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『使い魔くん千年王国』 第四章 契約

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「おい、起きろ」
時間はもう夜中。場所はルイズの部屋。
松下はコルベールとの問答と考察を終え、「御主人様」ルイズのもとへ勝手に入り込んでいた。
彼の「使命(野望)」を果たすため、不本意だが今は彼女に身元を保証してもらう他ない。

ルイズの魔法の実力と知識、人間関係(人脈)、実家の経済状況(資本)。
それに「使い魔」としての自分が何をすべきで、どこまで自由を制限されるのか。
知るべきことはまだ山ほどある。夜も早いのに安穏と寝ている場合ではない。
「起きろと言っているだろう」

お疲れのところ酷なようだが、寝ている場合では全くないのだルイズ。
ゴイスーなデンジャーが迫っているのだよ? 多分。

「う…うう~~~ん………」

寝苦しい。妙に背景が細かく描き込まれた、古い劇画調の悪夢ばかりが襲ってくる。

空は黒雲に覆われ、言い知れぬ妖気が漂い、遠雷が轟いている。
歩いているのは無人の荒野、原野、岩山、深い夜の森、廃墟となった古代都市の遺跡…
おびただしい魔法書が並んだ巨大な本棚のある、薄暗い書斎…
はたまた大鴉や禿鷹や大蝙蝠が飛び回り、野犬が死人の骨を齧っている、どうみても冥界としか思えない景色…
広い川辺に花が咲き乱れ、木々にたくさんの果実が実る楽園も見えたが、
そこへ行くと現世に戻れない気がしてやめた。向こう岸にぼんやりとした影も見えた。

戻って行こうとすると、地面には無数の蛇やヤモリや蟲が蠢き、いくつかの人魂がふわふわと浮かび、
蛆のたかった骸骨たちが醜悪な怪物たちと輪舞している。

ああ、笑っている。奴らは愉しそうに笑いさざめいている!!

「オイ、オキロ」「オキロトイッテイルダロウ?」「サッサトオキナイト……」
「死」

「ッッッッぎゃああぁぁぁあああ……あぁぁぁぁあ!!ぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!」

ルイズは短い人生の中でこれ以上ない、激しい恐怖とともに飛び起きた。
全身に物凄い寝汗をかき、鳥肌が立って髪の毛まで逆立ち、顔面は蒼白というよりもはや土気色。
呼吸は荒く目は血走っていて、治療はされていたが少しも身心が休めた気がしない。
ちょっと下着が濡れたかもしれない。汗で。あくまでも。
咽喉と舌がひきつって大きな悲鳴が出せず、隣室の住人も寝ぼけて起きてこないのが幸いだった。

「やっと起きたか、手間のかかる奴だ」
松下が運良くよそを向いていなかったら、ルイズは再び気絶していただろう。
明かりが点いているとはいえ、夜中にいきなり彼の顔を見るのは結構怖いからだ。

「は…はははは……」
ルイズは涙目で力なく笑った。私が呼び出せた使い魔が、確かにいる。
現実は悪夢より、ずっとましだった。


「うぷっ」
吐き気がする。夢だと分かっていても怖いものは怖いし、不気味なものは不気味だ。
不気味ではあるが、使い魔(松下)がいつの間にか来てくれていたので、多少生きた心地がする。
でもまだ震えが止まらない。あの世の夢など見るものではない。

松下はとりあえず水でルイズの唇をしめらせてやり、布で軽く汗を拭ったあと、落ち着くまで放置した。
また気絶されたり、暴れたり吐かれたりしても面倒だ。一回吐かせた方がいいかもしれないが。
「あ…ありがとう、マツシタ。確かそんな名前だったわよね」
「そうだ、さっきは失礼したな。お互いに初対面で気が立っていたようだ」
「え?」

意外に親切で気のきいた使い魔に、ルイズは驚いた。
(契約のルーンの効果かしら? いまさらだけど)
「おおまかな話はあの禿頭から聞いた。どうやらしばらくはここで暮らすしかなさそうだ。
 お休みのところ悪かったが、契約の詳しいことは『主人』本人からも聞いておきたいしね。
 学生の朝は忙しそうだし、いまのうちに」
「え…ええ…」

本当にこいつは10歳にもならない子供なのだろうか。
どういう教育を受けてきたのだろうか。そこらの貴族のボンボンより紳士的で理知的だ。
ああ、東方の魔法使いだか、悪魔使いだかなのだった。
やっぱり私はたいしたものなのだ。ゼロなんかじゃあないのだ。


「で、使い魔としてのぼくは、具体的に何をすればいいんだ?」
まずは彼女の自尊心につけこみ、「御主人様」として面子を立てておいてやる。
目的のためには手段は選ばない。へりくだることも必要だ。

「そ、そうね。さっきしてくれたみたいに、身の回りの世話も使い魔の立派な仕事よ」
「ふむ」
「それに、主人の目となり耳となること…五感やその他の感覚を共有することね。
 契約を済ませたときから自動的に共有できるはずなんだけど……
 今はできないみたい。あんたが人間だからかなあ」
「ふむふむ」
「それから、主人の必要とするもの…秘薬の材料とかを取ってくること。鉱物とか薬草とか」
「『東方』とは植生などが違うかもしれんが、一通りの知識はある。努力しよう」

異世界とか言うと説明がややこしいので、ぼくは『東方』出身の悪魔使い見習いということにしておく。
あながち間違いではないだろう。

「一番重要なのが、主人を敵から守ること! 多分あんたなら、少々の敵は大丈夫よね。
 …10歳未満の子供に守ってもらうのも、どうかと思うけど」
「まあな。ぼくの手に負えない奴もいるだろうが、山賊の10人ぐらいなら平気だろう」
「…わりと微妙ね……冷静って言うべきなのかしら。
 それと、使い魔は一生主人に仕えるのだけど、もし死んだら次を呼び出せるの。
 死んでも私を守るのがあんたの使命よ!」
ひどい話だ。普通は動物が召喚されるそうだから、そんなものかもしれないが。
できれば二度も死にたくはない。

「さて、きみについての詳しいことなども知りたいのだが…
 まあ随分お疲れのようだし、今夜はこのぐらいにしておくか」
そう急いだ事もなかろう。信頼関係はゆっくりと培っていく方がいい。

「ええ、おやすみマツシタ。明日は授業だから早めに起こしてね。
 それと、私を起こす前に、この汗まみれの衣服を洗濯しといてちょうだい(脱ぎ脱ぎ)」
「ああ。それで、ぼくはどこで寝ればいいんだ?」
「悪いけど床よ。毛布ぐらいはあげるわ」
「…ま、いいだろう」

使い魔というのは、結局のところ、ていのいい奴隷か召使いと言っていいようだな。
ぼくの使徒たちもそう感じていたのだろうか。悪魔と、裏切ったあいつも。

復活した『悪魔くん』松下一郎の、異世界での一日目はこうして過ぎた。
ルイズもどうやら、安心して眠りにつけたようだ…。

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