あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのイチコ03


「さて、貴女は今どうするべきかしら?」
ここはトリステイン魔法学院、女子寮の私ことルイズ・ド・ヴァリエールの部屋。
そして目の前で両足を折りたたんで座っている、もとい浮いているのが私の使い魔であるイチコ・タカシマである。
「勝手なことをしてごめんなさい、ご主人様」
と手を前に突き出し、頭を下げた。
ギーシュとの決闘後、イチコが帰ってきたのはその日の夕方だった。
その間に起こった事と言えば、いつもどおりの授業といつもどおりの昼食、そしてモンモランシーが放った水の魔法の爆音だけである。ギーシュは午後の授業に出てこなかった。
イチコが帰ってきたのはそんな一連の出来事が終わった後、私が寮に戻って探しに行こうかと思案していた頃であった。
幽霊だし、誰もイチコを殺せない。既に死んでいて死なないのだからそのうち帰ってくると思っていた。
だけれども昼食の時間になっても帰ってこないので心配になってきていた。それでも授業をサボるわけにもいかないので探しに行くわけにもいかない。
おかげで午後の授業はまるで頭に入らなかった。たびたび窓の外に視線がいった。
そろそろ窓からひょこひょこと入ってくるのではないかと考えが浮かんだ。
つまり、ここまでご主人様を心配させた罪は重く、それゆえに使い魔は罰を受けなければならない。

「『私のワガママで勝手に決闘したあげくにギーシュに負けたイチコをお叱り下さい、ご主人様』でしょ」
と鞭を振るってイチコの目の前を叩く。乾いた音が響いた。
イチコは「ひっ」と小さい声を出して青い顔をした。
「わ、わわ私のワガママで勝手に決闘してギーシュさんに負けてしまった私をお叱りください~」
良いことをした使い魔には飴を、悪いことをした使い魔には鞭を。
これは躾である。使い魔はパートナーであるが主従関係であることを忘れてはならない。
ご主人様の命令を無視する使い魔には鞭をくれてやらなければならない。


とは言え、イチコには鞭が効かない。
それじゃあご飯抜き――と考えたがイチコはご飯を食べない。
「それじゃあ、今日は反省して廊下に立って……じゃなくて浮いてなさい」
「はぃ」
消え入りそうな声でイチコは扉をすり抜けて廊下に出て行った。
手を下に垂らし、頭を下げて去っていく様は分かりやすいぐらいに落ち込んでいた。
しかし、その姿は同情を誘うと言うよりは
「誰か呪い殺したりしないわよね?」
幽霊ゆえにそんな考えが浮いてしまった。



「うぅ、ご主人様を怒らせてしまいました」
わたくしこと高島一子はたいへん落ち込んでいます。
思い起こすこと今日の朝、食堂でギーシュさんの香水を拾い――もとい落ちたのを教えて上げた事がきっかけでギーシュさんが二股をしていることが発覚しました。
それはもう許されないことです、何が許されないかというと倫理観とか道徳とか乙女心とかそんな感じのいろんなものがミックスされて
私の怒りメーターはマックス、最大限の臨界点まで急上昇してしまいました。
許されません、許されるわけがありません。
そりゃあこの世界は私の居た世界とは違います。しかし愛はどの世界でも守られるべきです、尊い盟約なのです。それを(以下略)


まあ、そんなこんなでギーシュさんと決闘することになってしまいました。
しかしながら今になって落ち着いて考えれば争いは何も生みません、あぁ、神よ。お許し下さい――
ともかく私は決闘に赴きました。
最初は死んだ、と思ったのですがよく考えたら私は幽霊ですので死ぬ訳もなく。
逆にギーシュさんを追い詰めた! そう思ったのですが、わたくしどうやら無機物には触れませんが生物には触れる模様。
ギーシュさんの突き出した手に吹き飛ばされて遥かかなた雲の上までふきとばされてしまいました。
調子にのっていた私はギーシュさんの反撃にびっくりして気絶してしまいました。
さすが魔法使い、すさまじい突き飛ばしでした!
ともかくそれで学院に戻ろうとして近くを飛んでいた渡り鳥さんに話を聞こうとしたのですが皆さん私を見たとたんに猛スピードで逃げていきます。
やはり、幽霊は世間の風当たりが厳しいようです。
おかげで迷って迷って、やっと学院に帰ってきたときにはお日様が茜色に染まってしまいました。
ご主人様はカンカンに怒っていました、帰ってきたとき。
「ごめんなさいご主人様、ちょっと雲の迷路で迷ってました……あはは」
と軽く謝ったのがいけなかったのでしょう。何時間も行方不明になったのですから誠心誠意あやまるべきでした。
反省、反省します。深海魚になったように深く深く反省しています。
今日はこの廊下で寂しく一夜を過ごして、使い魔がなんたるかを見つめなおしたいと思います。


