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ゼロの使い魔・ブルー編-18

『桟橋』への路を急ぐ途中、
突如ワルドがうめき声を上げる。

「何……!?」
「ワルド、どうかしたの?」

ワルドは非常に驚いていた。
汗をかいてもいる。

「い、いや……何でもないんだ」
「なら良いけど……」
「それより、急ごう」

枯れた巨大な樹を利用して作られた船着き場、
『桟橋』にたどり着くと、ワルドは案内プレートを見て、
アルビオン行きの船が先にあるであろう階段を駆け上る。
ルイズ達もそれに続いた。
踏み込む度に階段が少しきしむ。
目的の枝へとたどり着き、その先にある船へと走る。
甲板へとたどり着くと、その船の船員が驚いた声で出迎えた。

「な、なんだあんた達は」
「船長はいるか!?」

船員は呆れた風に返す。

「今は寝てるよ。用があるなら明日の」
「良いから今すぐ出せ!」

ワルドが叫びながら杖を突きつけると、船員は飛び上がって走っていく。
直に、船長らしき人物が現れた。

「こんな夜遅くに、何のご用ですかな?」
「魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ。今すぐアルビオンへ船を出して貰う」
「ははは、無茶を言わんでくださ――」
「いいから出せ!」

船長が怒鳴られて、震え上がり、おどおどした口調で返した。

「し、しかしですな、『風石』が足りませんで、今出してもアルビオンへは」
「僕は『風』のメイジだ。足りない分は補う」
「へ、へぇ。しかし、代金は――」
「金なら後で幾らでも出してやる!良いからさっさと船を出せ!」

その言葉を聞くと、船長は叫ぶ。

「出港だ!もやいをはなて!帆を打て!」

ルイズはワルドの焦りようを少し疑問には思ったが、今は非常時だし、
彼女自身も非常事態にあるが故、別におかしくないこと、で決着を付けてしまった。



ルイズは甲板の手すりに寄りかかっていた。
船員に危ないと言われたが、それでもそうしていた。

「大丈夫かしら……二人とも」

タバサが使い魔を行かせてくれたが、見つけられなかったらどうするのだろうか?
そもそも――いや、あの二人は無事である。そうであるはずだ。
だから、そんなことを考える必要はない――そう思い、思考を切り替えようとした時である。

「アルビオンが見えたぞー!」

その言葉に、ルイズは前を向く。
その先には、雲の上に置かれたかのように浮かぶ、大陸があった。
彼女は以前にも見たことはあるが、雄大なものは雄大である。
ルイズはそれを見つめている間、何も考えては居なかった。
が、再び船員の声が聞こえてくる。

「2時の方向、仰角40!船が一隻近づいてきます!」
「何だと!?旗は何だ!」
「旗はありません!空賊です」
「く……取り舵いっぱい!」

だがそれは、空賊船が放った大砲の音で、
諦めざるを得なくなる。

「船長、停戦命令です……」

船長はこの中で一番頼りになりそうな、
ワルドに目を向けた。

「残念だが、魔法はもう使えない。この船を浮かべるので精一杯だ」
「……船を止めろ……」



「空賊だ!抵抗するんじゃねえぞ!」
「何ですって!?」

ルイズは取り敢えず近くにいたギーシュの方を向く。
慌てていて、到底話し相手には向きそうもない。
ワルドの方を向く。だが、さっき聞いたとおり、魔法は船を浮かべるのに使っている。
相手の船が近づいてきて、此方の舷縁に鈎縄を引っかける。
それを伝って何人かの空賊が此方に移動してくる。
そういえば、ワルドの使い魔のグリフォンが居た、と思いだし其方の方を見てみると、
既に魔法か何かで眠らせられたようだった。

「……そんな、姫様からの任務が果たせないわ……」
「船長は何処でぇ?」

声のした方を見やると、汚れたシャツに日焼けした逞しい腕、
手入れもされて無さそうな黒い髪、左目にされた眼帯……
いかにも空賊です、と言わんばかりの男が居た。
船長が進み出る。

「私だ……」
「船の名前と、積み荷を教えちゃあくれねぇか?」

頼むような口ぶりだったが、
後ろで銃や剣を構えた者達が居ては、脅しにしか見えない。

「……トリステインの『マリー・ガラント号』。積み荷は硫黄だ」
「なるほど、じゃあ買わせて貰う」
「金を払うわけでもあるまい……」
「なら空賊らしく頂いていく、とでも言やぁ良いのか?」

