「宇宙の果ての何処かにいる私のシモベよ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに答えなさい!」
トリステイン魔法学院の生徒の一人、ルイズは本日2×回目のサモン・サーヴァントの儀式に挑戦していた。
(お願い! 今度こそ、成功して!)
そんなルイズの願いが届いたのか、もしくは神様が同情でもしてくれたのだろう。
ルイズの詠唱終了後に鳴り響いた爆音と黒煙の中から現れたのは、栗色の髪をなびかせ、緋色の瞳を呆然と見開いて立ち尽くす整った容姿を持つ同年代とおぼしき女性だった。
ルイズの詠唱終了後に鳴り響いた爆音と黒煙の中から現れたのは、栗色の髪をなびかせ、緋色の瞳を呆然と見開いて立ち尽くす整った容姿を持つ同年代とおぼしき女性だった。
「おい、見ろよ! ありゃ、平民だぜ!」
「しかも、女だぞ!」
「さすがゼロだな、人間を召喚するなんて!」
「くっ……うるさいわね! ちょっと間違えただけよ!」
「しかも、女だぞ!」
「さすがゼロだな、人間を召喚するなんて!」
「くっ……うるさいわね! ちょっと間違えただけよ!」
たちまち級友達から沸き起こった嘲笑にルイズは抗議の声を上げるが、彼らの嘲笑は止まらない。
「ちょっとだって? 悪いが俺達じゃとてもまねできないね。そこらの平民の女を呼び出すなんてさ!」
「まあ、平民にしちゃいい女だが……それだけだな」
「いっそ使い魔じゃなくて、自分付のメイドにでもしちまえよ!」
「なんっですってぇ~~~~!」
「まあ、平民にしちゃいい女だが……それだけだな」
「いっそ使い魔じゃなくて、自分付のメイドにでもしちまえよ!」
「なんっですってぇ~~~~!」
(なんや騒がしいどすな……)
ルイズが呼び出した女性――藤乃静留は目の前の喧騒に眉をひそめると、自分の今の状況を整理しようと思考を巡らす。
(確かうちは……『星詠みの舞』を全て終わらせた後、なつきをセンセに託して毒飲んで死んだはずやのに……なんで生きてこんなんとこおるんやろ?)
そう考えながら自分の周囲を見回す。
目に映るのはやや夕焼けがかった青空と一面に広がる草原。近くにあるものといえば中世の城か修道院のように見える建物ぐらい。
どう考えても風華学園の敷地ではない。それどころか目の前で騒いでる連中が黒いマントに杖を持った格好で見たこともない生物を従えているところからして、自分の知る世界ですらないような気がする。
目に映るのはやや夕焼けがかった青空と一面に広がる草原。近くにあるものといえば中世の城か修道院のように見える建物ぐらい。
どう考えても風華学園の敷地ではない。それどころか目の前で騒いでる連中が黒いマントに杖を持った格好で見たこともない生物を従えているところからして、自分の知る世界ですらないような気がする。
(あの世ではないようやけど……さしずめ異世界といったとこやろか?)
