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るいずととら第三章-8


(ここは……?)

ぶつけた腰をさすりながらルイズはきょろきょろとあたりを見回した。
次第に暗闇に目が慣れると、がらんとした空間が広がっているのが分かる。

(暗い……。どこ、ここ。何か建物の中なのかしら……?)

と、いつのまに現れたのか、ルイズの隣で妖怪が笑った。

『ルイズ嬢ちゃん、おまえさんは「今」に戻ってきたんだよう……』
『といっても、出発してから半日以上経ってるがなぁ~』
「時逆! 時順!」

驚いた声を上げながらも、ルイズは聞きなれた声に少しほっとして胸をなでおろした。
さすがに暗闇に一人放り出されるのはごめんである。

「それで……どこなの、ここ?」
『言ったろう、タルブの村近くの寺院だよう……』
『タバサ嬢ちゃんとキュルケ嬢ちゃんもこっちに向かっているぞぅ~』
「そ、そう。キュルケとタバサが……」

ふう、とルイズは息をついた。時逆がルイズに笑いかける。

『見るべきものは見、聞くべきものは聞いたかい?』
「そうね……白面の者とか、始祖ブリミルとかのことは……でも、まだ肝心のことが全然わからないわよ!
 ねえ、なんでわたしをこんなことに引っ張り込んだわけ? その……」

勢い込んで言ったものの、ルイズは言葉を詰まらせ、ちょっとうなだれる。

「わ、わたしは……その、魔法も上手く使えないし……。タバサに『法力』を習おうとしたけど、全然上手くいかなかった。
 わたしなんかに白面の過去とか見せても仕方ないし……」

なんでわたしこんなことを言ってるんだろう、とルイズは少し自己嫌悪になった。
自分の魔法が下手なのは確かだが、それを克服しようとずっと努力してきたはずなのに、気がつけば自分の口から零れる言葉は弱音ばかりだった。

『それについては、「お役目さま」に訊くしかないぞーう』
『こっちだぞぅ。「お役目さま」は奥で結界を張ってるからなぁ』

ひゅ、と妖怪は寺院の奥へと姿をけした。慌ててルイズも後を追いかける。
寺院の奥には祭壇のようなものがあり、異国風の白い着物を着た霊……『お役目』の女が、ぼうと光を放ちながら浮かんでいた。



『ルイズ……こんなところまで引き回してしまったことを許してください。どうしても、あなたにここまで来てもらわなくてはならなかったのです……
 六十年前にこの世界に来てより、私はこの寺院で結界を張り続けなければならなかった……今も、この寺院はオーク鬼たちに囲まれていますが――』
「オオ、オークが!? そ、そんなあっさり言わないでよ!」

慌てるルイズに、にこりと「お役目」は微笑んだ。

『大丈夫です……それらを寄せない程度の結界なら、霊体の私でも張ることができますから……
 問題は、それらオーク鬼が呼び寄せた婢妖たちの大群……。あれらが到着する前に、あなたにこれを渡さなくてはなりません――』

「お役目」の白い女がそう言うと同時に、ぽ、と祭壇のロウソクに灯が燈った。
そこに突き立てられている長い棒のようなものが、ぼんやりと照らし出されるのを見て、ルイズは、はっと息を飲む。
器物――であるはずのそれから立ち昇る異様な気配に、ルイズの体は小刻みに震える。

(これ――なに……? 槍……なの?)

『六十年――「私たち」はあなたを待っていたのです。この槍をあなたへと届けるのが、私の「役目」……その槍こそが、白面の者を滅ぼすことの出来る唯一の武器。そして――』

言葉を切った「お役目」は悲痛な表情で目を伏せた。

『――そして、持ち主の魂を喰らい、妖怪を滅ぼす槍……獣の槍、です。
 ……ルイズ、あなたは選ばなくてはなりません――。この槍と共に白面の者と戦うか否か――ルイズ、あなたが決めてください……』

ルイズは呆然と目の前の槍を見た。

(……白面の者を滅ぼす? わたしが、この槍を使って……? それに――)

