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ゼロのアトリエ-29


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師29~

魔法学院の片隅、空き教室を利用して作られた錬金術工房の中で。
ルイズは一生懸命設計図とにらめっこして、カリヨンオルゴルの製作にいそしんでいた。
周りでは、他の五人がめいめいの作業に精を出している。

ルイズは手を休め、結局ものにならなかったかつての趣味の事を思い出した。
魔法が駄目ならせめて器用になるようにと仕込まれた編み物であったが、
複雑に毛糸が絡まりあったオブジェを無駄に生産するだけに終った。
天はルイズに編み物の才能は与えなかったようである。
だが…不思議とこれが金属や宝石となると話が変わってくる。
自分でも驚きだった。自分にこんな細やかな細工を作り上げる力があったなんて。
錬金術…いや、自分の才能に気付かせてくれたヴィオラートには本当に感謝している。
そんなことをつらつらと考えながら、ルイズはふと『始祖のオルゴール』に目を向けた。
そういえば、結婚式の詔も考えなくてはならない。
以前は…無能と蔑まれた時には暇を持て余していたというのに、
自分が何かをなそうと足を踏み出した瞬間から、そんな怠惰な時はどこかに吹き飛んでしまった。
いつも何がしかを考え、考えていない時は手足が動いている。
気の効いた詔というのは一体どんなものだろうか…まわりを見渡し、相談できそうな人を探す。
コルベールに…は期待できそうにもない。
ヴィオラートもなんというか実用派で、文章を装飾するという考えからは程遠いだろう。
キュルケは…儀式とか礼飾をあまり好きではない。タバサ…はどうだろうか。
いつも本を読んでるし、案外あっさりと良い言い回しとか過去の名文を教えてくれるかもしれない。
そんなことを考えながらタバサを漠然と見ていたルイズに、キュルケが声をかける。
「ルイズ、それは何?」
キュルケは、ルイズの傍にある『始祖のオルゴール』が気になっているようだ。
「これは『始祖のオルゴール』っていう国宝なのよ」
ルイズは説明した。
「なんでそんな国宝をあなたが持ってるの?」
ルイズはまた、キュルケに説明した。アンリエッタの結婚式で、自分が詔を読みあげること。
その際、この『始祖のオルゴール』を用いる事…等々。
「なるほど。この前のアルビオン行きの成果ってわけね。こないだ発表された、
トリステインとゲルマニアの同盟が強化され、二つの国は名実共に同盟国となる、と」
ルイズはちょっと考えたが、ほぼばれているのに隠す意味はないと思い、こくりと頷く。
「アルビオンの新政府は不可侵条約を持ちかけてきたそうよ?あたし達がもたらした平和に乾杯」
ルイズは気のない声で相槌をうった。その平和の為に、アンリエッタは好きでもない皇帝の下へ嫁ぐのである。
仕方のないこととはいえ、明るい気分にはなれようはずもない。
「ところで…それは何を作ってるのかね?」
愉快なヘビくんによる自動水汲み装置と描かれた設計図を弄り回していたコルベールが問いかける。
コルベールの指差す先には、何かの設計に頭を悩ますルイズの姿があった。
「カリヨンオルゴルっていうアイテムです。周囲の敵を魅了したり、破壊したり…
高度な技術を必要とするだけあって、強力な効果が得られるようです」
「ほう。ミス・ヴァリエールはいつのまにか高度な技術を身につけているようだね」
「…褒めたって何も出ませんよ」
照れているのか、わずかに顔を赤らめながら顔を背けるルイズに、コルベールは確信を持った声で言った。
「わずか数ヶ月で、このような装飾品を…複雑な機構を持った細工に挑戦しようなどという生徒など、
私の知る限りにおいて存在しません。自信を持ちなさい、ミス・ヴァリエール」
「そ、そうですか」
言うべきことを言ったコルベールと、黙り込んだルイズ。工房の中に、おのおのの作業する音だけが響き渡る。
静寂を破ったのはまたもキュルケだった。
「ところで、ヴィオラート」
「なに?」
「明日から休みだし、行きたいところがあるんだけど」
「行きたいところ?」

