あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔のカービィ 07


「諸君、決闘だっ!!」
バラの造花を掲げ、天を仰ぎながらギーシュが叫んだ。
その叫びに呼応し、『ヴェストリの広場』に集まったたくさんのギャラリーからも大きな歓声が上る。
それらは、皆がこれから行われる戦いに胸を踊らせ、今か今かと始まりの時を待っている証拠だ。
娯楽の少ない生徒達にとって、貴族の誇りをかけた決闘は暇つぶしと賭の対象にしかならないようだ。
今も「俺はギーシュに銀貨20枚」「じゃあ大穴でピンクボールに銀貨15枚」といった声が聞こえてくる。
実際ギーシュも、自分の強さを誇示し、プライドを守るためだけにこの決闘を発案したのだ。
相手がメイドだろうがルイズだろうが使い魔だろうがどうでもいい。
なんとも薄っぺらい決闘である。
「さあ、お前の出番だ!」
熱気も最高潮に達しようかという時、先程の男子生徒が回収してきたカービィを広場の中心へ向けて放り投げた。
「ぽよーーーー!」
美しい弧を描き、なんとかカービィは広場に着地。
しかも着地した際、ちょうどギーシュと向かい合うような形になる。
「ほう……とりあえず、決闘へ逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」
「ぽよ?」
カービィはキョロキョロと辺りを見回し、自分の状況を確認した。
シエスタをいじめていた男が、自分と1対1で向かい合って佇んでいる。
カービィの脳裏にある場面が浮かび上がった。
それは彼が前にいた世界『プププランド』に来て間もない頃、仮面の騎士から戦いを挑まれた時のこと。
その時はギャラリーはこんなにたくさんではなく、荒れ果てた谷で行われた。
そして、結局それは決闘と銘打ったカービィを成長させるためのお芝居だった。
そんなことをぼんやり思い出していると、ギーシュがバラの造花を構えた。
「では、早速始めよう……二度とこの学園を見たくないようにしてあげるよ」
その言葉に身構えるカービィ。
星の戦士としての勘が、何かが来ると訴えてきたのだ。
ギーシュがバラの造花を振るうと、3枚の花弁が宙を舞いった。
ひらひらと地面に落ちてゆくと思ってカービィが見ていると、花弁が突然金属で出来た女性の像に変化したのだ。
しかもそれぞれに凶悪な武器を持っている。


「ぽ、ぽよぉ!?」
今まで様々な魔獣と戦い続けていたカービィだったが、これには流石に驚いた。
目の前に自分の何倍もある大きさの像が現れれば、当然の反応だろう。
「ボクの二つ名は『青銅』。よって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手させてもらおう。かかれ!」
3体のワルキューレが武器を手に、一斉にカービィへ向かっていった。

その頃、やっと広場へ駆けつけたルイズは、ギャラリーを押しのけて前へ前へと進んでいった。
この興奮様だともう既に決闘は始まっているのだろう。
(早く止めないと、カービィが……!)
人混みを掻き分け、漸く最前列に躍り出たルイズ。
そんな彼女の目に映ったのは、必死にワルキューレの攻撃を避け続けるカービィの姿だった。
3対1という圧倒的不利な戦いで、カービィは小さい体を生かした驚くほど機敏な動きで敵を翻弄している。
一方的な展開を予測していたギャラリーは大きく湧き上がり、少なからずカービィを応援する者まで出てきた。
そんな中、ギーシュはちょこまかちょこまか動くカービィに苛立ちを感じながらもワルキューレを操る手を止めなかった。
(ああいうボケた奴は絶対にどこかでヘマをする。その時がこのピンクボールの最期さ)
色ボケなバカでも軍人の息子、自分の勝利をギーシュは疑っていなかった。
隙が出来なくてもカービィが疲れるのを見越し、余裕を保って先頭を続行する。
そしてギーシュの望んでいた瞬間は訪れた。
カービィの主人の手によって。
「カービィ!!」
決闘をやめさせるため、とにかくカービィを呼ぼうとしたルイズだったが、これが仇になった。
「ぽよ?」
ルイズの声に反応してしまったカービィに、大きな隙が生じてしまったのだ。
ギーシュはニヤリとほくそ笑み、ワルキューレの持つハンマーの痛烈な一撃をカービィに加えた。
思わず目を背けるルイズ。
一部の女子生徒も悲鳴を上げた。
「ぷぎぃっ!」
壁に激突し、倒れ込むカービィ。
体の痛みに耐えて立ち上がろうとしたところを、ハンマーを持った2体のワルキューレ達が何度も殴りつける。
「ぷぎっ! うゅっ! ぼよっ!」
「もうやめて!」


