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ディセプティコン・ゼロ-6


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ミス・ロングビルこと『土くれのフーケ』は潜伏先の小屋で、戦利品と数枚の書類を交互に見やりながら感嘆の溜息を吐いた。

「まさか『火竜の息吹』が銃とはね……『破壊の槍』まで……」

学院の宝物庫より強奪した2つの秘宝、『火竜の息吹』と『破壊の槍』。
オールド・オスマンによって収集され、彼の管轄である学院宝物庫にて厳重に保管されていたこれらのマジックアイテムは、ハルケギニア中の菟集家達が法を犯してでも手に入れたがっている一品である。
無論、実際にはそれがどの様な代物であるかなど、彼等は知りもしない。
野心が為に手に入れようと画策する者など、それこそ皆無だろう。
所詮は『あのオールド・オスマンが危険視するマジックアイテム』という文句に惹かれただけの、金と暇を持て余した貴族連中の道楽なのだ。
実際に使用する為ではなく、自身がそれを手中に収めているという事で得られる満足感、そして他の貴族に対するつまらない優越感を得る為の散財。
そして自分は、そのお零れに与る只の盗賊。

「……ち」

つまらない事を考えた。
フーケは舌打ちをひとつ、2つのマジックアイテム―――――マジックアイテムと思われていた『武器』を手に取り、それらを見詰める。
どちらもそれなりの重量が在る為、チェストの蓋に立て掛けた状態ではあるが。

「……ま、売れない事も無いかね」

そう呟き、秘宝の異様さに目を細める。
土系統のトライアングルメイジである彼女には、秘法に用いられている数々の技術と素材、その異常性が細部まで理解出来た。



神懸ったまでに正確な造形のライン。
複雑にして、単純な操作で扱える機構。
使い手にこれでもかと馴染む、人体の構造を計算し尽くしたデザイン。
正確に遠方を映し出す、見た事も無い望遠レンズ。
煌びやかな装飾とは無縁の、周囲の場景に潜む事を第一とした配色。
それなりに重いとはいえ、ハルケギニアに存在するどの素材よりも硬く、そして軽い金属。
一部に用いられた、原料すら不明の奇妙な素材。



これが銃だなどと言われて信じる者が、果たしてどれだけ居る事か。
コルベールの資料に記された威力とも併せ、マジックアイテムだと言われた方が余程納得出来る。
そもそもハルケギニア中のメイジを集めたとして、これに用いる弾薬の1つたりとて錬金出来るものか。
まさしく、人の手によって創られた代物ではない。

「……売る前に使っちまうってのも手だねぇ」

『火竜の息吹』をチェストへと降ろし、『破壊の槍』を構える。
飛び出した握りと肩当て、そして望遠レンズの組み込まれた照準を除けば、黒塗りの先細りしたデザインは、成程、槍に見えない事も無い。
フーケはコルベールの解析結果に従い、折り畳まれた握りを引き起こし、現れた引き金を引く。
動かない。

「あの先生も迂闊だね」

フーケの白く細い指が、引き金の上、小さな摘みへと伸びる。
コルベールの資料では、動かす事が出来なかったとある、小さな摘み。



「あと一息だったのにさ」





微かな音と共に、摘みが位置を変える。
フーケの耳に聞き覚えの在る律動的な重低音が飛び込んできたのは、それとほぼ同時だった。





壁を破壊して学院外へと逃亡するゴーレムを目にした時、ルイズ達3人の脳裏を過ぎったのは『土くれのフーケ』という名称だった。
トリステイン中の貴族から希少なマジックアイテムを強奪し、その場に領収の書置きを残すという愉快犯。
巨大なゴーレムを用いての破壊活動の末に目的の品を奪い去る事も在るとの情報から、3人は目前のゴーレムを操る者こそがフーケだと確信した。
ルイズは咄嗟に、ゴーレムの歩みを阻止せよとの命令をブラックアウトに下す。
しかし返された応えは、デルフを通しての拒否だった。
激昂するルイズに、デルフはブラックアウトの真意を伝える。

