「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
呪文の詠唱とともに、ルイズの唇が少年の唇に重ねられる。
するとどうであろう… 少年の右手の甲には、奇妙な形のルーン(魔法文字)が、まるで家畜の焼印のように刻まれ出したのだ。
(ジュウ――――――――)
その痛みで、少年はとうとう目を覚ました!
するとどうであろう… 少年の右手の甲には、奇妙な形のルーン(魔法文字)が、まるで家畜の焼印のように刻まれ出したのだ。
(ジュウ――――――――)
その痛みで、少年はとうとう目を覚ました!
「あんた、誰? どこの子なの?」
ルイズはしょんぼりした様子を隠せないまま、貧相な少年を見下ろして誰何した。
これから下僕になる平民なのだ。コントラクト・サーヴァント(契約)が済んだからとて、なめられるわけにはいかない。
ルイズはしょんぼりした様子を隠せないまま、貧相な少年を見下ろして誰何した。
これから下僕になる平民なのだ。コントラクト・サーヴァント(契約)が済んだからとて、なめられるわけにはいかない。
「…………?」
少年は覚醒した。否、復活と言ってよいだろう。
彼は確かにあの時、心臓を銃弾で撃ち抜かれて死んだのだから。
(ぼくが死後復活するであろうことは、さまざまな予言書にも書かれていたとおりだが……。
ここはどこだ? 東京や奥軽井沢ではなさそうだし……)
少年は覚醒した。否、復活と言ってよいだろう。
彼は確かにあの時、心臓を銃弾で撃ち抜かれて死んだのだから。
(ぼくが死後復活するであろうことは、さまざまな予言書にも書かれていたとおりだが……。
ここはどこだ? 東京や奥軽井沢ではなさそうだし……)
「ちょっと、聞いているの!? 私は急いでいるのよ!」
(この怪しいカッコウをしたやつらはなんだ? 見たところ魔法使いそのものだが、
やつらが、というかこの騒がしいピンク髪の女が、ぼくを復活させたとでもいうのか?)
「はやく答えなさいよ! 耳がないの? 口がきけないの?
(きぃ―――――っ わなわなわな)」
(この怪しいカッコウをしたやつらはなんだ? 見たところ魔法使いそのものだが、
やつらが、というかこの騒がしいピンク髪の女が、ぼくを復活させたとでもいうのか?)
「はやく答えなさいよ! 耳がないの? 口がきけないの?
(きぃ―――――っ わなわなわな)」
「うるさいな。人の名前を尋ねる時は、そちらから名乗るのが礼儀だろう」
ヒステリーをおこしていたルイズは唖然とした。
たかが平民の小童ごときが、貴族に開口一番言うセリフではない。
ヒステリーをおこしていたルイズは唖然とした。
たかが平民の小童ごときが、貴族に開口一番言うセリフではない。
…いや、ひょっとしたら小童なのは見た目だけで、何か強大な力を秘めた存在なのかも知れない。
きっとそうだ、そうに決まっている。
なにしろこの私が全身全霊をこめて召喚した使い魔なのだから。
なんかすごいふんぞり返ってるし。
きっとそうだ、そうに決まっている。
なにしろこの私が全身全霊をこめて召喚した使い魔なのだから。
なんかすごいふんぞり返ってるし。
「わ、私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
「ずいぶん長い名前だな。まあいい、ぼくは松下一郎。
…たぶん君たちは知っているだろうが、『東方の神童』だよ。
『悪魔くん』などとも呼ばれていたがね」
「ずいぶん長い名前だな。まあいい、ぼくは松下一郎。
…たぶん君たちは知っているだろうが、『東方の神童』だよ。
『悪魔くん』などとも呼ばれていたがね」
「と、東方!? あ、悪魔ですって!?(ふはっ)」
「ミス・ヴァリエール! 下がりなさい!!」
コルベールが進み出て叫ぶ。
ハルケギニアにおいて、『東方の悪魔』というだけで自己紹介は充分だ。危険極まりない。
だがルイズは狂喜した。美しいかはともかく、これほど強力な使い魔はなかなかないだろう。
ちゃんと契約もしてあるから従ってくれるはずだ。
コルベールが進み出て叫ぶ。
ハルケギニアにおいて、『東方の悪魔』というだけで自己紹介は充分だ。危険極まりない。
だがルイズは狂喜した。美しいかはともかく、これほど強力な使い魔はなかなかないだろう。
ちゃんと契約もしてあるから従ってくれるはずだ。
『東方の悪魔使い』ルイズ!
なんという力と畏怖に満ちた、ミリキ的な二つ名であろう!
「嘘だろ…あのルイズがそんな凄い奴呼び出せるはずがない」
「まったく、バカバカしいことだニャー」
愚かな群衆のツブヤキも心地よいぐらいだ。うふふふふふふ。
なんという力と畏怖に満ちた、ミリキ的な二つ名であろう!
