あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔の夢-13

 偵察兼囮役としてタクミとミス・ロングビルが廃屋に入ってから早一刻。
 森の茂みで奇襲のタイミングを伺っていたルイズは今か今かとその瞬間を待ちわびていた。
「遅いわね あいつら。何のんびりやってるのかしら」
「そうピリピリしないの。来る時には来るんだから、じっくり待っていればいいのよ」
 戦いの専門家と自称するキュルケは手鏡で髪を整えつつ余裕を崩さない。
「……」
 年下の癖にシュヴァリエなんて称号を持つタバサは相も変わらず無表情に読書を続けている。

 あーイライラする。
 ねぇ、あんたたちには緊張感ってものがないの。
 自分達だけ涼しい顔しちゃってさ、こんなに気を張ってる私がバカみたいに見えるじゃない。 

「いや、あんたはバカでしょ、バカそのものじゃない」
 キュルケが頬を突き呆れた顔で言った。
「!? 何であんた、私の考えてる事がわかったのよ!? 」
「あなた、顔に出過ぎなのよ。腹芸とかできないタイプよね、絶対」 
 キュルケは片手をぶらぶらさせてからかうように言った。
「う……」
「賭け事とか弱そう」
 タバサも本のページを捲りながら淡々と告げる。

「ち、違うもん! あの犬が何も連絡も合図もしてこないから、だから……」
 ルイズは顔を真っ赤にして立ち上がり否定した。 
 キュルケ、タバサは呆けた顔でルイズのほうを見ている。 

 あれ、こんな風に言ったんじゃ私、あいつだけが心配でたまらないみたいじゃない!

「い、今のはなし! そんなんで言った訳じゃないから! ホントになしなんだから! 」

 ルイズが懸命に両手で待ったと示しても、二人はあらぬ方向を見てボーっとしたままだった。

 しばらくの間の後、ようやく口を動かしたキュルケがルイズの後ろを指差す。 

「ルイズ、後ろ……」
 言われた通り、後ろを向くと……、

 青空をバックに二十メイル程の大きさの巨大なゴーレムの姿があった。

「な、何!? 」
「見て分からない!? 『土くれ』のゴーレムよ! 」 
「いや、それはわかってるの…! それが何で急に出てくるのよ!? 」
「私に聞かれても分かる訳無いじゃない! 」
 ルイズとキュルケはお互いの顔を見合わせて混乱した。 

「出てきた以上は撃退するだけ」
 真っ先に冷静になったタバサが反応し、『エアハンマー』を放つ。
 ゴーレムに鋭い風の槌が当たり、右肩が裂けた。

「……ああ、そうね、じゃ私も! 」
 続けて落ち着きを取り戻したキュルケが杖を振る、『フレイム・ボール』を唱えた。
 巨大な火球が命中し、ゴーレムの左腿が吹き飛んだ。

 しかし、ゴーレムの前では一時凌ぎにしかならなかった。
 風圧で裂け目が生じた右肩を、火球で弾け飛んだ左付け根を見る見るうちに再生させていく。
 すぐに全身の自由を取り戻したゴーレムがルイズ達に狙いを定め襲い掛かる。

「無理よ、こんなの! 」
「退却」
 キュルケとタバサは一目散に逃げ始めた。

 自分はどうするべきか。
 二人と逃げるのかゴーレムと戦うのか。 
 迷っているルイズは廃屋の近くで組み合う二つの鎧の影を見つけた。

 一つは黒地に白の線が張り巡らされた鎧。
 品評会で見た『狂乱の環』の鎧、あいつは『デルタ』って呼んでた。 
 間違いない、あれが『土くれ』のフーケ。

 もう一つは、黒地に赤の一本線が流れている鎧。
 それを見るのはギーシュとの決闘の時からこれで二度目になる。
 あいつだ。

「タクミ! 」

 使い魔の夢


 オルフェノクによる世界支配を目論む巨大企業スマートブレインが
 いずれ誕生するであろう王を迎える為に開発した三本のベルト。
 デルタギアはその中でも最も初期に開発されたライダーズギアである。
 後に作られた二本のベルトとは違い、基本的にはどのような人間でも変身することが可能だが、
 デモンズスレートと呼ばれるスーツの胸部に備え付けられた闘争本能を刺激する装置は
 不適合な人間に変身後も力の一部を残留させると共にその者の人格を変貌させていく危険性も有している。

