あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

伝説の使い魔(悪い意味で)2

 使い魔品評会前

「いいわね! 今回の使い魔品評会にはアンリエッタ王女殿下もこられるのよ! あんたはぜっっったいにおとなしくしてること!」
 自室で正座させられている黒タイツ半裸に向かい、ルイズは一大事とばかりに念をおして注意していた。
 半ば〝伝説〟となった召喚の儀の大騒動から、やむなくこの男を使い魔にしてしまった彼女の心中は察してあまりあるものだった。
「何もしないのよ!? な・に・も! もはや品評会で好印象を残そうなんて夢は諦めたわ!」
 男は心外そうな顔をしてまだ幼い主人を仰ぎ見た。
「なんで意外そうな顔してんのよ!? あんたの特技って品評会に出せるわけないじゃない! 水中で五分息が止められるだの尻から小麦粉噴射できるだの! そんなことやらかしたらあたし社会的にも法律的にもお終いじゃない!?」
 男はしょんぼりとした。
 予想外なところで繊細な男だった。
 しかししょんぼりとする中で、その眼光は何一つ諦めてはいないことに、ルイズは気づかなかった。
 そう、芸人たるもの笑いをとることなら命も惜しくないと覚悟する彼にとって、〝やるな〟は〝やれ〟と同義なのだ。

 深夜

 アンリエッタ王女が自室でルイズと談笑しているとは彼は知らなかった。
 彼は今自室を抜けだし、先日宝物庫で発見し、壊れているからと廃棄処分されていた物品を修理していたのだ。
 修理が終わり、今度はギーシュの部屋に頼みごとをしにいく。
「どうしたんだいこんな夜更けに……。え? ヴェルダンテにやってもらいたいことがあるだって?」
 彼はうなずいた。

