あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ブレス オブ ファイア 0 後編

「クソッ!クソッッ!!ちくしょう!神様ッ!!ああ神様はアレじゃねぇかよ!ドチクショウがァアアアッ!!」

バラバラと、デルフリンガーの破片が床に落ちる。
その刀身は散々にヒビ割れ、今も尚怨嗟の唸りと震えで亀裂が広がっていく。

「思い出した!全部思い出したッ!!チクショウ!!」

主の心の震えを喰らい、その助けと為るべく元来冷静だった剣は
生まれて始めて、心の底から慟哭していた。

「『虚無』だッ!あいつが使った魔法は虚無だ!!ミョズニトニルンのクソ野郎がぁああああッ!!『使いやがった』!!
 今まで四人目が現れなかった理由は!アレがずっと、ココに在ったからだ!!」

デルフリンガーが泣き叫ぶように、吼える。

「頼む相棒ッ!!アレを殺してくれぇッ!!殺してやってくれぇええええ!!!!」

決して許さぬという、怒りの叫び。
今にも砕けて散ってしまいそうだ。
しかし身よ砕けよといわんばかりの魂の震えは、止まらない。
握り直されたその刀身に、ミシリと又一つ軋みが生じる。
神の左手が剣デルフリンガーは、その神を切り裂くために最後の使命を果たさんとしていた。

「……ああ」

然り、と頷くロン。
その脇腹には、神鉄の剣が深々と突き刺さっていた。



ブレスオブファイア 0 ~虚無ろわざるもの~ 後編



止め処なく溢れる鮮血が、床に血溜まりを作っていく。
ロンはゆっくりと腹から剣を引き抜き、真後ろに放り捨てた。

「オイ、いいのかよ相棒!この剣じゃねぇと……」
「……意味がない」

一合、二合、三合――――――
聖地の最奥にたどり着き、眼前に佇む創られし『神』と交戦。
斬り合った回数である。

視界に影を収めた瞬間に、神鉄の剣にて袈裟懸けに切りつけた。
その身体を二つに分断し、速やかに剣はその名が意味する通り神殺しを遂行した。
――――――したはずだった。
分断する端から切断面が接合していくのだ。
端から見れば、剣がすり抜けたかに見えただろう。
ロンにとって、それは有り得ない光景だった。
もう一度、確認の意で胴体目掛け剣を突き出したが、切っ先を掴まれてそのままもぎ取られ、
全く同じ軌道で返戻された。
剣の腹をヒザで滑らせ軌道を逸らし、何とか身体の芯から切っ先を外すが
その迎撃にと繰り出したデルフリンガーに『虚無』が炸裂し、諸共に吹き飛ばされ岩壁に叩きつけられた。
これで都合三合。
戦闘を開始し、たった数秒の出来事だった。

一体いつの間に詠唱を行っていたのか。
恐らくは、これは正確な詠唱ではない、『ブレス』だとロンは判断した。
一息の詠唱で魔法現象を引き起こしたのだ。
皮肉にも過去、ゼロの失敗魔法とよばれたそれは、最速で最大の効果を発揮する
凶悪極まりない攻撃魔法と為り得るのだと、ここに証明されたのであった。

剣を腹から引き抜きつつ、初めてその『神』をよく観察する。
その『神』はこれまでの肉塊とは明らかに様相が違った。
おそらくはこれまでの肉の枝は失敗作、神の為り損ないであり、
この洗練され尽くした女の姿を持つものこそが本命の『神』だったのだろう。

「真なるうつろわざるものだとでも言うつもりか……」

神とて時には彷徨い、うつろうのだ。
その隙を突くのが神鉄の剣であり、成る程そのような剣にて斬りつけられたなら
神も死を迎えることになるだろう。
しかし人の手によって創られし神ならば――――――
この神が虚無を使った理由は――――――
思考が途切れる。
腹部に感じた灼熱に、たまらず地に手を着いた。

「お、おい、相棒!どうした!?お前さんならそれくらいの怪我、どうってことねぇだろ!?
 いくら神殺しの剣ったって相棒にとっちゃただの剣……いや、まさか……」
「……おでれーた、か?」 
「ああ、おでれーた。と言いたいとこだが、うすうすは感づいてた。なんてったって他ならぬ
 相棒のことだからな。他の誰より、相棒のことは俺が一番よく解ってんのさ」
「そうか」
「そうだよ。おでれーたか?」
「ああ、おでれーた」

ロンの口元に苦笑が浮かぶ。
こちらの世界に来てから、先ほど主人となった少女に出会ってから、
自分は幾度となく笑みを浮かべただろうか。
初めて自分が笑っていると自覚したのは、主人のダンスのパートナーを務めた時だった。
それはロンにとって全く驚愕で、不可思議な事だった。
しかし、悪くはないなと素直にそう思えた。

その感情こそが、使い魔の契約抜きに少女を守ろうとしている理由の所以であり、
ヒトの本分であり、自分もそのような感情を貴様に抱いているのだ、と王宮の女騎士に教えられた時
ロンの決意は固まった。
過去、ヒトに乞われるがまま国を統べ、挙句勝手にヒトに絶望した自身のなんと愚かだったことか。
許されるならば今この時から、自身の決意が故にヒトの守護者になろうと。
何故ならば、ヒトは――――――

