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とある魔術の使い魔と主-42


「うおっ!」
 一言で言うなら、それは凄かったに限る。
 当麻達と少し離れた水面が突如輝きだし、生き物がいるかのように水という固体がごにょごにょと動き出す。
 のち、風船のようにプクッと膨れ上がり、様々な形に変化していく。当麻は、アメーバみたいなのを思い出した。水が輝きながらぐにょぐにょと動く姿は、何か気持ち悪い。
 当麻が呆然と見ている間に、モンモランシーのカエルがぴょこんと地上に上がった。そのまま跳ね続け、主の元へと向かう。
 モンモランシーは、それを迎えるかのようにしゃがみ込み、両手を前に差し出す。そこに乗っかったカエルは、自分の活躍を褒めてほしいと、ゲコッと鳴く。
「ありがと、きちんと連れてきたのね」
 モンモランシーは、あまり見せることのないとびっきりの笑みを浮かべて、カエルの頭を撫でる。
 ギーシュが何やら叫んでいるが、誰も気にかけない。
 モンモランシーは、カエルを手に乗せたまま立ち上がり、水の精霊に話しかけた。
「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で旧き盟約の一員の家系よ。もしわたしの血を覚えていたら、わたしたちにわかるやりかたと言葉で返事をしてちょうだい」
 凜とした口調で喋るその姿は、なにやら貫禄が見える。
 水の精霊は返答の代わりに、再び形状がぐねぐねと変わっていく。誰かが粘土をこねっているような錯覚を覚えながら、それは当麻達にもわかるような形へとなった。
 その姿に、モンモランシーはやや頬を赤く染め、ギーシュと当麻は目を丸くする。
 それは、紛れも無いモンモランシーの姿そのものであった。違う点をあげるとしたら、体が一回り大きい上に服を着ていない。
 ある程度予測していたとは言え、実際目の当たりにしたら、一言も発せないとはこの事を言うのだろう。
 無表情だった水の精霊――もといモンモランシーは笑みの表情へと変える。次に怒り、次に泣き、次に呆れ……人間が持つ感情を全て表情に浮かべていく。なるほど、これがこちらにわかるやり方なのだろう。
 それは美しいに限った。モンモランシー自身がもともとかなりの美人であったがゆえに、その効果は倍である。
 ようやく一巡したのか、再び無表情へと変わった水の精霊は、モンモランシーが最初に質問した内容に答えた。
「覚えている。単なる者よ。貴様の体を流れる液体を、我は覚える。貴様と最後に会ってから、月が五十二回交差した」
「よかった。水の精霊よ。お願いがあるの。あつかましいとは思うけどあなたの一部をわけて欲しいの」
 水の精霊は口を開いていない。なのに当麻達の耳の中に入っている。いや、耳の中にというより、脳の中に直接話しかけているような感覚であった。
(ん、一部……?)
 不思議であった。精霊の涙というのは、文字通り精霊が流す涙ではないのだろうか?
 当麻は、疑問を解消すべく、モンモランシーの肩をつついた。
「なあ、体の一部ってどういうことなんだ?」
「あのね……涙といっても水の精霊が流すわけないじゃない。涙ってのは比喩表現で、体の一部をさすのよ」
「ふーん……そりゃずいぶん物騒なことをするな」
「だから滅多に手に入らないのよ。街の闇屋に仕入れている連中は、どんな手を使って手に入れてるのかまったく想像もつかないわ」
 どこでも闇屋は酷いんだなー、と人事のように当麻は話す。
 すると、無表情であった水の精霊が笑みへと変わった。
「お、どうやら大丈夫なんじゃね?」
「断る。単なる者よ」
「そりゃそうよね。残念でしたー。さ、帰りましょ」
 何の躊躇いもなく諦めるモンモランシーに、当麻はずっこける。
「何さ、何だ、何ですか三段活用! んな早く諦めちゃったら攻略不可能になっちゃいますよ! つかテメエも笑いながら断るな! 悪意が感じられるぞッ!」
「ちょっとやめなさいよ! 怒らせたらどーすんのよ?」
 当麻の行動にモンモランシーは止めようとするが、当麻はそれをはねのける。
 ここで断るのはまあ予測はできていた。世の中ギブアンドテイクである。こちらが何かしなければならないのだ。
 そしてこういった場合、向こうも何かしてほしいと感じているのが多々ある。
「あー、水の精霊さんよ。何か困ってることあんだろ? そいつを俺らが解決したらあんたの涙を貰うってのはどうだ?」
 当麻はその事実を知っている。あくまでも漫画やゲームの話だが、魔法があるんだからおそらくは……。
 と、水の精霊が再び様々な表情を浮かべている。どうやらこれが悩んでいる状態であるのだろう。
「ねえ、なんで悩みがあるなんて知っているの?」
 モンモランシーもまた、なぜ当麻が知っているのか小声で問う。
「いや、ま見てなさい。そういう風にできちゃってるんですよ」
 ?マークを頭に浮かべるかのようにモンモランシーは首を傾げる。当然のようだが、理解できていない様子だ。
 すると、再び水の精霊が語りだした。
「いいだろう、単なる者よ。我に仇なす貴様らの同胞を退治してみせよ」
「退治、か?」
「さよう。我は今、水を増やすことで精一杯で、襲撃者の対処にまで手が回らぬ。そのものどもを退治すれば、望みどおり我の一部を渡してやろう」
「いやーよ。わたし、ケンカなんて」
「んなこと言うな……。つかお前そのまま帰っちゃったら女王陛下に報告しちゃいますよ」
 嫌がるモンモランシーを、当麻は半ば強制的に頷かせる。
「わかったわよ! 勝手にしなさいよ!」
 いや、もともとあんたのせいでしょーが、と当麻は突っ込んだ。