「ゲルマニアではね…平民でも、お金さえあれば 貴族になることができる。
でもそれは、裏を返せば貴族でも文無しは用なしっていうことでもあるの」
「?」
「だから、宝探しに行こうと思ってるんだけど…」
「宝探し?」
「ええ。遺跡とか、洞窟とか…」
「遺跡…」
ヴィオラートはかつて遺跡を巡り、錬金術書を集めた体験を思い出した。
「一緒に行かない?あなたがいれば心強いし、何ならゲルマニアで本当の貴族になっちゃうのもいいかもしれないしね」
キュルケは返事を待たずに、テーブルの上に地図を並べ始めた。地図の山盛りがテーブルに現れる。
「それで、これがその候補地なんだけど…どこから行く?」
「…これから調べる?」
タバサがあきれて、キュルケに向き直った。
「だって…売れないから処分するって言うから、まとめて金貨十枚で引き取ったやつだし…」
キュルケはばつが悪そうにそう答える。
「大丈夫なの?」
改めて考えると、だんだん不安になってきた。
「うーん そう言われると…これなんか見るからに新品の紙だし…」
キュルケが地図の山に手を突っ込んで、確認を始める。
作業に戻ろうと思っていたヴィオラートの目に、飛び込んだものがあった。
「あ…」
不審に思ったキュルケがヴィオラートに問いかける。
「どうしたの?」
ヴィオラートは珍しく動揺した様子で、震える指先を地図に向けた。
「そこに…あたしの名前が書いてある」
「え?…どこ?ざっと見たけど、貴女の名前はなかったような気がするんだけど…」
「違うの、あたしの世界の文字で書いてあるんだってば!」
五人の視線がその地図に集中する。
「え?これって、ヴィオラートさんの世界の文字なんですか?」
シエスタが反応し、目を見開いてヴィオラートを見つめた。
「え、何、まさかあなたも何かあるって言うんじゃ」
「これ…私、見たことあります!」
「え?」
「この…ヴィオラートさんの名前の下にある文字のどこかに、竜の砂時計って書いてありませんか?」
「え、ええと…あるみたいだね。竜の砂時計って…」
「はい、ただの壊れた砂時計…だと思うんですけど…祖母が大切にしていたものなんです」
シエスタのその言葉に、ヴィオラートたちは思わず顔を見合わせた。
「ふーん、この地図には『謎の古代文字』ってあるけど…これはけっこう信憑性高いんじゃない?」
「ええ、ヴィオラートさんの世界の文字ということは、祖母の世界の文字ということですから…
この、『竜の砂時計』って文字は、私が祖母から唯一教えてもらった文字なんです!」
興奮気味に語りだしたシエスタ。この文字について共有できる初めての人ができた事が、
よほど嬉しかったのだろう。
「まさか全部本当の事だっただなんて…この文字が書かれたものは他にもありますから、
ヴィオラートさんの助けになると思います」
そこまで効いたキュルケが皆を見回して、宣告するように発言した。
「決まりね。タルブへ行こうか?」
その言葉にヴィオラートはしっかりと頷き、ルイズに問う。
「ルイズちゃん、一緒にタルブへ行こうか」
すると、ルイズはカリヨンオルゴルの設計図とにらめっこしながら答えた。
「すぐに帰ってくるんでしょう?私はとりあえずこれを完成させることにするわ。詔も考えなくちゃいけないし」
「とりあえず、私も作業があるので…それに、私が残ってないと学院的にはまずいらしいですからね」
コルベールは、新発明の設計図ににこまごまとした線や注意書きを付け加えながら、そう答える。
「一人だって、完成させて見せるわ」
出会った当時とは全く違う、まっすぐなルイズの瞳に見つめられたヴィオラートは、
心の中でルイズに祝福を贈りつつ微笑んで、決めた。
「じゃあ…行こっか?」
「そうこなくちゃ!じゃあ準備して、出発よ!」


