あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔・ブルー編-20

「貴様……」
「ルイズ、君は逃げたまえ」

ルイズはそういわれると、震える足でよろよろと逃げ出していく。
ワルドがギーシュに向けて、杖を振る。
杖の先から放たれた雷光は、先ほどのようにワルキューレに阻まれる。

「土のドッド如きが私に勝てると思っているのかね?」
「やってみれば解るさ!」

ギーシュが跳ぶようにして距離を詰め、粗いながらも速く、剣を振る。
ワルドはそれを杖で受け止める。

「メイジが剣を使うか!」
「使っちゃいけない理由もないと思わないかね」

ギーシュは剣を打ち込みながらも、詠唱を完成させる。
剣を防いでいたワルドも同じように、詠唱を完成させ、
ほぼ同時というタイミングで魔法を放つ。

「『錬金』!」
「『エア・カッター』!」

だが、ギーシュの方が速い。
ワルドの足下が粘土のように柔らかくなり、
ワルドは体勢と狙いを崩す。
外れた『エア・カッター』が礼拝堂の椅子の角を切り落とした。

「今だ、ワルキューレ!」
「く……」

ワルドは迅速に粘土から足を抜くが、そこにワルキューレが襲いかかる。
詠唱が間に合わないのを見て取ったワルドは、
腰に下げていた紅い剣を左手で器用に引き抜き、ワルキューレに振りかぶる。

「遅いッ!」

ワルキューレの拳が直撃して、ワルドは倒れ込みそうになる。
だが持ち直すと、左手に持った剣を再びワルキューレに向けて振った。
ギーシュはその剣が何か揺らぎのようなものを纏ったのを見た。
それは膨れあがるとその剣をそのまま大きくしたような形を取り、
ワルキューレを切った。切断面が赤熱している。
ギーシュは危険を感じ、とっさに飛び退く。
先ほどの斬撃と交差するようにワルドが再び剣を振るう。
剣がワルキューレを通り過ぎる。交差した赤熱の線が十字の様に見えたかと思えば、
次の瞬間にその線が膨れあがり、ワルキューレが爆発する。

「な、何だって……」

ワルドがギーシュの方を睨みつける。
ギーシュは細剣では打ち合えないと考え、
ワルキューレを全て出し、
剣を細剣から長剣に変え、薔薇をしまい込む。
ワルキューレを散開させ、複数方向から攻め込ませる。
ワルドは前から来た殴りかかってきた二体の腕を巨大化した剣で切り裂き、
右から来た一体を杖でいなし、左から来た二体を風で吹き飛ばした。
しかし、背後から来たワルキューレの一撃を受ける。

「ぐっ……」

しかし俊敏に身を翻し、そのワルキューレに向け斬撃を繰り出す。
そのワルキューレは先ほどのものと同じように十字に切り裂かれ、吹き飛んだ。

「な、なんだあの剣は……」

ギーシュは恐怖におののいた。爆発するのも不思議ではあるが、
ワルキューレをあっさり切り裂いてしまうそれはブルーやアセルスのそれを彷彿とさせたからだ。
切り裂かれたワルキューレを見回す。
と言っても、消し飛んだので五体しかないが。

(あれ?)

そこで疑問に思った。消し飛んだのは先ほどの二体だけなのである。
何故なのか、先ほどの剣を使えば全て消し飛ばすことも出来たはずだ。
なら、使えない?

(……なんでだ?)
「呆けている余裕があるのかね?」

ワルドが巨大化した剣を振り下ろす。
ギーシュはそれをとっさに剣で受け止めた。
そう、受け止めた。

(ワルキューレをあっさりと切れるのなら、剣ごと僕は切り裂かれているはずだ)

やはり、使えないのだろうと考えた。剣を押し返して弾き、
吹き飛ばされていたワルキューレを再びワルドに向けて、
自身は距離を取る。そして、何故使えないのかを考え始めた。

(なにか条件があるのか?)

それが解るまでは、距離にはいるのは危ないと判断し、遠くから機を狙う。
二体を相手しているワルドに生じたその隙をギーシュは見のがさなかった。

「今だ!」

杖でいなされ、倒れ込んでいたワルキューレが跳ねるように起き上がり、
ワルドに蹴りを飛ばす。ワルドは不意の一撃を食らう……が、倒れなかった。

「……魔法衛士隊の連中は化け物か」

そして、またワルキューレが十字に切られ、消し飛ぶ。
そこでようやくギーシュは気付いた。
あの斬撃を出した時と、出してないときの相違点に。

(もしかしてあれは、殴られないと使えないのか?)

