あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

レンタルルイズ5

イーグル号が浮遊大陸アルビオンに到着したころ、ワルドが口を開いた。
「ルイズ、結婚式なんだがね、ここで挙げないか?」
その申し出をさも嬉しそうにルイズは答える。
「それは素晴らしいですわワルド様。今なら何年後でも予約できますわ」
「ああ、そうだね…」
(もうあきらめたらいいのに…)
その様子をウェールズは本当に愉快そうに見ていた。
明日には死ぬ運命にある人間がここまですがすがしく笑えるものだろうか?
もしかして本当は戦争なんて起きていないんじゃないか?とすら思える。
「ウェールズ王子さま」
「なにかな?ミス・みかん」
「どうして笑ってられるの?」
みかんにしてみればそれは気になって当たり前だった。
しかし、今聞くことではなかっただろう。
ルイズや船員、心なしかオルトロスさえ落ち込んでいるように見えた。
そんな中でも王子が笑みを絶やすことはなかった。
「ミス・みかん。明日死ぬからこそ、今は楽しく過ごしたいのだよ」
その発言に老メイジが追い打ちをかける
「おお、王家に仕えること60年、これほど勇ましいお言葉を聞いたのはいつぶりのことでしょう!!」
とたん、湧き上がる歓声、いいしれぬ恐怖を感じるルイズとみかんを気にするでもなく船は港に着いた。


ウェールズはルイズたちを少し待たせてから手紙を持ってきた。
「大事に保管していたからね、持ってくるのも少しばかり時間がかかってしまった。すまない」
何度も読み返さねばこうはならないことが誰の目にも明らかだった。
「ウェールズ王子…」
「アンリエッタの密書、確かに受け取ったよ、大使の皆。心から感謝する」
今この場で笑みを浮かべているのは王国軍のみだろう。旅支度を済ませたふうの女子供は一様にうつむいていて表情が分からない。
「あの、ウェールズ王子、手紙にはなんと書いてあったのですか?」
「密書の内容を知ろうとするのは大使失格ではないかな?」
当たり前のようにそう返すウェールズを見たルイズは言葉に詰まった。
「ですが、王子…」
なおも食いさがろうとするルイズの肩をワルドがつかんで制止する。
ルイズはためらったものの、みかんが後を継いでしまう。
「ウェールズ王子、にげちゃおうよ、たたかうひつようなんてないよ!!」
一瞬だけ、その場が静かになる。
しかしそれは本当に一瞬だけだった。
すぐに兵士たちは用意されていた酒や料理を囲んでまた騒ぎを始める。
「ミス・みかん、そういう問題ではないのだよ」
「じゃあどういうもんだいなの?!」
困ったように笑うウェールズの代わりにワルドが答えた。
「みかんちゃん。もしウェールズ王子が亡命したとなると、僕たちの国も戦争になってしまうんだ。政治というのはそういうものなのさ」
二人が絶句しているうちにウェールズはばか騒ぎの中に紛れてしまう。
ワルドもそれに続いた。
後には名誉の死なるものが理解できない二人の少女のみが残された。


星空の下、戦場を知った少女達は肩を寄せ合い泣いていた。
みかんとルイズは話し合いたかった。
しかし話し合えなかった。
もう自分たちではどうにもできないことが分かっているからだ。
どうしようもないのは分かる。
諦める諦めないではなく、次に進まなければならないとも。
それでも涙は止まらなかった。
相手の体温が温かく感じられた。
澄んだ空気はなんだか肌寒かった。
涙がかれるころにはきつく抱きしめあっていた。
そうでもしないとダメになりそうだからだ。
「ルイズお姉ちゃん」
「なに?」
「お部屋、戻ろう?」
「そうね、それがいいわ」
手をつないで部屋に帰る二人の後を、オルトロスがしっかりとついていきたまにその手を嘗める。
まうで慰めるかのように。
二人が夢に落ちるまでオルトロスは二人の側で起きていた。
ルイズは、本来慰めに来るべきワルドが来ないのは彼なりの配慮だと解釈いしていた。
それが、翌日の悲しみをいっそう強めることになるなど微塵も考えなかった。