翌朝、一行は空の上でシエスタの説明を受けていた。
シエスタの説明は、あんまり要領を得なかった。
とにかく、村の近くに寺院があること。そこの寺院に『竜の砂時計』が存在している事。
「『竜の砂時計』って…マジックアイテムなわけ?」
キュルケの問いに、シエスタはいいにくそうに答える。
「そんな…大したものじゃないと思ってたんですけど…しょせん壊れた砂時計ですし、
何でもドラゴンの角が使ってあるらしくて、それだけでも珍しいってありがたがって…
拝んでるおじいちゃんとかいますけど」
「へぇええ」
「祖母はある日ふらりと私の村に現れたそうです。そしてその…『竜の砂時計』を持って、
『神の浮船』で私の村にやってきたって、みんなに言ったそうです」
「『神の浮船』?」
「ええ。誰も信じなかったらしいですけど…祖母は頭がおかしかったんだって、皆言ってます」
「どうして?」
「誰かが言ったんです。じゃあ、その『神の浮船』を見せてみろと。でも、
もう呼べないとかれんきんじゅつしはどうとか色々言い訳して、その後は私の村に住み着いちゃって。
剣が使えたので、頼まれては魔物退治とか護衛とかの仕事をして一生懸命お金をためて…
そのお金で貴族にお願いして『竜の砂時計』や自分の持ってきた道具に『固定化』の呪文までかけてもらって、
大事に大事にしてました」
「変わり者だったのね。さぞかし家族は苦労したでしょうね」
「いえ、それ以外では働き者のいい人だったんで。村の皆には変わり者扱いされながらも、頼りにされてました」
「うーん、できればその『竜の砂時計』を触ってみたいんだけど…大丈夫かな?」
話を聞いていたヴィオラートが、とりあえず聞いておこうと発言する。
シエスタはちょっと考えた後、破顔して答えた。
「ええ、それだけなら全然問題ないと思います」
「なら…作り方がわかったら、真っ先にシエスタちゃんに教えるからね」
「え、ええ!?私にですか!?」
「うん。この村で錬金術がわかるのはシエスタちゃんだけでしょ?」
「そ、そうですけど、私なんかが…」
「嫌なの?」
「そ、そんな、嫌ってわけでは…」
「なら、決まりだね。頑張って、竜の砂時計を村の名産品にしちゃおう!」
「は、はい!頑張りますっ!」
ヴィオラートの誘導に見事に操られ、
シエスタは未来を決めるような誓いを立てさせられたのであった。


さて一方、こちらは魔法学院。
ルイズは完成させたカリヨンオルゴルをひっくり返して、しきりに不思議がっていた。
「何で…鳴らないのよ。ドラムは回ってるし、振動板もちゃんと弾かれてるのに…」
以前のルイズならばただ落ち込んでいるだけだっただろうが、
今のルイズは結果には原因があり、少なくとも大まかな原因なら自分が解明できるはずだと考えていたのだ。
少なくとも失敗の原因を調べようとする気概があった。
「どこか不具合でもあるのかしら…妙な魔法効果でも発現しちゃったかな…」
そう呟いて何気なくドラムを指でなぞった時、何か懐かしい音が聞こえたような気がして、
ルイズは思わずあたりを見回した。
「…気のせいかしら。ヴィオラートが戻ってくるまでには、失敗の原因ぐらい解明しておきたいけど…」
コルベールが既に退出し一人になった工房の中で、ルイズはもう一度カリヨンオルゴルを総点検し始めた。