 そういった適合や出力に関しての不安定さを抱えながらも
 デルタのパワー、スピードは三本のライダーズギアの中でも最高レベルを誇る。
 安定性、拡張性を優先したファイズとはスペックに大きな開きがあった。
 その事実を証明するかのように、フーケのデルタはファイズを圧倒していた。 

 凄い、凄い、凄い。
 やっぱりこの鎧はとんでもなくすごい、目の前にいるこいつも敵じゃない。
 拳を突き出せば相手が繰り出してくる前に当たり、
 蹴りを放てば防御する隙も与えずに叩き込むことができる。
 反撃させるなんてもっての他だ、攻めて攻めて攻めまくってやる。

 猛攻に耐え切れず、ファイズは膝をついた。

 もう少し楽しめると思っていたんだけどねぇ……、
 足腰をふら付かせてさ、もうあいつも限界みたいじゃないか。
 あ~ああ、苦し紛れに左手を振りかざして……え、止めた!?

 ―――無防備だったデルタの左頬にファイズの本命の右拳が命中した。

 こんな簡単なフェイントにひっかかるなんてな。
 攻撃を受け続けながら巧は確信した。こいつはデルタの力を使いこなせていない。
 草加や木場、ラッキークローバーレベルの力量を持つならまずこんな手は通用しないだろう。
 目の前にいるのは自力で戦った経験はほとんどない素人、勢い任せで力を振るっているだけだ。
 これなら何とかなりそうだ。受けては捌きを繰り返し、的確に返しの一撃をお見舞いしていった。

 おかしいじゃないか、何でアタシの攻撃が当たらなくなってきてるんだい!? 
 いや、あいつの動きが急に良くなってきている!?
 そんなバカな、『狂乱の環』を身に付けたこのアタシが押されてるなんてありえない! 

 一度乱れ始めた呼吸はそう簡単に直せる物ではなかった。
 焦りの表情を浮かべるデルタの繰り出す攻撃は次第に大振りな物になっていく。
 幾らパワーとスピードがある一撃であっても
 攻撃に至る一連の動作を読むことができれば避ける事は造作も無い。
 加えてベルトとの戦闘経験においては百戦錬磨の巧である。
 デルタ、カイザ、ファイズ、いずれの特徴、癖も知り尽くしている。

 スペックで押しまくるフーケと積み重ねてきた経験を武器にして戦う巧。
 戦いの主導権は徐々に巧へと移り変わっていった。

 嘘だ、アタシは最強なんだ! 
 この力を得たアタシが誰かに負けるなんてコトあっちゃいけないんだ!

「うわぁぁぁぁぁぁあ! 」
 悲鳴に近い雄叫びを上げてデルタが突進していく。

 モロ当ててくださいといわんばかりにボディががら空きだ。
 片足をずらす最小限の動きでかわして、ファイズはお望みどおりデルタの胴体を蹴っ飛ばした。

「やるねぇ、相棒。随分と戦い慣れしてるじゃねぇか」
 背負われたままのデルフリンガーが口を出す。変身してるのに何でこいつはこのままなんだよ。
「うっせぇ……、ッ!」
 黙らせようとして、彼方から放たれた光弾がファイズの胸に当たった。

 やっぱ、こんなもんでくたばるタマじゃないか……。

 森の茂みに蹴り飛ばしたのがまずかった。
 銃弾だけでデルタは姿を現さない。格闘で敵わないと見るや、射撃戦で勝負を仕掛けてくるつもりか。
 いや、それとも…… 

 牽制の一発を食らわせた後フーケのデルタは深い森を逃げ回っていた。
 勝てそうにない相手とは無理に戦わない、退くべき時には退く。
 この切り替えの早さが怪盗として彼女を長生きさせる秘訣でもあった。

 何なんだい、アイツは! このアタシを打ち負かすなんてさ!

『狂乱の環』の力が以ってしても、あの男を倒すことはできないのか。
 だが、冷静になれ、クールになれ。正面からやり合う事が勝負の全てではない。
 ゴーレムと連携して戦う事ができれば……、
 一緒に来ているガキ共を人質に使えば……、いくらでも料理する方法はある。 
 何にせよ今は体制を立て直す事が最優先だ。 
 このまま逃げ切る事ができれば、また振り出しに……この耳を劈くような轟音は何だい!?

