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真白なる使い魔01


 エアル全土を揺るがせたヴィントの動乱から半年。かのアルタイ公国によるガルデローベ買収騒ぎからも3ヶ月の歳月を経て、ヴィントの街は戦争の傷跡も癒え、人々は活気に溢れていた。道々には屋台が建ち並び、数々のアーケードが花で彩られ親子連れが数多く道々を埋め尽くしている。風船を親にねだる子供や、普段は忙しくて構ってやれないのだからと、屋台の商品を買い与えすぎて、母親に叱られる父親などのいじましい姿も見受けられる。共通するのはいずれも笑顔、半年前の惨状を思えば信じられない光景だ。
 それというのも、今日行われるヴィントの王城『風華宮』の落成式の祭典故の事。国民は仁君との誉れ高いマシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム女王の治世を祝い、共に国の復興を祝うべく、こうしてお祭り騒ぎの様相を呈していた。
 そんなヴィントの街中にあって、ビューネ自治区にあるオトメの養成学校で、現在は女王マシロの仮宮でもある『ガルデローベ』のその部屋は、通常通りの静けさを保っていた。部屋に居るのは五人の少女。いやさ、4人の少女と1人の少年。すなわち、国王マシロとそのマイスターオトメであるアリカ・ユメミヤ ニナ・ウォン エルスティン・ホー、そして国王たるマシロの許嫁であったナギ前大公の妹であるアラシ女大公である。

「それにしても、アタシ達が出会ってからもう一年になるんだね。」
 そんなアリカの言葉に、一同は心から賛同する。

『旧風華宮における真白姫暗殺事件』
『女装して真白姫の影武者となったマシロのガルデローベへの編入』
『ナギ・ダイ・アルタイ大公の来訪とマシロの家出』
『シュバルツの首領であるミドリとの出会い』
『隠れ里である黒い谷訪問と養母レナ・セイヤーズとの再会』
 そして『即位式に始まるヴィントの動乱』
『真白姫復活』『古の魔神MAI』『HiME対オトメ』『ナギ大公の死と真祖フミ復活』
『真白なる金剛石の継承』『セルゲイの騙し討ちによる真白なる金剛石の奪取』
『明かされる媛星の力』『マシロの復活と真白なる金剛石のローブと剣の発現』

 あまりにも多くのことがあった、とても多くの人たちと出会った、そして何よりその事でみんな大きく成長した。愛を語らった人、意見を衝突させ刃を交えた人、そして自分たちを庇って先に逝った人。全ては決して消えない、そんな尊い記憶。
 自然、4人は神妙な面持ちとなる。それは4人だけの宝物だから。いや、一人だけ4人以外で共有を許される仲間がいる。ヴィント動乱でマシロを庇い命を落としたナギ大公の双子の妹アラシ・ダイ・アルタイ女大公だ。
 最初は『動乱が原因の財政難に陥ったガルデローベの債権を買い集めて買収し、学園もろともマシロを差し押さえて虜とした敵』として出会った彼女。ふとした事から解った、兄への想い。そして共に危難を乗り越える事で掛け替えのない友の一人となっていた。
「でもさ、」
 唐突にマシロが切り出す。
「ボクっていつまで女装していればいいの?」
『!?』