「一体、どういうことなの? 『魂を喰らう』って! 魂を食べられたら一体どうなるっていうの!?」
『それは――』

「お役目」が口を開いた瞬間だった。

突如、轟音と共に寺院の天井が破壊され、どっと黒い渦がなだれ込んできた。

『く……もう婢妖が……!』

祭壇のルイズたちを目掛けて突っ込んできた黒い塊は、空中で結界にぶつかり激しく身悶えした。焼け焦げた婢妖の死体がボタボタと落下しては、しゅうと音を立てて消える。
だが、巨大な波のように押し寄せる婢妖の大群は、じりじりと「お役目」の結界を押しつぶしていく。

「な、なによこれ……ッ!!」
『ルイズ! に、逃げて、ください……! 私が食い止めますから……! 「獣の槍」を持って、時逆たちと……安全なところへ……っ!』

ルイズはその場にへたりこんだままぶるぶると震える。動こうにも恐怖に体が言うことを聞いてくれないのだ。

『早く……! この結果も……長くは……もたない――!』

ガクガクと震えながらルイズは立ち上がろうとする。しかし、耳に聞こえてくる婢妖のざわめきにルイズは悲鳴を漏らした。

――殺せ……白面の御方の御為に……! その娘だ、殺せ――!
――ニオイを覚えたぞ……娘ェ……! 殺してやる、殺してやる――!

(な、んで私が……私は……ま、魔法も使えないし……ゼロの、ルイズっていつも言われて、それなのに――)

とら、とルイズの口から言葉が漏れた。




そうだ、全てとらを呼び出したときから始まったんだ。
『ゼロのルイズ』のくせに、あの金色で美しく強い使い魔を、呼び出してしまったから――
自分の力に見合わない、強力すぎる使い魔を呼んでしまったから――
だから……

『結界が――切れます……!』

ルイズは、きっと空を睨む。蠢く婢妖たちに埋め尽くされた空に向かって、ルイズは叫んだ。


「だから……私を助けなさいよ! アンタは私の使い魔でしょう!? バカとら――――ッ!!!」


轟――ッ!!!!


雷光と轟音が空を走った。稲妻に焼き尽くされる婢妖たちが悲鳴を上げる。黒い婢妖の群れを切り裂くように、巨大な金色の影がルイズの前に現れた。
とら――! とルイズが言おうとしたとき、ぽつりと使い魔が呟く。

「気にいらねぇな……」
「と、ら……?」

パリ、パリととらの毛に稲妻が走り、ざわざわと毛を逆立てる。いつもとどこか様子の違う使い魔に、ルイズはごく、と喉を鳴らした。
ぞぞぞ……と生き残った婢妖たちが集まり、一匹の巨大な妖怪になっていく。ぎょろ、とその目玉がとらとルイズを見据えた。

「まったく気にいらねぇぜ……るいずにそのくそったれな槍を使わせる気かよ――――」

そう言ってとらは「お役目」の女を睨みつける。力を使い果たした「お役目」の体は、光の粒になって次第に消えていく。

『そう――白面の者を滅ぼすために……』
「ふざけるんじゃねぇ……!! それがオメエの言ってた『泥』かよ……ああ――!!
 ……あんときわしは言っただろうが……。白面を今ぶったおして、まっとうに生きたおめえを喰ってやるってなァ……!!」

とらの言葉に、消えていく「お役目」は微かに笑った。

『そうだねえ……約束、したよね……でも――』

ごめんねぇ、こんな姿じゃ食べられないよねぇ……と言って、女は少し困ったように微笑んだ。
ち、とらは舌打ちした。

「……るいずに槍は使わせねぇ……こいつはわしが守るのよ……オメーも――なんでその槍にいつまでも縛られてやがる……!! 白面がいるなら――」

――――おォおおおォぉオオ……!!

婢妖が叫び声をあげ、とらに襲い掛かる。


「わしが、ぶったおしてやるって言っただろうがァ!!! マユコォ!!!」


とらの咆哮とともに特大の雷が放たれ、婢妖を砕いた。


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