男が笑う。
手下たちもそれに合わせて笑う。
そして今初めて気付いたのか、ルイズの方を見やる。

「へぇ、この船は貴族まで乗せてるのか」

歩み寄ると、ルイズの頭を掴み、自分の方へと力づくで向けさせた。

「こいつぁ、べっぴんさんだな!俺の船で皿洗いをやらねえか?」
「お断りよ!」

頭を掴んでいた手を振り払う。
頭と思われる人物は嫌な笑みを浮かべ、両手をわざとらしく挙げる。
振り返ってから、手下達に向かって叫ぶ。

「こいつらを運びな。身代金がたんまりと貰えるだろうよ!」


「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」

どうしてこうなったんだろう。ギーシュはそんなことを考えていた。
彼らの内の一人が貴族派か王党派か聞いてきて、
その場を凌ぐために貴族派と言おうとしたときに……
ルイズが何をとち狂ったのか、任務を帯びてアルビオンまで行くことを明かし、
その後呆れた様子の船員にこのやけに豪華な船長室に連れてこられて……
貴族派に付けば取り敢えずは見のがして貰えそうだったが、
そこでもルイズが憮然としていた。
まぁ、その態度自体はギーシュにも共感できるものではあったのだが。
で、そこから何が間違ったのか、
頭と思われる男が変装をとくと、なにやらりりしい青年が現れたと思えば、
先の名乗りである。
つまり、ルイズ達は目的の人物への接触を果たしたのである。
ルイズは慌てながら、ワルドは意外と冷静に、名乗りに返す。

「姫様より、大使の任を仰せつかまつった、ルイズ・ラ・ヴァリエールです」
「トリステイン王国魔法衛士隊隊長、ワルド子爵です」

呆然としてたギーシュは、それを見て、周りを見回して、
少し考え込んでから、ようやく気付いて慌てて名乗る。

「ギ、ギーシュ・ド・グラモンです!」
「先ほどは失礼をした。我々としても、今だ味方の貴族が居るとは思わなかったのだ。
 試すような真似をして済まない」

慌てているルイズと、未だに困惑しているギーシュではなく、
ワルドが頭を下げて言う。

「アンリエッタ姫殿下より、密書を預かって参りました」
「そうか。して、その密書とやらは?」
「こ、こちらに」

ルイズがポケットから手紙を取り出し、ウェールズに渡す……直前で止まり、
少々遠慮しながら口を開く。

「あの、失礼ですが……本当にウェールズ様ですか?」
「……まぁ、さっきまでのを見て信じろと言うのもそうだな。
 証拠を見せよう」

そう言うと、ルイズの手を取り、自身の反対側の手にはまっている指輪を近づける。
すると、互いの指輪の間に、虹色の光が輝く。

「これって……」
「この指輪はアルビオン王家に伝わる『風のルビー』。
 君のそれは『水のルビー』だろう?水と風は虹を作る。王家の間にかかる虹だ」
「大変、失礼をば致しました……」

ルイズは頭を下げて、手紙をウェールズに手渡す。
ウェールズは受け取ると、それを大事そうに持ち直し、
花押に口づけをすると、丁寧に封を開ける。
暫く真剣な顔で読んでいたが、ふと顔を上げると、呟く。

「彼女……姫は……アンリエッタは結婚するのか?私の愛すべき……従妹は」

ワルドが無言で頷く。
ルイズは、ウェールズが少し落ち込んだように見えた。
だが、ウェールズは真剣な顔を見せる。

「事情はわかった。姫から貰ったあの手紙は大切なものだが、
 その姫が返してくれと言うのだ。断れる理由はない」

ルイズが顔をほころばせる。
ギーシュはようやく状況を理解したのか、真剣な顔をする。

「しかし、今手元にはない。まさか、空賊船に持ってくるわけにも行かぬのでね」

そういい、ウェールズは笑顔になる。

「ニューカッスルまでご足労願いたい。そこで手紙を返そう」

ワルドも、笑っていた。



『桟橋』の位置を知らないブルー達は、その後暫くしてようやく『桟橋』に着いた。
もう空が明るみを持ち始めている。普通に人に聞いてきたのである。
見上げて、話し出す。

「ここが『桟橋』か?」
「そうみたいね」
「ここで船に乗ればいいのか?」
「多分、そうだと思うわ……」

『桟橋』の中へはいる。
案内のプレートを見たが、よくわからない。

「キュルケ、何処に行けば良いんだ?」
「解らないわね」
「……どうする」
「大丈夫じゃないの?あっちは4人もいるんだし……って、あれは」

キュルケの目線の先を追うと、そこにはタバサと使い魔の雷竜が居た。

「タバサ?みんなは?」
「先に行った」
「乗ってけって事?」

タバサは無言で頷く。
雷竜が何かげんなりした様子になった。

「……何か嫌がってるが」
「まぁ、タバサが良いって言うんだから良いんじゃない?」

そう言って、二人は雷竜の背に乗った。
雷竜は、嫌がっては居たものの、荷物など無いかのように力強く羽ばたいた。
ラ・ロシェールがだんだんと離れていき、そのうち豆のようになってしまう。
キュルケが広大な空を見回して言う。

「空って本当に目印になるようなもの無いわねー」
「「………」」
「アルビオンはどのくらいかかるのかしら?」
「「………」」
「けど、大体の方角は合ってるはずだから、そのうち着くわよねー」
「「………」」
「……何か返事して頂戴」
「……そうだな……そういえばアルビオンは……空にあるのか?」
「そうよ、浮遊大陸アルビオン……と言っても、あたしはよく知らないけど」