よほど泣き疲れたのか、ルイズが目を覚ましたのは太陽が真上を過ぎたころであった。
窓の外を見たルイズは焦った。
確か戦争は今日始まってしまうはずだ。
皇子の説得も何もかもがこれでは遅すぎる。
いや、自分の命の安全さえ危うい。
なんにしても一秒でも早く誰かに会わなければ。
そう思い隣のみかんをたたき起そうとするが、なぜかみかんがいない。
みかんがいなければ当たり前といえば当たり前なのだが、オルトロスもいないではないか。
敵地で朝目覚めてみれば周りにいるはずの仲間がおらず独りぼっちになっていた。
さながらB級ホラーのような恐怖におぼつかない足を叱咤し、なんとかベッドの外に出る。
ようやく心臓が落ち着いてきたところで昨日のあの場所からかすかに音が聞こえることに気づく。
とりあえず誰かがいる。
その事実に安心したルイズは少しの迷いもなく音のする方へと向かった。
そこに待ち受ける惨劇も知らずに。


その光景を見た瞬間、ルイズは心底あきれた。
なんとあの兵士たち全員が眠りこけているではないか!!
豪勢な食事に囲まれて頭から酒をかぶり泥のように眠っている。
今日が命日だの何だのと散々騒いでいたのに昼過ぎまで眠っているとは一体どういうつもりなのだろうか?
いろいろとつっこんでやりたくはあったが、まずはみかんと合流したい。
そしてできれば王子を説得して一緒にトリステインに帰るのだ。
姫様を悲しませたくはない。
そう思いルイズは近くの兵士の脇腹を、ある程度の、しかし決して弱くはない強さで小突き言い放った。
「ねぇ、ちょっと起きなさいよ。みかん見なかったかしら?」
しかしその兵士は微動だにしない。
まだ寝むっているのだろうか?
今度容赦のない平手打ちを叩き込む。
軽快な音が響き渡るが、そのものはおろかその場の誰一人として目を覚ましはしない。
悪夢にうなされだしたかのようにしだいに不安になってゆくルイズ。
じっとりと汗ばんだ手でその兵士をゆすり起こそうとして初めて、ようやく、その決定的かつ絶望的な異変に気づいたのだ。
「体温が、無い…!!」
へたり込み、ただ虚空を見つめる。
数秒、窓の外を見つめた後思い出したかのように全員を見回す。
やはり起きない。
どうあっても起きてはくれないだろう。
誰も息をしていないのだから。
これはきっと毒殺だ。
自分も王族の親戚であり、優秀すぎる母と父に囲まれて育ったのだ。
それぐらい分かる。
では誰が?
先ほどの物音の犯人が?
みかんはどうした?
再度きづいたようにあたりを見回し、壁にもたれ目を見ひらくウウェールズと目が合う。
身近な死をようやく理解した頭は限界を超え、ただ嘔吐を繰り返した。