 薄暗い森林の中を眩いばかりに照らしながら突き抜けていく白銀の光。

「あいぼぉぉぉぉう! なんだぁぁぁぁ、これはぁぁぁぁあ! 」
 唸る風圧に晒されてデルフリンガーが喚きたてた。
「ホントうるさいな、お前は! 大人しくしてろ! 」
 アクセルフォームに変形したファイズは生い茂る木々の中を音速で駆け抜けていた。
「いやぁぁぁぁぁ! だめぇぇぇぇ! ちぎれちゃうぅぅぅぅぅう! 」
「いいじゃねぇか、そのまま千切れちまえよ! ちったぁマシになるかもしれないぜ! 」

 そんなバカなやり取りをしていると、森の奥深くに潜むデルタの姿を見つけた。

 逃げられるつもりだったのか、もうこれ以上誰も殺させはしない。

「お前はここで仕留める!」

 右腕に装着されたのはデジタルカメラ型パンチングユニット、ファイズショット。
 これから打ち放つのは必殺のパンチ技、グランインパクト。
 驚きの余り奴は何のガードも取れていない、こいつで終わりだ……!?

 不意に佇むルイズの姿が見えた。 何でアイツがこんな所に!? 

 その時できた一瞬の隙は、デルタに迎撃の姿勢を取らせるのには充分な刹那だった。 
 デルタはファイズに向け咄嗟にデルタムーバーを構える。

 グランインパクトの衝撃とデルタムーバーから打ち出された光弾が互いの体にぶつかり合い―――




「タクミ! タクミ! 」
「……キュルケ、か」
 次の瞬間に目に映っていたのは自分を心配そうに見つめているキュルケとタバサの姿だった。
「……俺は」
 ベルトが外れてファイズの変身も解けてしまっている、何があったんだろうか。
「最初に入った時の入り口の辺りから凄い音がしたもんだから、
 慌てて飛んで来て見たら貴方が木にもたれて倒れているのを見つけてね」  
 そうか、ぶつかった衝撃で後ろの木に打ち付けられてその時にベルトも外れてしまった訳か。
 そのまま俺は気を失って……、!?
「あいつは? 『土くれ』はどうした!? 」   
「ああ、安心して。『彼女』ならあそこよ」
 そう言って首を傾けたキュルケの方には全身をロープできつく縛り付けられたフーケの姿があった。 
 どうやら自分と同じような目にあってのたうちまわっている所を取り押さえられたらしい。
 それにつけても印象的なのはその顔だった。
 瞳は宙を泳いで、口元からは涎をだらしなく垂らしている。一種の廃人状態に近い。
 少し気の毒とは思うが、これで良かったんだろう。もう誰かを殺すなんて事はできない筈だ。
「まさかあのミス・ロングビルが『土くれ』だったなんてね。今年に入って一番のサプライズだわ」 
「何でわかったんだ?」
「まぁ、冷静に考えてみたらそう見てみないとおかしな部分が沢山あったから、かしら。
 一連の示し合わせたような行動とかは特にね。
 あと、『狂乱の環』を着けた彼女と戦っていたんでしょう? その場を見てたってルイズが話していたわ」
 そういえば、ルイズの姿が見えない。どこにいったんだ?
「お前達、一緒じゃなかったのか? 」
「そうよ、ルイズよ! あの子ったら一人でゴーレムの相手をするって、
 私たちに貴方の事をお願いって言ったら『狂乱の環』を持ってすぐに飛び出していっちゃって!」
 それまでの余裕の表情を崩し、キュルケは咳き立てるように言った。

 脳裏に浮かんだのは昨日の光景。
 勝ち目がないにも関わらず、巨大なゴーレムに一人で立ち向おうとするルイズ。
 まさか、今も……!

 あいつ!

