あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのミーディアム 第一章 -11


「なんだか幸先の悪い1日の始まりねぇ……」
げんなりした顔で食堂裏に続く廊下を進む水銀燈。
しかしそれも朝っぱらからルイズ追いかけまわされたり、恥ずかしいところを見られたりと散々な有り様で本日のスタートを迎えたのだから無理は無い。
彼女は今日は厄日かしらぁ…と小さくつぶやく。
もっとも、そのおかげで本日は仕事は免除され1日OFFをいただけた訳だから一概にそうとは言いきれないだろう。
人間万事塞翁が馬とは言ったもの。まあ水銀燈は人間じゃなくて精巧な生きたアンティークドールなんですけどね、ハイ。

食堂裏に向かう理由は無論、朝のゴタゴタの所為で摂れなかった朝食を摂るため。ルイズには悪いが水銀燈にはシエスタに食事を頼むと言う裏技があるのだ。
「おはよう、シエスタはいるかしら?」
しかし厨房の入り口から入ってきた水銀燈を出迎えたのはで日ごろ世話になっているメイドではなく、
テーブルの上に山盛りになってる野菜…いや、なんだか草の様な物。
「なんだか青臭い…何よこれぇ…」
水銀燈が顔をしかめた
すごい量だ。大皿に山盛りになったそれはそこらじゅうに青臭く、苦い臭いを撒き散らしていた
「あ、水銀燈。おはよございます」
そこにようやく見知った顔が現れる。黒髪にカチューシャをつけたメイドが水銀燈に声をかけた
「シエスタ!なんなのよこれぇ!」
顔をしかめたまま水銀燈が抗議した。とうのシエスタはあはは…と困った顔で苦笑い
「よくぞ聞いてくれた!『我らの天使』!!」
それに答えたのは厨房の奥からひょっこり現れた太った親父。彼こそがこの魔法学院厨房の主たるコック長、マルトー親父。
『我らの天使』と言うのは勿論水銀燈の事。そう呼ばれる経緯は言うまでもないだろうが
要約すると水銀燈が貴族たるギーシュを決闘で一泡ふかせた事に感動したと言ったとこか
話を元に戻そうマルトーがその草っぽいものについて熱弁し始めた
「こいつぁな、はしばみ草で作ったサラダだ!」
「ハシバミソウ?」
水銀燈が聞き返す
「ああ!はしばみ草ってのは栄養価が高くて健康にはもってこいの食材でな、不本意だが貴族共の体を考えて今日の朝食で出してやったんだがよ…」
マルトーがドン!とテーブルを叩く
「どいつもこいつも俺が丹誠込めて作ったこのサラダを残しやがる!ちょっと苦いからってなんだ!!あいつらには食い物への感謝ってのがねぇのか?おい!」
「…そんなに苦いの?」
「食べてみればわかりますよ?」
シエスタからフォークを渡された水銀燈。山盛りになったはしばみ草の皿から一口失敬
「うっ……」
マルトーの調理の腕は確かである。苦味はそこそこ抑えられているはずだが…それでも強い苦味が水銀燈の口に広がりその顔を引きつらせる
「これは…」
水銀燈が口を噤んだ。マルトーの言うことはもっともだがこれを出された貴族達の気持ちもわからなくもない
「それだけじゃねぇ!今日はさらに町から仕入れた珍しい食材も出してやったのによ!見てくれ『我らの天使』!」
「珍しい食材?」
マルトーが厨房の隅っこを指差した
水銀燈が目をやった先にあったのは大きめの鍋に入った白いどろりとした液体
「これは…ヨーグルト!」
それは先週町に出た際ルイズと一緒に食べてその酸っぱさに驚愕した水銀燈のソウルフード、乳酸菌もといヨーグルト。
「こいつもだ!こいつも酸っぱさ抑えて少しは甘めに味付けして食いやすくしてやったのに!」
マルトーは健康を害さない程度に砂糖を入れたべやすくして出したが彼らはこれも受け付けなかったらしい。
水銀燈はこれも一口貰う。甘すぎずも、酸味を抑えた味付けに彼女は感心しマルトーの仕事を高く評価したが、同時にそれを認めぬ貴族達に落胆した
「悲しいわね、この食材と調理法は見事な物なのにそれを理解できないなんて…」


「私も同感」


不意に水銀燈の後ろからか細い声で何者かが同意した。
賢明な皆様なら「はしばみ草」というキーワードを聞いた時点でピンと来ただろう。
はしばみ草の影に彼女の姿あり、
どこぞの猫型ロボットのどら焼き・奇天烈なサムライロボのコロッケ・ポパイのほうれん草・雛苺のうにゅー
……そして水銀燈の乳酸菌に並ぶ『彼女』のはしばみ草

