「決闘だ!!」
朝食の席、そこで 土系統のドットメイジ。ギーシュ・ド・グラモンは声も高らかに決闘を宣言した。
理由は簡単。ギーシュ曰く『貴族の誇りを汚されたから』らしい。
だがその相手はというと、なんと平民のメイドである。
メイド――シエスタは小瓶を拾い、それをギーシュに渡そうとした。ところがそこから、彼が二股をかけているのがバレてしまったのである。
ギーシュは両頬に紅葉型の跡をこさえることになってしまった。
無論、シエスタに責任はない。
悪いのは二股をかけたギーシュである。
だが、そこで『自分が悪い』と認められるほど、グラモン家の坊ちゃんは大人ではなかった。
結果として、シエスタは貴族の憂さを晴らすため、生贄に選ばれてしまったのだ。
無論、殺すつもりまでは無かろうが、それでも女性に手を上げるのはいただけない。
今朝、そのメイドと親しい仲になったヴァリエール嬢は、当然の如くギーシュに抗議した。
理由は簡単。ギーシュ曰く『貴族の誇りを汚されたから』らしい。
だがその相手はというと、なんと平民のメイドである。
メイド――シエスタは小瓶を拾い、それをギーシュに渡そうとした。ところがそこから、彼が二股をかけているのがバレてしまったのである。
ギーシュは両頬に紅葉型の跡をこさえることになってしまった。
無論、シエスタに責任はない。
悪いのは二股をかけたギーシュである。
だが、そこで『自分が悪い』と認められるほど、グラモン家の坊ちゃんは大人ではなかった。
結果として、シエスタは貴族の憂さを晴らすため、生贄に選ばれてしまったのだ。
無論、殺すつもりまでは無かろうが、それでも女性に手を上げるのはいただけない。
今朝、そのメイドと親しい仲になったヴァリエール嬢は、当然の如くギーシュに抗議した。
「ギーシュ、そんなの貴族らしくないわ!! 第一アンタの『バラの流儀』ってやつはどうしたのよ!? 女の子には手を出さないんじゃなかったの?」
「僕の流儀に含まれるのは貴族だけだ」
「僕の流儀に含まれるのは貴族だけだ」
その一言に我らがヴァリエール嬢はキレた。
クックベリーパイの恩義もある。
クックベリーパイの恩義もある。
「ギーシュ! あたしがそこにいるシエスタの代わりに決闘を受けてあげるわ!」
「ほう。ゼロのルイズ。君は貴族同士の決闘は校則で禁じられている、というのを知らないのかな?」
「平民を魔法でいたぶる方がよっぽどよ!」
「ほう。ゼロのルイズ。君は貴族同士の決闘は校則で禁じられている、というのを知らないのかな?」
「平民を魔法でいたぶる方がよっぽどよ!」
その言葉に、ギーシュは嫌みったらしく『アハハン』と笑う。
ちなみにギーシュと長い付き合いの友人たちはそれが『何か(よくないこと)を思いついた仕草』だと承知していた。
ちなみにギーシュと長い付き合いの友人たちはそれが『何か(よくないこと)を思いついた仕草』だと承知していた。
「なら、こうしようじゃないか。君の『使い魔』とこの僕が戦うんだ。これなら、僕たちが決闘したことにはならないだろう?」
嫌味の骨頂であった。
使い魔のいないルイズはこの戦いでは勝てようはずも無い。
提案されたルイズ自身が、そのことをよく承知していた。
……いや、していたはずだった。
使い魔のいないルイズはこの戦いでは勝てようはずも無い。
提案されたルイズ自身が、そのことをよく承知していた。
……いや、していたはずだった。
「それで、どうするんだい? ゼロのルイズ。僕が提案する平和的な決闘を受け入れてくれるのかな?」
ギーシュは自分の背景に薔薇を出しながら、尋ねる。
一方のルイズは顔をうつむかせ、その表情を窺い知ることは出来ない。
やがて、ゼロと揶揄された少女は顔を上げる。
それにあわせ、彼女の胸にある黄金錘が輝いた。
