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るいずととら第三章-9


「け、カスどもが……」

とらの雷の一撃によって砕かれ、ボタボタと婢妖の残骸が地面に落ちていく。婢妖の死体は黒い煙になって消滅していった。
残ったの婢妖たちは、ざぁっと音を立てて飛び去っていく。

(マユコ……行ったか)

とらが振り返ったそこには、既に真由子の姿はなかった。かわりに、腰を抜かしたルイズがへたり込んでいる。

「とら……その、わわわたし、腰が抜けたみたいで……」

とらが低く笑いを漏らすと、ルイズはみるみる赤くなった。

「わわ、笑うことないでしょ! 大体、お、遅いのよ! ばばばかとら!」
「くっくっく……すまねぇな。おら、立てるかよ」

とらはひょいとルイズを引っ張ると、自分の背中にひょいと放り投げる。きゃ!とルイズが悲鳴を上げる。

「そうあせるな……くっくっ……なーに、るいず。おめえはわしがちゃんと守ってやっから安心しな」
「うん……」

そう答えながらも、ルイズは少し悲しくなって、ぎゅっととらの背中にしがみついた。
見事なまでに破壊された寺院に、風が唸りを上げて吹き抜ける。


ごぉおぉおおおおぉう……


強い風の中で、ルイズはしがみつく手にぎゅっと力をこめる。不安な風だった。
とらは――自分を守ってくれると言っている。そのことは、ただ単純にルイズには嬉しかった。だが――

(きっと……とらは誰かと私を重ねてるんだわ……)

いつからか、ルイズのなかでそんな考えが少しずつ少しずつ膨らんでいたのだった。
ルイズはいつか見た夢を思い出す。
空を駆ける白面の者と燃え落ちる街。そして、子供の亡骸を抱いて涙を流す右肩のないシャガクシャという名の男……

(とら、あなたは……あの男の子を私に重ねてるの……? それとも――)

――それとも、あの「マユコ」に――と考えて、ルイズはぶんぶんと頭を振った。
もしそうだとしたら……いや、そのことを自分が認めてしまえば、きっとひどく惨めな気持ちに叩き込まれるだろう。


ルイズは顔を上げた。むき出しの寺院の奥には、破壊を免れた祭壇が残っている。……そして、その上につきたてられた一本の槍が、風に赤い布をはためかせていた。

(ただの……古い槍にしかみえないけど)

これが本当に、あの白面の者を打ち破るようなすごい武器なのだろうか……?
疑問に首を傾げながら、ルイズはとらに尋ねてみた。

「ねえ、とら。その槍は一体なんなの?『獣の槍』って、お役目は言ってたけど……」

ふん、ととらは忌々しそうに鼻を鳴らした。

「獣の槍、白面をぶっ殺すためだけに作られた、器物のバケモノよ……おっと、さわんな。るいず」

びく、とルイズは伸ばした手を引っ込める。とらはぷつ、と一本髪の毛を引き抜く。と、見る間にとらの毛は長い白布に変わった。白布はしゅると音をたてて槍に巻きついていく。

(ったく……な、なんでよりによってこのわしが……)

内心はだらだらと冷や汗を流しつつも、いかにも冷静を装ってとらは槍に布を巻いた。そのまま髪の毛で槍を祭壇から引き抜く。

「まァ、コイツのことは気にするな。るいず。白面なんざ、このわしがぶっ倒してやらァ」
「……とら? なんか声がうわずってない?」

ぐす、とルイズの耳になにか聞きなれぬ音が入り、ルイズは怪訝な顔になる。
背中におぶさった状態では、とらの表情は見えない――


「べ、別に泣いてなんかいねぇよぅ……」


――が、とらの情けない声で、ルイズにも推測はついたのであった。


……そんなとらとルイズを、キュルケとタバサはシルフィードに乗って困惑したように眺めていた。

「お、おねえさま! とらさまが泣いてるのだわ……! なにかあったのかしら、きゅいきゅい!」
「不可解……」

慌てるシルフィードに、タバサもわけがわからないといった様子で首をひねった。
ルイズの無事な様子を確認して、キュルケはほっと溜息をつく。

「やれやれね……てっきりルイズのほうが泣き出してると思ったんだけど……さ、早いとこ迎えに行きましょう。シエスタが村で待ちくたびれるわ」
「わかったわ、キュルキュル!」

シルフィードはさっと翼をはためかせると、とらとルイズの元に向かって舞い降りていった。



風……
唸りをあげる風が、タルブの村近くの森を抜け、木々のこずえをざわめかせた。ざぁっ……という風とともに、一匹の金色の妖怪が森を飛び越えて飛んでいく。
――と、探す相手の姿を見つけた金色の妖怪は、ぴたりと空中に止まった。

『おーや、ルイズ嬢ちゃんは一緒じゃねえのかぁ~。とらよぅ……』

ハルケギニアの双月の投げる光に、ぼんやりと時逆と時順の姿が照らし出された。

「るいずのやつはぐっすり寝てらァ……時逆、時順、一つ答えな……」
『おーう、何でも言えよぅ……』

ニヤリと時順が笑う。とらは、ち、と舌打ちした。

「あの獣の槍……どっから持ってきやがった……? あれァ……うしおの持ってたやつか? それとも――」

パシ、パリと、とらの髪に電光が走る。体に満ちていく怒りに、とらはぐっと拳を握った。

「それとも――マユコのやつを槍の生贄にしやがったのかよ……?」

ぎし、ととらの歯がなる。だが、時逆は頭を振った。

『……そいつは違うなあ~……獣の槍はあとにも先にもあの一本だぞぅ』
『そーう、わしらが持ってきたのさぁ……おまえさんが手にするよりも前の槍をなぁ』

(……じゃあ、わし――いや、シャガクシャが手にする前の……大陸で封印されてた時の槍かよ……!)

とらの心を見抜いたように頷くと、次第に時逆と時順の姿は闇に飲まれていく。

『……だから、おまえさんたちは負けねぇよ……わしらがちゃんと槍を持ち帰らねば、時の流れが狂うからなぁ……』
『一年後、また獣の槍を取りにくるよぅ……そしたら、次にあの槍を解き放つのは、昔のお前だぞぅ……』


「け、たりめーだ……槍なんぞなくても、わしが白面ぐらいぶっ倒してやらァ……マユコにもそう伝えとけェ!!」

……そうとらが吼えたときには、時逆と時順の姿は空に溶けて消えていた。


ごぉおおぉおぉおおおぉおおう……

タルブの森に風が吹き渡る。風はラ・ロシェールからアルビオンへと渡っていく。ちょうど、逃げた婢妖たちの向かう方向と同じだった。

(……アイツには、結局『泥』を被せちまったな)

そんな妖怪の呟きも、吹き渡る風の唸りにかき消され、誰も知るものはいないのだった。


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