「あのゴーレムは囮だ。あそこにゃ誰も居ねえ。見てな、そろそろ崩れるぜ」

果たしてその言葉通り、巨大なゴーレムは彼女達の見詰める先で、ぼろぼろと崩れ始めた。
呆然とする彼女達を乗せたまま、崩れ落ちたゴーレムの成れの果ての側へと着地するブラックアウト。
外へと駆け出した彼女達が見付けたのは、土くれの中に埋もれた黒いローブだけだった。



その後の展開については、ルイズにとっては青天の霹靂という他無い。
学院長室への呼び出しを受けたルイズは、ミス・ロングビルこそがフーケであった可能性が高い事、彼女が宝物庫に面した中庭の埋め立てに従事していた事を告げられる。
……そして固定化を打ち破ったのがスコルポノックの放った砲弾である可能性が高い事などを一方的に捲し立てられ、責任の所在が彼女1人に在るかの様な言葉を投げ掛けられた。
オールド・オスマン、ミスタ・コルベールが嘆かわしさを隠そうともせずに天を仰ぐ中、教師陣は休む事無くルイズを攻め立てる。
そして遂に、聞くに堪えないといった様子のオスマンが教師陣を怒鳴り付けようとした矢先、ルイズが高らかに宣言したのだ。

「ならば私がフーケを捕らえて御覧に入れますわ」

後はもう止める間も無かった。
慌てて引き止めようとする教師達から、最早視界に収めるのも不快とばかりに視線を逸らし、学院長室を退出。
部屋へと戻り、剣の型のまま自身に備えられた機能を確認していたデルフに現状を説明する。
返事は一言。

「なんつーか……短気だねぇ、娘っ子」

デルフを窓から放り出し、準備を整えてブラックアウトに乗り込むべく中庭へと向かうルイズ。
漸く辿り着いた其処には、またも先客の姿が在った。
キュルケ、タバサ、そしてギーシュの3人である。

「何で此処に?」

驚いてそう問えば、返ってきたのは三者三様の答え。

「だって面白そうじゃない?」
「気紛れ」
「決闘が原因だというのなら、僕にも責任は在る」

ギーシュの答えに、ルイズは半眼で3人の背後へと声を投げ掛けた。

「デルフ……」

そして案の定、ブラックアウトの下から這い出てきたのは、6つの眼を光らせた亜人にも昆虫の様にも見える異形。
人型となったデルフだった。

「仕方ねーだろ。お前さん1人じゃ、不測の事態が起こった時に対応し切れねーし」
「そうよねぇ」

頬に当たるらしき部位を指で掻きながら告げるデルフに、溜息と共に同意するキュルケ。
実際はブラックアウトの側で己の使い魔と交友を温めていたキュルケが、慌てて走り寄るデルフを問い詰めて事の詳細を吐かせたのだが、そんな事実は微塵も窺わせない。
因みにタバサは、一部始終を見聞きしていたシルフィードからキュルケがフーケ追跡に加わる事を聞き、その手助けをする為に参加。
ギーシュはヴェルダンデを迎えに来た際にキュルケから事の次第を聞き、それならば自身にも無関係ではないと同行を申し出た。
そんなこんなで紆余曲折在ったものの、総勢4人と一振りによるフーケ討伐隊が結成され、ブラックアウトに乗り込んでの出発と相成ったのであるが。

「それでフーケはどっちに行ったのよ」
「あぅ」

追跡は開始早々躓いた。
他の3人から注がれる冷やかな視線に縮こまるルイズ。
そんな中、コックピットに篭っていたデルフから4人を呼ぶ声が上がった。

「流石だぜ相棒! 来てみろ娘っ子! フーケの向かった方角が分かったぜ!」

慌てて狭いコックピットへと飛び込めば、ディスプレイに表示されたのはゴーレムを尻目に学院を挟んで反対方向へと駆けてゆく、馬に跨った人物の映像。
どうやらルイズ達がゴーレムに目を奪われていた際に、ブラックアウトが撮影したものらしかった。
鞍の後ろには、括り付けられた2つのチェスト。
鮮明な動く画に一同は驚嘆しつつも、キュルケが宝物庫でこのチェストを見掛けた事が在ると証言した事から、この人物がフーケという事で間違いないとの結論に至る。
後はフーケが向かった方角へと飛びつつ、怪しいと思われる箇所を虱潰しに調べる事を繰り返した。
そして、学院を出立して約40分後。
双月が宙に浮かぶ頃、森の中に佇む小屋の側に映像と同じ馬が繋がれているのを発見したデルフの警告によって、一同は戦闘態勢へと移行した。