みかんはどこ?オルトロスは?死んじゃったの?何で私は生きているの?
説明のつかない現状に恐怖と焦りを感じながらルイズは震える足でなんとか前に進んでいた。
目的地などない。
もはやまともな思考回路なんてものはない。
そんな彼女がみかんを庇うように立つオルトロスと対峙するワルドが出会ってしまったことは少なくとも幸運ではないように思えた。
みかんが、驚きと苦しみの目でこちらを見る。
オルトロスはただワルドを、そしてワルドは銃をみかんに突き付けながら、ルイズを見やり苦笑した。
「やぁ、ルイズ。僕のルイズ。やっぱり魔法の混ざった薬は無効化されてしまったんだね」
茫然と立ち尽くすルイズにそう言い放つワルドの表情は、やはり苦笑であった。
「ワルド…、何をしているの?」
しかしワルドは答えなかった。
一瞬も油断しまいとオルトロスに注意を払っている。
しかし銃口を向けているのはみかんだ。
これだけの距離があればオルトロスに飛びかかられる前にみかんを撃ててしまうだろう。
見ればみかんは結界をはっているではないか。
なぜ二人が戦っているのか?
決闘?
昨日の続き?
いや、仕切り直し?
…一体何をしているの?この二人は!!
「あなたたち!!こんな時に何してるのよ!!敵が攻めてきたのよ?!王子様が死んじゃったのよ?!」
「そうだね、ルイズ。僕が殺したんだ」
え?
何を、言って…
「僕が食事に毒を混ぜたのさ」
ワルド?
「いや、一人の例外もなく騒いでいたからね。簡単だったよ」
なんで?
「ミス・みかんはともかく使い魔は始末しておきたかったのだがね。睡眠薬のにおいで飛び起きってしまたんだよ。殺そうにも足が速くってね。ミス・みかんは是非とも仲間に入れたかったので彼女を背に乗せて逃げる使い魔ごと殺すわけにもいかずおいかけっこになってしまったんだ」
だからなんで?
「そうこうしているうちにミス・みかんが起きてしまってね。困ったものだよ。ルイズ、君まで起きてしまうとは」
どうして?
「彼女の力は素晴らしいじゃないか!!なんとも不思議な力だ!!僕が世界を手に入れるためにはぜひとも欲しい力だ!!」
その言葉に、ようやく、いまさらに彼女は理解した。
「ワルド、あんた、レコン・キスタ…!!」
「その通りだよ、ルイズ。僕にはミス・みかんの、そしてそれ以上にルイズ!!君の力が、才能が必要なんだ!!」」
信じられなかったし、信じたくはなかった。
しかし、あの死体も、目の前のワルドも現実だ。


つい、その場にへたり込んでしまった。
涙が頬を伝うが、ワルドの演説は終わらない。
「君には絶対に才能があるんだよルイズ!!僕は、君にはあの虚無の才能があると思ってるんだよ。大丈夫、虚無の魔法を使う手段はもう調べてあるんだ。君をゼロだなんて二度と呼ばせない!!僕と一緒に来るんだ!!」
私に虚無の才能が?
「そうだとも!!君さえ協力してくれれば必ずや聖地を奪還してみせる!!」
そんなことのために?
「これはとても重要なことなんだよルイズ。僕たちは真理を知る術と義務がある」
「そんなの要らないわ!!」
ルイズの杖がワルドをとらえるが、ワルドは表情を崩さない。
「無駄だよ僕のルイズ。ここじゃ魔法は使えないし使えるようになったなら僕は誰よりも早く魔法を唱えられる」
言葉に詰まるルイズを楽しそうに眺めるワルドの言葉にみかんは震えながらも、しかしはっきりとした敵意をもって答えた。
「おじさん…」
「なんだい?ミス・みかん」
「わたし、きめた」
その言葉にワルドは嬉しそうな表情を浮かべる
「仲間になってくれるんだね?!」
「ちがうよ?」
矢継ぎ早な返答にワルドはつまる。
そして優しい声で話しかけた。
「どうして仲間になってくれないんだい?それと、決めたって何をだい?」
ルイズもまた、みかんの言葉を待つ。
「おじさんをゆるさないことをきめたの」
静寂、そして失笑。
笑い声の主が語りかける。
「いったい何を許さないんだい?」
耳に響く笑い声にルイズはうつむいてしまう。
今この場を支配しているのはワルドだ。
平時の彼女であればたとえどんな状況であっても抵抗したかもしれないがこんな状況では立ち向かう気にはなれなかった。
みかんは、その笑い声を打ち消すかのように先ほどよりも強い口調でしゃべる。
「わたしのけっかいは、まほうを『ぜんぶ』消すわけじゃないんだよ?」
言葉の意味がわからない、そんな風に構えるワルドの杖を灼熱が包み込んだ。

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