あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

赤と桜のゼロ-2

 レプリロイド。それは人格を与えられた限りなく人間に近いロボット。
 従来の人間的思考回路を持たず、命令されたプログラム通りに動くロボット「メカニロイド」と違い、
人間的思考回路を持ち、人間への絶対服従と善悪の判断に基づいて物事を自ら考え処理するロボット。
 人の為に働き、人と共に歩む最高のパートナー。

「じゃあ、あんたはゴーレムの様な物なの?」
 自分が知らない遠い国『ねお・あるかでぃあ』では優れた土のメイジがいて、『れぷりろいど』という人間に
似たゴーレムを作って平民の代わりの労働力にしている。
 ルイズはゼロの説明をそう解釈した。
「そう思ってもらって構わない」
 対するゼロはルイズの結論を肯定する。彼としては「ゴーレム」と聴くと自分を執拗に追い続けた
ネオ・アルカディアの巨大メカニロイドを思い出すのだが、ロボット工学の発想の原点としてその表現は
間違っていない。むしろそう考えると、断片的な説明からその結論に辿り着いたルイズの洞察力は感心
すべきものである。
 無論、ゼロはルイズに何もかも話したわけではない。自分達が異世界から来たと信じてもらえるとは
思っていないし、自分に使われている技術を理解できるとも思っていないからだ。加えて本人が口下手
なので、説明と言うにはあまりにも抽象的で不十分だったのだが、これが逆に幸いした。
 先人曰く「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」である。
「じゃあ、その子もゴーレムなの?」
 ゼロの横を飛び回る人頭大の光――シャリテを指差して質問するルイズ。
『シャリテ!』
「え?」
『私の名前はシャリテ!その子なんて名前じゃないの!』
 手足をバタバタさせて抗議の意思を示すシャリテ。子供が駄々をこねているようにも見えるその様に、
ルイズは思わずクスリと笑った。実際、生まれてからの時間を考えればまだまだ子供なのだが。
『それにゴーレムじゃないの!サイバーエルフなんだから!』
「サイバー……エルフ?エルフなの?」
 なおも続くシャリテの抗議に、ルイズの表情は笑顔から困惑にとって変わる。エルフと言えば先住魔法を
使うメイジの恐るべき天敵、だが目の前にふよふよと浮いて無邪気に笑っているそれは自分の知るエルフの
姿ではない。
「サイバーエルフとはレプリロイドを強化・修復するためのプログラム生命体。お前達の言葉で言うなら、
ゴーレムの使い魔といったところだ」
 ルイズの戸惑いを他所に説明するゼロ。
「ゴーレムに使い魔が必要なの?」
「人間の手足となって働くレプリロイドが簡単に壊れたりしては、人間が困るからな」
 ルイズは感心した。へぇへぇへぇ、と思わず手元のボタンを押したくなるほどだ。どうやら『ねお・あるかでぃあ』
という国はゴーレムの技術と扱いに関してはトリステインの1歩も2歩も先を行くらしい。
 当初、トリステインはおろかハルケギニアの地名さえ知らない相当な田舎物の平民を召喚したかと思って
落胆していたルイズだったが、自分の使い魔達がこの国では到底作れないであろう最高級のゴーレムだと
