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使い魔のカービィ 06


教室の掃除を漸く終わらせたルイズとカービィは、昼食を取りに本塔へ向かっていた。
シエスタは昼食の準備のため途中で掃除を抜けてしまったが、殆ど終わらせてくれたので、思いの外早く済んだのだ。
もちろん、目覚めてからはカービィもゴミ捨てを手伝った。
粗大ゴミと化したイスを運んだり、ルイズやシエスタが届かなかった窓を拭いたり。
自主的に手伝いをするカービィに、ルイズはやっぱりカービィを喚んで良かったと改めて実感したのだった。
因みにカービィが窓を拭くため飛び上がった時、飛べることを知って狂喜乱舞していたという。
閑話休題。
食堂へ辿り着いたルイズ達は、早速昼食に――
「まて!」
――しようと思った矢先、マリコルヌを中心とした数人の生徒がルイズとカービィを取り囲んだ。
「何よ、風邪っぴき。用があるなら早くして?」
「だから僕は風邪っぴきじゃない! そ、それよりルイズ! お、お前、そいつを食堂の中に入れる気か!?」
「そうだけど、何よ」
何か問題でも? といった表情でマリコルヌ達を見るルイズ。
「何じゃない! その悪魔を食堂内に入れないでくれ!」
「悪魔?」
「そのピンクボールだ!」
「カービィが? 馬鹿馬鹿しいわね」
無視して食堂へ入ろうとするが、他の生徒が入り口を固めて入ることが出来ない。
「何よこれ! どういうつもり!?」
「それはこっちの台詞だ! ルイズは朝の悲劇を繰り返したいのか!?」
「朝? ……………あぁ」
ルイズは漸く足止めを食らっている理由が分かった。
要するに『吸い込み喰い』に怒った生徒達が、カービィを危険視してこんなことをしているのだろう。
尤も、ルイズはカービィの能力のが凄かった印象が強すぎ、忘れかけていたのだが。
「あんた、まだ根に持ってたの?」
「当たり前だ! 僕が今まさに手を付けようとしていたローストチキンが! 僕の手をすり抜けて飛んでいってしまったんだぞ!? こんがり焼けた皮やジューシーなもも肉を食べるのを楽しみにしていたのに!」
その後もマリコルヌは、カービィに食われた朝食のメニューを一品一品恨めしそうに語っていった。
それも唾を撒き散らし、脂汗をかきながら。
食べ物の恨みが恐ろしいとはよく言ったものだ。


しかし、いい加減にルイズは目の前のマリコルヌが鬱陶しくなってきた。
確かに1つのテーブルの朝食をすべて食べてしまったカービィはやりすぎだ。
実際ルイズも危うく朝食を食べ損なうところだった(違うテーブルにいたキュルケから分けてもらい、何とか事なきを得たが)
だが、マリコルヌの恨みなどルイズとカービィにとってはそれこそ知ったこっちゃない。
「分かったわよ! じゃあカービィが食堂内で暴飲暴食しないように私が躾ればいいんでしょ!! まったくどいつもこいつも意地汚いわね!!」
もちろん朝の出来事を棚に上げた発言だが、本人は気づいていない。
とにかくカービィを食堂に入れるという意地が彼女を駆り立てたのだ。
しかもかなりの気迫が籠もった表情だったため、それに反対する生徒は誰もいなかった。
有無を言わせる気もさらさらなかったが。
彼女の目の前にいたマリコルヌなど、気迫を真正面から受けたため少し怯えていた。

こうして食堂に入ることが出来たルイズとカービィだったが、ルイズはやはり視線が集まってきていることに気が付いた。
それと同時に気が付く。
朝の一件の影響はかなり大きかったらしく、今まで『嘲笑』だった視線が『警戒』に変わっていたことに。
ルイズはそれが少しいい気分で、居心地も悪くなかった。
今までゼロと自分を笑ってきた者達が、自分(の使い魔)を恐れているのだ。
それだけでも少しだけ誇らしい気分になれた。
と、ルイズが優越感に浸っている下で、カービィが目を輝かせている。
「ぽよー♪」
「カービィ」
「……………ぽよ?」
ルイズはしゃがんでカービィの目を見つめると、少し厳しい口調で話し始めた。
「いい、カービィ。朝みたいにここで吸い込みを使っちゃ駄目よ! 」
「ぽよ?」
「そうねぇ、次に使ったらご飯抜き! 分かった!?」
「ぽよぉぉ! ふぃ!」
やはりご飯抜きは辛いのだろう。
カービィは大きく頷くと、今にも料理に飛びつきたい衝動を抑えた。
(よし……マリコルヌの言うことを聞くのは癪だけど、確かに使い魔の躾はしっかりしなきゃ)
そう、カービィは精神的にも、恐らく肉体的にもまだまだ子供なのだ。
これから先の為にも、今からしっかり躾なければならない。