水銀燈の後ろに立っていたのは青みかがった髪にブルーの瞳を眼鏡の奥に光らせた小柄な少女

「ミス・タバサ!よく来てくれました!」
シエスタがその少女を出迎えた
「はしばみ草を理解してもらうため」
タバサは短くそれだけをつぶやく。水銀燈はその淡々とした物言いと感情の読めぬ表情にどことなく、かつて対峙した偽りの薔薇乙女を思い出した
「よくぞ来てくれた!嬢ちゃん!」
マルトーも彼女を歓迎する
「俺のはしばみ草のサラダをうまそうに食ってくれるのはあんただけだぜ!あんただけは貴族の鏡だ!」
「美味しいのに…」
タバサは寂しげにつぶやき置いてあったフォークを取りはしばみ草の山から一口とって口に運ぶ
「タバサ嬢にも来てもらったのは他でもねぇ。どうすりゃあのボンボン共にこのはしばみ草やヨーグルトを食わせられるかを話し合うためだ!
『我らの天使』!おめぇさんも参加していきな!」
マルトーが言った。えーと、つまり…トリステイン魔法学院給食委員会?
水銀燈が内心でため息をつく。
(私、また厄介事にまきこまれたのぉ…?)


議題はたった今マルトーが言った通り。『アルヴィーズの食堂』の長机にマルトー以下調理場で働くコック及びメイド、そしてマルトーの横に水銀燈とタバサが並んで座っている
会議は始まるも早速難航していた。食事を残した奴にペナルティをつけるだの。全部食べなきゃ外に出さないだの、いっそ出す食事は三食全部はしばみ草とヨーグルトにするだのと
過激な意見が出るがそんなこと強行すれば報復として魔法の雨あられが降りかかることは必至

やはり味を良くして食べさせるしかないと言うのが最初の結論。しかし片やあまりの苦味故に、他の食材の味を殺しかねないはしばみ草。片や最近作られ、まだ調理法の確立されていないヨーグルト。
前者はそれ故にサラダぐらいしか食べる手段が無く、後者はまだまだ研究が必要で調理法の確立に時間を要する。
話し合いは困難を極めてた。
そこにかかる鶴の一声ならぬ鴉の…ゲフン!ゲフン!あー、天使の一声

水銀燈がとんでもない意見を出した
「逆転ホームラーン!ヨーグルトとはしばみ草を混ぜちゃえばいいのよ!!」
それは逆転ホームランもとい逆転ほむーらーん

アロエヨーグルトと言う物がある。アロエの葉肉のシロップ漬けを加糖したヨーグルトに混ぜた食品。
水銀燈が思い浮かべたのはまさにそれだ。
「苦いアロエにヨーグルトが合うのだからはしばみ草だって合うに決まってるわぁ!」
とは彼女の弁。だが…考えてみればアロエとはしばみ草は全く別物。
マルトーが懸命にその腕を振るい出来るだけの調理しているが彼の腕をもってしてもうまくいくかどうか…
マイナスとマイナスを足してもプラスにはならない。水銀燈はそれを考えていなかった

かくして皆の前に出された緑と白の混じったなんだかドロドロした一品のデザート。とは言うものの見た目は悪くない。
少なくとも貴族達も見ただけ手をつけないと言う事は少なくなりそうだ
問題は味だが…水銀燈、マルトー、タバサ、シエスタ以下コックとメイド達がスプーンで一口それをすくい口に運んだ

次の瞬間皆の口から何かを噴き出した。やっぱり失敗だったか。アチャー…

「うーまーいーぞー!」
皆さんの口から光の柱が噴き出したような幻覚を見たような気がした
…え?本当に?成功?マジっすか!?

マイナスとマイナスは足してもマイナス。しかし、マイナスとマイナスはかければプラスとなるのだ!
はしばみ草を蜂蜜のシロップに漬け健康的な甘みを加え、それをヨーグルトへ。
ヨーグルトの酸味がはしばみ草の苦味を緩和し酸味をはしばみ草に漬けられたシロップで抑えると言う奇跡的なバランス!!
イチゴにミルク・生ハムにメロン(僕はあんまり好きじゃないです)・バターに醤油・ギースにしょうゆ(名曲)
に並ぶ新たな食材の組み合わせ(以上、筆者の独断と偏見)が誕生した…
!その名もはしばみヨーグルト!!