一方のルイズは顔をうつむかせ、その表情を窺い知ることは出来ない。
やがて、ゼロと揶揄された少女は顔を上げる。
それにあわせ、彼女の胸にある黄金錘が輝いた。
「…いいぜ! その決闘。受けてやる!!」
初め食堂にいる誰しも、そのたくましい言葉がルイズの口から出たとは信じられなかった。
「ちょっと。あの子、どうしたのかしら」
ルイズと隣室のキュルケは手に持っていたフォークを取り落とし、そのキュルケの隣にいたタバサも、読んでいた本から顔を上げた。
「え…っと。ミス・ヴァリエール・僕の耳が悪くなければ……」
「その決闘、受けてやるぜ キザ野郎!!」
「その決闘、受けてやるぜ キザ野郎!!」
正面を向いたルイズの顔つきは完璧に変わっていた。
造形ではない。雰囲気が。人格がもたらす空気が違う。
造形ではない。雰囲気が。人格がもたらす空気が違う。
「な、な、な……」
「場所と日時を決めてもらおうか。こっちはいつでもいいぜ」
「ヴェ、ヴェストリの広場で午後一時に待っている。せ、せいぜいまともな使い魔を連れて来たまえ!!」
「場所と日時を決めてもらおうか。こっちはいつでもいいぜ」
「ヴェ、ヴェストリの広場で午後一時に待っている。せ、せいぜいまともな使い魔を連れて来たまえ!!」
ルイズの『変身』に面食らった、ギーシュ・ド・グラモンは逃げるようにその場を去った。
それに合せるようにルイズの瞳が閉じられ、彼女本来の雰囲気が幼いその体に宿る。
「ミス・ヴァリエール! 大丈夫ですか!?」
「……ええ、なんとかね」
「……ええ、なんとかね」
頭を押さえる。ルイズは実感していた。
自分の使い魔の正体を。
今朝、自分の耳に響いた声は幻聴ではなかった。
自分の使い魔の正体を。
今朝、自分の耳に響いた声は幻聴ではなかった。
あれは『彼』が発した声だったのだ。
自分の掛けた黄金の三角錐に宿る、『彼』が。
自分の掛けた黄金の三角錐に宿る、『彼』が。
そして、その三角錐に封じられた知識が、ルイズに告げていた。
『恐れるな。お前の召喚した使い魔を信じろ』と。
『恐れるな。お前の召喚した使い魔を信じろ』と。
「シエスタ。嫌でなかったら決闘の立ち合い人として広場まで来てくれるかしら? ……無理にとは言わないけど」
シエスタは苦悩する。ルイズは自分を庇い、場を諌めてくれた。
だが、決闘に立ち合えば、自分の身が危うい。
だが、決闘に立ち合えば、自分の身が危うい。
「……失礼ですが、ミス。本当に決闘をされるおつもりですか?」
「ええ、勝つつもりよ。勝機もあるわ」
「ええ、勝つつもりよ。勝機もあるわ」
信じられぬ言葉だった。
ゼロのルイズが『ガラクタ』を召喚したのは魔法学院で働く平民達の間でも噂になっている。その役に立たないもので、彼女――ルイズは一体どうやって勝つつもりなのか?
決闘に勝つ確率よりも、自分が殺される確率が高いのは明白だった。
―自分の使い魔(?)に絶望するあまり、ミス・ヴァリエールは頭がおかしくなった―
そう考えるのが普通である。だがシエスタは違った。
彼女は応えたのだ。ルイズの友情に。
足を恐怖ですくませながらも、メイドは言い切った。
ゼロのルイズが『ガラクタ』を召喚したのは魔法学院で働く平民達の間でも噂になっている。その役に立たないもので、彼女――ルイズは一体どうやって勝つつもりなのか?
決闘に勝つ確率よりも、自分が殺される確率が高いのは明白だった。
―自分の使い魔(?)に絶望するあまり、ミス・ヴァリエールは頭がおかしくなった―
そう考えるのが普通である。だがシエスタは違った。
彼女は応えたのだ。ルイズの友情に。
足を恐怖ですくませながらも、メイドは言い切った。
「ご一緒します。ミス・ヴァリエール」
かくして平民の少女、シエスタを初めとするトリステイン魔法学校の人々は、後に歴史に刻まれる戦いを眼にすることになる。