その日は珍しくルイズがアンジェリカよりも早く目を覚ました。しばらくアンジェリカの寝顔を眺めていたが、何やら思いついたらしく部屋を出て行く。
「おはようございます」
「おはようアンジェ。今日はお寝坊さんね」
「おはようアンジェ。今日はお寝坊さんね」
アンジェリカが目を覚ましたのはいつもより1時間ぐらい過ぎてからだった。
「さて、アンジェ、着替えたら出かけるわよ」
「出かけるってどこにですか?」
「出かけるってどこにですか?」
アンジェリカは眠たそうな声をだす。
「今日は虚無の曜日。お休みの日よ。昨日言ったでしょ。服を買いに行くって」
「お買い物ですか?じゃあ早くお洗濯して・・・」
「大丈夫よアンジェ。シエスタに頼んどいたから。さぁ早く準備して」
「お買い物ですか?じゃあ早くお洗濯して・・・」
「大丈夫よアンジェ。シエスタに頼んどいたから。さぁ早く準備して」
そういってアンジェリカを急かす。
「着替えました」
「ところでアンジェ。あんた馬に乗れるの?
「お馬さんですか?乗ったことないです」
「ところでアンジェ。あんた馬に乗れるの?
「お馬さんですか?乗ったことないです」
ルイズは学院の外に出て、馬を一頭ひいてきた。
「アンジェこれに乗るわよ」
そういってルイズはアンジェリカを先に馬に乗せる。
「く、重い・・・」
そうぼやきながらもアンジェリカを持ち上げる。
「アンジェ、そんなに硬くならなくてもいいのよ」
「はい、ルイズさん」
「はい、ルイズさん」
ようやくアンジェリカを馬に乗せたルイズは自身も馬に跨る。
「じゃあ行くわよ」
「うん」
「うん」
一頭の馬に二人の少女が跨り、町へ向って駆け出していった。
一方その頃。学院ではキュルケが動き出していた。
「タバサ、お出かけよ。ルイズがアンジェちゃんを連れて勝手に出かけたのよ?」
「置いてけぼり?」
「そうなのよ。あの憎いヴァリエールがねって、そうじゃなくて追いかけて欲しいのよ、あなたの使い魔で」
「めんどい」
「そんなこといわないでよ。そうだ、ねぇタバサ?」
「何」
「本よ、本。好きなの買ってあげるからお願い」
「置いてけぼり?」
「そうなのよ。あの憎いヴァリエールがねって、そうじゃなくて追いかけて欲しいのよ、あなたの使い魔で」
「めんどい」
「そんなこといわないでよ。そうだ、ねぇタバサ?」
「何」
「本よ、本。好きなの買ってあげるからお願い」
その言葉にタバサの眼鏡がキラリと光る。おもむろに立ち上がると口笛を吹く。二人は窓から飛び降り、やってきたシルフィードがそれを受け止める。
「ルイズは葦毛の馬に一緒に乗って町へ行ったわ」
「馬一頭、葦毛色の」
「馬一頭、葦毛色の」
二人を乗せたシルフィードは短く鳴き、天高く舞い上がる。
「ルイズさんあれ」
町がすぐそこまで見えたところでアンジェリカが空を指差す。ルイズが空を見上げると豆粒ほどの影が迫ってくる。
「え、え、何?」
影がますます大きくなり、そのシルエットがはっきりと見える。
「アロー、ルイズ。置いてきぼりとはひどいじゃない?」
「キュルケ!それとえーと・・・」
「タバサ」
「キュルケ!それとえーと・・・」
「タバサ」
キュルケたちがシルフィードに乗ったまま話しかけてくる。
「何であんた達が来るのよ!」
「アンジェちゃんの服を買いに着たんでしょ?ルイズのセンスにまかしたらとんでもないことになるからね」
「うるさい、うるさい」
「アンジェちゃんの服を買いに着たんでしょ?ルイズのセンスにまかしたらとんでもないことになるからね」
「うるさい、うるさい」
騒がしくなった一団は町へと入っていく。もちろんシルフィードは上空で待機だ。
「ルイズ。これから服を買いにきたんでしょ?どのくらいお金持ってきたのよ?」
「このぐらいよ」
「このぐらいよ」
キュルケの問いにルイズはムッとした表情のまま袋を差し出す。
それを見たキュルケは口を開けて笑い出す。
それを見たキュルケは口を開けて笑い出す。
「おっほっほ!その程度じゃ碌なものが買えないわよ!それに舞踏会もあるのよ。アンジェちゃんのドレスも用意しなくちゃね!」
「何ですって!」
「じゃあアンジェちゃん行きましょうね」