 当日

「どこいったのよもう! あれだけおとなしくしなさいって言ったのに!」
 ルイズは自分たちの番が迫りつつある中、姿を消した使い魔を探していた。
「もしかして……」
 昨日アンリエッタ王女が訪ねてくる前にしょんぼり部屋を出て行った彼の後ろ姿を思い出す。
 もしかして、自分があまりにも彼の言葉を聞いてやらないから愛想をつかしてしまったのかもしれない。
 いや、それとも出場しないことで自分を困らせる復讐の方かもしれない。
 アンリエッタ王女に再会できたことに浮かれ、彼のことを少しも気にかけてやらなかった自分に、彼女は珍しく後悔の念に襲われた。
 ……ただ、朝食のときに最後に見た限るではそんな嫌がらせしようと企んでいるようには見えなかった。
 もしろ、何かを覚悟した、そう、まるで戦場へ赴く兵士のような鋭い眼光が気になっただけである。
 しかし、アンリエッタ王女に失態を見せてしまうことに、ルイズの心は沈んでしまうのだった。
 ルイズは陰鬱な表情で会場へ戻った。
 自分たちの番がついにやってきたが、彼はやはりやってくることはなかった。
「次は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
 とうとう自分たちの番になってしまった。
 ルイズは今にも泣き出しそうな気持ちを抑えながら、自己紹介と使い魔のいない理由をどういいわけしたものかと考えながら壇上へ上がった。
 壇上で見渡すと、ルイズ一人だけであることを不思議に思いざわめく学院生と、銃士隊に守られる観覧席で心配そうにしているアンリエッタ王女が視界にはいる。
 ……王女殿下、こんな無様なところを見せてしまって申し訳ありません。
 さすがのルイズもうつむき、言葉を失ってしまう。
 様子のおかしいことに気づいた学院生たちが、次々にヤジを飛ばし始める。
「おーい! ゼロのルイズ、使い魔までゼロにしちまったのか?」
「ちょっとやめなさいよ。あんな使い魔、王女殿下の前に出せるわけないじゃない」
「そうだよな! あんな使い魔、アンリエッタ様に触れるどころか目に触れるだけで犯罪だぜ」
 学院生たちは自分の立派な使い魔を披露できて鼻が高いからか、その言葉には容赦がなかった。
 そんな無慈悲なヤジにうちひしがれそうになったルイズは心の中で叫んだ。
 ……おねがい! せめて〝現れ〟るだけでも。
 ルイズがそう願った瞬間だった。
「「「いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぅ!!!」」」
 絶叫が辺りに響き渡った。
 え!?
 ルイズがはっと顔を上げる。
 あの声は、確かに!
 どこにいるの!?
 彼女は目をさらにして見渡す。
 しかし、いない。
「お、おい。なんだ今の声?」
「どこから聞こえた?」
 ざわざわと会場が不穏な空気に包まれ始めたとき、今度は何か聞いたことのない音楽が聞こえ始めた。
 そう、ルイズの使い魔のいた世界で、彼が〝現れ〟るときのテーマソングだ。
 曲名は「スリル」!
「な、何事だっ!?」
 プログラムにないことに、銃士隊の隊長としてアンリエッタの側に控えていたアニエスがうろたえる。
 姫様に何かあっては大事である。彼女は周囲を確認した。
 問題ない。怪しい人影などは見当たらない。
 一瞬そうして気を抜いたとき、爆音がその場に響いた。
「うわああぁあ!?」
 近くにいた隊士が、突然アンリエッタを除いた半径二メートルを除いて開いた穴に落ちて姿を消したのだ。
 それはまるで、召喚魔法で異次元に連れ去られたような鮮やかさだった。
「なっ!?」
 アニエスが目の前で起こった緊急事態に、どうすることもできずにただただ驚愕する。
「ぬおおおおおおおおおおおいぃ!!」
 消えた隊士に気をとられ、背後まで注意が回らなかったその瞬間、バリッと観覧席の床板をぶち破って〝それ〟は姿を現した。
 黒いタイツを下半身にまとい、上半身裸というこの世のものとは思えない格好の男。
「き、貴様何者だっ!?」
 その異形の存在に動じつつも、アニエスが拳銃を抜こうとしたその瞬間、男は床を蹴った。
「とうっ!!」
 やたらと上手なドロップキックがアニエスを襲い、彼女も他の隊士が落ちた穴に叩き落されてしまう。
「ひ、姫様ぁーーーっ!?」
 不覚をとったアニエスの悲痛な叫び声が穴へと吸い込まれていく。
「あ、アニエスーーーーっ!」
 信頼している部下を撃退され、アンリエッタ貴賓席から思わず立ち上がる。
「ぬおおおおおおい! ちょっとまてぇ!」
「きゃああ!?」
 まるで魔人のように無防備になってしまったアンリエッタの前に立ちふさがる男。
 恐怖のあまりぺたんとしりもちをついてしまったアンリエッタを鋭い眼光で見据えながら、男は会場全体に聞こえる大声で叫んだ。
「アンリエッタぁあああーーー!! お前に一言物申ぉおおすっ!!」
「ひ、ひぃー!?」
「……私がルイズの使い魔です。よろしくぅ!」
 やさしく手を差し出す。
 そして、その場を静寂が支配した。
 時を止める魔法があるのなら、ちょうどこんな感じだろう。
「おいちょっと待てぇ!? そこ笑うとこだろ!?」
 男が焦った様子で静まり返る会場に向かって叫ぶ。
 よくない。
 これは北朝鮮やトルコの空気に近い。
 生半可な軍人よりも死線をくぐりぬけている彼の本能はそう告げていた。
 と、予想外に早く先刻突き落としたアニエスが部下と穴をよじ登ってきた。
「取り押さえろぉ! もう生死は問わん!」
 形勢の逆転してしまった男は、腰を抜かしているアンリエッタのすぐ前に移動すると、何を思ったか黒タイツをずりさげてしゃがみこんだ。
 こ、こいつはいったい何を……
 意味不明すぎる行動にアニエスは思わず呆然としてしまう。
 ま、まさかこいつ何か魔法を!
 アニエスがはっと息を呑む。
 しかし、その方がある意味良かったのかもしれない。
 男は死すら覚悟の内のような表情で宣言した。
「それ以上近づいたら王女の前でう○こするぞっ!!!!!」
 隊士たちが凍りついた。
 銃士隊はアンリエッタに仕える性質上女性ばかりで構成されている。
 男の宣言は魔法以上の攻撃力を持つものだった。
 しかも、それを一国の王女の前でやるというのだ。
 やられた場合、それは国家の威信にかかわる。
 〝トリステイン王国のアンリエッタ王女は平民に目の前でう○こを出された〟
 まずまともな婚姻は不可能になるだろう。
「く、くそっ! じゃなくてしまった!」
 アニエスが怯んだその一瞬をルイズの使い魔は見逃さなかった。
「とぅっ!」
 今度はヒップアタックだった。
 しかも、生ケツで。
「うわぁああああーー!?」
「隊長ぉーーーーーー!?」
 指揮官を失い、これまでにない敵と遭遇してしまった銃士隊。
「い、いやぁ……」
 まだ幼さを残す隊士など、もはや目の前の化け物に戦意を喪失している。
 タイツをはきなおし、その中に腕を入れて高速で突き出す彼の必殺技「手ポドン」が彼女らを襲う。
「ドーンッ! ドーンッ!!」
「いやぁああああああ!!?」
 銃士隊を蹴散らし、軽やかにヴェルダンテに掘ってもらった穴を飛び越え、一般の会場へと乱入していく。
 半ばやけっぱちの行動だった。
「ドーンッ! ドーンッ!! どけどけ! 貴族なんかがっぺむかつく!」
「きゃあああああああああ!!」
 ルイズが召喚したときよりも絶望に満ちた顔で放心する中、彼女の使い魔は会場を突破して宝物庫へと逃走をはかる。
 ちなみに、土くれのフーケがこの日、破壊の杖を盗めなかったのが彼の功績によるものだとは、最後までわかることはなかった。
「伝説つくってやるよぉーっ!!」
「あ、あなた誰……うわぁああああ!?」


(おしまい)



-ルイズが「江頭2:50」を召喚

新着情報

取得中です。