最初の時も、二番目の時も、今の時も消し飛ばされたのは
攻撃を成功させたワルキューレだった。
ならば、とギーシュは残った二つと自分自身で三方向から攻撃を試みる。
ただし、自分の攻撃はわざと外して。
一体目を剣で無理矢理倒したワルドは、
ギーシュのフェイントに引っかかって背後のワルキューレの一撃を食らう。
するとギーシュには目もくれず、紅い剣を振りかぶり、
背後のワルキューレを同じように十字に切り裂く。
切られたワルキューレは、やはり爆ぜた。

「やっぱりか、その斬撃は攻撃を受けないと使えないようだね!」

ギーシュは笑いながら勝ち誇った声で言う。
ワルドはそんなギーシュに冷静に返す。

「解ったところでどうしようもあるまい」
「へ?」
「攻撃せずにどうやって勝つというのだ?」

ギーシュが固まる。
ワルドはそんなギーシュに向けてゆっくりと一歩ずつ歩み寄って来る。
ギーシュは今度は汗を流して、必死に頭を回転させる。

(え、えーと、冷静に考えればそうじゃないか!
 どうしようも――?)

そこで、一つの閃きを得て、剣を構え直す。
ワルドはそれを見て、一度立ち止まる。

「死ぬ覚悟が出来たのか?それとも逃げる気か?」
「どちらでもないね」
「そうか」

そう言うと、片手で剣を振り上げる。
ギーシュはそれを集中して見つめていた。ワルドが剣を振り下ろす。
ギーシュはそれに対して剣を斜めに構えて受け止める。
そして、そのままワルドの懐まで入った。

「何――?」

ワルドが右腕の杖を振り上げる。
ギーシュはそれは無視し、剣を回して左手を絡め取り、
そのままその手に在った剣を弾き飛ばす。
紅い剣が宙に舞い、風を切る音を鳴らして礼拝堂の固い床に突き刺さる。
ギーシュは振り上げた形になった剣を右腕にたたき付けようとする。
が、ワルドは『ウィンド・ブレイク』を唱え、ギーシュを吹き飛ばす。
当然、剣を振り下ろすことは出来ず、ギーシュは床にたたき付けられる。

「……どうやら私は君を見誤っていたようだな。
 だが、もう油断はせぬ」

ワルドは呪文を唱え、杖を振る。
杖の先から雷光が迸り、ギーシュに向かって飛ぶ。

「があっ……!?」

ギーシュの前進に激痛が走り、あまりの痛みに崩れ落ちる。
ワルドはそれを冷酷な目で見つめて、小さく唱えた。

「『エア・ニードル』」

杖が青白い光に包まれる。
先ほど、ウェールズを貫いたものだろう。
ワルドは、電撃を喰らって動けないギーシュに一歩一歩近づく。
そして、すぐ前で一旦立ち止まり、杖を振り上げる。

「君を殺したら、ルイズを追うとしよう。
 この城の包囲から逃げられる筈もない」

そして、杖を振り下ろす――が、それは一本の剣によって途中で遮られる。
ワルドは咄嗟に、彼が入ってきたであろう扉とは反対側の、始祖像まで飛び退く。
杖を防いだ人影は、剣を構え直す。左手に刻まれたルーンが光り輝いている。

「ブルー!」
「相棒、ようやく出番か!」
「貴様……どうやって此処まで!」

ブルーは答えずに、短く呟く。
数本の剣が現れ、ワルドに向かい飛ぶ。
ある意味、もの凄い解りやすい返答かも知れない。
ワルドは呪文を唱えて風を巻き起こし、それを弾き飛ばす。
ギーシュは誰かの手が自分の手を引っ張るのを感じた。
その力を借りて、何とか立ち上がりその手の先を見る。

