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ゼロのしもべ外伝-3

 アンリエッタがまだ王女だったころ、ラグドリアン湖の南に「ガイア教」という怪しい宗教が流行っていた。
 それを信じないものは恐ろしい祟りに見舞われるという。
 その正体は何か?
 イザベラはガイア教の秘密を探るため、トリステインから秘密のメイジを呼んだ。
 その名は……雪風参上!

 赤雪のタバサ 第3話

「それでお姉さま、今晩はどうするのー?」
「宿に泊まる。」
 また野宿をするのだろうか?と思いシルフィードが訊ねたのだが、あっさり宿泊すると宣言されてしまう。
「今のわたしたちは巡礼者。」
 タバサとシルフィードは、この村に『ガイア教の神体を拝みに来た巡礼者』として潜入している。おまけに女性二人だ。宿が足の踏み場もないような混雑ぶりならともかく、なんでもないのに野宿などしていれば怪しまれかねない。
「でも、でもなのね。建物の中で不意打ちをかけられたら危ないのね。」
 こくりとタバサが頷く。その通り、今はまだ「正体がばれていない」ことを前提に行動をしているのだが、これからさき自分たちでも気づかないうちにへまをやらかしてしまう可能性がある。その原因は主にシルフィードであったりするのだが。それにタバサたちの情報がすでに敵に漏れてしまっているという可能性もある。ガリア中央政府に叛逆を企てるような領主だ、その程度の情報を入手するだけの手段を有していてもなんら不思議ではない。
「そう。だから、宿に泊まって、野宿する。」
「きゅ、きゅい!?」
「こっそり宿を抜け出て離れたところでビバークすれば、怪しまれることはないし、敵襲にも備えられる。」
 ええ~、と抗議の声をシルフィードがあげた。
「それじゃあ最初から野宿と言って欲しいのだわ。下手に期待させるなんて、お姉さまのいけず!きゅい!」
「宿に泊まることにはかわりがないから。」
 しれっとした表情でいうタバサ。どう考えてもシルフィードをおちょくって遊んでいる。
「ぷー。お姉さま、ひどいのだわ。風韻竜は傷つきました。」
 頬を膨らませて、ぷいっと顔を背けた。
「せめて今晩のごはんは、お肉料理じゃないと機嫌がなおりません。」
「お肉が食べたいなら、自分で捕まえる。」
「ええー!?自給自足?」
 小さく頷くタバサ。
「正体がばれていたとき、食事に毒が混ぜられる可能性がある。」
 がっくりとシルフィードが肩を落とした。
「きゅい~。呪ってやるのだわ。風韻竜の呪いで、お姉さまを生涯幼児体型にしてやるのだわ。」
 食い物の恨みは恐ろしい。おそらく冗談だろうが、シルフィードの声の調子には確かに怨念が篭っていた。
「一生つるぺた、一生つるぺた、一生つるぺた、きゅーいきゅい。お姉さまは、一生つるぺた、幼児体型になるのよ~!きゅい~」
 ブツブツとのろい?の呪文を唱えながら、タバサの横顔に念を送るシルフィード。一生ツルペタなんて我々にはご褒美である。ナイスだ、シルフィード。
「貧乳貧乳、お姉さまは一生貧乳、柏木千鶴が優越感を持つぐらい貧にゅ…ふがっ!?」
 熱心に念を送るシルフィードの口を、タバサが塞いだ。
「静かに。」
 我慢できなくなったからって実力行使なんてひどいの、とシルフィードがジト目で睨む。タバサはシルフィードに、視線をあっちに向けろと、正面方向を指差した。シルフィードがそちらの方向に目をやった。
「むむー?村の広場に誰かが集まってるの。」
 タバサの指差す方向、村の中心部にある円形の広場に多くの影が蠢いている。なにか集会でもあるのだろうか?広場の西側に台座が置かれており、その上に乗った男がなにやら演説をしている。その演説へ、集まった人々は熱心に耳を傾けていた。
「あれがガイア教の教祖。」
 タバサが演説をしている男を、改めて指差した。緑色の髪をした美青年だ。肌が白いため、うす暮れの中でもはっきりそれとわかる。風に乗って、男の演説がここまで届いている。タバサがシルフィードの口を塞いだのはそのためであるらしかった。
「みなの衆、しずまれ!ガイア様からのおつげを伝える!」
 教祖が両手を開き、落ち着き払って宣告した。ざわめいていた村人たちが一瞬で静まりかえり、固唾を飲んで次の言葉を待つ。
「先日、この村の不信心ものに、ガイアさまが神罰を加えられたのは知っているだろう。」
 静まっていた村人が再びざわめき始める。ジーンの死体と、潰れた家をさきほど片付けたばかりなのだ。
「しずまれ!よいか、ガイア様の力はかくも強大なのだ。あのようなことを魔法ではできぬであろう?そのお力を疑うもの、信じぬものには必ずや神罰が下る。だが、おろかにもまだこの村にはガイア様を信じていない人間がいるとらしいのだ!」
 どよめきが起こる。村人は皆頭を垂れ、ガイアをたたえる祈りの言葉を呟いている。
「よいか。まだガイア様を信じられぬというのなら今夜にもふたたび奇跡がおこるであろう。ガイア様が再び奇跡を見せてくれるだろう」