ルイズは自分の使い魔の教育方針を決定し、まずは空腹を埋めるために席についた。
もちろんカービィは床に座らせて。
――結果から言おう。
この教育方針は後にあっさりと崩れ去る。
それはまた先の話なので、今は置いておく――
ルイズが食事を始めて数十分たった頃。
カービィは少し多めに用意されていた使い魔用の食事をあっさり食べ終え、暇を持て余していた。
ルイズを見るが、しばらく食べ終わる気配がない。
仕方なくトレイの上の食器を持て余しながら1人遊びをしていた。
「どうしてくれるんだ!?」
「ぷいぃっ!?」
突然食堂内に響いた怒鳴り声に驚き、皿を落としそうになるカービィ。
反応が早かったため、何とか落下を防ぐことは出来た。
「ふぃー……」
「? 何かしら」
ルイズもその声に気が付いたらしく、食事を中止した。
声がした方には大きな人だかりが出来ており、その中心には2人の人物。
よく見てみると、シエスタがギーシュに何かを問い詰められているようだ。
気になったルイズはカービィを連れ、人だかりへと近づいていった。
「ねえ、何の騒ぎ?」
「ぽよ?」
「み、ミス・ヴァリエール、カービィさん……」
ギーシュに何度も何度も頭を下げていたシエスタの目には、涙と恐怖の色が浮かんでいた。
ただ事ではないと判断したルイズは、シエスタから詳しい事情を聞いた。
なんでも、ギーシュが落とした香水の小瓶をシエスタが拾ってあげたらしいのだが、それが原因でギーシュの二股がバレてしまったらしい。
ギーシュの両頬が真っ赤になっているのはそのせいだ。
それで怒りの矛先をシエスタに向けたギーシュは、二股の原因をシエスタに全て擦り付けようとしていたというのだ。
「なるほどね。ギーシュ、二股なんかしてるあんたが悪いのよ」
「ぽよっ!」
厳しく目つきでギーシュを睨む2人。
カービィは二股がどういうものか理解していなかったが、シエスタがギーシュにいじめられているというのは分かったようだ。
ルイズに感化され、周りの生徒も一斉にギーシュを非難しだした。
「そうだギーシュ! お前が悪い!」
「そのメイドに謝れ!」
自分が不利な状況になっていくのを感じ、ギーシュは追いつめられていった。


しかし、彼にも貴族としての意地とプライドがあるのだ。
ここで非を認めてしまうことは出来なかった。
「し、しかし、ボクは小瓶を渡されたとき知らないフリをしたんだ。それに合わせるくらいの機転があったっていいじゃないか」
「そんなのあんたの都合でしょ? シエスタには関係ないわ。自業自得ね、天罰よ、て・ん・ば・つ」
「天罰、ぽよ!」
ルイズは至極冷たくそう言い放った。
しかし、それに逆上したギーシュは再びシエスタを睨みつけ、その腕を掴んだ。
「ひっ……!」
「とにかく! 全責任はキミにあるんだ! さぁ、どうしてくれるんだね!?」
周囲からの非難が更に激しさを増すが、ギーシュには聞こえていない。
自分のプライドを保つだけで精一杯なのだ。
ギーシュの怒りを腕から直に感じ取り、卒倒してしまいそうになるシエスタ。
「痛っ!」
「っ!」
と、ギーシュが小さな悲鳴を上げ、シエスタの腕を離した。
シエスタは何が起こったか一瞬理解しかねたが、目の前にカービィが現れたことで悟った。
ルイズの足下にいたカービィがギーシュの腕に体当たりしたのだ。
ギーシュはぶつかられた腕をさすり、凄みをきかせた目でカービィを睨んだ。
一方カービィはそのままシエスタの前に着地し、彼女を守るように佇んでいる。
「か、カービィさん……」
「くっ、使い魔風情が貴族に逆らう気かね!?」
「ぽよぉ!」
ギーシュが睨もうが怒鳴りつけようが、カービィは1歩も退かない。
その様子に何かを思いついたのか、ギーシュが口元を吊り上げる。
「確かお前はゼロのルイズの使い魔だったな。いいだろう、貴族がどれほど恐ろしいか、特別にたっぷりと叩き込んでやる」
そう言うとギーシュはバラの造花を1本取り出し、それでカービィを指した。
そして高らかに宣言したのである。
「決闘だっ!!」
「……ぽよ?」
瞬間、シエスタとルイズの顔が蒼白になった。
「ま、待ちなさいよギーシュ! 学院での決闘は禁止されているはずでしょ!?」
「それは貴族同士の話だ、使い魔とじゃない」
ギーシュ鼻で笑うと、食堂の出口の方へ向き直った。
「ヴェストリの広場で待っている!」
そしてギーシュは数人の男子生徒と共に去っていった。


周りの生徒達は急な展開に驚きを隠せないでいたが、『決闘』という2文字に目を輝かせ、次々とヴェストリの広場へ向かっていった。
「カービィ!」
ルイズは急いでカービィに駆け寄った。
とにかく、なんとか決闘だけは避けなければ。
もしギーシュとカービィが戦ったら、勝敗など目に見えている。
カービィを回収し、一緒にギーシュに謝ろうと思ったルイズだったが、それは叶わなかった。
「ぽょっ!」
「ルイズ、使い魔は借りてくぜ」
ギーシュについていた男子生徒が、あろうことかルイズより先にカービィを回収。
そのまま走ってヴェストリの広場へ行ってしまったのだ。
「ま、待ちなさい!」
「カービィ……さん……」
男子生徒を追おうとした矢先、ルイズは顔を両手で覆うシエスタを視界の端に見つけた。
カービィを追わなくてはいけないが、彼女を放っておくことも出来ない。
「シエスタ……」
「ミス・ヴァリエール……申し訳ありません……私のせいで、カービィさんが………」
心底申し訳なさそうに俯くシエスタ。
その顔には後悔、恐怖、悲痛、様々な感情が見え隠れしている。
この状態で決闘まで見たらそれこそ倒れてしまうだろう。
「……大丈夫よ。絶対に私が決闘なんて止めてやるんだから。カービィも怪我しないように、巧くやるわ」
「大丈夫……ですか?」
「私なら大丈夫。そうなんでしょ?」
ルイズはシエスタに微笑み、カービィと男子生徒の後を追った。
目指すはヴェストリの広場だ。
そして、今まさに、そこから星の伝説が始まろうとしていた。


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