「ルイズ……」
「間に合ったみたいね」

ボロボロで、まだ感覚がはっきりしない状態でも、ギーシュは何とか笑いを作る。

「逃げなかったのかい?」
「貴族は背中を見せないわ」

ギーシュは今度は笑いを作らず、心の底から笑いを浮かべる。

「逃げるとき、足が震えてたよ……」
「……そ、その時はその時よ!」

ルイズが顔を赤くして騒ぎ立てるが、
ギーシュは笑いを止めて、正面を向く。
ワルドと、彼らが対峙していた。

「……そうか、主人の危機が目に映ったか」
「ルイズを騙したのか?」

彼らは歩みながら、ルーンを刻む。ワルドは動かない。

「目的のためには手段を選んではおれぬのでな」
「それは勝手だ。だが、他人を巻き込むな」

ルイズはその様子を見ていた。
ブルーは……いや、ルージュか……?
どちらとも解らないが、怒っているように見える。
どちらも、そういう人には思えないのだが。
それに、ルイズのために怒っているのとも、違う気がする。
むしろ、ワルドの行為そのものを憤っているような……。
と、そこで彼が動いた。目に追えぬほど速い……とまでは行かないが、
それなりに速く、ワルドに突っ込み、剣を振り下ろす。
ワルドは身体を翻してかわし、青白く光ったままの杖を突き出す。
ブルーが剣で受け止めると、ワルドは飛び退いて距離を取る。
そして、一度『エア・ニードル』を消し、再び唱える。

「く……ユビキタス・デル・ウィンデ……」

その呪文を唱え、ワルドが杖を振ると、
ワルドが分身する。突如出現したとも言える。
数を増やして、最終的にワルドは5人に分身した。
それを見て、彼らは剣を止めて、飛び退く。

「風の遍在だ……知っているとは思うが」
「知らん」

その言葉を聞いた途端、短く返してブルーは再び斬り込む。
刻まれたルーンから発せられた光が彼らを覆うと、
今度こそ目にも見えぬほどの速さになった。
ワルド達の内の一人が、呪文を唱える。

「『ウィンド・ブレイク』!」

風が、彼らめがけて放たれる。
彼らは反射的に、デルフリンガーを前に突き出す。
剣で風が防げる道理はないが、それでも防御しようとした。

「ちょ、相棒」
「剣で魔法が防げるはずが――」

その言葉を言い終える前に、魔法の威力が到達する。
しかし、身体に伝わってくるはずの衝撃は来ない。
少々困惑していたがそれでも考えると、
手に持った剣が風を吸い込んでいる事を発見する。

「何だと……!」
「おお、なんだこりゃ……そういや……なんかそんな事も出来たような……」

自分でもよくわかっていないらしいデルフリンガーに、彼らは問い詰める。

「どう言う事だ」
「いや、ちょっと待って。今思い出すからよ……」
「『ウィンド・ブレイク』!」
「……取り敢えず、防いでもらうぞ」

ワルド達が放った突風を、今度は意志を持ってデルフリンガーで防ぐ。
先ほどの雷撃と同じように、突風は吸い込まれ、彼らに届くことはない。

「その剣……一体何だというのだ!」
「……そうだ、思い出した!」

彼らはその声は無視して狼狽しているワルド達に切り込む。

「い、いやちょっと、聞いて欲しいかなー、なんて」
「聞いてやれる余裕はない」
「……まぁいいさ、今はやりたいようにやっちまいな、『ガンダールヴ』!」

そう叫ぶと、デルフリンガーが光り出す。
ワルド達が再び『エア・ニードル』を唱える。

「…杖自体が魔法の中心!打ち消すことは出来ぬ!」

そういって、五人のワルドが杖を突きだしてくる。
それを受け流し、回避し、いなす。
最後に振り下ろされたのを受け止めると、デルフリンガーを包んでいた光が弾ける。
そこには、磨き抜かれたように輝きを返す、錆びの混じらぬ鋼の刃があった。

「何なんです?」
「……細かいことは気にすんな!行くぜ!」

懐に入れたワルドのうちの一つを切り上げる。
それは悲鳴も上げずに消滅した。
ワルドの遍在達が彼らを取り囲んで、杖を突き出してくる。
彼らはそれを軽く跳躍して、回避する――軽くと言っても、
人一人飛び越せるぐらいの高さだったが。
そのままワルド達の内の一人の頭を足場に大きく飛んで、包囲から離脱する。
その動きを見ていたギーシュは呟く。

「やっぱり、凄いな……彼は」

軽い音と共に地面に着地する。
次にその音を大きく、激しくしたような音と共に剣を振り抜く。
一気に距離を詰めて、勢いを乗せた斬撃がワルドの内もう一人を斬る。
が、それも斬られると消滅する。
人一人斬っても尚余る勢いを、床を滑るようにして制動をかける。
バランスを崩しかけて、途中で片手を付いた。