柔らかい体のお陰でダメージは緩和されているが、殴られる度にカービィは体力を奪われていった。
ルイズがカービィに駆け寄ろうとするが、あまりに危険なため、級友達が必死にそれを止める。
そうしている内にカービィは傷だらけになり、動くことさえままならなくなっていた。
「はははは! やはりゼロのルイズの使い魔はこの程度だったようだね……さて、仕上げといこう」
ギーシュが命じると、2体のワルキューレが傷つき動けなくなったカービィの両腕を掴み、磔のようにしっかりと固定した。
そして、最後の1体ーー両手に剣を持ったワルキューレがカービィに近づく。
「貴族に刃向かうとどうなるか、その体に刻んでやろう!」
ワルキューレにサインを出し、その歩みを進めさせるギーシュ。
誰もが惨劇を予感した瞬間、ワルキューレの左腕が爆発を起こした。
左手と握られていた剣が地面に転がり、ワルキューレが足を止める。
『爆発』というワードで引っかかるのはただ一人をギーシュが睨む。
「……なんだね、ゼロのルイズ。神聖な決闘の邪魔をしないでくれないか」
「何が決闘よ! こんなのまるで公開処刑じゃない!」
「人聞きの悪い……ボクはただ貴族の礼儀を教えておこうと思っただけだよ。彼にね」
カービィを顎で指し、勝ち誇った表情をルイズに見せるギーシュ。
ルイズは級友の手を振り解こうとするが、
「やめておいた方がいい、魔法が使えない君に何が出来ると言うんだね? ……そこで見ているといい。使い魔に礼儀が刻まれる所を!!」
ワルキューレが右手の剣を振り上げる。
ルイズはその瞬間、最期の望みをかけて叫んだ。
「カービィ! 吸い込みよ!!」
「………ぽよ!」
ルイズの言葉に、今まで朦朧としていたカービィの意識が覚醒した。
同時に口を大きく開け、強風と共に吸い込みを始める。
「くっ……無駄な足掻きを! この程度でボクのワルキューレをどうにか出来ると思ったのか!?」
ギーシュの言うとおり、青銅製のワルキューレはカービィの吸い込みにビクともしない。
(お願いカービィ! 頑張って!!)
ルイズはカービィの吸い込みの風でワルキューレを転ばせる、若しくは吸い込んでしまうことを最後の切り札と考えていた。


それしかカービィには手はなく、これが失敗すれば本当に終わりだとおもっていた。
しかし、ルイズの予期せぬところで確実に吸い込まれている物が1つだけあったのだ。
それはルイズが爆発させた際吹き飛んだワルキューレの腕……ではなく。
その腕が掴んでいた…………『剣』
強風の中、必死に祈っていたルイズは、カービィが『剣』を吸い込んだのを確かに見た。
直後、カービィは吸い込みをやめ、ワルキューレの拘束を強引に振り払っう。
「なっ! どこにそんな力が!?」
「はぁっ!」
驚愕するギーシュに目もくれず、カービィは回転しながら宙へと舞い上がった。
同時にその身が目映く輝き出す。

誰も目を背けなかった。
いや、背けられなかった。
その輝きがまるで『星』のように美しかったから。

輝きが収まり、カービィが姿を表す。
しかし、そこにいたのカービィではなく、緑の帽子に黄金の剣を携えた最強の剣士『ソードカービィ』だった。
「え、ええっ!? か、カービィ……!?」
「な、なんだ!? 何の手品だ!? くそっ!ワルキューレっ!!」
カービィの変身に動揺したギーシュは、カービィの一番近くにいたワルキューレを向かわせた。
しかし、今のカービィにはそんな行き当たりばったりの戦法は通じない。
向かってくるワルキューレの動きを見切ると、剣を構えた。
するとカービィの左手のルーンが輝き出す。
『百裂斬りっ!!』
目にも留まらぬ剣捌きでワルキューレを滅多切りにするカービィ。
最後の一振りを浴びせると、ワルキューレは文字通り百のかけらに分断された。
「う、嘘だっ!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!!」
あっさりワルキューレを倒されたギーシュは錯乱し、自分が出せる残り全てのワルキューレをカービィに向かわせた。
もう隊列も連携もあったものではない。
とにかくギーシュは目の前にいる『ピンクの悪魔』を消し去りたかったのだ。
向かってくるワルキューレの数は6体。
カービィは飛躍し、剣を掲げる。
その時、頭に始めて決闘をした相手――メタナイトの言葉が鮮明に蘇ってきた。


『剣心一体となれば、届かぬ距離にも刃は届く! 疑うな、教えてやろう!』
『剣という破壊武器は、使いようによっては……風になるのだ!』
『ソードにエネルギーを蓄積し放出する。これぞ………』
『『ソードビーム!!』』
剣とルーンの輝きが共鳴し、エネルギーが唸りを上げる。
カービィは湧き上がる力を感じ、そのすべてを剣に乗せて振り下ろした。
剣から輝くエネルギーの刃が放たれる。
ワルキューレ達は為すすべもなく斬られ……

―――爆発。
直視できないほどの爆風が収まり、生徒達は目を開いた。
そして目に入ってきた光景に、自分は夢を見ているのかと誰もが感じる。
ソードビームをまともに受けたワルキューレ達は跡形もなく消え去り、広場の地面が深く抉られていたのだ。
残っていたのはガックリ膝から崩れ落ちるギーシュと、元の姿に戻ったカービィのみ。
「ま、参った……」
静まり返るギャラリー。
カービィは悠長に砂埃を払い、ルイズの足下へ歩み寄った。
そしてただ一言。
「ぽよっ♪」
「カービィ……!」
カービィを抱き上げ、ルイズは嬉しさのあまり泣き出してしまっている。
ギャラリーは一気に爆発し、この小さき英雄を心から讃えた。

「はあ……何だよあれ、圧倒的過ぎるじゃないか……」
一方負けたギーシュはソードビームが抉った地面を苦笑いしながら見つめていた。
精魂尽きたといった顔をしている。
「でも…………負けたのは確かだ……」
ギーシュは気を抜けばへたり込んでしまいそうな足に鞭を打ち、自分を打ち負かした相手へと近づいていった。
賞賛と謝罪をするために。


新着情報

取得中です。