 水の精霊が言うには、夜中襲撃者が来るらしい。そして、魔法を使い、精霊が住む湖底の奥深くまでたどり着き、襲うのだと言う。
 三人は、ばったりその襲撃者と戦うつもりはない。奇襲を仕掛けて出来るかぎり事を安全にかつ早く終えたいからだ。
 そのため、水の精霊が教えてくれた木陰に隠れ、夜中になるのを待った。
 ギーシュは一人、持ってきたワインを飲み始めた。毎回無視され続けたので、無理矢理テンションをあげてかないと身がもたないようだ。
 一方の当麻とモンモランシーは、暇つぶしを兼ねて雑談を交わしている。
「しっかしまあ襲撃者とはねえ……水の精霊は強いんじゃないのか?」
「強いに決まってるじゃない」
 モンモランシーは口をむすっと尖らせる。
「ならその襲撃者もそうとう強いと考えなきゃいけないのか……? おいおいそれはさすがに不幸ですよ……」
「まあ風の使い手なのは確かね。水の精霊が相手なら、水に触れた瞬間負け決定なのよ。だから空気の球をつくって水に触れずにするのよ」
「んじゃまあそのままそいつが水の精霊を襲ってるのか? 斬ってもスライムみたいにくっつくんじゃないのか?」
「ええ、だからおそらく火の使い手がいるはずよ。強力な炎で体をあぶる。それで徐々に蒸発していって、気体になったら再び液体として繋がることができなくなっちゃうわ」
「つまり火と風の二つをもつ人間か、それぞれとして二人かのどっちかだな」
 不良相手にケンカで勝てるのは一対一まで。一対二なら危ういし、一対三なら迷わず逃げる。その程度の腕しかない。
 しかし、
 相手が魔法に絶対なる自信を持っているなら可能性は残されている。当麻が唯一勝てる要因があるといったらそこであった。
 幻想殺し――異能の力であれば、例え神様であろうと殺せるその力。魔法使いにとってこれは恐らく天敵になるであろう。
 これならば、たとえ相手がそうとうな使い手があったとしても、互角に渡り合える。いや、そうとうな使い手であればあるほど有利となる。
 当麻にとって一番怖いのは、魔法を過信しない魔法使いだ。
 ステイルやアウレオルスのような絶対的な力を持つものは、故に切り札は一つしかないし、イレギュラーには対応ができない。対して、土御門元春のように切り札へ過度な自信を持たない者は、それを補うために無数の手札を揃えておく。
 そうこう考えているうちに、二つの月が頂点をはさむように光っている。襲撃者が襲ってくる時間帯だ。
 当麻は気分を落ち着かせる深呼吸をする。敵が来るという事実に恐怖したのか、やや怯えた表情をモンモランシーは浮かべた。
「と、とにかくわたしは野蛮なことはだいっきらいだからあなたに任せたわよ」
「いやだからあんたが原因なんだから少し手伝ってくださいよ……」
 完全なる責任転換に当麻は肩を落とす。
「安心してくれモンモランシー。ぼくがいるじゃないか、ぼくのワルキューレがならずものどもを成敗してくれる」
 少し酔っているのか、顔が赤くなっている。なんというか説得力があまりない。
「いいから寝てて。あんたお酒臭いし」
「……えーっと。まあ任せるよ」
 なぜだろう。こんなにも不安が先行する戦いは初めてだった。