ヴィオラートは目を丸くして、『竜の砂時計』を手に持っていた。
ここはシエスタの故郷、タルブの村の近くに建てられた寺院である。
そこにこの『竜の砂時計』は祀られていた。
『固定化』のおかげか、かつての姿…輪の一部だけが欠けた姿を、『竜の砂時計』は保っている。
キュルケは興味なさそうにその『竜の砂時計』を見つめていた。
好奇心を刺激されたのか、珍しくタバサは興味深そうに見つめている。
ヴィオラートがあまりにも、呆けたように『竜の砂時計』を見ているので、シエスタが心配して言った。
「ヴィオラートさん、どうしたんですか?何か、まずいことでも…」
ヴィオラートは答えない。ただ、感動したように『竜の砂時計』を見つめるばかり。
「ルーンが教えてくれた。これは…時間を越えるアイテムだよ…」
あたりを、重い静寂が包み込んだ。
「時間を越える!?」
驚愕したキュルケの声が響く。
「ちょっと…時間を越えるって、そんなのありなの?」
「うん…あたしも信じられないけど、時間を止めたり、未来や過去に行ったりできる。壊れてるけど…直せると思う」
そこまで言うと、ヴィオラートはシエスタに向き直って、言った。
「シエスタちゃん」
「は、はい?」
呆然としていたシエスタははっとなって、ヴィオラートを見つめ返す。
「あなたのおばあちゃんが残したものは、他にあるの?」
「えっと…後は大したものは…お墓と、たしか日記があったはずですけど…」
「それを見せて」

シエスタの祖母のお墓は、村の共同墓地の一角にあった。墓石には、墓碑銘が刻まれている。
「祖母が自分で書いた銘を元にこの文字が彫られたそうです。何て書いてあるのか、わからなかったんですけど」
シエスタが呟いた。ヴィオラートはその銘を読み上げる。
「剣士エスメラルダ、異界に眠る」
「!!やっぱり!祖母の名前です!これで、間違いありませんね!」
シエスタははしゃいでヴィオラートの手を握ると、振り返って言った。
「じゃあ、日記も持ってきますね!ちょっと待っててください!」

「ふう、予定より二週間も早く帰って来てしまったから、皆に驚かれました」
シエスタはいそいそと手に持った日記をヴィオラートに手渡す。
シエスタの祖母がつけていたものだろう。
『破壊の像』の持ち主と同じ、過去の異世界からの闖入者。ヴィオラートと同じ、異邦人。
ヴィオラートはシエスタから受け取った日記を、注意深く、しかし手早く調べ始める。
「あった、神の…浮船…」
「神の浮船って、知ってるんですか?」
「知ってるよ。この世界だと小さな船は普通にあるみたいだけど…すごい大きな空飛ぶ船なんだ」
「そんなに大きいんですか?」
「アルビオンで見た船の…何倍だろ?あたしの世界の、神の食卓っていう山の上に降りてくるだけなんだけど」
ページをめくりながら、ヴィオラートは懐かしむように言った。
「近づいたらいきなり大砲を撃ってきて…死ぬかと思ったなあ」
「え…その…そんな巨大な船と戦ったわけ?一人で?」
キュルケがあきれて、ヴィオラートに問いかける。
「さすがにそれはないよ」
「ああ、そうよね。いくらあなたでも、それほど無謀ではないわよね」
「うん。友達二人と一緒に戦ったんだ。逃げられちゃったけど」
「…三人で?」
「三人で」
キュルケとタバサは絶句して、この錬金術師の言う事は本当なんだろうか…いや本当なんだろうな…と、
今までのヴィオラートの行いを勘案しながら、自分を納得させた。
その間もヴィオラートは日記を斜め読みして、世界や自分に関わる記述がないかどうか調べ続ける。
ふと、ヴィオラートの目が止まる。
「あたしの名前がある…!」
日常の中に、突然ヴィオラートの名前が現れたのだ。日付は…ちょうど八年前、今日のこの日。
「未来から来たという錬金術師、ヴィオラートに託した…壊れたものでも、直せるという…
彼女は『これで帰れる…』と呟いて砂時計の光の中に…あの壊れた鈴が彼女の役に立った事を祈る…」
その日の日記はそこで終っていた。次の日は、またいつもの日常生活が綴られているようだ。
「帰れるかもしれない…」
今まで漠然としか見えなかった希望が、現実となった。
「決めたよ」
ヴィオラートは皆を見渡して、力強く言い放つ。
「この『竜の砂時計』を直して、エスメラルダさんに会いに行く」
ルイズのいない今、ヴィオラートは自分の世界に帰る決意を固めた。


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