知って内心歓喜していた。
 この部屋にいるのが自分独りだったら喜びのあまり倒立からブレイクダンスでもしていたところだ。
「ごめんなさいね、シャリテ」
 ルイズは喜びを抑えながらぶーぶーとまだ不満を述べるシャリテに上機嫌で謝罪しながら姿勢を正す。
貴族たるもの礼節はきっちりせねば。
「改めて自己紹介するわね。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。メイジよ」
『ルイズフランブランヴァリ……???』
 目を白黒させて舌を噛むシャリテ。言語機能をミッションの合間に習得するしかなかった彼女にとって、
ルイズのフルネームはいささか難易度が高かったようだ。
「ルイズ、でいいわよ」
 ますます子供っぽいその仕草に苦笑して、そう付け加えるルイズ。
『うん!よろしくね、ルイズお姉ちゃん!』
「お姉……」
 思わぬ言葉にルイズは頭をガツンと殴られたかのような衝撃を受けた。末っ子の彼女が言われる事の無い
その言葉は、シャリテの無邪気な笑顔と愛くるしい容姿も伴い、絶大な破壊力を生み出した。
 ようは「妹萌え」もしくは「ょぅι゛ょ萌え」である。
 この瞬間、召喚の成功と妹萌えの効果の喜びが原因でルイズの脳内に妖精(ジャクソンと命名した)が誕生した。
 自分の代わりに喜びを体現して(ルイズの脳内で)ジャクソンが空中ダッシュからブレイクダンスを決めたところで
「では今度はこちらから質問したいのだが」
 ゼロのクラッキングを喰らい、ティウンティウンと音をたててジャクソンは穴に落下した。某京都の花札会社の
ヒゲオヤジの頃からの伝統、いくら無敵といえども穴に落ちれば一撃死である。
「使い魔の契約と言っていたが……具体的には何をさせるつもりだ?」
 機械文明の申し子でありながら、意外にもゼロは使い魔という概念自体は知っている。というのも、かつて他の
異世界で戦った魔法使い――奇しくも雪風の二つ名を持つルイズの級友と同じ名前だ――が使いこなしていた
からなのだが。
「使い魔の役割を知らない?『ねお・あるかでぃあ』のメイジは使い魔を使役しないの?」
「先ほど説明したようにレプリロイドが量産されて労働力として使われる社会だ。既に手足が十分にあるのだから必要ない」
 無難な回答になるほどね、と納得し「大きく分けて3点ね」と指折り説明し始めるルイズ。
「一つ目は感覚の共感ね。本来なら使い魔が見聞きした事は私も出来るはずなんだけど……」
「出来ないのか?」
 そう、と溜息をついて肯定する。本来ならサモン・サーヴァントの対象は生物に限定されているから、ゴーレムのような
非生物は対象外なのでしょうね、とルイズは推測した。
「二つ目は主の望むものを見つけてくるのよ。秘薬とか、魔法の材料になる硫黄や鉱石なんかをね」
 かつては自分の能力を向上させるためのチップの材料を集める事もあったのだ。秘薬とやらはともかく、材料に関しては
場所や素材の指定さえしてくれれば何とかなるかもしれない、と答えるゼロ。
「三つめは主を守ること。これが一番重要なんだけど」
「それは問題ない。俺は元々イレギュラーハンターだったからな」
「いれぎゅらー?」