 それは天地を揺るがす発言であった。それまでのホンワカとしていた空気が一瞬にして張りつめる。アリカが、ニナが、エルスが、アラシが、驚愕と共に表情を強ばらせる。

「だめだよ、マシロちゃんが女の子じゃなくなったらただのキモヲタだもん!」
 外道義姉アリカが叫ぶ。
「アリカダメでしょ!ホントの事を言っちゃ。」
 嘘が下手なダメ人間ニナがつい肯定してしまう。
「わたしは、男でも女の子でもマシロ様であれば無問題ですわ。だってマシロ様は性別を超越するほどキレイですもん。まあ、とりあえず髪の毛は切っちゃいやです。」
 ミーハー腐女子、スケベ少女エロスことエルスは、とても自分の欲望に正直だった。
「まあ、最低でも成人までは女装を続ける必要はあるだろうな。何せお前は美しい。皆もきっとソレを望むはずだ。一生女装を続けても、むしろ周りとしては大喜びだろう。」
 いじめの帝王ナギ・ダイ・アルタイの双子の妹アラシは、そのいじめっ子の血統が伊達ではないことを、こんなときも鮮やかに証明してのけた。鬼め。
「全く人ごとだと思ってヒドイよみんな!」
『いや、まったくもって我が事として結論に至りマシタ』
 マシロの魂からの叫びに、不謹慎ながらも4人は心からそう思ってしまう。とにかくマシロという少年の美貌は異常なのだ。髪が短い時は、平々凡々の並の容姿の一少年にしか見えないというのに、その双子の妹と瓜二つの顔立ちのせいか、ロングにすると、そこらの少女が束になっても敵わぬ美少女ぶり。そして、今現在の様に完全にドレスアップしてメイクを施せば、もはやその姿は神々しくすらある。まさに存在そのものが反則な少年だった。
「でも本当にステキ。え~い」
 エルスが何時もの様に、マシロの背中に自分の胸を押し当てる。ムニッとした感触に、マシロはとたんに鼻血を大流出。それを見て元気が出たと大喜びなエルス。
『ソレ元気だけど元気違いだって。』
 一同はそうため息を吐く。いや、ニナとアラシの二人が。残るアリカはどうしたかといえば、こっそりとマシロの背後に忍び寄り・・・・、
「え~い♪」
エルスに引き続き、第二次攻撃隊突撃とばかりに胸を押し当てた。あっけに取られるニナ&アラシ。当のマシロはといえば、完全に昏倒してしまい、「ボクは、ボクは・・・」とうなされている。人間、嬉しいことでも程が過ぎれば拷問以外の何物でもない。マシロのその姿はそんな一例であった。

「二人とも、いい加減にしなさい。」
 アラシの叱責の声に、さすがに反省するエルス。しかしアリカは如何にも『つまんない』という表情になると、おもむろにアラシの背後に回り込み、いきなりその胸を鷲掴みにして、そのまま揉みほぐした。顔を赤らめ身もだえして恥じるアラシにアリカが言い放った。
「こぉ~んなのただのスキンシップだってぇ~」
「だ、マズイでしょさすがにソレは」と引きはがそうとするニナ。「そ、そうだよ、」と昏倒したマシロを抱えつつ、賛同を示しながらもアリカの指先から目が離せず、ゴクリと唾をのむエルス。自然、二人の関心は、このまま行ったら一体どれ程のアラシの怒りが降り注ぐのやらという一事に向けられていた。だが、そんな二人の心配とはまた別の危機が彼女達を襲う事となる。切っ掛けは、行くところまで行ってしまったアラシの大きすぎたあえぎ声。ニナの表情が険しくなる。

「マズイ」
「え?」

 この後に及んで、自分がどういう事態を引き起こしたか、気が付いていないアリカに、ニナが言い放つ。

「アナタねえ?私達がどうしてこんな所でコソコソとマシロ様の衣装変えやっていたか忘れたの?」
「えっとぉ、学園のみんながぁ、マシロちゃんにあわよくばマスターになってもらおうと押しかけてくるから♪うん、アタシあったまいい!」
「いや、バカでしょ。そこまで解るなら次にどんな事態が訪れるかはわかるわよね。」
「ニナちゃん、来たみたい・・・・。」