「聞いた、お姉さま?奇跡ですって」
 ふんがふんがと鼻息荒くシルフィード。タバサはちょこんと頷いた。
「お昼につぶれている家を見たわ。怖い!」
 シルフィードがタバサにぎゅっと抱きついた。光を浴びせただけで家を押しつぶすなど先住魔法にも聞いた事がない。
「あれは奇跡なんかじゃない」
「きゅい?」
「あれには、たぶんトリックがある」
 タバサは抱きついていたシルフィードをよけ、服の乱れを直した。シルフィードはほっておくとそのままにしておくような気がするので、ついでになおしてやる。なおしてやりながら、トリックの説明を行う。
 たとえば、あらかじめ大黒柱をはじめ数本の柱へのこぎりで切れ込みをいれておき、外から大黒柱を縄で引っ張ってやればいい。大黒柱が抜けると、この規模の家なら簡単につぶれる。
「で、でも、でもなの。紐で引っ張ってたら、誰かが見ているはずなの!誰も見ていないなら、奇跡なの。」
「それもトリックがある。」短くタバサが答えた。
 『最初に山のほうから変な音が聞こえてきた』と言っていた。あらかじめ予言があって音がすれば誰でもそちらを見てしまう。おまけにこれはすぐにつぶれた家に行かず、村をぐるぐる回っていた。つまり準備が整うのを待っていたのだ。
 つまり、準備というのがジーンの家の柱に切り込みを入れたり、縄を括ったりという作業である。
 ジーンをあらかじめ棒で殴打し、殺しておく。そして家が潰れやすいように柱を折ったり、切ったりしてやる。この間の作業は、山から現れた音にまぎれて行えばいい。多少の物音は山から現れた音にまぎれて消えてしまう。そして音を発するなにかが光った瞬間、ジーンの家から脱出するのだ。村人は突然光はじめたなにかに気をとられ、家から飛び出した人影に気づくことはないだろう。あとは紐を合図に合わせて引っ張ってやれば、降り注ぐ光に押しつぶされた家屋のできあがりである。
「きゅいー。でも、柱や屋根が地面にめり込んでいたの。それだけだと説明できないのだわ。」
 シルフィードはまだ奇跡ではないかと疑っているらしい。真偽を確かめにきたのに簡単にだまされてどうするというのだ。
 家が倒壊しやすいように、地面を掘って家の下に空洞をあけておけばいい。つぶれたときの勢いで、柱や屋根ぐらいなら沈む。
 説明を受けて、あうー、とシルフィードが肩を落とした。
「やっぱり奇跡なんてないのね。びっくりして損しちゃったわ。きゅいきゅい!」
 あとはじっさいに今夜にでも起こるという奇跡を暴けばおしまい。できればズール卿とガイア教に関係がある証拠も欲しかったけど、
ガイア教がいんちき宗教だということがわかっただけで役目ははたせる。
 さすがに杖なしでの調査はメイジにとってきついものがある。タバサはなるべく必要最小限の任務をこなして終わりにしたいらしかっ
た。
「きゅい!お姉さま、あれを見て。広場の上側!きゅい!」
 シルフィードがこちらから見て、広場の正面向こうを指差す。
「広場の上は空。」
「きゅい!」
 からかわれてシルフィードがぷくりと膨れた。
「そうじゃなく、ほら見て。なんだかあやしい人影があるのだわ!」
 目を凝らしてみると、なにやら黒い影がいくつも、教祖を見守るように家の影に隠れている。しかし目が悪いタバサに見えるのはそこまでで、うすぼんやりとした黒い影としかわからない。というか、あれを人影だと判断できるのはモンゴル人ぐらいじゃなかろうか。
「お姉さま、あれは身分の高そうな騎士よ。杖を持っているもの。もみあげが三角形なのだわ。」
 変な顔、とおかしそうにシルフィードが笑う。しかしタバサの表情は逆に険しくなる。
「変なの、赤い馬に乗ってるわ。怪我でもしてるみたい。」
 そう、その男はまるで血で濡れたように赤い、見事な馬に乗っていた。その言葉を聞き、タバサがさらに目を凝らした。
「どうしたの、お姉さま?」
 タバサは亡き父に聞かされた話を思い出していた。有能な片腕ズール伯爵。その部下に、いるというガリア、いやハルケギニアでも有数の実力をほこるスクウェアメイジ。名をリョフ・ホ・セン。
 タバサはなんとかしてその姿を確認しようとする。しかし目にはぼやけた光景しか映らない。シルフィードの話と、父から聞いたリョフの特徴は一致しているものの、はっきりそうだと断言できない。せめて自分の目で見て確認しなければ、報告としては不十分になる。
「だめ、見えない。」
 近くに寄って確認しようにも、見える場所までいくあいだにリョフは立ち去ってしまうだろう。竜に戻ったシルフィードに乗れば間に合うかもしれないが、村人に気づかれる可能性がある。今はあくまでガイア教の正体をあばくことが先決である。仮にリョフを確認しても、
ズールに「部下が勝手に入信していた」と返されればどうしようもない。だが、リョフを確認することは、ガイア教とズール卿にの関係が
あるという強力な証拠にもなるのだ。
「戻って。それで、追いかけて」
 数瞬思案したタバサが、シルフィードに短く命令を下す。今、自分の身を守るものは何一つない。それを承知で二手に別れ、シルフィードにリョフを追跡させ、タバサは今晩起こるという奇跡を観察しようというのだ。これならばガイア教がインチキだという証拠と、ズール伯爵とのつながり、両方について調べることができる。
 シルフィードはあっという間に服を脱ぎ捨て、生まれたままに戻る。呪文を唱え竜に戻り、大空に舞い上がった。気づかれぬようできるだけ高空まで飛翔し、村へと近づく。そして今まさに馬を走らせた呂布を発見すると、そのまま追跡を開始する。
 今、タバサは杖もなく、使い魔もいない。ただの無力な15歳の少女でしかなかった。