 冒頭に述べたようにレプリロイドは人間に限りなく近い人格を持つロボット。それはつまり、人とロボットの長所を兼ね備えて
いると同時に、両者の短所も持ち合わせているということを意味する。
 ロボットであるが故に故障、バグ、ウィルスなどから電子頭脳に異常をきたし、人に危害を加えるレプリロイド。
 人間に限りなく近いが故に、自らの意思で犯罪を行うレプリロイド。
 本能とも言うべきロボット三原則を無視して、人間の命令に逆らうレプリロイド。
 そういった危険なレプリロイドをイレギュラーと呼ぶ。
 そしてイレギュラーを取り締まる為にイレギュラーを狩るレプリロイドの組織「イレギュラーハンター」が設立される。
 レプリロイドは同じレプリロイドの手で始末させる。それが人間のとった結論だった。
「つまり、腕に関しては期待していいわけね」
「ああ」
 最も、人間以外が相手の場合に限るがな。
 ゼロは胸の中でそう付け加えた。


 それから数刻後。
「二つの月、か……」
 ゼロは夜空を見上げていた。幾人もの人間離れした人間と、幾つもの魔法染みた超科学の産物――自身の身を含めて――
を数百年に亘って見てきた彼をしても月が二つある光景は不思議と言わざるを得ないらしい。
 不思議と言えば……
 月光に照らされた自分の体を見下ろし、その掌を握る。
 この世界に召喚される直前――ラグナロクと共に散る寸前の自分の体は、高熱と激戦の疲労から致命的な障害をいくつも起こし、
活動不能寸前のダメージを受けていた筈だった。だというのに、ハルケギニアの地に召喚された自分の体は傷一つ無い、まるで
「あの男」に整備された直後のような状態に復元されていた。
 シャリテの事もそうだ。いくら電子生命体とは言え、サイバーエルフはプログラムにすぎない。マザーエルフやエックスのような
特別な個体でもない限り、特殊なバイザーを通してでしか人間がサイバーエルフの姿を視認することは出来ないはずなのだ。
 ちなみにそのシャリテだが今はゼロの傍らにいない。今頃はゼロが部屋を出る時に既に就寝していたルイズの寝顔でも観察して
いるのだろう。身近な人間といえばシエルしかおらず、戦いの連続で満足にエリア・ゼロの人間とも触れ合う事が無かったのだ。
それ以外の人間を間近で見られるのが珍しいのだろうし、戦いが終わった今は好きにさせてもいい筈だ。
(……それは俺も同じか)
 シエルに目覚めさせられてからマトモに人間と触れ合う機会が無かったのは自分も同じかもしれない。常に苦楽を共にしていた
シエルはともかく、他に出会った人間と言えば、レプリロイドに嫌悪感を示していたエリア・ゼロの人間達と、あのバイルぐらいでは
ないか。ここに呼ばれた直後も目の前にいた少女を蔑む人間ばかりで……
 どうも記憶メモリの暴走の影響が尾を引いているらしい。ネガティブに走りかけた思考を中断し、再び空を見上げる。
 戦いが終わって自由になったのは自分も同じ。なら今は世界が違えど――恐らく、生まれて初めての――戦う必要の無い平和
な世界を知るのも、いい気分転換になるだろう。
『あー、ゼロ!ここにいたんだー!』
 そこでシャリテの声が掛かる。振り向けばそこに…、でなく夜闇の中を蛍が舞う様にふよふよと光ながらシャリテがこちらに
向かって飛んで来ていた。
「どうした」
『えっとね、聞きたいことがあったの。ラグナロクは一体どうなったの?ここは一体何処なの?今頃シエルお姉ちゃんや
アルエットお姉ちゃんは元気にしているのかな?どうしてお月様が2つもあるの?そういえばゼロや私は何時の間に元気に
なったのかな?それに何でルイズお姉ちゃんに私が見えるの?あ、それからあの人間達が使っていた魔法って――』
 始めてみる世界に興味が尽きないのか心なしか普段より元気、というより興奮した様子で捲し立てるシャリテ。その勢いに
ゼロは 思わず苦笑する。
 質問のいくつか……元の世界がどうなったのかは大体の答えが予想はついている。が、他の質問は無理だ、大体ゼロとて
この世界に来たばかりなのだから。好奇心旺盛なシャリテの疑問を解決、というより納得させられる答えを用意するには
まだまだ 時間も判断材料も少なすぎる。第一、本来ならそれは口下手な自分でなく親代わりのシエルやアルエットの役割だ。
この世界でならその役割はルイズに担ってもらうべきなのだろうか。

『ねえ、ゼロ』
 ん?とシャリテを見たゼロはその顔が先ほどまでとは打って変わって神妙なものである事に気付いた。
『これからどうするの?』
 シャリテの問いにゼロは思考を切り替えて瞑目する。
 かつての世界での自分の役割は終わった。なら、この世界での自分の役割とは何だ?
 ここはイレギュラーどころかそもそもレプリロイドが存在しない世界、イレギュラーハンターとして戦う必要は無い。では戦いを
捨て、新たな道を探るのか?否、戦うために作られた自分にそれ以外の道などありはしない。
 では戦うべき敵がいるのか?もとい、戦える敵がいるのか?
 この世界で戦いが起きるとすれば、先ほど見たサラマンダーやドラゴンなどの怪物達が人々を襲うか、人間同士の争いぐらい
だろう。だがこの世界にはメイジ――魔法という戦闘手段がある。あの使い魔の儀とやらを例に考える限り、メイジ達は怪物に
対抗し得るだろう。そして残る人間同士の戦いに自分が参加するのは論外だ。
 相手がどんな人間であれ、危害を加えるのはイレギュラーの役割だ。例え自分がイレギュラーであろうと……
 ……駄目だ、バイルとの戦闘からまだ数時間程度しか経っていないせいかどうしても思考がネガティブになる。これからの事を
考えるにしても、記憶メモリを沈静化させるという意味でも、まだまだ時間をおく必要があるのかもしれない。
「……どうするかは、これから考えるさ」

 ゼロは再び月を見上げる。
 ……あの時、シエルや、ネージュや、エックスたちもこうして空を見ていたのだろうか?
 そして、今の自分と同じように――自分との違いは希望も抱いていたと信じて――ゼロからやり直す未来に不安を抱えていたのだろうか?

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