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気さくな王女-2

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 ああ疲れた。本当にあの役立たずどもときたら、監視してなきゃすーぐ怠けるんだから。
 結局のところわたしの優しさにつけこんでるんだよ。使われる身で調子こきやがって。
 腸詰に泥を入れるなんてガキでもできる仕事でしょうに。それをいちいち手ェ止めて。悪いことでもしてるみたいに震えたり、こっちの顔をうかっがたり。くそ。
 悪いことしてるわけないでしょう。わたしが法なんだから、わたしがいいって言えば全部いいの。まったく、怒鳴ったり鞭振るったりする方の身になってほしいわ。

 でも疲れた甲斐あって泥入りの腸詰が十ダースは完成した。わたしの指揮能力恐るべしね。戦場にでも出れば大活躍間違い無しだわ。
 これに腐りかけの卵を百や二百は投入して人形娘にぶっつけてやる。当然ベソかくでしょうけど手は緩めない。
 手加減して投げるような侍女がいたら即その場で折檻する。敵を痛めつけつつ内通者もいぶり出すという素晴らしい作戦。やっぱりわたしは名将だ。

 期待に胸を膨らませ、わたしはプチ・トロワを闊歩する。
 全体が薄桃色の色調、持ち主の品格を感じさせる美しい調度品の数々、ぜーんぶわたしの趣味にかなってる。
 ここでは誰もわたしに逆らえない。誰もわたしにたてつけない。
 風呂あがりで艶々の卵肌が照り輝く。王家の青い血を証明する美しい髪はサーラサラ。爪を整え、マッサージでこりをほぐす。
 匂い立つ芳醇な薔薇の香り。火照った体を冷ます心地よい夜の風。あらゆる物の中心に位置する美しいわたし。か、ん、ぺ、き。
 王族かくあるべし。カビ臭いトリステインや野蛮国のゲルマニアに教えてあげたいわ。アルビオンにわたしがいれば内輪もめもなかったでしょうにねぇ。

 侍女を下がらせ寝台へ向かう。なんだかんだで色々あって疲れた。それに明日以降は楽しみが多いことだしね。たっぷり休んでおかないと。
 わたしに似つかわしい豪奢な天蓋のかかった寝台には女の子が寝ていた。
 ガラスの水差しからコップに一杯水を注ぐ。一息で飲み干す。再び寝台に目をやる。子供が寝ていた。寝息をたてている。服装は平民のそれ。スカートの布地からして安っぽい。
 コルクを捻り、さっきまで水の入っていたコップにワイン注いだ。これも一息で飲み干す。三度寝台に目を向ける。子供が寝ていた。編み上げた髪を二つに分け、赤いリボンで結んで垂らしている。年は十歳に足らないくらい。
 ため息をついた。肺を絞って息を吐き出し、同じだけ息を吸って四度寝台に視線を送った。どう見ても平民の子供が寝ている。脇で一緒に寝ているのは……鳥のぬいぐるみ? ぶっさいくなの。
 「どういうこと?」と思う間もなくわたしの体が動いた。編み上げた髪をつかんで寝台から引きずり出す。
「う、あ……い、痛い! 痛いよー!」
「痛くしてやってんのよ! ありがたく思いなさい!」
 その勢いで床に放り投げる。子供は痛い痛いと泣いている。ふん、侵入者がいい気味よ。
 しっかしやばいんじゃないのこの宮殿。
 平民の子供がここまで入り込んでくるってどういう警備してんのよ。
「ちょっと警護! 何やってんの!?」
 怒鳴り終えるか終えないかというタイミング、絵に描いたような押っ取り刀で数人の侍女が駆けつけた。
 わたしとしては警備の兵士に文句つけたかったんだけど、王女の部屋に男が入るってのもあれよね。とりあえず引き渡すだけならこいつらでいいか。
「わたしの眠りを邪魔した不敬なガキを連れて行きなさい。処置は後でゆっくりと考えるから」
 侍女達の顔に困惑の二文字が浮かび上がった。
「ちょっと何してるの」
 動こうとしない。
「早く! グズグズするな! さっさとこのガキを……」
 指差した先を見た。誰もいない。
「このガキを……」
 睥睨した。この部屋、狭くはないけど広くもない。こんな所で見失うはずがないのに。天蓋の上、寝台の下……どこにもいない。

 幻覚? いやそんなはず……そういえば、昼間使い魔をいじっている時にも子供の声が……幽霊?
 でも子供を殺したことはないし、品行方正なわたしが幽霊に恨まれるはずもない。
 ……おかしな声を聞くほど疲れてる? そうよね。毎日毎日無能な召使にお仕置きするだけで一日が終わるもの。これで疲れないわけがないわ。
 ああ、かわいそうなイザベラ。下にいる者が役立たずだと上にいるわたしが苦労するのね。王族ってつらい。
 そんなわたしの心労の根源である侍女達は妙な目でわたしを見ていた。何よ、その目。
「何見てんのよ」
 侍女達に震えがはしる。
「用事はすんだんだからさっさと消えなさい! ……どうしても罰して欲しいっていうなら別だけどね」
 あわてて踵を返す無能者たち。

「まったく、揃いも揃って無礼者どもばっかり。王女に対する礼儀も心得ぬ無能どもが」
「そんなこと言っちゃかわいそうだよー」
 横目でチラと見た。寝台で寝ていた子供が机の上に腰掛けていた。
「ただでさえお姉ちゃんは誤解されやすいのに」
 ……幻覚幻覚。あんなのにいちいち返事してたら本物の変人扱いされる。
「いきなり髪つかんで放り投げるもんなあ。ボクの頭、まだジンジンするよ」
「……あーあ。馬鹿ども叱りつけたら眠くなっちゃった。さっさと寝ましょ」
「ねえねえ。聞こえてる? お姉ちゃん」
 無視無視。
「いきなりあんなことするなんておじさんよりひどいよ。お姉ちゃんもけっこう鬼畜モンだねー」
 聞こえませーん。
「ねえねえ聞いてよー」
 ようし、耳を押さえて、あーあーあーあー。
「聞かないなら勝手に持ってっちゃうからねー」
 あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー。
「よいしょ、よいしょ」
 あーあーあーあーあー……って……ええええええっ!?
「わたしの使い魔に触るんじゃない! なーに泥棒しようとしてんだよガキのくせして!」
「ドロボーはひどいよ。その自転車、もともとおじさんのものだもん」
 え?
「おじさんが取りにいってこいって言うからボクが来たの」
 げえっ……持ち主!?

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