そこで会話がとぎれる。
また気まずくなってきたので、キュルケが言う。

「確か……スカロボーとか言うところだったかしら?」

タバサが無言で頷く。

「場所は?」
「取り敢えず近い街に降りる」
「ま、そういってもまだまだ遠いけどね……」

目に映るのは雲の海と下の景色だけだった。
それを眺めていたブルーの視界が、突如ぼやける。

「ん……?」
「どうしたのダーリン?」
「いや、ちょっと目が霞んだだけだ」

目を閉じて、再び開く。景色は変化していたが、歪んでも霞んでも居なかった。



秘密の入り口から、ゆるゆると船が上昇していく。
次第に上に明かりが見えてくる。
上がりきると、巨大な鍾乳洞に大勢の人がいた。
先ほど見えた明かりは、そこらに生えているこけから発せられているようだった。
船から降りると、ルイズ達は先ほど見えた大勢の人に出迎えられる。
彼らのうち一人の老いたメイジが進み出てくる。

「殿下、これは大した戦果ですな!」
「喜べ、パリー!硫黄だ、硫黄!」

その声に、集まっていた人々が歓声を上げる。

「おお、硫黄ですと!……これで我々の名誉も守られるというものですな!
 先の陛下よりお仕えして60年、こんなにも嬉しいことはありませんぞ!」
「そうだ、これさえあれば、叛徒共に王家の名誉と誇りを示して敗北することが出来る」
「素晴らしい事です!栄光ある敗北となるでしょう!
 して、叛徒共は明日の正午に攻撃する旨を伝えて参りました。
 殿下が間に合いまして、良かったですわい!」
「それは良かった!戦に遅れるとならば、とても死にきれぬからな!」

ルイズはその会話に、顔を青ざめさせる。
死にに行くつもりだというのに、何故彼らは笑っていられるのだろう?
そう思ったのだ。

「して、その方達は?」

と、パリーと呼ばれた老メイジが、此方を見て言ってくる。

「トリステインからの大使殿だ。重要な用件で参られたのだ」

そういわれると、パリーはルイズ達に歩み寄ってくる。

「これは大使殿!私は殿下の侍従を仰せつかっております、パリーと申すものです。
 遠くからはるばるこのアルビオン王国にいらっしゃいました。
 大したもてなしは出来ませぬが、今夜はささやかな祝宴が開かれますので、
 どうぞ、参加していってくださいませ」



ルイズ達はその後、ウェールズに連れられて、彼の部屋に居た。
彼は質素なその部屋にある机の引き出しを空けると、
そこから宝石で飾られた箱を取り出し、鍵を開けた。
ルイズがのぞき込んでみると、ふたの内側にアンリエッタの肖像画が描かれていた。
ウェールズはその視線に気づき、恥ずかしそうに言う。

「宝箱でね」

中から一通の手紙を取り出し。それを読み始める。
今ウェールズがそうしてるように、幾度も読まれたらしいその手紙はボロボロだった。
読み終えたのか、その手紙を封筒に入れると、ルイズに差し出す。

「これが姫の手紙だ。この通り、確かにお返しした」
「ありがとうございます」

ルイズは深く礼をして、その手紙を受け取る。

「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号がここをたつ。
 それに乗ってトリステインに帰ると良い」

ルイズは俯いて手紙を見つめていたが、顔を上げて、
ウェールズの顔をしっかりと見据えて言う。

「殿下、栄光ある敗北とおっしゃられていましたが……
 王軍に勝ち目は無いのですか?」
「無い。彼我戦力の差は圧倒的だ。出来ることは、せめて勇敢に戦い、散ることだ」
「……その中には、殿下もですか?」
「当然だ。自分だけ生き残るような恥をさらすつもりはない」
「……もう一つだけお聞きしてよろしいでしょうか」
「構わないよ」

ルイズはそういわれたものの、言葉に出す事を悩み、俯いた。
だが、言う。

「殿下。もしや……殿下と姫様は……恋人同士……だったのでは?」
「そうだ」

ルイズの時間をかけた言葉に対して、ウェールズの返答はあっさりしていた。

「ああ、そうだ。アンリエッタと私は恋人同士だ…った。
 その手紙がレコン・キスタの手に渡ると危険なのは、そういうことだ。
 なにせ、その手紙において彼女は始祖ブリミルの名において、
 私に永久の愛を誓っているのだからね」

その言葉を聞いて、ルイズは大声で、半ば叫ぶような形で言う。

「……殿下、亡命してください!トリステインに、亡命を!」
「それはできんよ」
「姫様の手紙にも、そう書いてあったはずです!
 ……私は姫様をよく存じております、一度愛を誓った人物を、見捨てるような方ではないと!」
「そんなことは、書かれていない」
「そんなはずは―」
「誓って言おう。そのようなことは書かれていない」

そうは言っていたものの、彼の表情には苦い物があった。

「彼女は王女だ、自分の立場を解っているはずだ」
「……解りました」
「……君は素直な子だな。大使には向かないと思える」

ウェールズは今までの表情を一転させ、笑顔を見せる。

「さて、もうそろそろパーティの時間だ。
 君たちは我々が迎える最後の客になるだろう。是非、出席していってくれ」


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