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マジシャン ザ ルイズ 3章 (11)

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マジシャン ザ ルイズ (11)帰還

「ここはもう駄目、ね………」
少女の赤い髪を、熱風が宙に舞い躍らせる。
「皆!この場はただちに放棄、後方にて陣を立て直すわ、準備して!」
赤い髪の少女が降りかかる火の粉を払いながら、周囲の大人たちに指示を飛ばす。
目の前に広がるのは焦土、そうとしか言い表せないこの世の地獄。
果たしてこの光景を見て、どれだけの人間がここが昨日まで人々が笑い合い、生活していた街であると気付くことが出来るのだろうか。
崩れ落ちた教会、火の手をあげる民家、舗装されていた石畳はめくりあがり地面を露出させている。
どこからか親を失った子供の泣き声が聞こえる、夫を失った妻の叫びが聞こえる。
吐き気を催すような、赤い空。
真っ赤なキャンパスの向こう側、更に鮮やかな赤が二つ蠢いている。
空飛ぶ機械仕掛けの―――竜。
この地獄を産み落とした、アルビオンの投入した残忍な破壊者。

「お嬢!撤退準備が整いました。指示を」
「隊長で良いって言ってるでしょ」
少女が振り返ると、そこには部下達の姿。
無傷であるものなどいない。
けれどその目には未だ力が宿っている、彼らこそは諦めることを拒絶した屈強な戦士達。
「………全員、目を見開きなさい!
 そして三秒でこの光景を目に焼き付けなさい」
言いながら彼女自身も踏み躙られた街へと目を向ける。
「一、二、三」
岩のような男達が、表情を崩さぬままに涙を流す。
「…行くわよ、撤収!」
そうして、少女達は街に背を向けて走り始める。

「必ず帰るから、それまで待っていて………」
最後に呟いた彼女の呟きは、風に溶けて消えていった。






「それで、モンモランシー、あんた最近ギーシュとはどうなのよ」
「ぶはぁっ!!」
貴族のご令嬢とは思えない音をたてながら、口に含んでいたお茶を噴出したのはモンモランシーであった。
気だるい昼下がりの午後。
夏季休暇の為に人気が無いトリステイン魔法学院。
食堂から椅子とテーブルを引っ張り出し、優雅に向き合って紅茶を飲んでいたのは、二人の二年生。
桃色の髪に幼い外見のルイズ、そしてもう一人は金髪で、ルイズほどではないにしろ寂しい胸の持ち主、モンモランシーであった。
今は夏季休暇、学院に残っているのは、ほんの数名の生徒と教師、それに少数の平民だけとなっている。
ろくな話し相手もいない暇な二人は、時折こうして一緒にお茶を飲んでは、無為な時間を潰しているのである。

「ちょっと!?汚いわね!どうしたのよ!?」
「それはこっちの台詞よルイズ!なな、なんであんたにそんなこと聞かれなくちゃいけないのよ!?」
叫んでから、ポケットのハンカチを取り出して口元を拭くモンモランシー。
向かいのルイズも同じようにハンカチで制服に飛んだお茶を拭いている。
「別にこれといった理由なんて無いわよ、暇だから聞いてみただけ」
「あ、あそう…でも今日の天気って丁度良いわよねー馬鹿みたいな日差しもないし、気温もこないだまでに比べたら大分マシよね」
「それって話題を変えてるつもりなの、モンモランシー。そりゃもうすぐ夏も終りだしね、いつまでも頑張ってらんないんでしょ。
 で、ギーシュとはどうなのよ」
「いやー、暑いわ、暑いわー、なんだか突然暑くなってきちゃったわねー」
顔を真っ赤にしながら、突然手で顔を扇ぎ始めるモンモランシー。
なんとも微笑ましい光景ではあるものの、見ているルイズの目は半眼である。
「ふーん………ま、別にどうだっていいけどね。
 好きよ嫌いよなんてのは個人の自由、他人がどうこう言う領分じゃないしね」
「そうよ、そうよ、ルイズにはまだそういう話題は早いわよ、おほほほほ」
ゼンマイの切れたアルヴィーのように、ぎこちない笑いを浮かべるモンモランシー。ルイズは優雅にお茶を飲んでいた。
「でも私達はまだ学生なのよ、そういうことって節度が重要よね」
「そ、そうねー」
「貴族として、節度あるお付き合い、した方が後々後悔しないんじゃないかしら」
「そ、そうねー」
ああもう!調子狂う!何で最近こんなに余裕しゃくしゃくなのよこの子は!?と思うのはモンモランシーである。
キュルケにからかわれるのとは違った大人っぽい対応が、なんとも気に入らないのであった。
何か変更できる話題が無いかと、左右を見回したとき、火の塔から走りながら出てくるミスタ・コルベールの姿が目に入った。
「戦争、か………」
コルベールはぬらりとした光沢の金属の塊、と思われる「何か」を両脇に抱えながら、学院の外の草原―――建造現場へ駆けて行った。
多分、それもフネの一部なのだろう。
「キュルケとタバサ、大丈夫かしらね、心配だわ」
「…大丈夫なんじゃない?ガリア国内では戦闘行為は行われていないらしいし、ツェルプストーは戦争くらいで死ぬような女じゃないわよ」
眉間に皺を寄せながら臆病な表情を覗かせるモンモランシー、対してルイズは外面は平静を保ったままに答えた。

