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英雄は二度死ぬ

大国ガリアとの最終交渉は決裂し、もはや戦争は避けられない状勢に陥った。
姫殿下の青き失策により、ゲルマニアとの同盟も気泡に帰したトリステインは七倍の戦力を誇るガリアに一国で臨まなければならない。
空の大国アルビオンは、先のタリブ会戦で、トリステインとの関係を劣悪なものにしていたが、かと言ってガリアに与する動きも見せず、中立の姿勢を守り続けた。
自国支配によるハルケギニア統一を目指すアルビオンは、この動乱を静観し、弱り切った勝者を捩伏せる腹積もりなのだ。

そして、遂に戦端は開かれる。

第三国は、数で圧倒するガリア優位に戦局は進行すると睨んでいた。
しかし、一人の英雄がそれを許さなかったのだ。



大地を覆い尽くす焔によって朱く照らされた夜空に、月が二つ、怪しく光る。
喧騒と怒号が入り交じる戦場の各所で残酷な徒花が咲き誇っていた。
戦況を一望できる小高い丘に設置された牛革製の天幕に、トリステイン王国軍指令部が敷かれていた。
ガリアの猛攻に動揺しきった士官達を、今まさにテントの中へと入り込んできた桃色髪の女が一喝する。彼女は、その背にくたびれた赤いひたたれを纏っていた。

「うろたえるな。寧ろ、教えてやりなさい。……ここに誰がいるかをね!」

士官達は女に向かい慇懃に膝を落とした。
女はその場にいる全員を見据えた後、机の上に広げられた戦図に目を落とす。

「グラモン元帥、戦況は?」

グラモンと呼ばれた金髪碧眼の青年が不敵な笑みで応える。

「ヴァリエール将軍閣下。残念ながら戦況と呼べる程の展開を呈してはおりませぬ。今はただ、野戦下手のガリア供が夜陰を舞台に、見るに耐えない滑稽な火の舞を披露しているに過ぎないのですから」

ヴァリエールは腕を組むと、グラモンの言葉に満足そうに頷いた。

「よろしい。つまり、我等の眼下に広がる松明の燭、一つ一つが全て敵というわけね」

「はっ。その数、およそ七万」

「相手にとって不足はないわ。いつもの様に、奴らを時空間ごと吹き飛ばす…!」

ヴァリエールは椅子に腰掛け、なまめかしく両足を組んだ。清楚な色気が周りに振り撒かれる。

彼女は頬杖をつき、妖艶に笑った。

「彼等は、私を誰だと思っているのかしら……?」



これは運命と戦い続ける男の物語。
その男は欲望に忠実に、奔放に生き、仲間を愛して、自由を目指し、そして、唐突に散った。

それでもルイズは生き続ける。

生き続けなければならない。

彼は本当に変わった人だった。
根拠のない自信に満ち溢れ、道理を無茶で吹き飛ばし、いつも豪快に笑っていた。
私はそんな彼の事が好きだった。
痛快で、それなのに朴訥さを感じさせる彼の声が大好きだった。
だけど、彼を使い魔にしてから間もない頃、私は彼の事が苦手だった。
人の心に土足でずかずかと上がり込む彼は、友達の少なかった私にとって、受け入れ難い存在だったのだ。
そんな彼を見直したのは、錬金を題材にした授業の最中、私がいつもの様に盛大な失敗を侵した時だ。
沢山の罵声と嘲笑を浴びせられ、私の心はくたくたになってしまった。
俯いて、油断をすれば零しそうになる涙と必死に戦っていた私に、彼が言った。

「上を向いて歩け、ルイズ!」

「……カミナ」

「カミナじゃねえ。兄貴って呼べ」

「何を言うのよ…?それにあんた私と同い年じゃない」

彼の右手が私の肩を掴んだ。

「そういう事じゃねえ。俺達は魂のブラザー、ソウルの兄妹ってことじゃねぇか。つまんねえ奴らが何を言おうが気にすんな!あの爆発、凄かったじゃねえか」

私の肩を握る大きい手を振り払い、私は彼を睨み付けた。

「馬鹿にしてんの?」

彼は大袈裟に溜息をつく。

「何を言うかと思えば…。いいか、良く聞けよ?」

私の背に左手を回すと、彼は人差し指を天に突き付けた。

「お前の魔法は天を突く魔法なんだよ!」

こいつは何をぬかすのか。私は強烈な偏頭痛を感じずにはいられなかった。

「なんで?」

「俺には分かる。理由は聞くな」

「つまり、説明できないってことでしょ?」

「言葉に出した途端、滑稽になる想いもある。だから、あえて言わないんだよ」

「今、わかった。あんたなけなしの馬鹿だ」

「馬鹿だと?おうおうおう。てめぇ、右手を伸ばしゃあ、天をも掴むこのカミナ様に向かって馬鹿と言ったのか?」

理由は分からないけど、彼とのやり取りが可笑しくて仕方がなく、私は思わず笑みを零した。

「ごめんね、カミナ」

彼の拳が震える。異様な迫力に圧倒された私は壁に背をつけた。

「兄貴だ」

「え…?」

「兄貴と呼べと言ったろ」

たぶん、私の頬は蒸気していたと思う。

「わかったわよ。……お兄ちゃん」

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