案内役のミス・ロングビルが手綱を引く学院の馬車に揺られ、
ルイズ、キュルケ、タバサ、松下の一行は『土くれのフーケ』のアジトらしき廃屋を目指す。
ルイズ、キュルケ、タバサ、松下の一行は『土くれのフーケ』のアジトらしき廃屋を目指す。
「『近く』と言っても、片道馬車で半日もかかるとはな。悠長なことだ」
「山道……シルフィードに乗っていけばすぐ…だけど、目立つ」
「準備もあったし、着く頃には夕方ね。
貴族の邸宅へ『お仕事』に出るフーケと鉢合わせしなけりゃいいけど」
「その時こそ、フーケをその場で取り押さえるの!」
「ああーはいはい、できればね。『土のトライアングル』よ、相手は」
「山道……シルフィードに乗っていけばすぐ…だけど、目立つ」
「準備もあったし、着く頃には夕方ね。
貴族の邸宅へ『お仕事』に出るフーケと鉢合わせしなけりゃいいけど」
「その時こそ、フーケをその場で取り押さえるの!」
「ああーはいはい、できればね。『土のトライアングル』よ、相手は」
「しかし、貴族以外にもメイジはいるのか?」
「もとは貴族でも、勢力争いで追放されたり没落したりして金とコネがなくなって、
平民に身を落とす奴らもいるの。でもプライド高いから正業に就かないで、
盗賊や雇われメイジになることが多いのよ」
再就職に選り好みはしていられない、ということもないのか。
魔法という特殊技能があるから、活用すればいろいろできそうなものだ。
「もとは貴族でも、勢力争いで追放されたり没落したりして金とコネがなくなって、
平民に身を落とす奴らもいるの。でもプライド高いから正業に就かないで、
盗賊や雇われメイジになることが多いのよ」
再就職に選り好みはしていられない、ということもないのか。
魔法という特殊技能があるから、活用すればいろいろできそうなものだ。
「そういえば、たしかミス・ロングビルもそのクチよね。
…ねねね、何で貴族の名を捨てたの? 恋愛絡み?」
「やめなさいよ。あんたの祖国じゃどうか知らないけど、トリステインじゃそういうのは失礼よ!」
「実力はどれぐらいだ? フーケに対抗できるなら心強い」
苦く微笑むロングビル。
「私は『土のラインレベル』です。残念ながら、皆さんほどの力もありませんよ」
…ねねね、何で貴族の名を捨てたの? 恋愛絡み?」
「やめなさいよ。あんたの祖国じゃどうか知らないけど、トリステインじゃそういうのは失礼よ!」
「実力はどれぐらいだ? フーケに対抗できるなら心強い」
苦く微笑むロングビル。
「私は『土のラインレベル』です。残念ながら、皆さんほどの力もありませんよ」
馬車で半日は退屈だ。話し好きなキュルケが、雑談がてらいろいろな情報を聞き出す。
「でも、『魔界の杖』ってどんな形なの? オールド・オスマンは
『随分昔に預かって、しまいこんだままじゃから、忘れた』なんていってたわ」
「『箱』の形状は調べてあります。その箱にも固定化魔法がかけてあり、この『鍵』でしか開きません」
ミス・ロングビルが『箱』の絵と『鍵』を見せる。これも学院からの借り物だ。
「取り返せないと、王宮から学院の管理責任を問われます。威信も下がります」
「でも、『魔界の杖』ってどんな形なの? オールド・オスマンは
『随分昔に預かって、しまいこんだままじゃから、忘れた』なんていってたわ」
「『箱』の形状は調べてあります。その箱にも固定化魔法がかけてあり、この『鍵』でしか開きません」
ミス・ロングビルが『箱』の絵と『鍵』を見せる。これも学院からの借り物だ。
「取り返せないと、王宮から学院の管理責任を問われます。威信も下がります」
太陽がかなり傾いた頃、薄暗い森の奥の廃屋に着いた。
もとは炭焼き小屋らしい。小さなログハウスのような感じで、周囲にまだ薪が積んである。
物陰に潜んで周囲の様子を伺うが…。
「ちょっと冷え込んで来たわね…さっさと秘宝を奪還して帰りましょう。
