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ゼロのしもべ第3部-18

18話

「おう、とうとう完成したのか!」
 ドアが開く。
 ガラガラと音を立てて、車椅子が運び込まれる。
 その上には、山賊のような風体の男が座っている。全身、包帯だらけでまるでミイラだ。
「張飛殿。」
 敷島に説明を受けていたジョゼフが、振り返って近づく。手をとって、うんうんと頷き、
「お体のほうはよろしいのですか?」
「はっ。ゲートの固定化に成功したと聞けば、寝ていられん。」
 包帯の隙間からわずかに覗く目の周りの青たんがにまっと歪む。どうやら嗤ったようであった。
 張飛が、ズタズタの身体で戻ってきたのはまだ1週間ほど前のことである。
 ルイズの誘拐を土鬼と名乗る何者かに阻止された、のだという。
 その身体を見て一番驚いたのは、ほかでもないジョゼフであった。
 なにしろ張飛は九大天王でも1,2を争う猛者なのだ。現にジョゼフは、精鋭を誇る南薔薇花壇警護騎士団を、1人で翻弄する張飛を
見たことがある。実戦ではなく、模擬であったとはいえ、普通の人間にできることではない。
 張飛曰く、「最終的には心臓を槍で貫いた」らしいのだが、それでも驚くべき強さだ。つまりまだまだこの世界には隠れた強者が眠っ
ているという印だろう。
「とにもかくにも。この実験の成功で我々はドミノ作戦に全力を注ぐことができます。」
 GR計画は、九大天王が持ち回りで責任者となっていた。そのため、最低でも1人は抜けてしまう形となっていた。しかしこの成功で、
全員がドミノ作戦に全力を注ぐ下地が出来あがったのだ。
「張飛殿。これで心置きなく、アルビオンへ向かっていただくことができますな。と言っても身体が治っての話ですが。」
「おうよ!……これで船に乗らずにすめば、今すぐにでも行くんだけどよぉ。」
 てへへ、と照れ笑いをする張飛。その仕草がこっけいで、思わず笑いを誘われる。
「トリステインから、アルビオン遠征軍参加要求が内密にありました。返事をのらりくらりと延ばすことで、侵攻開始時期はコントロール
できる。あとは全ての準備を整えるだけ。」
 拳を握り締め、背後に邪気を含むオーラを放つガリア王ジョゼフ。
「見ていろ、バビル2世。あの空に浮く大陸が、貴様の墓場となるのだ!」

 時と場所は変わって、こちらはトリステインである。
「やっと出番が来たな。」
と、少し不満げにバビル2世。
「というか、もう本気でスーパー横山大戦にタイトル変えたほうがいいんじゃない?」
と、ものすごく不満そうなルイズ。
 とにもかくにもご立腹な2人は、残月を先頭に歩いていた。場所は首都トリスタニア、中でもアダルトチックな街角である。いわゆるゴ
ールデン街みたいな場所だ。
 あちこちに酒場が立ち並び、あるいは大人しか入っちゃいけないような店もある。派手な化粧をした女性が街角に立っているし、酔っ
払って反吐をぶちまける老人の姿もある。
「庶民の本音を仕入れるには、やはり酒に酔ったバカヤロ様から仕入れるのが一番!」
という残月の意見でこの街にやってきたのだ。なるほど、たしかに酔えばつい本音を漏らすこともある。ただの愚痴にしかすぎない場
合が多いだろうが、その原因を端的に示していたりもするものだ。あるいは街の噂なども早く流れ込んで来やすい。
 そんなわけで残月が常連だという店にアルバイトとして紹介してもらうことになったのだ。いつの間にそんな店に出入りしていたのか
非常に気になったが、それはプライベートに関することなのであえて聞かないでおく。
「話は変わるが、ルイズが賛同するとは正直以外だったな」
「あら、どうして?」
「いや、どうせ「なんでわたしが酒場でホステスなんてしなくちゃいけないのよ!」とかなんとか言うと思ったんだけどね。」
 「ふふん、甘いわね。」と余裕の表情で応えるルイズ。
「仮にも王女様直々の命令なのよ。そのためには、ホステスでもウェイトレスでもなんでもしてやるわ!……ところで、ほすてすってな
にするのかしら……?素直にうけとるなら主人、の意味よね。お店の運営でも任せてもらえるのかしら?」
 どうやらホステスという意味がわかっていないので賛同しただけのようだ。というかいきなり店主をできると考えているなんて、すごく
ポジティヴである。事実を知ったらどうなることやら。
 だがここで事実をしゃべると「やっぱやめ!帰る!」などと言いかねない。そのためあえて事実には触れず、だまくらかして連行して