「どれが本物か解ったりしないか?」
「それは無理」
「……全員叩けばいい話だな」

立ち上がり、後ろを振り向く。
ワルドが始祖像の下で杖を構えている。
青白い光は、既に消したようだ。
呪文を唱えて、彼らに向け杖を振り下ろす。

「『ライトニング・クラウド』!」

杖の先に、青い光が灯り、放電する。
後ろから、かすれた小さな叫び声が聞こえてくる。

「気をつけたまえ、ブルー!
 それを喰らえばただでは済まないぞ!」

轟音と共に、杖先から雷が放たれる。
デルフリンガーで受け止めるが、吸い込みきれない。
それどころか勢いに押されてだんだんときつくなってくる。

「相棒、このままだとジリ貧だぞ!」

その言葉に対して、彼らは剣を握る手を強めるどころか、
片手を離してしまう。デルフは思わず叫びかけるが、叫べなかった。
器用に、回転させる。今まで押されていた雷を押し返し始める。
そして最後には雷を弾くと同時に、青白い光と唸るような低い音を放ち始める。

「な、なんか嫌な感じがするんだが!?何というか折れそうな」
「確かかなり摩耗するからな」
「……もう少し優しく扱ってほしいな俺」

そのまま、地面を蹴ってワルドまで跳ぶように駆けよる。
ワルドは咄嗟に呪文を唱えて、『エア・ニードル』を纏わせる。
それで剣を受け止めようとするが、
デルフは何も遮る物が無いかのようにワルドの身体をあっさりと切り裂く。
だが、その姿もかき消える。
残り一人、本体であるだろう最後のワルドを探すために、辺りを見回す。

「離して!」

声のした方へ振り返ると、ワルドがルイズを捕らえて、杖を此方に向けていた。
ギーシュは突き飛ばされたのか、少し離れたところで倒れている。

「ルイズを離せ」
「そうはいかない。彼女は僕の目的のために必要なのでね
 ……君は優秀なメイジのようだ。
 どうかね、君も『レコン・キスタ』……いや、私と共に来ないかね?」
「お断りだ」
「そうか、なら此処でお別れだ」

ルイズを捕らえている手とは反対の右手で杖を軽く振り、唱える。

「『ライトニ――』」

そこで唐突に、銀色が一閃。何かが宙を舞う。
解放されて、倒れ込むルイズ。彼らはそれを抱き上げて、駆け去る。
呪文を唱えていたワルドはそれを不思議そうに見て、詠唱を止める。

「『――ング…』……?」

そして、何かやわらかい物が落ちる音に対してそちらを振り返り、呟く。

「……何……だと……?」

落ちていたのは、左腕。
ワルドは自らの左腕があるはずの場所を見やる。何もない。
忘れていたものを今思い出したかのように、血が噴き出す。

「私のっ……腕がぁ……!?」

傷口を抑えて、ワルドはうずくまる。
ブルーも纏っていた光が霧散すると、胸を押さえてうずくまる。
左手のルーンの光も消えていた。
ギーシュがよろよろと立ち上がって、礼拝堂の椅子にもたれかかる。
しばらく、そのまま時間が流れた。

静寂は破壊音によって打ち砕かれる。
どこからか飛んできた砲弾により、礼拝堂の一角が崩れ落ちた。
遠くからの喧噪や爆音が聞こえてくる。
ワルドがそれを聞いて顔を上げる。

「な、何が起こってるの……?」
「攻撃が始まったか……!」

ワルドは立ち上がると、傷口から手を離し、血だらけの手で杖を握る。

「私はこんな所で死ぬわけには行かぬ……さらばだ」
「待ちなさい!」

ワルドは『フライ』を使い、崩れ落ちた一角から飛び去る。
制止などは、当然聞くはずもない。
遠くから聞こえてくる戦闘の音に、ブルーが呟く。

「逃げるか」
「どうやってよ」
「かなり先だが、タバサ達が来ている。
 そこまで『保護のルーン』を使って行く」

ルイズはそれにうなずいて、歩き出そうとして立ち止まる。
そして俯いてから、振り返って始祖像の方に歩き出す。

「ルイズ?」
「ちょっと待って」

ルイズは始祖像までは歩かず、
その手前の事切れたウェールズの前でかがみ込む。

「…ご無礼をお許し下さい」

そう言ってから、ウェールズの手から『風のルビー』を外す。
外すときに、ルイズの手の『水のルビー』との間に光を作り出した。
なんとも場違いな、美しい虹色の光だった。


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