「でも、二人とも、学院には帰ってこれないかもしれないわね…」
「………」
このモンモランシーの問いかけには、ルイズも答えることが出来なかった。
二人が鉛のように重い空気を吐き出す。
単に話題を変えようとしただけなのに、すっかりお茶も空気も冷えてしまった。
「お茶のお代わりを貰ってくるわね」
湿った空気を変えようと、モンモランシーが努めて明るい調子で言いながら席を立った。
ティーポットを片手に、食堂へと歩いて行くモンモランシー。
ルイズはモンモランシーが歩き出したことを確認してから、先ほどコルベールが駆けて行った門の外を見やった。

戦争に備える名目で建造されているらしいフネ、その設計から監督までやっているらしい自分の使い魔。
フネが完成したら彼はどうするのだろう?
やはり戦争へ行くのだろうか、そのとき自分はどうするのが正しいのだろうか。
ここ数日ずっと考えていたことであった。
アルビオンとガリアがトリステイン、ゲルマニア両国に宣戦布告して既に一週間。
南にガリアという脅威を抱えたトリステインはゲルマニアとの効果的な連携が取れないでいた。
そうしているうちに、アルビオン=ゲルマニア間の戦争は激化の一途を辿った。
そして昨日、遂に帝都ヴィンドボナが陥落したとの報が魔法学院にも届けられた。
皇帝アルブレヒト三世は行方不明、戦上手と謳われた帝国騎士団は壊滅。
一方で各地方の領主達は独自の判断で軍を率いて、抵抗を続けているらしいが、鎮圧も時間の問題であろう。
目まぐるしく動いていく戦況、このトリステインが戦場になる日は遠くない。
こうしてゆっくりとお茶を飲んでいられるのも、あと少しかもしれない。
そう思うと、たかがお茶一杯といえども大切に感じるのであった。


「ルイズ!ねえルイズってば!」
突然声をかけられた為に、驚きの表情で顔を上げるルイズ。
肩を掴んで話しかけて来ていたのは、先ほど食堂へ向かったはずのモンモランシーであった。
「ねえルイズ、ちょっとあれ、あれを見てよ!」
そう言ったモンモランシーは、火の塔と土の塔の間、つまり何も無い空を指差した。
「…ねぇモンモランシー、暑い暑いって言ってたけど、本当に頭が沸騰しちゃったの?」
「いいからよく見てみなさい、よっ!」
モンモランシーがルイズの背後に回り、その首をぐきりを動かした。
「痛い痛い!痛いってばモンモ………あれ?」
モンモランシーが指差し、今はルイズの首が向けられているその方角、そこには小さな点があった。
小さい、というわけではない、遠いのだ。
それが徐々に魔法学院へと近づいてくる。
ある程度の大きさになったところで、ルイズにもそれが何であるのか判別することができた。
「竜!?」
そう、それは竜であった。
先ほどの話題もあり、竜と見てルイズの脳裏に連想されたのは無敵と言われるアルビオンの竜騎兵、そして………
「タバサ!」

そう、トリステイン魔法学院へと向かっていた飛竜はシルフィード、そしてその背後にいたのはタバサであった。
中庭にふわりと降り立つシルフィード。
その背後には、何人もの人が乗せられていた。
主人であるタバサ、目深にローブを下ろしているメイジらしき人物、年老いた執事、それに気を失っているらしい夫人の姿。
「ねえ!一体どうしたのタバサ!こんな時期に、…それにあなた、その格好は一体」
ルイズが驚くのは無理は無い。
タバサは襟首が破れた薄布一枚という格好であったからだ。

辛くもフーケの手引きにより、グラン・トロワから見事脱出を果たしたタバサ達。
ガリアの追跡をかわしきった彼女達が、まず最初に向かった先は、ガリアとトリステインの境に位置する湖、ラグドリアン湖であった。
目的地はラグドリアン湖のそば、旧オルレアン公爵屋敷、タバサの帰るべき家だった。
屋敷に到着したタバサは、執事ペルスランと眠らせた母をシルフィードの背に乗せた。
そうして保護すべき二人を連れて、再び空へと飛び上がったシルフィードはトリステイン魔法学院へと進路を向けたのである。

「ねえ、タバサってば、タバ…、ちょっと!?」
ルイズが驚愕に大きく口を開く。
シルフィードの背にあったタバサがバランスを崩すようにして、重力に引かれ地面へと落下した。
「タバサ!」「タバサ!」「シャルロットさま!」「ちょっ、あんた!」「お姉さま」
各々がそれぞれの名でタバサを呼び、倒れ伏したタバサに近づく。
薄着のままシルフィードの背に掴まり、上空の冷気に晒されたタバサの体は冷え切っていた。
「!?不味いわよ、体は冷え切ってるのに汗がこんなに!」
水魔法を専門とするモンモランシーが焦った様子でタバサの体を触診する。
朦朧とした意識のまま、タバサの手が持ち上がり、ルイズへと伸ばした。
差し出された手をしっかりと両手で握るルイズ、冷え切った手に、自らの熱を分け与えるように。
タバサの口が小さく動き、なにごとかを伝えようとする。
しかし、それが声になることは無く、タバサはルイズに手を握られたまま意識を手放した。
「ルイズ!そっち持って!
 それにそこの人も!急いで!この子を部屋に連れて行くわよ!」



                         「ところでさっき、誰かお姉さまって言わなかった?」
                                     ―――ルイズ


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