『え おるー・ すー ぬ・ふ ぃ る・やる ん さく さ……』

滅びの詩が聴こえる。
ブレスでさえあのような威力だったのだ。
完全なエクス・プロージョンには耐え切れないだろう。
詠唱の隙を狙おうにも、身体が動かない。
神鉄の剣による一撃は、間違いなくロンの身体に致命傷を与えていたのだ。

「ほれ、相棒踏ん張れ。俺が手伝ってやるからよ」
「これは、一体……?」
「あー、魔法を喰らって使い手の身体を操ることが出来ちゃったりすんだよな、俺。
 いやまー虚無まで喰えるとは思ってなかったけどよ」

そうか、と頷きながらロンはデルフリンガーに深く感謝した。
一人で闘っているのではない、仲間がいるのだと思えることのなんと心強いことか。
立ち上がり神を睨み付ける。もうすぐ詠唱が終わるようだ。
差し出されたその手の内に、閃光が集ってゆく。

「わり、相棒。俺、此処までだわ」
「……ああ」
「構えな。デカイのがくるぜ」

きっとこれが、自分がこの世界にいられる最後の時になるだろう。
そう悟りつつ、ロンはデルフリンガーの切っ先を神へと向ける。

『え くす・ぷ ろー じょん』

瞬間、光が視界を覆いつくした。

光が肌を焼き、爆音が耳を突き、熱風が瞳を刺すその最中
ロンは不思議な感覚を抱いていた。
全く負ける気がしないのだ。
それどころか力が止め処なく湧き、前へ前へと足を進ませる。
崩れてゆく手足を繋ぎながら、ロンは光の中をひた走っていく。

「は、ハハ!こりゃおでれーた!おでれーた!!
 そうだぜ相棒!もっとだ!もっと魂を震わせろォッ!!ォオオオオオオ!!」

光の中で、いつの間にかロンの身体は変わっていた。
その本性である竜の姿ではない、何か別のもの。
竜でもなければ、ヒトでもない『アウンノウン』。
神とヒトの狭間を往く姿が、そこに在った。

「オオオォオオヲオオォオ!!!!」

ロンの脳裏に、この世界で出会ってきた全てのヒトの顔が、浮かんでは消えた。
その度に、力が増していくのが解った。魂が震えた。
突き立てられたデルフリンガーが魔法を、虚無すらを喰らい道を拓く。

「オオオオ・・・ォオオ……オ……ォ…ぉ…………」

更々と、突き進む度に刀身が砕け散ってゆく。
長き刻を経たデルフリンガーが、その役目を終えたとき
ロンは神の眼前へと迫っていた。

半ばから圧し折れ、物言わぬ鉄の塊となった剣を手放し
自由になった両腕を開き、倒れこむように神の身体へとしがみ付く。
ロンにはもはや、この神を打倒する力が残ってなどいなかった。
それでもかまわないと、途切れそうな意識のなかロンは思う。
倒せないなら、連れていけばいいのだから。
神はこの世界の中に居ないほうがいいのだから。
虚無の光を飲み込む更なる輝きが、ロンの身体から放たれる。

『    』

神の泣き声が聴こえる。
いつしかその両腕もロンの背中へとすがりつくように回されていた。
薄れゆく意識の中、ああ、と万感の想いがロンの内に湧き上がる。
争いを続け、憎しみ合うヒトの性の全てを、受け入れられる気がした。
結局は、自身を神へと為すことはなかったあの男を、許せる気がした。
皆恐ろしかったのだ、自分以外の全てが。
だから世界を自らの手で壊し、産み出し、創ろうとするのだ。
ああ、ああ、本当に

ヒトは弱くて

愚かで

間違いを繰り返し

……そして美しい生き物だ――――――




ルイズはロンを待つことなく、肉の森から引き返していた。
その後、タバサの駆るシルフィードと合流し、近隣の村にて救助活動を行っている。
ルイズの本心としては、このままロンの帰りを待っていたかったが、
助けを求めるヒトがいるならば、そこに赴き救いの手を差し伸べるのが自分の使命なのだと
ロンと過ごす中、密かにそう誓いを立てていたからだった。
きっとロンは何でもないという風な顔をして帰ってくるに違いない。
そう信じて杖を振り、虚無にて肉の枝を打ち払う。
帰ってくる、帰ってきてと祈りながら。


どれだけの時がたっただろうか、辺りは夜の暗闇に覆われていた。
ふと、足を止める。
いつの間にか、地の底から聴こえていた脈動が止んでいた。
皆一様にして何事かと、疲れ果てた顔で辺りを見渡している。
肉の枝の蠢きも止まり、それどころか枝は枯れ果て朽ちていく。
誰かが空が輝いていると騒ぎ出した。
目を向けると、聖地から立ち昇る光の柱が、天を貫いていた。

「あ、あ……!ダメ……ダメ……!」

ルイズは、その光の柱の中に懐かしい影を見た。
使い魔の儀式で、彼女が呼び出した陰。
白銀と黄金の輝きに身を包んだ竜が、天へと還って往く。

「ダメ……だめ……!ロン!!ロンーー!!」

駆け出すルイズを、後ろから抱きしめ押し留めようとするキュルケには、
いや、彼と関わった全てのヒトがその光の柱が何なのかを理解していた。

「フォウルーーーーーーーー!!!!」

かつて一度だけ聞いた、彼の真名は
桜色の髪の少女の叫びと共に、空へと吸い込まれていった。




――――――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
彼女はその生涯の中、たった一日だけ使い魔を持ったという。

新着情報

取得中です。