「あら、貴女は……ルイズの使い魔じゃない」
反省の念に包まれていると周りがよく見えてませんでした。赤い髪をした女性の方がすぐ傍に立っていらっしゃいました。
「はい高島一子と申します。あなたは?」
「私はキュルケ、微熱のキュルケ。あなたのご主人様の友達よ」
「そうだったんですか。よろしくお願いします」
「ぇえ、こちらこそヨロシク……にしても本当に幽霊なのねぇ」
とキュルケさんの視線が私の足元に向きます。
こう改めて他の方から幽霊だと言われるとちょっと悲しいような、諦めのような感情が沸いてくるように思えます。
「ねぇ、幽霊っぽく何か台詞言ってみてよ」
「ぇ、ぇ~っと??」
幽霊っぽく? というと真っ先に浮かぶのが
「う、うらめしや~」
「あははは、意味わかんないけどソレっぽい。上手い上手い」
「はぁ、どうもありがとうございます」
褒められて、いるのでしょうか?
どうにも物珍しさで遊ばれているような気がします。
「そうだ、頼みがあるんだけどいいかしら?」
と片目をつぶってウィンクを投げかけてきました。
スタイルの良い方ですし、そういった仕草も自然に感じられました。
「な、なんでしょう?」
直感ですが、あまり良い頼みとは思えません。


「私の友達でタバサって子が居るんだけどね。その子っていつも無表情なのよ」
「そうなんですか」
「そうなのよ! おかげで友達も私だけだし、コミニケーションが不足してるの。分かるでしょ?」
「そうですね、お友達は多いほうが良いですよね」
「そう、だからタバサに会って欲しいのよ」
とキュルケさんは私の目の前で手を合わせて来ました。
友達のため、そんなキュルケさんの頼みに私は先ほどの失礼な考えを心の中で謝罪しました。
見かけはとても派手なかたですが友達想いの良い方のようです。
「分かりました、また明日うかがわせていただきます」
今日はもう日が暮れたので明日のほうが良いと思います。
「いや、今から行きましょう」
「え?」
「ちょうどタバサの部屋に遊びに行くところだったのよ、さ、行くわよ」
「ぇ、いや。私はここに居ないといけま、って、キュルケさん?!!」
手を取られると、引きずられるように私はその場を後にしました。
またご主人様に叱られそうです。



「で、ここがタバサの部屋よ」
連れてこられたのは階段をひとつ降りて、おおよそご主人様の部屋の真下に位置する部屋でした。



「しかし、こんな夜遅くにお尋ねするのはよろしくないのでは?」
「いいの、いいの。タバサ居る?」
キュルケさんが重厚な木の扉を叩きます、ですが何の返事もありませんでした。
もうお休みになったのでしょうか?
「やっぱり魔法かけてるわね」
「魔法ですか?」
「ぇえ、あの子って読書の邪魔をされるのが嫌いで。部屋に居る時はずっとサイレントの魔法をかけてるのよ。音がまったく聞こえなくなるの」
魔法と一口に言っても日常生活に便利な魔法もあるのですね。
てっきり魔法と聞くと炎を出したり風を巻き起こしたり、何か巨大な蛙を呼び出したりするのばかりだと思ってました。
「だから、あなた壁抜け出来るんでしょ? 中に入って扉を開けるように言ってくれない?」
「え、でも……」
「いいの、私に言われたって言えば良いから」
「は、はい……分かりました」
勝手に入るのが多少戸惑われたのですが、キュルケさんの言葉に後押しされるようにドアの脇の壁から部屋にお邪魔します。
「失礼しま~す、タバサさん起きてらっしゃいますか?」
恐る恐る壁から上半身だけ出して部屋の中を覗き込みました。
部屋の中にはランプの明かりを頼りに本を読んでいる方がいらっしゃいました。ベッドに腰掛け壁を背に座っています。
メガネをかけていますけど、こんな暗がりで本を読んでるとさらに目が悪くなるのではないでしょうか?
ずいぶんと小柄な方でこんな暗がりでも目を引く青い髪が特徴的です。
「あの~」
と声をかけるものの反応がありません。よっぽど集中してらっしゃるのでしょうか。
と思ったら目だけが動いてこちらを見ました


「夜分遅くすいません、わたくし高島い……」
自己紹介をしようと思ったのですが、タバサさんは驚いた顔をされました。傍にあった杖を取り、こちらに先端を向けます。
そこで私は自分が壁に半分埋まった状態で止まってる事を思い当たりました。驚かせてしまった、と思う間もないほど彼女の動きは早かったように思います。
彼女は素早く呪文を唱えると宙に氷の矢を生成しました。
矢は強烈な風を伴って壁に突き刺さり、逸れた矢と狭い密室で行き場を失った風が天井にぶつかり穴を開けました。
「ぇええ?!」
と言う声と供にご主人様が上から落ちてきました。
タバサさんはこちらを凝視すると、そのままベッドに倒れこんでしまいました。
「ちょっと何があったの?!」
とキュルケさんが駆け込んで来ました。
私も改めて部屋を見渡すとキョトンとした顔で座り込んでいるネグリジェ姿のご主人様、杖を握り締めたまま気絶しているタバサさん。
自分の姿を確認すると氷の矢が頭から突き刺さっていました。もちろんすり抜けているので平気なのですが。
そして天井には直径1メートルほどの穴。
「……本当に何があったの?」
おそらく、タバサさんが幽霊である私に驚かれたのが原因かと思います。

「ふ、ふふふ……」
とご主人様が下を俯き笑っておられます。
「そう、イチコったら。使い魔のくせに、使い魔のくせに」
ふふふ、と笑うご主人様。でも目が笑っていません。
「廊下に立たされただけで、こんなイタズラを思いつくなんて。ど、どど、どうしてくれようかしら……」
「ぇ、いや。違うんですご主人様」
「問答無用!」
「あぅう、ごめんなさい~」
この日は夜半までお説教を受けることになりました。


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