あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのカボチャ1 『呼び出されしは緑黄色野菜の王』

死の神霊を巡る戦いは終わりを告げた。
ラロトアの首都ラボラトリに現れた黒い半球は姿を消し、暴れていた無数の屍の兵もアルセイフの王宮騎士団の活躍により掃討されていた。
それはこの地下に広がる鍾乳洞でも同様だ。屠る者は違えど、数多の屍の兵たちが本来の意味で屍をさらしている。
そして今、最後の兵が倒れた。
同時に彼の身体も限界に達した。安全装置が自動的に彼の『昇華』を収束させ、本来の意識を取り戻す。
瞬間、その場で崩れ落ちるように倒れこんだ。

「・・・すべ・・・て・・・・倒せたで・・・あるか・・・・・何とか・・・なる・・・・物で・・・あるな・・・・・」

疲労に掠れる声を零した存在、その姿を何と表現すればよいだろう?
身に付けた衣服は表現すれば道化師に近い。だがそんな物よりも、今も尚白き光を放つ両の手の腕輪よりも奇異な物、それは彼の頭だ。
まさしくかぼちゃである。南瓜としか言いようが無い。更に言うなら、万魔節(ハロウィン)にて作られる南瓜顔の灯篭そのままなのだ。
此処が彼の本来いた世界、地球の過去の西欧であれば、『カボチャのジャック』などという呼び方も思い出されたであろう。
だがこの闇に包まれた鍾乳洞には、もはや彼しか『生きる』者は存在していない。
『昇華』とは、己の意思をある特定の反応のみを残し最適化し、戦闘に特化する能力である。
それ故人の限界を超える身体能力を手に出来るが、それは同時に肉体への反動をも無視する物だ。
元々『昇華』を行う前から疲労の極致にあった彼である。もはや休息無しには指一本動かす力さえ残っていなかった。
だが、彼にとっては生きているだけで十分だと言えるだろう。
昇華の寸前己の死を覚悟していたのだ。それがこうしてまだ生きていられる。
再びあの手のかかる少女や純朴な神射手の少年と合間見えることさえ出来る。シアや教授にもあえるだろう。
これ以上何を望めと言うのだ。

「・・・・む・・・・・・・・・こ・・・れは・・・・・いかんで・・・ある・・・・・・」

だがカボチャ頭の彼を待っていたのは更なる困難だ。
遠方で始まった落盤、その余波がこの鍾乳洞にまで届いていたのだ。天井から落ちた小石が身動きの取れぬ彼の周りで小さな音を立てる。
その音は次第に大きくなり、拳ほどの石が落ちる様にまでなった。
もはやこの付近が崩壊するのも時間の問題であろう。

「これは・・・報い・・・・・・で・・・ある・・・か・・・・」

次第に石に埋もれながら彼は述懐する。
この世界に初めて降り立ったその時、彼は『昇華』により意識が無い状態にあった。
そしてあの勇敢な王子・・・いや、今は王弟の父王をその手にかけたのだ。
それにより、かの王国アルセイフは世継ぎを巡った戦が起こり、無数の命が散った。
だとすれば、今こうして抱いた生きる意志が潰えるのも無理も無いことなのかも知れぬ。
しかし、彼にとって果たすべき役割は全て成就している。
死の神霊は心ある者の手に保護され、この世界は崩壊する事は無くなった。
この首都で出会った子供達は無事に明日を迎え、長く見守ってきた少女は神射手により安らぎと温もりを得るだろう。
だとすれば、こうして闇の中で最後の時を迎えたとして何を嘆く必要がある。
(エンジュよ・・・イリスを頼むのである・・・)
もはや無数のセンサーを内蔵した『カボチャ頭』ですら、周囲の様子が見えなくなった。
いや、彼の視覚そのものが疲労によりかすんでいるのである。
だから、彼には『それ』がただ輝く光としか認識できなかった。
現れた銀色の輝く鏡は、身動きの取れぬ彼の目の前にある。
(闇の中で輝く光・・・既に我は黄泉路へ旅立とうとしているのであるか?)
無数の命を奪ってきた自分は光など似合わぬだろうに・・・そう苦笑しながら、疲労に震える指を無意識に伸ばす。

万魔節の主は二たび世界を飛び越える。


その姿が爆煙の中から現れた時、その場にいる大半の者達は目を疑った。

「まさか・・・あのルイズが魔法を成功させた!?」

だが、次の瞬間その驚きは嘲笑に変わり・・・再び困惑へと代わっていく

「って・・・なんだ、ルイズのやつ平民を呼びやがったぜ?」
「いや、あいつ平民か?平民にしては・・・というか妙に頭が大きくないか?」
「杖を持ってないから貴族じゃないだろ?・・・いや、人間なのか?」

