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気さくな王女-7

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「ごめんなさいお姉ちゃん」
「……」
 こいつのいやらしい点はすぐ謝りにこないところだと思う。
 三日あけることでわたしの怒りが収束するだけの時間を置き、さらに退屈で死にそうになるところを狙い撃ちにする。
 三日間も音沙汰が無かったことで「まさか寝台と一緒に潰してしまったか?」と思わせることも考えのうちだろう。
「ごめんなさい。おねがいだからおしゃべりしようよ。ボクのこと無視しないでよ」
「……ふん」
 たしかに退屈。
 それに、自転車を素敵な何かに交換してもらわなければいけないことでもあるし。
「ごめんなさいごめんなさい」
「……」
 しかーし。だからといって、素直に許すなんてことはあまりにも業腹。平民という生き物は、甘い顔を見せればどこまでもつけ上がる。
「ごめんなさい! ボク、もう二度とブレイなことは言いません!」
 昨晩到着したばかりの寝台に寝そべるわたしに対し、絨毯の上で平伏して許しを乞う幽霊。
 見る者が見れば、許さないわたしを大人気ないと罵ることだろう。
 それが甘いというのよ。ただ許すだけなんて馬鹿でもできる。王家の人間なら全てを利用してやるだけの気概がないと。

「……条件次第では許さなくもない」
「ホント!?」
 まだ怒っている風を装い、寝たままの姿勢でわたしは続ける。
「一つ。勘違いを正すこと。確かにわたしは張型を買いに行かせた。でもそれは自分が使うためじゃないし、人形娘に使えないことが分かったら未使用のまま捨てた」
「ハリガタってなぁに?」
「子供がそんな言葉を口にするな。お下品じゃないの」
 この誤解は絶対にといておく必要があった。
 いくら鬼畜道に入門したとはいえ、下の器が王様だなんて思われたまま生きていたくない。

「二つ目。わたしの実験に協力しなさい」
「実験? ……こわいことするの?」
「いいえ。何一つ怖いことなんて無い。道具を使ったりもしない、ごく簡単な実験よ」
 前回、年齢制限により人形娘相手に大失敗をした。一敗地にまみれ、わたしは学習した。
 たしかに年齢制限は存在する。するが、その年齢制限は何に対してかかっているのか。
 張型をぶち込む、荒縄で縛る、ナイフで毛を剃る。どれも効果的だが、そのぶん直接的でもある。
 鬼畜の道は奥が深い。もっと婉曲的なやり方でならあいつを追い込むことができるのではないだろうか。わたしはそう考えた。
 そしてこの幽霊だ。幽霊とはいえこいつもガキ。こいつにできることなら人形娘にもできるでしょうし、こいつにできないことは人形娘にもできないはず。
 何ができて何ができないのか、幽霊を使って確かめておけば、本番で恥をかくことはないという寸法よ。

 人形娘はあっさりと村人・トリモドキ間の諍いを解決させた。
 その事に関して報告するよう伝えておいたから、明日朝にはここへ来る。それまでに己を知っておかなければならない。
「協力してくれる? 嫌になったら途中でやめてもいいから」
「うん……それなら」
 どうせやめる気なんかないけどね。言うだけならただとはよく言ったものだわ。おほほ。
 実験開始よ。むっくりと起き上がり、絨毯に頭をこすり付けていた幽霊の前に立った。
 さぁてどうしてくれようか。張型の挿入ができないということは実証済み。
 だけどもう少し爽やかさがあればどうだろう。例えばここに用意しておいた人参を……あ、ダメだ。この前と同じく息が詰まる。
 よし、ここで発想を転換する。そう、前がダメなら後ろに入れればいい。後ろに……ダメだ。やろうとすると体の自由が奪われる。
「お姉ちゃん、ニンジン持って何してるの?」
「お前は黙ってそこにいなさい」
 じゃあ指程度なら……ダメ。
 ねぶるとかしゃぶるとかは……やっぱりダメ。
「なんかとんでもないことしようとしてない?」
「そんなわけないでしょ。何を言ってるんだか」
 よし、じゃあこすり合わせよう。ダメか。
 舌を這わせて……これもダメ。
 とりあえず唾液をたらし……これまたダメ。
 まさか唇合わせる程度でダメとかいわないでしょうね。……これもダメ!?
 何よそれ。禁止事項禁止事項禁止事項。できることなんてほとんど無いじゃない!
 納得いかない。鬼畜を謳っているのに、ここまで厳密に年齢制限かけるなんておかしいわ。

 仕方ない。方向性を変えてみるか。
 髪の毛に触ってみる。これはオッケー。それじゃ撫でてみましょう。これもよし。ふむふむ。
「お姉ちゃんくすぐったい」
「我慢なさい」
 幽霊を立たせておでこにキス。おおおっ、これならいいのね。それじゃ鼻の頭に……よしっ、これも通った! 首筋には……くそっ。さすがにアウトか。
「うううううっ。くすぐったいよ~」
「もうちょっとで終わるから。最後まで我慢してたらおいしーい飴玉あげるわよ」
「ホント?」
「本当本当」

 肩に手を置く。よしよし。腕に手を回す。セーフ。
 そのまま軽く抱きしめてみて……いけた! 力を入れたり抜いたりしてどこまでが許されるかチェックする。なるほど、ここまでなら許されるのね。
「あったかいね」
「……そうね」
 ほのかな温もりが服越しにつたわってくる。自分の体温じゃないんだけど、それがとても……って違う! 感じ入ってどうする。実験実験。
 少しつまむ。これは大丈夫。ただし部位にもよるでしょうね。鼻や二の腕はともかく、乳首はダメ。
 息を吹きかけるものダメか。眼球をなめる……マニアックだから想定外かと思ったけど、これも弾かれた。
 服を脱がすのはダメだったけど、ボタンを外す程度でもいけないみたいね。とにかく厳しい。
 わずかでも性的な志向があると判断されれば、その時点でダメらしい。どんな倫理観よそれ。
「お姉ちゃーん、まだー?」
「実験はおおむね終了」
「本当? 飴玉ちょうだい」
 甘えた声に応じ、袋の封を破って飴玉を一つ放った。幽霊にやるならもっと安物にしておけばよかったわね。

「おいしい! 甘い!」
「当然でしょ。本来なら王族以外には許されない味よ。職人の魂が一粒一粒に込められ、同じ大きさの宝石に等しい価値ってとこね」
「ボクこんなにおいしいアメ初めて!」
 いい感じで釣られてくれたわね。やっぱり飴と鞭は分かりやすい物に限るわ。
「さ、早くなめ終えなさい。次は実験から練習に移行するわよ」
「え……まだやるの?」
「さっきまでの実験で自分が何をできるか確認した。今はその手段をどう組み合わせるか考える段階に来てる」
「ボク疲れちゃった」
「最後まで付き合えばこの飴玉一袋をお前にやるよ」
「う……」
 お前に「反対する」なんて選択肢は無いんだよ。ガキっていう生き物はなんだかんだで扱いやすい。
「ホントに、ホントに全部くれるんだよね?」
「もちろん。今までわたしが嘘をついたことがあった?」
「うん」
「わたしが! 嘘を! ついたことが! あった!?」
「……無いです」
「よろしい。それじゃさっさと準備しなさい。キスと抱擁の組み合わせについて考えるから」


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