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『使い魔くん千年王国』 第六章 格差社会

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しばらく互いに無言のまま『アルヴィーズの食堂』に着いた。
主従二人が連れ立って豪華な食堂に入れば、多数の好奇の視線が向けられる。

 平民の子供? 東方の悪魔使い? そんなバカな、ゼロのルイズだぜ? くすくすくす… きもーい!

いろいろな囁きが聞こえるが、気にせずスルーする。この手の中傷には二人とも慣れているのだ。
ルイズは仏頂面全開で、そっとメイドを呼んで耳打ちする。

「ここでは、朝からこんなに豪勢な食事なのか?」
「日々の食事は、食卓での礼儀作法の勉強でもあるの。
この学院は魔法だけじゃなく、貴族たるべき教育全般をするのよ。
私だって公爵家のレディなんですからね」
テーブルの上には、最高級の西洋料理や高価な果物が所狭しと並べられている。食器だって金銀宝石作りだ。
流石はブルジョワ貴族様である。庶民の血税を無駄に食い散らかしているようだ。

「ああ、来た来た。でもあんたはこっちだから。はい、安心なさ~い」
さっきのメイドが持ってきたのは、粗末なスープと固そうなパン。
しかもわざわざ床に置かれた。犬扱いか。
「当ったり前じゃない。あんたは貴族ではなくて『使い魔』なんだから。
本来はこの食堂の中にも入れないのよ? 感謝して頂くことね」
そう答えると、ルイズは始祖ブリミルにお祈りをした後で、優雅に食事をし始める。

(さっき馬鹿にしてくれたお返しよ。
 最低限の衣食住が保証されることの有難さを噛み締めなさい!)

なんたる差別! なんたる人権の冒涜! 蟹工船!
ああブルジョワジー!! ブルジョワーヌ!!
今すぐ闘争的人民裁判を起こして、徹底的に自己批判させてやろうか。
そのマイナス胸にプラカードをくくりつけて、腐った卵塗れにしてやろうか。
ご自慢のピンクの髪に、赤いペンキと鳥の羽根を浴びせて、半分にそり上げて、
裸馬に後ろ向きに乗せて街中を走らせてやろうか。
万国の平民よ、土人よ、使い魔よ、団結して決起せよ。一部特権階級の横暴を許すなかれ。
プロレタリア革命万歳!! 千年王国万歳!!


――などという煽動文句が一瞬脳裏をよぎった気がしたが、別にそんなことはなかった。
味の薄いスープに固いパンを浸し、数分で食べ終わると、
ルイズに蔑みの一瞥をくれて、無言で食堂を去る松下であった。
彼は貧乏人を救いたいだけで、無用な争いはしないのだ。多分。

大体松下は、コーヒー一杯で何日間も行動できる燃費のよさを誇る。
多少食事を抜いたところでどうという事も無いが、
今後の事も考えると、あの囚人以下の食事ではさすがに体が持たない。
どうしたものか。待遇改善を求めて早めに労使交渉をしておくか…?

「あらマツシタさん、どうかされましたか?」
と、背中に声が掛けられる。
驚いて振り向けば、今朝方の黒髪メイド――シエスタが立っていた。
「あぁ、今朝の人か。なあに、主人に用意された食事が少なくてね」
「あの貴族様ですから…ねえ。そうだ、賄いでよろしければ如何ですか?」
「いや、ぼくは」
「まあまあ、たくさん食べないと大きくなれませんから」
「じゃあ朝は少しでいいよ。どうせ三食碌なものを寄こさないだろうし、
 きみ達の食事を分けてくれればそれでいい」
「分かりました」

やはり平民の方が、妙な貴族の面子などなくて、付き合いやすいし扱いやすい。
例外はいるだろうが、ぼくのような異邦人にも親切だ。
(彼女や厨房の人たちには、何か恩返しでもしてやらねばな)
無論、革命的な意味で。


朝食が終わると、午前中の授業が始まる。
教室に入り、中を見回す。大体の生徒が騒ぎながらも揃っていた。
今朝出会ったキュルケもおり、手を挙げて挨拶した。
フレイムは椅子の下で昼寝を決め込んでいたが、
その他にもフクロウやモグラ、大蛇、猫やカラスや蛙など、生徒の使い魔たちがぞろぞろといる。
見るからに幻獣らしいのも結構いるが、人間の使い魔はやはり松下だけだ。

松下はとりあえず、ルイズのそばの床に腰を下ろした。
とはいえ、シエスタにメモ用の羊皮紙とペンを調達してもらっており、
この世界の魔法の授業を受ける気は満々であった…。

「皆さん、進級おめでとう。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。
このシュヴルーズは、こうやって新学期に、様々な使い魔達を見るのが楽しみなのですよ!」
教室に入ってきた女教師は微笑みながら口を開くが、ふと、床に座っている子供に気付いた。
「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね? ミス・ヴァリエール」
すると教室中が笑いに包まれた。

「『ゼロ』のルイズ! 召喚に失敗したからといって、そのへんの平民の子供なんか連れてくるなよ!」
「あーら、あんたの貧相なフクロウより、私の使い魔のほうがずっと上よ。
 『風邪っぴき』のマルコシアスさん?」
ルイズがそうせせら笑うと、野次っていた太っちょの少年は
激昂して立ち上がる。
「誰だよそれは!? 僕は『風上』の『マリコルヌ』だ! 風邪なんて引いてないぞ、『ゼロ』のルイズ!」
「ゼロゼロうるさいピザ野郎!! あんたのそのガラガラ声は、まるで風邪引いたみたいなのよ!
 このマルファス! マルコメ味噌! 丸子彦兵衛! マリみて!」


醜く言い争う二人に、呆れたシュヴルーズが手にした小ぶりの杖を振る。
するとルイズとマリコルヌは突然すとん、と席に座る。いや、座らされる。

「ミス・ヴァリエールもミスタ・グランドプレも、幼稚な口論はおやめなさい。
 お友達を『ゼロ』だの『風邪っぴき』だの『資本主義の豚』だのと呼んではいけません。
 分かりましたか? 二人とも」
「ミセス・シュヴルーズ……僕の『風邪っぴき』は中傷ですけど、ルイズの『ゼロ』は事実です!
 あとなんですか『資本主義の豚』って!」

教室のあちこちから、今度はくすくすと笑い声が漏れる。
シュヴルーズはため息を吐くと、また杖を振るう。
すると笑い声を漏らしている生徒たちの口に、『赤土の粘土』が押し付けられた。
「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」
そうシュヴルーズが言い放つと、教室の笑い声はぴたりと止んだ。
一方マリコルヌは、口と鼻に『赤土』が詰められて、真赤になってもがき苦しんでいた…。

(ここは小学校だったか?)
松下は教師の魔法には驚いたものの、生徒の程度の低さに早くも軽く失望していた…。
おまえも小学生のはずだろ、年齢的には。

(つづく)
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