そう呼び出されたのは、いささか奇妙な色合の服を着た平民のように見えた。首の下だけ見るならば。
だが、首の上は明らかに普通ではない。あの大きさ、形。あれは・・・

「か、カボチャ?」

そうである、まさしくカボチャだった。ご丁寧な事に大きさと言い、色合とイイカボチャそのものだ。
ゼロのルイズがカボチャ男を呼び出した・・・その事を笑えばいいのか驚けばいいのか。
出て来たモノが余りに微妙なだけに、周囲を取り巻く生徒たちも戸惑いを隠せない。
だが、それは当のルイズも同様だった。
(な、何よこれ~こんなのがでるなんて聞いてないわよ!?)
始めはルイズ自信も遂にサモン・サーヴァントの魔法が成功したと喜んだものだ。
そして周囲の反応と同様に平民っぽい姿に落胆し、ついでに頭を見て困惑してしまう。

「これ・・・作り物じゃないかしら?」

恐る恐る近寄りその頭に触れようとする。その足が止まったのは鼻に感じた異質な感覚だ。
それは貴族である彼女が普段かぎなれない匂い・・・血臭だ。
よく見ればその奇妙な衣装は、無数の返り血や、良く判らない液体で汚れている。
そして手が触れんばかりに近づいた今ならわかる、微かに光を零す両の手の腕輪。
これはもしや何かの魔法の品なのだろうか?
だとしたら、杖を持っていなくとも只の平民とは断定できるものではない。
何しろ造花を杖にする者も居る位だ。腕輪に偽装した杖が無い道理は無いように思える。

「な、何よ・・・何者なの!?」

そう思うのも無理は無い。カボチャ頭をただの被り物と仮定しても、その姿は十分に異質と言える。
だが・・・いくら傍で警戒しようとも、そのカボチャ頭は倒れ付し動く気配は無い。どうやら気を失っているらしい。
ならとルイズは思う。振り返り監督教師であるコルベールに確認代わりの問いをぶつけてみる。

「ミスタ・コルベール。サモンサーヴァントのやり直しは認められますか?」
「認める訳にはいきません。これは規則であり常識であり、仮にそのカボチャが平民であろうとも覆る事無い事実です」

およそ予想通りの答えが返ってくる。であれば覚悟を決める必要があるだろう。
ルイズはカボチャ男の傍らに座り込むと、未だ倒れたままの『彼』へと杖を向ける。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

そして、カボチャ頭の口らしき孔付近に口づけする。
・・・予想通りというか、やはりカボチャの香りがした。
ちなみに、言うまでも無くファーストキスだ。
だが、ルイズの中ではノーカンである。何しろカボチャなのだ。カボチャ相手にキスをしてカウントしていたら、サラダなど食べられなくなってしまう。
そんな事を思っているうちに、カボチャ頭の手にルーンが刻まれ・・・

「む・・・ぅ・・・?この痛みは・・・?」
「喋った!?」
「やっぱり人間か?」
「いや、カボチャだってたまには喋るかもしれないぞ?この前城下町で喋る剣の話を・・・」

ルーンが刻まれる際の痛みが気付けになったのか、カボチャ頭がうめき声を上げる。
周囲の驚きの声を無視し、コルベールが刻まれたルーンを確認しにルイズとカボチャ頭へと近づいてゆく。
その服の返り血に一瞬目を取られるが、まずは確認とばかりにその手に浮かんだルーンを確認する。

「これは珍しいルーンですな。それに・・・言葉を話す使い魔も珍しい」
「はて?・・・そなたらは何者であるか?我はラボラトリの地下で・・・はて之は如何なる事態なるか?」

どうやら完全に意識を取り戻したらしいカボチャ頭が戸惑ったように周囲を見回す。
ルイズはその様子を見下ろしながら、主人の威厳を見せようと胸を張った。

「誰かと問うなら自分から名乗るのが礼儀よ!さぁ、主になった私に名乗りなさい!!」
「主とな?何のことやら解らぬが、名を聞かれたのならば答えるが道理なるな」

そう言うと、体重が無いかのような身のこなしで一瞬にして立ち上がり、目の前のルイズとコルベールに芝居がかった一礼を送る。

「我が名はパンプキン。ハロウィンの主であり、死者達を招く迎え火のランタン。そしてカボチャの盟主にして緑黄色野菜の王」

その名乗りが余りに見事であった為、周囲の生徒達もあっけに取られるばかり。
今日風竜を呼び出した水色の髪の少女だけが、緑黄色野菜の王という件で目を光らせたのは余談である。
こうして、カボチャの王パンプキンはハルケギニアに降り立ったのだ。

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