 その一時間後ぐらいだったのだろうか、岸辺に二人の人影があらわれた。二つの月が二人を照らすが、漆黒のローブを身にまとい深くフードをかぶっているので、性別すらもわからない。
 当麻は様子を見る。まさか観光客とは思えないが、確証はない。
 しかし、その二人組は、水辺に立つと杖を掲げた。
 見るからに呪文を唱えているようだ。
 間違いない、そう判断した当麻は、ギーシュに一声かけて二人の背後へと向かった。
 その間にも雲が月を隠す。しかし、暗闇になれたおかげか人影は以前はっきしと見える。
 距離は大体十メートル弱。決して短い距離ではないが、こちらのが一手早く動ける分その差はある程度埋められる。
 そういえば奇襲なんてした事ないなーと、自分の無鉄砲さにある意味関心しながらも足に力を込める。
 そのタイミングを見計らったかのように、ギーシュが呪文を詠唱した。二人がいる地点の地面が盛り上がり、大きな手のような触手が襲撃者の足に絡み付く。
 瞬間、

 ドンッ! と当麻は足に込めた力を爆発させた。

 しかし、襲撃者の対応も素早い。背の高いほうが地面が盛り上がると同時に呪文を唱えたのか、杖の先から溢れた炎が二人の足をつかむ土の触手を焼き払う。
 もう一人、体が小さいほうも呪文を唱えておったのか、足が自由になると身を捻ると当麻に向かって杖を振るった。
 エア・ハンマー、以前ワルドも放った事のある空気の塊が轟ッ! と襲いかかる。
「ッ!?」
 当麻は今までに養われた反射神経のおかげもあり、とっさに右手を前に突き出した。空気の塊は分散され、心地よい風へと変わる。
 しかし、その予想外の行動に足を止めてしまった。残り距離はまだ十メートルある。当麻は考えるよりも先に、再び駆け出そうとしたが、

 背の高い奴が視界から外れていた。

「なッ!」
 驚きの声の返答として、巨大な火の球が右方向から迫り来る。
 チッ、と舌打ちしながらも右手で弾き飛ばすように殴った。火の球は、蒸発したかのように一瞬で消え去る。
 当麻はそちらの方向に走ろうとするが、

 背後から殺気が感じられた。

 瞬ッ、と音もしない氷の矢が飛んでくる。右手で防げないのを悟って、当麻はぐるりと身をひねった。軸足を中心に、軸線を変えないまま、ほとんど横向きに体を変える。
 ピッ、と氷の矢は当麻の背中を掠めた。ツーと血が流れるが、こんなものは軽傷である。
(んなことより……)
 当麻は痛みを気にせず動き出した。二人が視界に纏まって入るような位置取りが必要であるからだ。
 その間にも迫り来る魔法を右手で打ち消したり、身を屈めたりしてなんとかやり過ごす。
 どうやら魔法戦において、二対一はかなり不利になるらしい。片方を打ち消している間に別のほうが呪文を詠唱する。コンビネーションはかなりいい。ゆえに手ごわい。
 当麻は一回水辺に立つ。背に湖を向けるここからなら、魔法を直接喰らうような心配は多分ない。
 と、襲撃者の動きが止まった。雲が月から離れ、さらには当麻が水辺に立ったおかげでより明るく照らされたらしい。
 その姿を見て二人が顔を見合わせるかのように二人の影が動く。
(どうしたんだ……?)
 当麻は首を傾げた。こちらを油断させる為の罠なのであろうか? しかし、先程感じられた殺気はいつの間にか消え去っている。
 すると、がばっとフードを二人は取り払った。
「キュルケ! タバサ!」
 どこからともなくギーシュの声が聞こえた。思いかげない展開に、当麻も目を疑う。
「何なんですかあ!? つか襲撃者っておまえたちかよ!」
「なんであなたたちがこんなとこにいるのよ!」
 当麻とキュルケ、二人は同時に叫んだ。


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