「ちょっと、タクミ! 」

 制止するようにとの声も聞かず、節々の痛みを堪え巧は走り出した。 

「無茶すんな、相棒! さっきぶつかった傷がまだ癒えてないんだろう!? 」
「うっせえ! 」
 やかましい上にクソ重たいお荷物でしかないデルフリンガーを鞘ごと外して、その辺に投げ捨てた。
「チョット待て! 俺を見捨てるつもりかよ!? 」
「終わったらすぐに戻る、そこで大人しくしてろ! 」

 大きな地響きの音がする方に向かった先に、
 未だ健在し、暴走を続けるゴーレムとそれに立ち向かおうとするルイズの姿があった。
 その右手に持ったのはデルタフォン、腰に着けたベルトはデルタドライバー。
 変身して応戦するつもりか、無茶だ。

「やめろ! このバカ! 」 
 後ろからルイズにしがみついて、デルタフォンとベルトを奪い取った。
「放して! それを返してよ! あいつを倒すには変身するしかないでしょうが! 」
「何でお前がそうする必要があるんだよ!? 
 フーケの目を見たのか! お前、あんな風になりたいのかよ!? 」
 ルイズだって目の当たりにしたハズだ、あのイカレたような目を。
「う……、で、でも、やってみなければわからないじゃない! 」
「ルイズ! 」
「だって、だって、使い魔のあんたが必死に戦っていたのに、
 ご主人様の私が逃げっぱなしなんてこと、できる訳ないじゃない! 」
 それまでどこかヤケクソ気味だったルイズの顔が真剣な物に変わった。
「ねぇ、タクミ。あんた、いつか私に聞いたわよね、私に夢があるかって。ええ、あるわ。
 誰にもバカにされない、笑われないような立派なメイジになるのが私の夢。
 今はまだゼロのルイズだけどいつの日か必ず叶えてみせる。
 だから、今はこんなところで逃げてる訳には行かないの! 」

 言ってる内に、標的を確認したゴーレムがルイズ達に向けて迫ってくる。

 そんな時、タバサのシルフィードが二人を救うために飛んできたのだが、

「絶対に逃げたりなんかしないわ、私は戦うの! 」
 ルイズは相変わらずの一点張りだ。こいつは、どこまで……!
「いい加減にしろ! 死んだらお終いだろうが! 」
 巧はありったけの声を張り上げて怒鳴りつける。これには流石のルイズも気圧された。 
「で、でも……! 」
「行けよ! 」
 巧はルイズを無理矢理、風竜の上に押し上げた。
「あなたも早く」
 珍しく焦った様子でタバサが言った。
「いいから、お前等は行け」
「タクミ! 」
「いいから行け! 」
 無表情に遠くのゴーレムと巧を交互に見つめた後、タバサはやむなく風竜を飛び上がらせた。


 風竜に乗ったルイズ達が遠くに避難したのを見届け、巧は一人呟いた。 

「全く、面倒ばっかかけさせやがって」

 ルイズは既に空の上だ。聞こえてる訳ないのに、何故だか言葉が溢れ出てくる。

「なぁ、お前、夢があるって言ってたっけな」 

 デルタドライバーを腰に装着する。

「だったらなおさらだよ、こんなところでお前を死なせる訳にはいかない」  

 携帯電話型デバイス、デルタフォンに口元に当てて、音声入力を行う。
「変身! 」
『Standing By』

 デルタフォンをデルタドライバーに装填する。

『Complete』

 青のフォトンストリームが形成され、
 光の中からその名を表す合成音が響くと共にデルタがその姿を現した。

 地響きの音を上げ、ゴーレムが両手を振り上げて襲い掛かってくる。

「さっさと終わらせてやる」 
 デルタムーバーにミッションメモリーを挿入する。
『Ready』
 シリンダーが延長し、ポインターモードに変形した。

「チェック! 」
『Exceed Charge』
 集積されたエネルギーがデルタムーバーの先端に集中する。

 ゴーレムがやはり変わらない姿勢で近づいてくる。 

 主と同じ無防備なその巨体に狙いを定めマーカー弾を打ち込んだ!

 二十メイルのゴーレムは動きを束縛され、そしてその前方には巨大な青の三角錐が現われた。

 デルタは空高く飛び上がると、一回転前転を加えて、

「やぁぁぁぁ! 」

 三角錐に向かって、渾身の蹴りを叩き込む―――!


 腹部全体に錐がめり込んだ後、ゴーレムの遥か後方に着地するデルタ。

 前方には巨大なΔの文字が浮かぶ。

 デルタの必殺技、ルシファーズハンマーが直撃し、ゴーレムの巨体は崩れ落ちていった。

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