 エルスの言葉に耳を澄ませば、聞こえてきたのは地響きの様な足音の数々。足音は津波の様に押し寄せ、ついに部屋の扉が大きく開かれる。そこに居るのは、マイスター服に身を包む、卒業した筈の先代のトリアス+1『アカネ・ソワール』『チエ・ハラード』『シホ・ユイイット』『ジュリエット・ナオ・チャン』の4人の戦鬼に率いられた、コーラル&パールの悪鬼外道な乙女達。おそらく先代トリアス+1に関しては、絶対的に面白がって事を煽っていると言ったところか。「やはり、在学中に一切のマシロ様への接触を妨害したのはマズかったかな」と考えるニナ。

「ふふふ、逃げ切れると思ったらそうは問屋がおろしませんのことよ、ニナすぁん。」
「いやあ、判断が甘いというか、ねえ。いくら卒業したからって、こういう他国から国賓を招くような式典ともなれば、その護衛として普段は他国にいるボクらにだって招集がかかるのは当然じゃないか。」
「カズ君亡き今、私にはマシロ様しか居ないのよ!」
「くっくっく。さぁ~てお楽しみタイムといこうじゃない?ねえ、ニナ」

 いたずら心満載のイヤ~ンな笑みを貼り付けたOG4人組、そしてその背後に控える殺気だった現パールの同級生達及びコーラルの後輩達。さしもの4人もこの危機に表情が引き締まる。その時、あまりの騒音に気絶していたマシロが目を覚ました。

「えっと・・・・・・。」

 目覚めたばかりで要領が掴めないマシロ。

「エルス、マシロ様の確保お願い。連中は私が引き受けるわ。」
「うん、解ったニナちゃん。」

 ニナが入り口に向かい駆けだした事で、大乱闘は火の手をあげた。ニナ達に立ち向かうパールとコーラル達は決して一枚岩ではなく、一人一人があわよくばマシロを己のマスターにと考えるが故に、状況はバトルロワイヤルの状況を呈している。
 マシロが、ヴィントブルームではなく、他国の国家元首であったらまた話は違ったであろう。だが、ガルデローベと同様に数多のマイスターGEMを保持するヴィントブルームの王であり、またこれまでは伝説の彼方の存在であった、始まりのGEM『真白なる金剛石』と『漆黒の金剛石』という二つのGEMを併せ持つ事で所持しうる力『媛星の力』を持つ存在であり、さらにマイスターを得ても、他国が口を挟むことが実質上不可能であるという特殊性が、未来のオトメ達に希望を抱かせていたからと言えなくもない。
 ニナは在学中の生徒の中では群を抜いた力を持つ生徒で、一応マイスターではある。しかし、余りにも多勢に無勢だ。やがて一人二人と、ニナの隙を突いてオトメ達はマシロに迫る。
 背後に残ったアリカに期待を寄せ、振り向いたニナが目にしたのは、アラシにヤクザキックで度付き回されるアリカの姿。「ああ、」と一瞬ガックリと倒れそうな気持ちを堪え、エルスに声を掛けた。