置いてあればの話だけど、ここまで来て無駄足踏むのはごめんよ」
キュルケが空中に小さな火を点けて、明かりと熱にする。
「泊りがけの任務かあ。私、野宿なんてしたことないわ」
もとは炭焼き小屋らしい。小さなログハウスのような感じで、周囲にまだ薪が積んである。
物陰に潜んで周囲の様子を伺うが…。
「ちょっと冷え込んで来たわね…さっさと秘宝を奪還して帰りましょう。
置いてあればの話だけど、ここまで来て無駄足踏むのはごめんよ」
キュルケが空中に小さな火を点けて、明かりと熱にする。
「泊りがけの任務かあ。私、野宿なんてしたことないわ」
小屋の中にも周りにも、特に気配はない。『仕事中』ということか。
「じゃあ、私とマツシタくんで偵察。タバサはルイズとミス・ロングビルを守って」
「…了解」
むくれるルイズを置いて、二人は慎重に小屋へ向かう。罠は見つからない。
「いい、じゃあ開けるわよ」
「よし」
ぎぎぃ、と音がして小屋の扉が開いた。
「じゃあ、私とマツシタくんで偵察。タバサはルイズとミス・ロングビルを守って」
「…了解」
むくれるルイズを置いて、二人は慎重に小屋へ向かう。罠は見つからない。
「いい、じゃあ開けるわよ」
「よし」
ぎぎぃ、と音がして小屋の扉が開いた。
「ぷわっ、ホコリっぽい! カビ臭いし、蜘蛛の巣が張ってるじゃない、もう~」
「ところどころに新しい足跡がある。誰かのねぐらではあったようだな」
キュルケとマツシタは、火で照らしてして小屋の中を捜索するが、なかなか見つからない。
「ところどころに新しい足跡がある。誰かのねぐらではあったようだな」
キュルケとマツシタは、火で照らしてして小屋の中を捜索するが、なかなか見つからない。
「……ねえ、ミス・ロングビル。タバサ。…言いにくいんだけど」
物陰にいたルイズが、頬を染めながら口を開く。
「何かしら? ミス・ヴァリエール」
「……『お花を摘み』に行きたいのですけれど」
「………私も。心配」
まあ、『お花を摘みに』ですって? 貴族はこんな時も優雅な振る舞いを忘れないのね。
「ええ、二人ともあまり遠くに行ってはダメですよ。危険ですから」
ロングビルはにっこり笑って許可する。
物陰にいたルイズが、頬を染めながら口を開く。
「何かしら? ミス・ヴァリエール」
「……『お花を摘み』に行きたいのですけれど」
「………私も。心配」
まあ、『お花を摘みに』ですって? 貴族はこんな時も優雅な振る舞いを忘れないのね。
「ええ、二人ともあまり遠くに行ってはダメですよ。危険ですから」
ロングビルはにっこり笑って許可する。
「本当にあるのかしら、秘宝なんて。無駄足踏まされたの?」
「…『杖』がなくても、フーケの『盗品』があれば、密かに失敬するつもりだったが…」
「まあ、計算高いのねマツシタくん! それはいい考えだわ」
この人選は大丈夫だったのだろうか。
と、小屋の隅の棚からガタガタと音がする!
「「!! 敵?!」」
「……いや、この箱は…」
その時、小屋の外から絹を裂くような悲鳴が!!
「…『杖』がなくても、フーケの『盗品』があれば、密かに失敬するつもりだったが…」
「まあ、計算高いのねマツシタくん! それはいい考えだわ」
この人選は大丈夫だったのだろうか。
と、小屋の隅の棚からガタガタと音がする!
「「!! 敵?!」」
「……いや、この箱は…」
その時、小屋の外から絹を裂くような悲鳴が!!
「で、で、出たわね!」
ルイズたちの前に、突如フーケの『土のゴーレム』が現れた!!
タバサが『風』の魔法で攻撃するが、相当な威力にも関わらず効果は薄い。
『風』では『土』に敵わないのだ。多少のダメージはあるが、すぐ修復してしまう!
ルイズたちの前に、突如フーケの『土のゴーレム』が現れた!!
タバサが『風』の魔法で攻撃するが、相当な威力にも関わらず効果は薄い。
『風』では『土』に敵わないのだ。多少のダメージはあるが、すぐ修復してしまう!
