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気さくな王女-5

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 作戦は完璧、面白みの無さを感じるくらい完璧よ。
 まずは何食わぬ顔でガーゴイルを呼び出す。
 侍女達にも手伝わせて泥の詰まった腸詰や腐った卵やその他色々な物を投げつける。結果、人形娘はドロドロに汚れる。
 汚い格好で王女の前に出る無礼を咎めて服を脱がす。素晴らしい自作自演。
 適当な理由をつけて下着も剥ぎ取る。恥辱に頬を染めるガーゴイルが目に浮かぶよう。
 王女の前で素裸でいる無礼を咎めて荒縄で縛る。さらに、縛るだけじゃ甘いから罰を与えると宣言。
 ここから鬼畜者の舞台が幕を開ける。泣こうがわめこうがけして手を緩めず、左手のナイフが下の毛を刈り取って、右手の張型が縦横無尽に大活躍する。
 観客が召使だけってのはつまらないけど仕方ない。鬼畜はこっそりと影で生きるのが定法だものね。

「ちょっと、ガーゴイルはまだ来ないの?」
「シャルロットさまは、まだお見えになっておりません」
「ただの人形よ。ガーゴイルで十分」
 ま、これから本当の意味で人形になるわけだけど。肉人形にね。
「歓迎の準備はできてるんでしょうね」
「は、はい……」
 なんで口ごもるのよ。王女に対する敬意というものが足りていないわ。ああ腹が立つ。ぜーんぶ人形娘で晴らしてやるから覚悟してなさいよ。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
 ……来ないわね。
「……」
「……」
「……ふん」
「あ、あの、ゲームのお相手でも」
「けっこう」
「……」
 くそ、退屈だから呼びつけたのに、わたしを待たせるってどういうことよ。
 風竜なんて生意気な使い魔がいるんだからピュンッと飛んでこれるはずなのに。
 あーあ。うーん。コツコツコツ……。ふあああ……。くるくるくるーっと。もにもに。
 むむむむ。もぐもぐ。ごくん。ぷふっ。げふっ。こほん。こんこん。ふんふんふん。
 ……来ないな。どこかで事故にあったんじゃないでしょうね。誰かに襲われたとか。
 いや、あいつに限ってそれは無いと思うけど……風竜もいるし大丈夫か。
 あーお茶がぬるい。退屈退屈。今になって眠くなってきたけど、居眠りするわけにもねぇ。
 幽霊を連れてくれば暇つぶしにはなったかな。でも侍女どもにおかしな目で見られるか。
 わたしがいない間に持ち逃げされたら困るから自転車は持ってきたけど……これじゃ暇つぶしにはならないわね。
 あーあ、退屈退屈退屈ひまひまひまひまひまー。鬼畜道見極めの書でも持ってくるか。予習復習のためにもね。
 ただ、さすがに人前であれ読むのは憚られる。せめてメイドの午後くらいならなんとか。

 おっ。入り口のカーテン動いた。とうとう来たか……ってお前かよ。警備の騎士とかいらないっての。
「何よ」
「七号さま、参られました」
 よおしきたっ! 待っていたぞ人形娘!
「それじゃ各人得物を持って所定の位置につきなさい! 二発以上外したら斬首だからね!」
 バラバラと持ち場に散らばっていく召使たち。わたしは真正面で待ち構える。
 息を潜める間も与えられず、人形娘が姿を見せる……や、いなや!
 思いっきり振りかぶってええええええええええ……投げた! ジャストミート! 口火を切ったわたしに侍女達も続く!
 泥の詰まった腸詰が服を汚した! 腐った卵がマントを染める! あつあつの餡を背中に注いだ! 顔面にパイが炸裂、チンケな眼鏡が白く濁る!

「おほ! おほ! おっほっほっほ!」
 これはおかしい面白い! 黙ってグッチャグチャにされてあーみっともない! ってなんでわたし一人で笑ってるのよ!
「ほらお前達も笑いなさい! まったくみっともないたら! あの格好!」
 わたしに促され、侍女達は景気の悪い声でボソボソと笑う。何よそれは。
「もっと元気よく!」
 やけくそ気味に笑い始めた。納得のいく出来ではないけど、こいつらに関わっている暇はない。
 人形娘は汚れたまま、わたしの傍らに立てかけられた自転車を見つめていた。
 ああそう。わたしなんて眼中に無いっていうのね。ふうん。へえ。幽霊世界の物の方が、一国の王女よりも素晴らしいと。
 くっくっくっく……いいわよ。だったらせいぜい楽しませてあげようじゃない。さあ始まるわよ。あんたを壊すためのパーティーがね!

「そんな汚い衣装のまま、王女の話を聞こうというの? 脱ぎ……」
 ……ん?
「脱ぎ……」
 あれ……。
「脱ぎ……」
 な、何これ。
「脱ぎ、脱ぎ、脱ぎぃぃ……」
 息がのどに詰まる。力がわたしを押さえ込んでいる。
 侍女達が不審げにわたしを見ている。表情は変わらなかったが、人形娘でさえ怪しんでいるようだ。

「脱ぎ……ううう」
 なのに、それなのに、わたしは「脱ぎなさい」の一言を口に出せない。
 なぜ? どうして? わたしは鬼畜者なのに。鬼畜者だから? 鬼畜者だから声が出せない?
「うぐ……ぐ……王女の前でそんな格好……」
 ダメだ……逆らえない……このわたしが……。
「お前達……さっさと……そのガーゴイル……浴場へ連れて行け……」
 膝をついた。肩で息をしている自分に気がつく。なんでこんなに疲れているの。
 空気が弛緩した。侍女達が安堵したとか、そんなことじゃない。わたしの中の何かが和らいだ。
 分からない……分からないんだけど、とても大きな何かがわたしにささやいた。「十八歳未満は脱がしちゃいけない」と。



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