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虚無の使い魔と煉獄の虚神-2

【虚無の使い魔と煉獄の虚神2・英雄と悪鬼】

平賀才人はゼロのルイズの使い魔である。
使い魔であるから、様々な雑役を課せられている。
朝は主人であるルイズを起こして身支度を調えさせ、掃除、洗濯、ルイズのお供と忙しい。
が、授業の終わった午後からルイズの就寝準備をする夜までの合間には比較的自由な時間も多かった。
そして今日、召喚されて初めて虚無の曜日に街まで行って買ってもらった剣。
さっそく素振りというか、稽古のマネゴトでもしようかと思うのは、当然の流れと言えよう。

買ってもらったばかりの(ただしボロい)剣を掴めば、やはり手の甲に刻まれたルーンが光って身体が軽くなる。
ギーシュと決闘した時と同じだった。
羽のような己が身の軽さにまかせて身の丈に届きそうな大剣を振れば、ヒュンヒュンと風を切り裂く鋭い音がする。
二つの月光の下、学園の中央広場で演舞のように剣を振るうサイト。
とても中学と高校の体育で十数時間だけやった剣道が唯一マトモな剣を振った経験でしかない、平凡な日本人高校生の動きだとは自分でも思えない。
カッコ良く大剣を振る自分の姿にちょっとだけ酔って、思わずサイトは呟いた。

「やっぱり、あのピカピカの剣、欲しかったなぁ……」
「冗談ぬかせ相棒。あんなナマクラの何処が良いって言うんでい」

呟くサイトを怒鳴りつける大剣・デルフリンガー。
見かけはボロだが心は錦なチャキチャキのインテリジェンスソードは、口があったら唾を飛ばしそうな威勢でサイトに喰ってかかる。

「いや、だってアレを持ってたらもっとこう、カッコイイじゃねぇか」
「っかぁー! テメェ『使い手』のクセになぁーんにも判っちゃいねーなぁ!!」

剣は戦うための道具だから見た目なんぞに惑わされちゃいけない。
大事なのは外見よりも、真に一本鋼鉄が通った確かさだ。等々、達者な調子で喋る喋る。
あまりの喋りっぷりにサイトが易壁しかけた頃、それとは関係の無い倦怠感を感じてデルフリンガーを取り落とした。

「あ、アレ?」
「なんだよ体力切れかよ相棒。なさけねーなぁ」

デルフは呆れて言うが、思い返せば調子に乗って1時間近く剣を振っていたような気もするサイト。
正確には、地球の単位で1時間15分もデルフリンガーを振り回していたのだから、ある程度仕方が無い事だろう。

「でも俺、最後はあんま動いてないのに……何で?」
「そりゃあ相棒、その手のルーンは本来ありえないような力を無理矢理肉体に出させるモンなワケだしなぁ。
調子に乗って全速力で走ってたら、すぐにブッ倒れちまうのとおんなじこった。
オメーがなんにもしてなくても、ソイツがピカピカ光ってる間はドンドン体力を消耗しちまってるってワケだな」

取り落とされて地面に突き刺さったままでデルフがカタカタと笑う。
もちろん、サイトにとっては笑うどころでは無い。

「や……」
「や? 矢がどうかしたか、相棒?」
「役にたたねぇ」

ぐんにゃりと地面に臥したサイトを見下ろし、デルフのカタカタ笑いは収まらなかった。

「まぁそう言うな。なーに『使い手』の力の源は心の震えだ。喜び怒り悲しみ楽しみ、何でも良い。
相棒の心が震えれば、それだけ力もぐんぐん湧いてくるってモンよ」
「……意味わかんねぇよ」
「それでも不安なら、力の入れ加減を練習しとくんだな。
必要に応じて溜めてる力を出したり止めたり出来りゃあ、そうそうチカラが切れる事もねーだろう」
「なんかお前詳しいのな……練習ねぇ」