「ミ、ミス・ロングビル!! 逃げて!」
ゴーレムを挟んでルイズたちの反対側にいたロングビルは、杖を構えながら後退するが、
ゴーレムは巨大な足を上げて踏み殺そうとする!
「こ、このっ! こっちに来なさい!」
ルイズが開き直って爆発魔法を撃つが、狙いが定まらない!
ゴーレムを挟んでルイズたちの反対側にいたロングビルは、杖を構えながら後退するが、
ゴーレムは巨大な足を上げて踏み殺そうとする!
「こ、このっ! こっちに来なさい!」
ルイズが開き直って爆発魔法を撃つが、狙いが定まらない!
「きゃああああああああああああ!!!」
無情にも、ミス・ロングビルはゴーレムに「ぐしゃり」と踏み潰されてしまう!! 即死だろう。
「いやああああああああああ!! ミス・ロングビル!!!」
騒ぎを聞いたキュルケとマツシタは、中で何かがガタガタしている『箱』を抱え外に出るが、
小屋の前で彼女が死ぬ瞬間を見てしまう。
しかし、彼女は最期に『鍵』を投げて、マツシタに渡したのだ。
もうもうと土煙が立ち昇る…。
無情にも、ミス・ロングビルはゴーレムに「ぐしゃり」と踏み潰されてしまう!! 即死だろう。
「いやああああああああああ!! ミス・ロングビル!!!」
騒ぎを聞いたキュルケとマツシタは、中で何かがガタガタしている『箱』を抱え外に出るが、
小屋の前で彼女が死ぬ瞬間を見てしまう。
しかし、彼女は最期に『鍵』を投げて、マツシタに渡したのだ。
もうもうと土煙が立ち昇る…。
土のゴーレムの肩には、『黒いローブの大柄な男』の影があった…。
「な、なんてこと! うぷっ、気持ち悪い…ルイズ! タバサ! 無事なの!?」
「一時撤退」
タバサは口笛を吹き、森に潜ませていたシルフィードを呼び寄せる。
全員シルフィードに乗り、上空に退避した。
「なんとも儚いことだ。だが、おかげで『魔界の杖』は奪還できたぞ」
「ま、マツシタあ…そ、それ中に何が入ってるの? 杖がガタガタ動くものなの?」
「この『鍵』で開けられるんだったな。よし……(カチリ)」
「一時撤退」
タバサは口笛を吹き、森に潜ませていたシルフィードを呼び寄せる。
全員シルフィードに乗り、上空に退避した。
「なんとも儚いことだ。だが、おかげで『魔界の杖』は奪還できたぞ」
「ま、マツシタあ…そ、それ中に何が入ってるの? 杖がガタガタ動くものなの?」
「この『鍵』で開けられるんだったな。よし……(カチリ)」
箱の中から出て来た『魔界の杖』は、かなり奇妙な形をしていた。
長さは松下の背丈よりやや短いが、古い木製の杖で、前側には奇怪な蛮族の顔が彫り付けられ、
トーテムポールのように縦に顔が連なっている。また上に行くほど太く、下に行くほど細い。
さらに上で二つに枝分かれし、その先には老人の『干し首』に似た異様な頭部が各々付いている。
ご丁寧にも頭部には長い白髪が植えつけられており、目鼻立ちがはっきりしないのが余計不気味だ。
しかも、これが生き物のように自律的に跳ね回るのだ。
長さは松下の背丈よりやや短いが、古い木製の杖で、前側には奇怪な蛮族の顔が彫り付けられ、
トーテムポールのように縦に顔が連なっている。また上に行くほど太く、下に行くほど細い。
さらに上で二つに枝分かれし、その先には老人の『干し首』に似た異様な頭部が各々付いている。
ご丁寧にも頭部には長い白髪が植えつけられており、目鼻立ちがはっきりしないのが余計不気味だ。
しかも、これが生き物のように自律的に跳ね回るのだ。
「うわっ…すごいデザインね。魔界というか南方の蛮族みたい」
「たしかに魔力を感じるけど……悪趣味ね」
「おお…これは『占い杖』じゃないか!」
「たしかに魔力を感じるけど……悪趣味ね」
「おお…これは『占い杖』じゃないか!」
(つづく)