「何ですって!」
「じゃあアンジェちゃん行きましょうね」
そういってアンジェリカの手を引いていく。
「ま、待ちなさいよー」
ルイズはそれを追いかけていく。一人取り残されたタバサはというと
「本屋行こ」
そういって別行動をとる。
「あーん。これも可愛い。じゃあ次はこれを試着しましょう」
「それよりもこっちのほうがいいわ」
「それよりもこっちのほうがいいわ」
服飾店に入るやいなやアンジェリカに様々な服を試着させる。アンジェリカは言われるがままに着せ替え人形と化していた。
「この水色のドレスのフリルもいいけど、こっちの白いのもいいわね?」
「ルイズのいうとおりね。シンプルだけどこっちのほうがいいわ。でも白いのより淡いピンクの、そうそれね。この色の方が良いんじゃないかしら」
「迷うわね。アンジェどっちの色がいい?」
「えーとですね。白よりもこっちの方がいいです」
「じゃあこれに決まりね、あとは・・・そうね。手袋も付けて下さる?肘までかかるやつ」
「あ、それいい」
「ルイズのいうとおりね。シンプルだけどこっちのほうがいいわ。でも白いのより淡いピンクの、そうそれね。この色の方が良いんじゃないかしら」
「迷うわね。アンジェどっちの色がいい?」
「えーとですね。白よりもこっちの方がいいです」
「じゃあこれに決まりね、あとは・・・そうね。手袋も付けて下さる?肘までかかるやつ」
「あ、それいい」
少女達の買い物は長い。
「……」
「お買い上げ有難う御座います。えー締めて新金貨五百枚になります。
「……」
「はい、お支払いはツェルプストー様ですね。いえ、タバサ様にはいつもお世話になっておりますので、はい」
「……」
「お勧めの本?ええ御座いますよ。絵本なのですがなかなか良い作品でして」
「……」
「有難う御座います。『パスタの国の王子様』三巻をお買い上げですね。こちらもお支払いはツェルプストー様に?」
「……」
「ええ、もちろんです。すぐに配送の手配を致しますので、日が暮れるころにはお届けに参ります」
「……」
「有難う御座いました。またのご来店をお待ちしております」
「お買い上げ有難う御座います。えー締めて新金貨五百枚になります。
「……」
「はい、お支払いはツェルプストー様ですね。いえ、タバサ様にはいつもお世話になっておりますので、はい」
「……」
「お勧めの本?ええ御座いますよ。絵本なのですがなかなか良い作品でして」
「……」
「有難う御座います。『パスタの国の王子様』三巻をお買い上げですね。こちらもお支払いはツェルプストー様に?」
「……」
「ええ、もちろんです。すぐに配送の手配を致しますので、日が暮れるころにはお届けに参ります」
「……」
「有難う御座いました。またのご来店をお待ちしております」
こちらもすごい。
「うーん。買った、買った」
ルイズが伸びをしながら店をでる。
「あのキュルケちゃんいいんですか?」
「アンジェちゃんの服を買ってあげたこと?いいのよ気にしなくて」
「ありがとうございます」
「それにヴァリエールの持ち合わせじゃ下着ぐらいしか買えなかったしね~」
「御先祖様御免なさい。ツェルプストーに施しを受けてしまいました・・・」
「ルイズさん、あれなんですか?」
「アンジェちゃんの服を買ってあげたこと?いいのよ気にしなくて」
「ありがとうございます」
「それにヴァリエールの持ち合わせじゃ下着ぐらいしか買えなかったしね~」
「御先祖様御免なさい。ツェルプストーに施しを受けてしまいました・・・」
「ルイズさん、あれなんですか?」
アンジェリカはルイズの服の裾を引っ張りながら訪ねる。
「あれは武器屋だったかしら?そうね、気になるんならのぞいてみましょ」
そういって武器屋の扉を開ける。
店の奥でパイプを咥えた親父が声をだす。
店の奥でパイプを咥えた親父が声をだす。
「貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまっせ」
「冷やかしよ」
「冷やかしよ」
冷やかしと言い切ったルイズにキュルケは思わず吹いた。
「お、おったまげた。冷やかしと言い切る客は初めてでっせ」