「見付けたぜ! フーケの馬だ!」
「何処よ!?」
「あそこだ! あの小屋だよ!」
「小屋なんか見えないぞ?」
「貴方、目が良すぎるのよ!」
「見えた」

喧喧囂囂、見える見えないで彼等が騒いでいると突然、浮遊感と共に衝撃音が彼等を襲った。
何事かと緊張する彼等に、デルフは落ち着いた声で何が起こったかを説明する。

「蠍の方を投下したとさ。一先ず奇襲を仕掛けてみるんだと」
「上策」

下を見れば凄まじい土煙が、木々を薙ぎ倒しながら一直線に小屋へと向かって行くのが目に入った。
ブラックアウトは空中で停止、高度を保ちつつ待機する。
そして小屋の周りを周回し始めた土煙を注意深く観察しつつ、ギーシュがある疑問を口にした。

「あの蠍の力は聞いているけど、30メイルもあるゴーレムに太刀打ちできるのかな?」

当然といえば当然の疑問に、ルイズ達の視線がデルフへと注がれる。
デルフは暫く黙り込んでいたが、やがて軽い口調で彼等の不安を一蹴した。

「土のゴーレムじゃあの爪は防げねー。縦しんば錬金で鉄に変えたとして、そうなったらそうなったで砲撃で吹き飛ばしゃ良い」

ブラックアウトから転送されるデータを基に紡がれたその言葉に、納得と同時に安堵の息を吐く一同。
それとほぼ同時、視線の先で小屋が紙細工の様に吹き飛んだ。



「な……ちょっと! 小屋ごと吹き飛ばしてどうすんのよ!」
「は、『破壊の槍』……! どどどどうするんだね!?」
「馬鹿、落ち着け! 相棒達は何もしてねえよ!」
「……来る」

内側から弾け飛んだ小屋の中から、馬を巻き込みつつ巨大な土人形が立ち上がる。
徐々に密度を増す土砂に身体を押し潰され、聴くに堪えない悲鳴と共に馬が絶命する頃、スコルポノックが砲撃を開始した。
幾筋もの白煙を引き、6発の砲弾が構築途上のゴーレムに襲い掛かる。
次の瞬間には閃光が走り、轟音が周囲を埋め尽くした。

「やった……!」
「いや、まだだ」

歓声を上げるルイズに、ギーシュから否定の声が飛ぶ。
見ればゴーレムは右腕を失い、更に5箇所に渡って胴体を大きく抉られていたが、瞬く間にそれらの損傷を修復してしまったではないか。
驚愕するルイズとキュルケに、ギーシュが苦々しい表情で説明する。

「周囲の土を取り込んでる。あれなら幾ら損傷を受けようと短時間で修復が可能だし、錬金に使う精神力を温存出来る」
「後は攻撃の瞬間だけ、手足を錬金すれば良い。打撃力は確保出来る」

更に続けられたタバサの言葉に、2人はいよいよ色を失う。
吹き飛ばす端から再生されたのでは、勝敗は見えているではないか。

「どうするの? このままじゃスコルポノックが……」
「助けに行かないと!」

援護するべきと訴える2人。
しかしデルフは、心配無用とばかりにその案を却下した。

「いいから見てろ、ほら」

再びの爆音に彼女達が振り返った時、土のゴーレムは脚の殆どを吹き飛ばされ、更にスコルポノック自体の突撃を受けて倒壊する寸前だった。
何とか再生が間に合い踏み止まったものの、今度は背後から脚の付け根を抉られ遂に膝を付く。
ゴーレムも黙って攻撃を受けている訳ではなく、鉄に錬金した拳を振り回して応戦してはいた。
しかし、地中から現れては攻撃を加え、再び地中に消えるという一撃離脱を繰り返すスコルポノックを捉えるには至らない
それどころか、つい数秒前まで敵の居た地点を殴り付けた腕が、逆に抉り飛ばされるといった有様だった。
その様子を目にし、ルイズとキュルケ、ギーシュの目が驚愕に見開かれる。