「すごいです水銀燈!まさかヨーグルトとはしばみ草がこんなにあうなんて!」
シエスタが目を輝かせた
「ま、まあ私にかかればざっとこんなところよぉ!」
実は適当な事言っただけで正直自信は無かった水銀燈。だが成果は上々。つまり結果オーライ
「やっぱおめぇは『我らの天使』!食堂に舞い降りた天使だぜ!」
マルトーがバシバシと水銀燈の背中を叩きガッハッハと豪快に笑う。あと食堂に舞い降りた天使とか地味にカッコ悪い
「ちょ、ちょっとぉ!痛い!痛いってば!」
コック、メイド達が集まり水銀燈を中心に集まり彼女をもみくちゃにすると胴上げを始めた
「水銀燈ワッショイ!水銀燈ワッショイ!」
いや、いくらなんでも、やりすぎ


「や、やっぱり…今日は厄日だわ……」
ようやく地上に下ろされフラフラしている水銀燈。そんな彼女に迫る最後の刺客。
スッと水銀燈の前に表れたのは青い髪に眼鏡をかけた仏頂面の少女。
タバサはがっちりと水銀燈の両手をがっしり掴み握手をするとブンブンと大きく腕を振る
「恩人」
そして表情を変えずに短くつぶやいた。
彼女も喜んでいるようだ。よく見ると口元がほんの少しだけ緩んでいる
はしばみ草を万人に薦められる打開策を閃いた恩人と言ったところなのだろうか?
ここに水銀燈とタバサの奇妙な(それも微妙に一方的な)友情が誕生した。
そして満足したのかタバサは杖を持つとスタスタと歩いて厨房を出て行った。

「まあお腹は膨れたから結果はいいとして…あ、」
自分の食欲が満たされ思考にも余裕が出来た水銀燈。現在朝食を摂らずに腹ぺこで授業を受けているであろうルイズの事を思い出した
…ん~?では今まで会議に参加してたタバサの授業は?とりあえずそれは置いておこう


(朝食を採れなかった原因の一端は私にもあるのよねぇ…)
もうすぐ休み時間。少し軽めの食べ物を彼女に差し入れしようかと水銀燈は考えた
しかしハッと我に返ると首をブンブンと横に振る
(い、いえ!朝は別に私が悪いとは思わないわよ!
でもここで恩を売っとけば後々良い事ありそうよねぇ!べ、別に本当はあの子がお腹空かせてても何とも思わないけど!)否定するのは原因の方ですか、どうやら差し入れ作戦は決行するらしい。水銀燈はシエスタに一つ頼み事をした
「シエスタ。短い時間…休み時間にでも食べれるような、何か軽めの物作って貰えるかしら?」
「はい?お弁当ですか?」
そんなお願いにシエスタが首を傾げて聞き返す
「違うわ。ルイズへの差し入れよ」
「はぁ…ミス・ヴァリエールへの差し入れですか」
「色々あってあの子、今朝の朝食摂れなかったのよ」
「色々あったって?」
「何があったかは聞かないで頂戴…」
水銀燈が恥ずかしそうにそっぽを向いて言った。
シエスタは余計な詮索はせずにそれを了承する
「わかりました。サンドイッチでいいですか?」
「ええ。助かるわぁ」

シエスタが厨房の奥へと消えしばらくすると片手に小さめのランチパックを持って戻ってきた
「こんな感じでどうでしょう?」
箱の蓋を開けると一口サイズのサンドイッチが小綺麗に並んでいる
「ええ。ありがと、上出来よ」
シエスタが箱に蓋をし水銀燈に手渡した。
「仲がいいんですね」
「べ、別にそう言う訳じゃないわよ…でもたまにはこんな気まぐれもあっていいじゃない!」
シエスタに言われ言葉を濁して答える水銀燈。
貰うものもらったら踵を返しそそくさと食堂を出ていく。
シエスタは翼をはためかせて去っていくその姿を微笑みながら見送った
「本当、素直じゃないなぁ…ご主人様と同じで…」


ここはたった今授業が終わり休み時間になった教室。机にぐたーっとしているのは空きっ腹のルイズ。
「あうー、お腹空いた~」
頭があまり回らないらしく、その目は虚ろで焦点が定まっていない。
そんな彼女がぼーっと宙を見上げていると黒い翼を生やした小柄なメイドさんが目に映った
「ああ…とうとうお迎えが着たようね…まさか天からの使いの正体がメイドさんだったなんて…天使の翼って本当は黒いのね…。
お父様、お母様、エレオノール姉様…は別にいいや……。ちい姉様、あなたより先だつ妹の不幸をお許し下さい…」
そう言って胸の前で手を握り祈るようにつぶやくと、ガクッと机に突っ伏した。実に大袈裟なことだ。たった一食抜いたぐらいで…
「あら残念。天に召されたのなら…この差し入れは必要無いわよねぇ…
せっかくサンドイッチ作ってもらったのに……」
そんなルイズの目の前にちらつかせたランチボックスを遠ざけ背を向け立ち去ろうとする水銀燈。
しかし突如彼女の足をガシッと掴む腕。思わずビクッ!として振り向いた水銀燈の見たのは幽鬼のごとくギギギ…と面を上げたルイズの顔
「差し入れ…?サンドイッチ…!?」
鬼気迫る表情で瞳を見開き言うルイズ。
ちょっとしたホラーだ、普通に…いや、とっても怖い。
こんなのが真夜中の暗い部屋のド真ん中にいたり、テレビの中から這い出てきたりしたらお茶漏らしそうだ。
「そ、そんなに切羽詰まってたの?」
水銀燈はそのルイズの姿に肝をつぶしながらもボックスを差し出した