いた。逆にあとでものすごく怖いことになりそうだが。
 残月が角を曲がる。バビル2世たちもそのあとに続く。さらに遅れること6秒、3人の男が角を曲がる。
 アルベルトたちだ。
 全員でおしかけても雇ってくれないことは明白である。そのため、この3人はあくまで客として店に通うことになっていた。客の立場か
ら噂話や情報、世論を収集できるということもあり、すんなりこの役目に決まったのである。
 アルベルトとカワラザキは、手製の服に身を包んでいる。いかにも肉体労働者、という感じだ。なにしろ、アルビオンとの決戦間近で
ある。街のあらゆる工房は戦争特需で大忙し。商人は糧秣や衣類、武器類などの消耗品に、鉄、木材などの資材まで仕入れちゃ売
り、売っちゃあ仕入れるで、どんなに小さな商店も修羅場と化している。なかでも造船所は空の大陸アルビオンを攻めるということもあ
ってフル稼働、てんやわんやの大騒ぎである。
 そのおかげで労働者が町に溢れ、アルベルトたちでさまったく目立っていない。が、逆に言えば間諜も紛れ込みやすいということな
ので、喜ぶべき事態かどうかは疑問符がつく。
 ということで、街の世論は「税は高いが、仕事は山ほどあって金はバンバン儲かるし、まぁいいほうかな?」という意見が大半のよう
であった。もともと、兵役義務のない平民にとっては戦争は貴族がやる別世界のことに過ぎず、勝手にやってくださいという雰囲気が
ある。おまけに年がら年中、どこかで揉め事があり、戦争があるのがハルケギニアという世界なのだ。どうしても第3者的な、どうでも
よさげな意見になるのは当然といえた。
 ただ、あくまでこれは建前も入ってのことだろう。酒場での情報収集では別の意見を手に入れることもできよう。
 ちなみに十常寺もついてきている。全身をローブのようなもので覆い、フードを深くかぶっている。いつもの格好に比べれば目立たな
いが、充分目立つ。ただ、街並みが街並みなので、あるいみマッチしているとも言える。
「ビッグ・ファイア様、ルイズ嬢。つきました。」
 ここです、と残月が宿屋兼酒場といった雰囲気の店を示す。なかなか流行っている店のようで、開店前の勝手口には酒類やツマミめ
いたものの材料になりそうな食材が山のようにつんであるのが見える。
「『魅惑の妖精』亭……?」
 看板を見上げて、ルイズがそこに書かれている文字を読む。なるほど、あれはそう読むのかとバビル2世が感心する。
 そういえば、この世界の字を読めないな、と思うバビル2世。勉強したほうがよいのかもしれない。
 ルイズのほうをちらりと見ると、あからさまに怪訝な顔をしている。なにか不穏なものを感じ取ったのだろうか。
「おお、ジェシカさん!あいかわらず美しい!」
 バビル2世たちに気づいたのか、勝手口から人影が覗く。長い黒髪をした美少女だ。その姿を見るや即座に挨拶をかます残月。
「おや、残月さんっ。ああ、その人たち?昨日、パパに雇ってくれないかって言ってた知り合いは?」
 ひょこっと勝手口から飛び出てくるジェシカか。ストレートの黒髪やなんやらが揺れる。その瞬間、
『ああ、なるほど。』
と、その場にいた人間は全てを理解していた。そう、なぜ残月がこの店の常連なのかという理由を。
「また貴様はあれか。黒髪か。胸か。」
 ジェシカには聞こえぬように、ぼそりと。しかし確実に殺気を混めた声を出すルイズ。残月の額に嫌な汗が浮かぶ。
「ぐ、偶然ですよ。偶然。」
 ふっふふ、と平静を装うが、キセルが無茶苦茶震えている残月であった。
 そんな様子を見て、はて?とちょいと首をかしげるジェシカ。しかし次の瞬間、にかっと弾むような笑みを浮かべ、
「はじめましてっ。あったしー、ジェシカ。よろしくねっ。」
と握手をしてくる。いい笑顔だ。スマイル1000円である。カラッと晴れた5月の空のような、人好きのする笑顔とでもいうのだろうか。
直感的に、「ああ、接客業に向いているな」と理解できる笑い顔であった。
「え?ああ。る、ルイズ。えっと、ルイズ・ファイアよ。」
 先に決めておいた偽名を名乗るルイズ。手を握ると、その目の前で、山の不動がたわわに揺れる。
「兄のマーズ・ファイアです。」
 バビル2世がこれまた偽名を名乗る。ガシッと、力強く握り返してくるジェシカ。
「んーと、パパは2階にいるから、案内するねっ。ちょおっとー、マレーネー」
 店の奥に向かって叫ぶジェシカ。はーい、なーにー?と金髪の少女が声を返す。