サイトは広場の芝生に座り込むと、不承不承といった感じでデルフリンガーを引き抜いた。
再び輝き始める左手のルーン。

「ってゆーかコレ、剣をもったら勝手に光ってるんですがー」
「だから練習するんだって。こう、噴き出して来るモンを押さえ込むカンジでだなぁ……」

そんな風に話している最中、とつぜん地面が揺れた。
地鳴りと共に現われたモノを見て、サイトとデルフリンガーは異口同音に叫び声をあげる。

「「な……なんだ、ありゃあ!?」」

ゼロのルイズはメイジである。
メイジである以上、ゴーレムという存在は良く知っている。
知ってはいるが、晩くなっても帰ってこない自分の使い魔を探しに学園本塔のそばに来ていたルイズは、
ゴーレムという存在を知らない自らの使い魔と同じ発言をついついしてしまった。

「な……なんなのよ、アレ!?」

見上げる姿は土の巨人。
本塔の真下から地面を抉って現われたのは、身の丈30メイルを越えるかという巨大なゴーレム。
立ち上がったその巨人が歩く度に、磐石なはずのトリステイン魔法学園の本塔がグラグラと揺れているような気がする。

―――いや、本当に揺れているのだ。
塔の外壁には『固定化』の呪文がかけられており、魔法による変化も攻撃も受け付けない。
しかしその基部、地下部分はただの岩盤であった。
その弱点を土に変えられた上、ゴーレムの材料としてゴッソリ抜かれればどうなるか?
魔法に対しては万全と思える対策を講じていても、物理的な衝撃に対しては塔そのものとしての強度しかない。
子供にもわかる結論が、歴史あるトリステイン魔法学園の校舎の運命として待ち構えていた。
つまり、倒れてグシャリ。

「ふふん、こうしてポキっと倒せばいくら頑丈な壁でも粉々さ。そうしたらお宝も盗り放題。まぁちょっとスマートじゃないけど、ゴーレムで殴っても砕けそうも無い壁が悪かったと思って諦めてもらうしか無いねぇ」

ゴーレムの肩に乗った女、『土くれ』のフーケが笑う。

ズシンズシンと音を立て、本塔をグラグラと揺らしながら、ゴーレムは出現した場所から丁度塔の反対側へと歩を進めた。
ダメ押しに押すつもりなのだ。塔を。こう、ポキっと。

運の悪い事に、フーケのゴーレムが塔を押せばポキっと行きそうな方向に座り込んでいる少年が一人。
左手の甲をピカピカ光らせて呆然と座り込んでいるマヌケが自分のマヌケな使い魔だと気が付いた瞬間、
ルイズは驚きから立ち直ってサイトの下へと駆け出していた。

「わっ、馬鹿、こっち来んな危ねぇだろ!」
「馬鹿はアンタでしょう! 早く逃げなさいよ!」

二人が怒鳴りあう間にも、フーケのゴーレムは塔の反対側に取り付いて、外壁に拳を叩きつけている。
それでもルイズはサイトを救おうとするのを止めない。

「お前こそ早く逃げろこの桃色馬鹿ムスメ!」
「メイジが使い魔を見捨てるわけが無いでしょう! このば――――」

駆け寄ってサイトの服を掴んで引っ張ろうとするルイズ。逃げるように言うサイト。
その二人の上に影が差す。月光を遮る、巨大な塔の影が。
間に合わない。そう、二人と一本は思った。このまま二人とも下敷きになってペッチャンコだと。
確かに、そうなるはずだった。
次の瞬間壮絶な魔法が行使されなければ。

グレン・アザレイは『神に近き者』である。
その魔力は無限。
ゆえに、ハルケギニアの誰もが想像も出来ない強力な力を軽々と振るう。

夜遅く、学園の門から少し離れた辺りへと、紋章を付けない竜騎士に運ばれてきたタバサの到着を魔法で感知し、少女を迎えに行った帰路。
グレンは一緒にタバサを迎えに行くとついて来たキュルケも含めた三人で、本塔が倒壊させられようとしている場面に行き当たっていた。