「追い詰めてる……フーケのゴーレムを……」
「再生……してるわよね? ならどうして」
「だから言ったろ? 見てろって」

何処か得意げに言うデルフに、全員の視線が集まる。
しかし彼が解説を始めようとすると、それより早くタバサの声が割り込んだ。

「幾ら消費が少なくても、再生の度に精神力は減る。再生する端から消し飛ばせば、いずれフーケの精神力は尽きる」

その言葉通り、絶え間無く襲い掛かる砲撃と回転する爪を用いた突撃に、ゴーレムの再生速度は徐々に追い付かなくなっていた。
膝を付いたまま立ち上がる事も出来ないゴーレムの姿に、誰もが決着が近いと考える。

「ブラックアウト、ゴーレムだけを無力化して。フーケは生かしたまま捕らえるのよ」

咄嗟に放たれた言葉と同時、ゴーレムの正面約20メイルにスコルポノックが姿を現した。
今までの様に一撃離脱を仕掛ける訳でもなく、爪を鳴らしてゴーレムへと向き直り、徐々にその回転を速めてゆく。
どうやら次の砲撃で片を着けるつもりらしい。

「フーケは?」
「近くに居るんじゃない? ゴーレムが倒れた後にゆっくり探しましょ」

既に勝負は決したと、フーケ捕獲の段取りを話し合うルイズ達。
その時、デルフが叫んだ。

「居たぞ、フーケだ!」

一斉にデルフの指す方向を向く4人。
其処には、ゴーレムの肩に立つローブ姿の人影が在った。

「ちょ……何であんな所に!」
「不味いぞ、あそこでは直撃を受ける!」
「ブラックアウト! 攻撃を中止しなさい!」

その命令に一瞬、ほんの一瞬だがスコルポノックの動きが停止する。
そして次の瞬間―――――





スコルポノックの右腕、3本の爪が根本から弾け飛んだ。





「……え?」

突然の事に呆然とそれを見詰めるルイズ達の目前で、直前に発射された6発の砲弾があらぬ方向へと飛び、爆発して木々を吹き飛ばす。
4人が攻撃されたという事実に思い至るより早く、今度は背中の装甲が弾け飛んだ。
反射的にフーケを見れば、その手には奇妙な物体が握られている。
そして、その物体の先端部から僅かに火花を吐き出すと、三度スコルポノックの装甲が弾けた。
ブラックアウトの機内からそれらを目撃した4人は、フーケの用いた圧倒的な破壊力の攻撃に息を呑む。

「マジック……アイテム?」
「何言ってんの、あれ『火竜の息吹』よ! 宝物庫で見た事在るもの!」
「おめーこそ何馬鹿な事言ってんだ! ありゃ銃だ!」

金属的な絶叫と共に地中への逃亡を図るスコルポノック。
しかしそれより早く、再生を終えたゴーレムの蹴りが鋼鉄の蠍を捉える。
だが同時に、スコルポノックの左腕から放たれた、3発の砲弾がゴーレムに直撃した。
直後、大質量の金属同士が衝突する、凄まじい轟音が周囲一帯に響き渡る。
ゴーレムとスコルポノック、両者の破片が数十メイルの範囲に飛び散り、鋼鉄の蠍は木々を薙ぎ倒しつつ森の奥へと吹き飛ばされ、土くれの巨人は再び膝を付いた。

「あ、相打ち……?」
「行こう! 今ならフーケを捕らえられる!」
「駄目。『火竜の息吹』が在る」

参戦するべきか否かと議論を交わしている間にも、森の中からゴーレムへと砲弾が襲い掛かる。
幾度かゴーレムへの直撃を受けつつも、フーケは『火竜の息吹』を3発、森へと向かって射ち込んだ。
スコルポノックの砲弾ほどではないものの、強烈な爆発が3度、連続して木々を吹き飛ばす。
その瞬間、ブラックアウトが猛然と前進を開始した。
シートへと押し付けられ何事かと慌てるルイズ達に、デルフは叫ぶ。