とりあえず騒ぎの中心にいると思われる桃色の髪の少女の様子を伺う。他の連中とのやりあいが終わったらしく、今度は教師らしい禿頭の中年男性になにやら言っている。
「お願いです、ミスタ・コルベール! もう一度……もう一度だけ召喚させて下さい」
「ミス・ヴァリエール、それは許可できない。二年生に進級するために行う春の使い魔召喚の儀式は、今後の属性を見極め、ひいてはメイジとして一生を決める神聖なものだ。たとえ何を呼び出そうが、やり直しを認めるわけにはいかない」
「ミス・ヴァリエール、それは許可できない。二年生に進級するために行う春の使い魔召喚の儀式は、今後の属性を見極め、ひいてはメイジとして一生を決める神聖なものだ。たとえ何を呼び出そうが、やり直しを認めるわけにはいかない」
コルベールと呼ばれた教師は厳しい顔で首を横に振ると、きっぱりとルイズの願いを却下した。
「で、でも! 平民を使い魔にするだなんて前代未聞です!」
「では、君がその前例になればよろしい。いずれにせよ、君が進級するには「彼女」を使い魔にするしか無いのです」
「では、君がその前例になればよろしい。いずれにせよ、君が進級するには「彼女」を使い魔にするしか無いのです」
(なんや使い魔とか不穏当なこと言うとりますな……まあ、なつきにはもう会えへんような気がするし、どうでもええけど)
ルイズはコールベルの言葉にがっくりと肩を落とすと、静留に向かって問いかける。
「あなた、名前は?」
「べつに答えてもええけど……人の名前を聞くなら先に名乗るのが礼儀だと思うんやけども?」
「ぐっ……いいわ、特別に名乗ってあげる。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、ヴァリエール公爵家の三女よ。それで、あなたの名前は?」
「べつに答えてもええけど……人の名前を聞くなら先に名乗るのが礼儀だと思うんやけども?」
「ぐっ……いいわ、特別に名乗ってあげる。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、ヴァリエール公爵家の三女よ。それで、あなたの名前は?」
(短気かと思うたけど、人の話を聞く耳はあるようやね……まあ、怒るのを堪えたいうより無理して背伸びしてるゆうとこやろけど)
「一応、名乗ってもらったことやし、うちも答えたげるわ……うちの名前は藤乃静留いいます」
「フジノシズル?……変な名前ね」
「うちのいたとこは、名前より姓の方が先になるんよ。こっち風に名乗るならシズル・フジノってとこやろか」
「どこの習慣よ、それ? まあいいわ、シズル……す、少しかがんでくれるかしら」
「……こうすればええの?」
「フジノシズル?……変な名前ね」
「うちのいたとこは、名前より姓の方が先になるんよ。こっち風に名乗るならシズル・フジノってとこやろか」
「どこの習慣よ、それ? まあいいわ、シズル……す、少しかがんでくれるかしら」
「……こうすればええの?」
何故か少し顔を赤らめているルイズの言葉に従って静留は少し身をかがめる。
「光栄に思いなさいよ、貴族が平民にこんなこと普通はしないんだから……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
ルイズは静留の額に杖を押し当ててコントラクト・サーヴァントの呪文を唱えると、静留に口づけした。
「ずいぶんと情熱的な娘やね。そういうのも嫌いやないけど、いきなりいうんはあんまり関心せえへんよ……痛っ!」
唇が離れ、ルイズの行動をやんわりとたしなめようとした静留は、左手に焼けつくような激痛を感じて地面にうずくまった。
「なんやの……一体……」
「左手に『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから安心したまえ。痛みはすぐに収まるはずだ」
「左手に『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから安心したまえ。痛みはすぐに収まるはずだ」
コルベールはそう言って静留に近づくと、その左手を無造作に掴んで刻まれたルーンを確認する。
「ほう、これは珍しいルーンだな。もっと良く見てもいいかね……っと、失礼、珍しいルーンだったもので。さあ、これで春の使い魔召喚は終了です。今日はこれにて解散とします」
コルベールはルーンを更に観察しようとしてが、静留が不快そうに顔を歪めたのに気づくと気まずそうに手を離した。そして、生徒達に解散を宣言すると、宙に浮き上がり建物の方へと飛び去る。
それに続くようにルイズ以外の使い魔を連れた生徒達も空を飛んでいく。
それに続くようにルイズ以外の使い魔を連れた生徒達も空を飛んでいく。
(普通に空を飛んでるゆうことは、別の世界なんは確かやね……にしても、あのまま死なせて欲しかったんやけど、ほんまに神様はいけずやね)
「……シズル、私についてきなさい」
ルイズは皆が見えなくなったのを確認すると、ここが異世界だと再認識して少し放心気味の静留に声をかけて歩き出す。
置いていかれても困るので、静留はスカートについた草を払って立ち上がってルイズを追いかける。
置いていかれても困るので、静留はスカートについた草を払って立ち上がってルイズを追いかける。
「そういえば、ルイズはんは飛ばはらへんの?」
静留はルイズの横に並ぶぐらいに追いつくと、当然の疑問を口にした。
「うるさいわね、私は歩くのが好きなのよ! それから……あなたは私の使い魔なんだから、私を呼ぶときは『ルイズ様』って言いなさい」
静留の問いにルイズは立ち止まってむっとした表情で答えると、そっぽを向いて呼び方を訂正するよう命令する。
「まあ、それもそうやね。ほな、色々よろしゅう頼みますわ、『ルイズ様』」
静留はルイズの態度に内心苦笑しつつ、にっこりと微笑んだ。