「ちょっーと、ここ頼むねー。さ、ついてきて。」
 ほいほーいと、了承する金髪少女の脇をバビル2世たちを引きつれ通り抜けるジェシカ。そのまま、階段を上っていく。そのあとをつい
て行きながらバビル2世は、雇い主になる父親とやらはどういう人物だろうか?と考えていた。
 その姿を見送った残月は、一言、
「やはり胸の大きさと心の広さは、比例するのではないか…」
と阿呆なことを考えていた。

 銃士隊、という組織がある。
 ワルドの裏切り、タルブの戦でほぼ壊滅状態に陥った魔法衛士隊は、現在かろうじて無事なマンティコア隊のみが通常任務につい
ている。グリフォン隊・ヒポグリフ隊はマンティコア隊の指揮下に入り、かろうじて元の戦力の4割を保持しているという有様であった。
つまり、かつての威容を誇った魔法衛士隊は、すでに危篤寸前と呼んでよかった。
 そのためアンリエッタじきじきの命令で新設されたのが、銃士隊である。
 その名の通り、魔法の代わりに新式のマスケット銃と剣を装備する部隊だ。隊員はメイジ不足ゆえに平民のみ、それもアンリエッタ
の身辺を警護するという名目で、女性のみで構成されていた。
 隊長は、タルブの村で功績のあった「アニエス」なる傭兵を抜擢した。それも他の隊との折衝や任務に支障をきたす恐れがあるため
シュヴァリエに任命してのことである。
 銃士隊、またの名をその頭文字からとって『コマンドJ』と呼ぶ。
「あなたにはしばらく後、祝いの日を迎えんとするとき、転機が訪れるでしょう。南へと向かうことになるはずです。南の地で、光を見る
ときに、恐れ退くことがなければ、あなたの悲願を叶える道は開けるでしょう。」
という孔明の予言は的中したのであった。
 孔明に宮中で再会したアニエスは非常に驚いたが、逆に納得もした。つまりあのときこの男に目をつけられたおかげで王女の耳に
自分の存在が知られ、結果この地位を手に入れることができたのだ、と考えたのだ。
 以来、アニエスは孔明と多少は親しくしていた。仮にも女王直属の衛兵部隊の隊長と、国政を司る人間である。コミニュケーションを
とることは悪いことではないと思ったからだ。
 そのため孔明に呼び出しを受けても、なにも疑ってはいなかった。なにか用件があるのだろう、と考えていた。現にいままで何度か
受けた呼び出しは、すべてなにかの命令や指令があってのことであった。それにその呼び出しのおかげで、捜し求めていた復讐相手
を自身の手で捕らえることができたのだ。おまけに取り調べもまかされている。
 というわけもあって、アニエスはその日も何の疑いもなく孔明の政務室へ赴いた。中に入り、頭を垂れ挨拶をする。
「銃士隊隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン参上いたしました。」
 顔を上げる。孔明は、こちらを見ようともせず窓の外をぼんやり眺めている。声が聞こえていないはずはないのだが、多少不安にな
る。
「そう、固くならなくてもよいですぞ。」
 孔明が口を開く。ちゃんと聞こえていたらしい。固くならなくてもよい、といわれたにも関わらず、生真面目に「はっ」と返事をするアニ
エス。
「なにかご用件がおありですか?」
 アニエスは直立不動。身じろぎ一つしない。視線はまっすぐ孔明を向いている。
「なに、すこし野暮用がありましてね。」
 孔明が壁際まで移動し、そこにある椅子に座る。椅子の背後には、奇妙な形をした室内装飾品が置かれている。ガラス板を組み合
わせた、幾何学的な模様をした装飾具だ。
『なんだ、あれは…?』
とアニエスは思うが、それを聞きはしない。自分に関係のないものにあえて触れる必要はないからだ。関係があるならば、孔明が説明
することだろう。ただし、孔明を見ているとどうしても視界に飛び込んできてしまうのだが。
「実はですな…。」
 孔明が、椅子の肘掛の出っ張りを指で押した。途端に、背後の装飾具が明滅を繰り返しだす。
「すこし、身体を貸していただきたいのですよ。」
 明滅を見ているうちにアニエスの意識は薄れていく。まるで痴呆のようにぼうっと前方を見ているだけの状態になってしまった。おそ
らく、孔明の言葉など耳に入っていないだろう。
「さて。準備はよろしいですな。」
 扇を翻すと、壁の一部が溶けたようになって崩れ落ちた。
 崩れ落ちたそれは、アメーバのように地面を這い、アニエスへと近づく。
 そしてアニエスの身体を飲み込み、繭のように包んでしまった。
