。授業中ですぞ?」
「ぼくの名前はコルベールですぅ……。…おっほん。ええ諸君、今日の授業はすべて中止であります!」
一瞬静かになった教室は、すぐ歓声に包まれる。授業料が勿体なくないのか。
大歓声にコルベールは一瞬のけ反る。その拍子に、頭に被っていたカツラがとれて床に落ちた。
「滑りやすい」
タバサの一言で、今度は教室が爆笑に包まれた。

コルベールは顔を頭頂まで真っ赤にし、怒りの表情を露わにしながら怒鳴る。
「でええい黙りなさい! この小童どもが!
 大口を開けて下品に笑うとは、貴族にあるまじき行い!
 貴族はおかしいときは下を向いてこっそり笑うものですぞ!
 まったく、これでは王室に教育の成果が疑われる!」
温厚なコルベールには珍しい剣幕に、教室は途端に水木風に『しーん』とする。

「えーおっほん。皆さん、本日は我がトリステイン魔法学院にとってよき日であります。
 『始祖ブリミルの降臨祭』に並ぶ、めでたい日であります」
平静を取り戻したコルベールが、芝居がかった口調で宣言する。カツラは頭に載せなおした。
「恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステイン王国が誇る可憐な一輪の花、『アンリエッタ姫殿下』が、
 本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、このトリステイン魔法学院に行幸なされます!」
教室内の、特に男子生徒が色めきたつ。ギーシュが姫殿下の名前を聞いて、悩ましくポーズをとる。

「したがって、粗相があってはいけません。
 急なことですが、今から全力を挙げて、歓迎式典の準備を行います。
 そのために本日の授業は全て中止。生徒諸君は正装し、至急正門前に整列すること!
 諸君が立派な貴族に成長したことを、姫殿下にお見せする絶好の機会ですぞ!
 御覚えがよろしくなるように、しっかりと杖を磨いておきなさい! よろしいですかな!」

(…事前のアポイントメントもなしで当日いきなり行幸など、この国の王族は下々のことを思いやれないのか。
 いずれ人民革命が起きれば、可憐な王女様も断頭台の露と消えるかもしれないな)
松下がおっそろしく赤黒い思考をし、ルイズはなんとなく怖気がする。
彼は別にゴリゴリの共産主義者(アカ)ではないが、彼がいた昭和40年代前後の日本のインテリは左翼が多かったのだ。
まあ、それを考慮しても立派に過激なアナキスト(無政府主義者)だが。


「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下の、おな―――――り―――――い!!」

呼び出しの衛士が王女の行幸を告げる。
お付の女官が馬車から降りてくる王女の手を取り、ルイズたちと同年代の可憐な美少女が姿を見せた。
生徒の間から歓声が沸き上がる。胸は『つるぺた』のルイズよりは大分あるようだ。
王女はにっこりと王族的微笑を浮かべると、居並ぶ一同に向けて優雅に手を振った。

(あれが王女か。まだ随分若いが、先王崩御の後は『マザリーニ枢機卿』という人物が、
 トリステインの国政を取り仕切っていると聞く……)
松下が宮廷筋からの情報を整理する。貴族の上に立つ王族に取り入るのも、『千年王国』樹立の一手段だ。
「あれがトリステインの王女ねぇ……。ふんだ、あたしの方が美人じゃないの」
ゲルマニア人のキュルケがつまらなそうに呟くが、ほとんどの生徒・教師は彼女に見入っていた。

「ああ…なんて美しさ。このギーシュ・ド・グラモンが命をかけてお守りするに相応しい」
「あんたなんかより遥かに有能な『近衛隊』がついてるわよ。…あ、あの方は…」
ルイズの視線の先には、羽根帽子を被った、凛々しい青年貴族の姿があった。
近衛兵の一人なのだろう。公爵家令嬢のルイズが知り合いでもおかしくはないが…。

歓迎の式典はつつがなく終了し、王女は貴賓室に宿泊する。
ルイズたちは解散して各々の部屋に戻り、息抜きすることとなった。


その夜遅く。不意にルイズの部屋の『窓』がノックされた。
ノックは規則正しく叩かれた。初めに長く二回、それから短く三回。
松下より先に気配に気づいたルイズは、小走りで窓へ向かうと、ゆっくりと開いた。
『空中』に魔法で立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりと被った少女。
辺りを伺い、誰もいない事を確認した後、ふわりと部屋に入ってくる。

ルイズが驚きの声をあげる前に、少女は口元に指を立てた。
「静かに。敵意はありません」
黒頭巾の少女は『杖』を取り出し、呪文を唱えて軽く振る。
「これは……『魔力感知』?」
「どこに目や耳が光っているか、わかりませんから」
部屋のどこにも監視の目がないことを確認すると、少女はようやく頭巾を取った。

「あ……あなたは、姫殿下!?」
「ああ、本当にお久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
そこには、トリステイン国民の憧れの的、アンリエッタ姫殿下がいた…。

(つづく)

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