 破壊王、それは橋本真也。そうではなく、深夜――
 とった宿からこっそり抜け出したタバサは、村全体を見渡せる丘に隠れていた。ここからならば村全体を見渡すことができる。
 タバサは疲弊していた。
 魔法が使えるときはレビテーションで木の上にのるなどお茶の子さいさいであったのだが、杖を持たぬ今はそれすら困難。しかし地上で野宿をすれば、野犬などに襲われる可能性もある。ゆえに木の上に昇るしかない。体中に擦り傷や青あざを作り、昇っては落ちを繰り返した。ようやく木に昇ったのは2時間もかかってである。しかし、2時間も経ったので、奇跡がいつ起こってもおかしくない時間になってしまった。ようやく昇った木を、しぶしぶながら降りるはめになったのだ。
 雨でも振るのか、さきほどからしきりにかえるが歌っている。普段なら二つの月のおかげで夜でもそうとう明るいものだが、空を覆う雲のおかげで、あたりは闇に包まれている。なるほど、なにか小細工をするならばこの闇にまぎれぬ手はない。今晩にも奇跡が起こると教祖が言っていたのはこのためであるらしかった。
 それにしてもかえるが多い村だ。耳鳴りがするほどけたたましく鳴き続けている。蝉時雨ならぬ、蛙時雨だ。
 いや、なにかおかしい。かえるが多いにしても、この数は尋常ではい。まるでかえるがどんどんタバサの近くへ集まってきているようではないか。
 あわててタバサが周囲を見回す。
「!!」
 周囲を、十重二十重に何百何千というかえるが包囲していた。どこからこんなにかえるが集まったというのか。
 びょいん、とかえるが何匹か飛び掛ってきた。それを振り払うタバサ。
 すると次は倍のかえるが跳びかかってくる。それをよけるとさらに倍、ときりがない。
 このままではかえるで窒息死してしまう。飛び掛るかえるを振り払って、逃げるタバサ。しかし、かえるはしつこくも追いかけてくる。
 まろび、ころがり、懸命に駆けるタバサ。さすがに人間とかえるでは速度に差がある。執拗な追跡を振り切り、囲みを破ってなんとか脱出をした。いつの間にか踏み潰したのだろう、気づくと体中にかえるの体液がふりかかっている。
 タバサも女の子である。そんなものがかかっていては我慢できない。仕方がない、宿に戻って身体を洗おうと踵を返す。
「……!」
 その目の前に、大きな岩が現れた。
 いや、岩ではない。なぜならばそれは動いているからだ。影はのそり、のそりとタバサへ近づいてくる。
 雲の隙間から、月が一つ、顔を見せた。その光に照らし出されたそれは、風竜の成体ほどもある大きなガマがえるであった。
『フッフフフ』
と、かえるが姿を現すと同時に、低い不気味な声があちこちから発せられた。
『ひっかかったな、ジョゼフの犬め。まんまと飛び出してきたか。』
 その言葉でタバサは気づいた。今晩奇跡が起こる、と教祖がわざと宣言したのだということを。
 先日の奇跡で恐れをなしている村人は、絶対に外へは出てこない。外に出ているのは奇跡など信じていない人間だ。とくに村を見渡すことのできる丘にいれば、ガイア教を探りにきた間諜だと告白しているようなものだ。
『まさか女の子供だとは思わなかったがな。』
 いくつも声がしているが、これはおそらく腹話術か何かで数人いるように見せかけているのだろう。おそらくこのかえるの群れを操っている人間が1人いるだけに違いない。この丘全体にかえるを放ち、人間が昇ってくれば鳴き声で知らせるようにしておいたのだろう。
そうと知らないタバサはまんまと罠に引っかかったのであった。
『小娘、やつのえじきになるがいい』
 巨大ガマがえるが、タバサに飛び掛った。

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