「嘘だろ…あのルイズがそんな凄い奴呼び出せるはずがない」
「まったく、バカバカしいことだニャー」
愚かな群衆のツブヤキも心地よいぐらいだ。うふふふふふふ。
「ぼくは悪魔ではないよ。むしろそれを使役する者だ」
「え?」
「なんだ、ぼくのことを知らずに復活させたのか?それよりここはどこだ? 君たちは何者だ?」
いぶかしげな表情を浮かべながらも、現状を確認しようとする『悪魔くん』。
「え?」
「なんだ、ぼくのことを知らずに復活させたのか?それよりここはどこだ? 君たちは何者だ?」
いぶかしげな表情を浮かべながらも、現状を確認しようとする『悪魔くん』。
コルベールが、警戒しながらも彼の質問に答える。
いまのところ暴れる様子はないが、下手に刺激するのはまずい。
「ここはハルケギニア大陸のトリステイン王国、トリステイン魔法学院。
我々はあなたを召喚したメイジ(魔法使い)ですよ、『悪魔』くん。」
いまのところ暴れる様子はないが、下手に刺激するのはまずい。
「ここはハルケギニア大陸のトリステイン王国、トリステイン魔法学院。
我々はあなたを召喚したメイジ(魔法使い)ですよ、『悪魔』くん。」
「召喚だって? まさかぼく自身が召喚されるとは思わなかったな。
メイジはともかく、そんな大陸も国名も、知っている限り記憶にないんだが」
「お、おいおい説明するわよ! とにかく契約は済ませたんだから、
どんな強力な悪魔でも悪魔使いでも、あんたは一生この私の下僕なんだからね!
さあ、御主人様とお呼びなさい!」
ルイズは激しい疲労と困惑で混乱し、早く使い魔を従えたいと焦っていた……。
メイジはともかく、そんな大陸も国名も、知っている限り記憶にないんだが」
「お、おいおい説明するわよ! とにかく契約は済ませたんだから、
どんな強力な悪魔でも悪魔使いでも、あんたは一生この私の下僕なんだからね!
さあ、御主人様とお呼びなさい!」
ルイズは激しい疲労と困惑で混乱し、早く使い魔を従えたいと焦っていた……。
だが……彼は小ばかにしきった口調で拒否した。
「御主人様? これまた調子のいい話だなア。
知識だって力だって、ぼくよりも上回ってなきゃア、
主人でも先生でもないよ」
「なんですって!?」
「まあまあ、ミス・ヴァリエール。彼には彼の考えもあることだから」
「きみ、止めるな! こんな家ダニのような小娘……」
「家ダニ!? 家ダニとはなによ!!!」
「家ダニで気に入らなければ、シラミだって油虫だっていいんだぜ」
「ひどすぎる!!!!」
「き、きみ、口がすぎるよ」
「俺ア、こいつの高慢ちきな態度が始めっから気に入らないんだ!
禿頭、そこをのけっ!! ぼくにはこんなものにかかづらわっていられない、
大きな使命があるんだ!」
「御主人様? これまた調子のいい話だなア。
知識だって力だって、ぼくよりも上回ってなきゃア、
主人でも先生でもないよ」
「なんですって!?」
「まあまあ、ミス・ヴァリエール。彼には彼の考えもあることだから」
「きみ、止めるな! こんな家ダニのような小娘……」
「家ダニ!? 家ダニとはなによ!!!」
「家ダニで気に入らなければ、シラミだって油虫だっていいんだぜ」
「ひどすぎる!!!!」
「き、きみ、口がすぎるよ」
「俺ア、こいつの高慢ちきな態度が始めっから気に入らないんだ!
禿頭、そこをのけっ!! ぼくにはこんなものにかかづらわっていられない、
大きな使命があるんだ!」
『悪魔くん』は額に青筋を浮かべ、奇妙な拳法のような構えをとると、
聞きなれない魔法の詠唱と精神集中を始めた!
「ミ、ミス・ヴァリエール! 早く逃げなさい!」
「なんで逃げる必要があるのです!!」
「いくぞーーーッ!!」
聞きなれない魔法の詠唱と精神集中を始めた!
「ミ、ミス・ヴァリエール! 早く逃げなさい!」
「なんで逃げる必要があるのです!!」
「いくぞーーーッ!!」
『悪魔くん』が暴れだしたのを見て、周りの生徒たちも驚き退いた!
コルベールは、激昂したルイズを彼から引き離そうと、ドンと突き倒した!
「あっ」
彼女はどすんと音を立てて倒れ、地面に頭を打ちつけてのびてしまった…。
「きゅう」
コルベールは、激昂したルイズを彼から引き離そうと、ドンと突き倒した!
「あっ」
彼女はどすんと音を立てて倒れ、地面に頭を打ちつけてのびてしまった…。
「きゅう」
「私からよくいいきかせておきます。
今日のところは大目に見て、助けてあげて下さい」
「…ま、いいだろう… いろいろ聞かなくてはならない事もあるだろうし」
今日のところは大目に見て、助けてあげて下さい」
「…ま、いいだろう… いろいろ聞かなくてはならない事もあるだろうし」
こうして、春の召喚の儀式は終了した。
果して、彼は偉大にして強力な悪魔、または悪魔使いなのであろうか。
或は何か間違ったのではなかろうか……?
果して、彼は偉大にして強力な悪魔、または悪魔使いなのであろうか。
或は何か間違ったのではなかろうか……?
(つづく)