「フーケの銃は弾切れだ! 相棒が出来る限り近付くから、擦れ違い様に魔法を叩き込んでやれ!」

その言葉に、4人は弾かれる様に各自の攻撃地点を確保した。
ルイズとギーシュはコックピット右側面の窓から、キュルケとタバサはカーゴルームの銃座から杖を構える。
彼等の視線の先でフーケは、弾切れになった『火竜の息吹』を力無くゴーレムの肩に置き、その頭に凭れ掛かっていた。
精神力を使い果たしたのかもしれない。

「いいか! 俺が合図したら一斉に、いいか一斉にだぞ! おめーらのとっておきをぶち込んでやれ!」

デルフの声に頷きを返し、ルイズは錬金を、ギーシュはその為の花弁を、キュルケはフレイム・ボールを、タバサはウィンディ・アイシクルを放つべく、各々の詠唱へと入る。
そしてブラックアウトが高度を落としゴーレムの右隣を擦り抜ける軌道で突入、月明かりの中でもローブから覗く白い手が視認出来るまでに近付いた頃。
幽鬼の様な動作で、ゴーレムの頭からフーケが身を起こした。
だが奇妙な事にその左腕は、半ばゴーレムの頭に沈む様に添えられたまま。
無防備にも全身を晒し、突入してくるブラックアウトを受け止めるかの様に佇む。
諦めたのか、と訝しむ一同。
その眼前で、フーケの左腕がゴーレムから引き抜かれる。





その手には、黒塗りの槍の様な物が握られていた。





「っ! 掴まれぇぇぇッ!」

デルフの絶叫と同時、ブラックアウトが右側面を晒しながら回避行動に移る。
それは明らかに構造的弱点を庇おうとする動きだったが、それが有効足り得るには、既に対象との距離が近付き過ぎていた。
フーケの指が引き起こされた握りの上、小さな摘みを弾く。

「悪いわね、鋼鉄の使い魔さん」

側面を晒し、巨大な的となったブラックアウトへと照準。

「貴方にも興味は在るんだけど……」

小さな窓から此方を覗き、驚愕に顔を引き攣らせる少年少女。

「帰す訳にはいかないのよ」

ゴーレムの肩から伸びた土の台が背に触れた事を確認し、引き金を―――――





「墜ちなさいな」



引いた。



フーケにとって幸運だったのは、彼女の観察眼が常人離れした鋭さであった事。
もし背後に築き上げた物が土の壁であったら、幾ら最小限に抑えられているとはいえ、射出されたカウンターマスによる被害を受けていた事だろう。
しかし彼女は、『破壊の槍』が銃に属する武器であると理解した瞬間から筒状の構造に着目し、内部を何かが通過する事を予想していた。
よって『破壊の槍』後方を塞ぐ事を避け、自身の身体のみを支える台を作り出したのである。

ブラックアウトにとっての災いは、フーケが異様なまでに用心深かった事。
彼女は『破壊の槍』を使用するに当たって、気付いた事は全て実行していた。
その中に『弾体先端の信管(プローブ)を伸長させる』という作業が含まれていたのは、正しくブラックアウトにとっての災い、フーケにとっての幸運としか言い様が無い。
HEAT(対戦車榴弾)、成型炸薬弾頭としての機能を呼び起こされた弾体は、ブラックアウトの全面を薄く覆う防御フィールドを容易く突破、本体を損傷へと至らしめるに十分過ぎる威力を持っていた。

そして、遂に。





現時点に於いてブラックアウトを撃墜し得る、このハルケギニアで最も高い可能性を持つ兵器、『破壊の槍』。
正式名称―――――『Panzerfaust 3』。
6000年に及ぶ殺し合いの果てに生み出された、血と科学によって磨かれた力無き者達の狂気が、その牙を剥いた。



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