彼は瞬時に塔内部に少数詰めていた衛兵達や教師、それに塔の下敷きになろうとしていた二人に銀色の相似弦を結び付ける。
瞬間、サイトの視界を閉ざす霧を生み出し、その魔法消去を予防。
それは魔法によって間接的に自然現象として成立する現象を生み出し、魔法を消し去ろうとする地からとの間に『挟み込む』事で『消去』に抵抗する、
地獄の悪鬼達と戦った魔術師が生み出した技術である。
同時にグレンの周囲の土が盛り上がった。
土は結果を強要する概念魔術によって人の形に整えられたもの。
即座に土人形と人間が結び付けられ、その位置を瞬時に入れ替える。
衛視とルイズ、そしてサイトはグレン達の側に。土人形は塔の中と下の広場に。
相似である物体の位置を入れ替える事でおこされる物体転移魔法。
転移自体は相似魔術師にとって初歩の初歩だが、複数の他人をこれほどの速度で転移させられる者は、そうは居ない。
そんな魔術を操りながら、グレンの両腕は倒壊しかかる本塔の前面と背面の地面に銀弦によって結ばれていた。

巨大な―――掌だけでゴーレムの身長よりも巨大な掌が、地面から生み出される。
それはグレンの両腕と『相似』する、グレンの腕の動きのままに動く巨大構造物。
地面から生えた右腕が塔を掴み、倒れかけたそれを押し戻す。
同時に左手がゴーレムを掴み、その胴を豆腐のように易々と握り潰した。
まさに『神に近き者』の御技。誰もが驚く事すら忘れてそれを見入る。
タバサですら、白い顔を更に白くし、目を見張っていた。

だが、本来それは起こりえない奇跡だ。
この場には地球から召喚された少年、平賀才人が居る。
相似魔法を消去する、地獄の『悪鬼』であるはずのサイトが。
だが、そのサイトすらも転移魔法によって救い出されたのだ。

「これは……?」
「た、助かったのか?」

救えぬと思った人間を救えたことに安堵しながらも不可解さに眉をひそめるグレンの前で、何がおきたのか理解できないがとりあえず自分もルイズも無事だと知って、
サイトは大きく息をつきながら握り締めていたデルフの柄から手を放した。
その瞬間、世界が魔炎に包まれる。

「魔法消去が―――なぜ今になって!?」

魔術師にしか認識出来ない、サイトには見えない熱無き炎が吹き上がる。
相似魔術で造られた巨大な二本の腕がサイトの視線に耐えられず燃え、土くれとなって崩れ落ちる。
当然それに支えられていた本塔も同じ運命だ。
奇妙にゆっくりと倒れて地面と激突し、壮絶な音を立てて破壊される塔。
轟音と共に崩壊してゆく学び舎と、それを包んで幻の炎が踊る恐ろしい光景に皆が息を呑んで見詰める中、グレンだけはサイトの姿に視線を向けていた。

太陽の魔術師き自分がこの世界に来る前に戦って敗北した『沈黙する悪鬼』の存在を思い出す。
本来、あらゆる魔法を無分別に消去してしまう、魔法使いに対して絶対的とも言える力・魔法消去を、使う事も使わない事も選択出来る怪物。
この少年はその亜種。
ルーンが輝いている間だけ悪鬼では無い、魔法消去を行わない者になれる沈黙の悪鬼であるのかと、グレンの頭脳はほぼ確信に近い推測をした。
この世界に自分が呼ばれた事が天命であるとするのなら、
同時に『沈黙の悪鬼』もまた此処に召喚されて存在する意味はなんなのかと言う問いには、答えを出せぬままに。

『土くれ』のフーケはメイジである。
メイジではあるが盗賊であって貴族では無い。貴族だった頃もあるが、そんな過去はもう捨てた。
貴族の誇りなどという役に立たないモノもとうに捨て去ったつもりだ。
だから瓦礫の中からお目当ての『破壊の杖』と他の金目の物を見つけ出して奪い、
倒壊した塔の側に集まってきた学園教師や生徒の目を盗んで逃げ出したフーケは、二度と戻るつもりなど無かった。
使い方の判らない破壊の杖を前に一計を案じないでも無かったが、あの怪物、グレン・アザレイが討伐対に参加でもしたら命は無い。
だから使い方の判らないマジックアイテムを二束三文で叩き売る結果になろうとも、学園には、あの魔導師には、金輪際係わらないと決めて逃げている。

それでもいつもの犯行声明を残していったのは、フーケの盗賊としての誇りゆえだったのだろう。
その誇りが命取りになるとしても。




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