しかし、冷やかしの客に商品を買わせてこそ一流の商人(あきんど)よ、そう決意して一振りの剣を見せる。
「これなんていかがです?店一番の業物でさ。もしお気に召したらお買い上げを・・・」
「何かすごそうね。でもよくわかんないわ」
「何かすごそうね。でもよくわかんないわ」
そしてルイズはあることを思い出す。
「そういえばアンジェの鉄砲の弾買わなきゃ。鉄砲の弾ないの?」
「鉄砲の弾ですか?まぁ、あるにはありますが・・・」
「じゃあ、持ってきて」
「へい、少しお待ちを」
「アンジェ、鉄砲の弾はこれでいいかしらって、アーッ!」
「お待たせいたしましたって、アーッ!」
「鉄砲の弾ですか?まぁ、あるにはありますが・・・」
「じゃあ、持ってきて」
「へい、少しお待ちを」
「アンジェ、鉄砲の弾はこれでいいかしらって、アーッ!」
「お待たせいたしましたって、アーッ!」
大声を出す二人の視線の先には真っ二つに折れた剣を持つアンジェリカの姿があった。
「な、なにやってんのよアンジェー!」
「ひょえー、1500エキューもする剣がー!」
「ひょえー、1500エキューもする剣がー!」
あたふたと慌てる二人を笑う声がどこからともなく聞こえてきた。
「ゲラゲラ、そんな鈍らじゃ細腕の娘っ子に折られても仕方がねー」
「黙れデル公!」
「黙れデル公!」
何と笑っているのは一本の剣だった。
「それってインテリジェンスソード?」
「そうでさぁ。店の厄介ものでして」
「やめろ小娘、放せ!」
「マイク、どこにあるんですか?」
「そうでさぁ。店の厄介ものでして」
「やめろ小娘、放せ!」
「マイク、どこにあるんですか?」
ふと目をそらせばアンジェリカが件のインテリジェンスソードをもってぶんぶん振り回している。
「やめろって、おめえまさか『使い手』か。それよりも地面を叩くな!」
ルイズはアンジェが剣を折る前に先手を打つことにした。
「あの剣とその鉄砲の弾と火薬いただくわ」
「ヘイ毎度あり。エキュー金貨110枚頂きます」
「ヘイ毎度あり。エキュー金貨110枚頂きます」
ルイズは袋から金貨をさしだした。
「ひーふーみーっと、ちょうど頂やす。あとこいつは鞘に入れたら大人しくなりますんで」
「まて、娘っ子。この小娘は使い手だが戦っちゃいけねぇ・・・」
「まて、娘っ子。この小娘は使い手だが戦っちゃいけねぇ・・・」
剣がしゃべり切る前に鞘に収めその口を封じる。
「じゃあ、アンジェ帰るわよ。ん? タバサだっけ? いつの間に来たの?」
「さっき」
「さっき」
ルイズたちは店を出る。ただキュルケはタバサに渡された請求書をみて真っ白になっていた。
「まいどあり~」
一人になった武器屋の親父は何か忘れている気がするとしばらく物思いにふける。
「しまった!!折られた剣の代金もらってねぇ!」
一人膝をつくのであった。
「今日は疲れました。でも楽しかったですね、ルイズさん」
「そうね」
「そうね」
日が暮れたころ、ようやく学院に帰ってきたアンジェリカとルイズ。キュルケとタバサは非情にもシルフィードに乗って先に帰ってしまったのだ。何でもキュルケがタバサにお説教をするとか。
部屋に戻ろうとする二人だったが、ルイズの部屋の前に人影があった。どうやら帰りを待ちわびていたようだ。
部屋に戻ろうとする二人だったが、ルイズの部屋の前に人影があった。どうやら帰りを待ちわびていたようだ。
「こんばんは。アンジェリカ、それとルイズ」
そういって、挨拶をしてくるモンモランシー。側にはギーシュが居心地が悪そうにしている。
「ほら、ギーシュ」
「あ、ああ。その、何だ。この前の食堂では悪かったね。この通り謝るよ」
「あ、ああ。その、何だ。この前の食堂では悪かったね。この通り謝るよ」
ギーシュはそういって頭を下げる。
「はい? どうしたんです? 食堂で何かあったんですか?」
アンジェリカはそういって首をかしげる。
「アンジェ、あんた・・・」
アンジェリカはニッコリと微笑んだままだ。その場にいたものは皆顔を見合わせる。
彼女はやがて訪れる滅びの風に曝されていた。
Episodio 8
L'acquisto che e piacevole alla citta
街へ楽しいお買い物
街へ楽しいお買い物