「ああ、生き返るわ!」
ルイズがサンドイッチを頬張りながら言った。
「本当に生き返った、もとい蘇え…いえ、黄泉帰ったみたいねぇ…」
ルイズの横に座った水銀燈が机にほおずえをついて呆れたように言う。
だがルイズのその幸せそうな様に少しだけ彼女の口に笑みが漏れていた。
実にほほえましい光景だ。他の生徒達もそれを
(生)暖かく見守っている

一人の生徒がからかい半分でルイズを茶化した
「ルイズ!お前まるで弁当忘れてお母さんに持ってきてもった……」
しかしそれもヒュッと言う風切り音と共に飛んできた何かに遮られる
彼の頬の薄皮一枚を切って後ろの壁に突き刺さる黒い羽。
「……今、何と言ったのかしら?」
水銀燈がニッコリと笑いかけて聞いた。
怒っているらしい…人間なら笑いながらこめかみに青スジ浮かばせてピクピクさせている所なのだろうが、
生憎と人形たる彼女に血管なんて物は無いため純粋な笑みを彼に向けている。その爽やかな天使の微笑みが逆に恐い
「たしかお母…」
「お、お姉様です!ハイッ!」
水銀燈の声を遮って生徒が光の早さで言い直す。
「まるでお弁当忘れたドジっ娘にわざわざ届けにきたお姉様のようです!
ミス・ヴァリエールの使い魔たる貴方は使い魔の鏡です!」
そして脂汗をだらだら流しながら必死で弁解した。
「水銀燈、そのくらいにしてあげなさいよ」
食った食ったと言わんばかりにお腹をさすりながら言うルイズ

水銀燈は口元に手を当てクスクスと笑い
「フフ…ちょっとした冗談よぉ。でも貴方もレディに対する言葉には気をつけるのね」
生徒にそう注意した。冗談にしては少し質が悪い。
「本当は半分本気だったんじゃないの?」
ルイズが笑いながら言う
「貴女は一端のレディが母親呼ばわりさて黙っていられると思って?」
「冗談!私なら魔法で吹き飛ばしてるわ!」
そんな二人の会話に周りの生徒達も楽しげに笑っていた
「だってよ!御主人様の方じゃなくてよかったな!」
「ああ、ルイズのアレは威力にムラがあるからな。本人が手加減してるつもりでも木っ端微塵にされちゃかなわないぜ」
「失礼ね!なんなら試してあげよっか?手加減はしないけど」
「ルイズ!自重なさい!」
そんな微笑ましいやりとりを見て人だかりはさらに湧き、笑い声は絶えない。なんだかんだ言ってこのコンビ、いい感じだ。

そんなルイズと水銀燈の周りに集まる人だかりを見つめる一人の女性
燃えるような赤い髪に褐色の肌、グラマスなボディが悩ましい通称『微熱』のキュルケ
彼女はあまり興味無さげにそちらの方を一別していたがその視界に水銀燈が入った瞬間、その口元をニヤリと歪めた。
水銀燈が何か負の念のような類を感じ、キュルケの方を見たがもう彼女はそちらを向くことなく他の男子生徒とお喋りしていた。
水銀燈が瞳を細める。
(気のせいかしら…?なんだかあっちから不穏な視線を感じたのだけれど…?)
「どうしたの水銀燈?急に怖い顔しちゃって。乳酸菌とってるぅ?なんちゃって!」
そんな水銀燈にルイズが半分心配、半分からかって尋ねた
「何でもないわぁ。って、人の決め台詞とらないでよ!」
「アレって決め台詞だったの!?」
ルイズのおかげでうやむやになってしまったが、水銀燈の勘は正しい。しかし気づくのが少し遅かった。
水銀燈を見つめていたキュルケの瞳には不穏かつ危険な光が宿っていたことを、彼女は知らない。

キュルケが一体なにを考えているのか……それを水銀燈が知るのはもう少し先の話となる。


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