 アニエスを包んだ繭は、色を赤く変え、まるで鎧のようになって全身を包んでいく。
 やがて、アニエスは赤い鎧を着込んだ、男とも女ともつかぬものに変身した。赤の中に、目玉が二つ浮かんでいるようだ。その目玉
はアニエスのものではなく、鎧となったなにかのものであるらしい。
「『ブラック』は一度掘り起こされていたそうですな。さすがはロマリア、始祖の研究に関しては私の想像を超える執念をもっていたよう
ですなあ。」
 鎧が頷く
「では、今はまずこの水を司る国におかれたヴィンダールヴたる『幽鬼』を手にいれることが先決でしょう。風を司る国におかれたものは
さすがに両国が一触即発にある今掘り起こすことは不可能でしょうから。」
 くっくっくっと嗤う孔明。
「土を司る国におかれた、ガンダールヴたる『土鬼』は復活しすでに我が元にあることです。焦る必要はないでしょうが、万一がありま
すからな。それではエンシャク殿、よろしくたのみましたぞ。」
 地面に溶け込んで消えていくエンシャク。中のアニエスはどうなっているというのか。
「……さて、ここまではすべて予定通り…。あとは風を司る国へ赴き、『アロンソ・キ・ハーナ』を探し出すだけ…」

「んまー!あなたたちが残月ちゃんの言ってた兄妹ね!」
 ジェシカに案内された先にいたのは、イタリア人!という感じにヒゲと胸毛が生えた、ド派手な格好のおっさんだった。キツイ香水の
匂いで頭がくらくらする。
「すいません。部屋を間違えました。」
 ぺこりと頭を下げ、踵を返すルイズ。
  ルイズはにげだした
 男は体格からは想像できないような身軽さで、あっという間にドアの前に立ちふさがる。
  しかし まわりこまれた
「あーら。間違えてないわよ。わたくしが、魅惑の妖精亭のオーナーであるスカロンよ。」
 ちなみにようせいてい、と打つと雍正帝が現れるのは秘密だ。
「ミ・マドモワゼルと呼んで頂戴」
 すごく断りたい。もう、いますぐ拒否したい。だが、スカロンの威圧感が、それを許さない。
「すみません。妹は体調が優れないようなので、すこし休ませてやってください」
 あわてて助け舟を出すバビル2世。ルイズは本当にぐったりとして身体をソファに横たえてしまう。
「あらまー。どうしたのかしらね?」
 ……すごい迫力だ。これに比べたらヨミもかわいいものだ。
「お父さんの博打のせいでサーカスに売られそうになったって残月ちゃんに聞いたけど…。やっぱりそのせいで疲れてたのかしら?」
と、倒れた原因が呟く。それにしても……残月も変わった趣味があるものだ。(「違います。ありません。」残月、談)
「んー。なら先にお兄さんの仕事を説明しておくわね。皿洗いと、清掃。あと荷物運びにトイレ掃除。まずは雑用ってことね。妹さんのほ
うは妖精さんたちに混じってもらうわ。お客さんをもてなしてくれればいいのよ。」
「つまりホステスですか?」
 スカロンは指を立て、それを左右に振りながら、
「やーね。妖精さんよ、妖精さん。ホステスなんて下品な言葉を使わないで欲しいわ。」
 そして店名の由来から、その由来となった『魅惑の要請のビスチェ』を取り出し、見せてくれる。それにしてもこの男、ノリノリである。
けっしてノノリリ、ではない。
「あら?わたしって伝説のパイロットなの?」と反応してくれるスカロン。たぶん、この人はいい人だ。
「さて。もうそろそろ開店よ。」
と、表を見て言うスカロン。なるほど、外はほどよく暗く、人通りも賑やかになってきている。開店どき、というのがあるとすれば今がそう
なのだろう。
「お兄さん。妹さんを起こしてあげなさい。残念だけど、うちは簡単に休ませるほどぬるくはないわ。その程度の体調不良なら、店に出
て貰うことになってるのよ。」
 あうう、とルイズが起き上がる。よろよろと足元がおぼつかない。半病人状態だ。
「んもー。そんなことじゃダメよ。もっと元気を出しなさい。」
 と、スカロンの頭の上に電球が灯る。手を打って、ナイスアイディアとガッツポーズをする。
「そうだ。妹さんが元気になる情報を教えてあげるわ。うちには、『働く女性の胸が大きくなる』ってジンクスがあるのよ。その噂のおか
げで、わざわざうちへ働きたいって来る子もいるのよ。」
「なにやってんの、ビッ…いやお兄様!ぼやぼやしてる暇なんてないでしょ!?」
 ものすっごくやる気を出したルイズが、いつの間にか階段前に出て、バビル2世を促していた。

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