「エルス!!」
 無言で頷くエルス。彼女は呆然とするマシロに囁く。
「この状況を納めるために、認証をお願いします。大丈夫ですよ、今ピアスに填めているのはパールGEMですから。」
 彼女の言葉に、マシロはとりあえず大丈夫だろうと判断し、そのピアスにそっと口づけをした。
「エルスティン・ホー。真珠の石を持つ我が乙HiME(オトメ)よ我が名において汝の力を解放する。」
 マシロの唱える聖韻によって呪縛を解かれたエルスは「マテリアライズ」の声と共にパールローブを装着する。元来エルスティンは彩雲の薔薇綺石を持つマイスターであり、その戦闘技能は半年前にJEMを得て以来、エレメントを使用した物を前提とした訓練を積み重ねてきている。だが、パールは学生用でこそあるものの、エレメントはマイスターローブ同様に、各自の資質に特化したものが出現するため、与えるダメージこそ少なめだが、装着者は己の得意技を思う存分振るうことができるのだ。
「クラックボール!」
 二つある内、祖先伝来とも言えるエルスのエレメントが現出する。要はアメリカンクラッカーと呼ばれる物である。おおよそにしてオトメの武器であるエレメントという物は常識の範疇とは別次元である。JEMというものは、己を装着する物に最適な武器たり得る物をマテリアライズするわけであるが、その武器は、通常武器と呼ばれる物だけではなく、果ては日用雑貨、あるいは玩具と、予想だにしない物を現出させる事がままある。またその用法すらも常識では計りきれないという。弓を打撃武器とする戦闘法で数多の武勲を打ち立てた、例もまたそんざいするのだから。要は後に語られる事となる、ハルケギニア大陸のメイジ達が召喚する使い魔と同様に、ただJEMは、その使い手たる主が最大の力を発揮させるための相性だけを基準に現出させているのだ。
 エルスティンは次から次にクラックボールを現出させると、色欲だかなんだか、マシロめがけて突進するなんだか目の血走ったオトメ達の四肢をクラックボールで次々に絡み取り拘束していった。しかし、マシロを背後に確保しながらの戦闘では、いくら実戦経験があるからと言って、完全に敵を排除出来るわけではない。このままでは埒があかないと判断したエルスは、オトメのもう一つの力である『美力』による全方位攻撃で一気にカタを付けようと判断する。
「威力極小 美力!巨乳舞踏(バーストロンド)!」
 かけ声と共に、たぷ~んと魅惑的なエルスのアンデスメロン級の二つのたわわな胸の実りが揺れる。その後の訪れるのは放射状の衝撃波の爆裂。刹那の静寂と共に一瞬にして周囲に群がる数多の常軌を逸してしまった少女達の肉体が盛大に爆風によって吹き飛ばされる。
 だがコレがイケなかった。うっかり身を乗り出してしまったマシロは、吹き飛ぶオトメ達が跳ね返ってきたところに遭遇。出会い頭でマシロが衝突してしまったのだ。悲鳴と共に弾き飛ばされたマシロは、柱の一つに頭を打ち付け昏倒する。
 深い闇に意識が沈みつつある中で見たのは、自分の身を案じ駆け寄る三人のオトメと一人の少女の姿であった。





 マシロが目を覚ましたとき、その周囲は闇に覆われていた。辺りを見回すマシロ。その時、少女の鈴の音のような声が響く。
「おお、賤民。死んでしまうとは情けない。」
 あまりといえばあんまりな言葉。と、ふと気付く。
「し、死んだって!?」
 マシロは慌てて声の方を振り向く。そこにあったのは、菫色の輝きをたたえた銀の髪に、湖のようにすんだ青い瞳。肌は雪の白さを連想させ、あくまで清楚なその姿は、自分に酷似している。そんな少女はマシロの知る限り一人しかいない。
「真白ちゃん?真白ちゃん、生きていたんだね。ねえ、一体ここは何処!?」
 慌ててまくし立てるマシロを真白姫はうんざりとした表情で見下すと、問答無用で蹴り飛ばす。小さなうめき声と共に吹っ飛ぶマシロ。
「ええい、五月蠅いわ賤民!妾に気安う問いかけるではないわ。この愚か者めが。まったくコレだから貴様は。」
 「・・・・やっぱり、お兄ちゃんって認めてくれないの?ヒドイよ賤民だなんて。」
 そんな捨てられた子犬の様な眼差しで見つめられ続け、さすがの真白姫も良心が咎めたのであろうか、大きくため息を吐くと、マシロの手を引いて立たせる。
「わかったからそんな目で見るのは止めよ、兄と認めてやろうではないか。とりあえず兄上の置かれている状況を説明するぞ。よいな。」
「うん。」
「まず、我らがいるこの場所は生と死の狭間にある賽の河原とかリンポとか呼ばれる処じゃ。まあ、此処にいるという事は、生死の狭間を彷徨っている状態と考えれば良いじゃろう。今我々は魂だけの状態でここにおる。じゃが、魂だけの状態というのは不安定なものでな、やがては冥府、すなわち死後の世界に渡ってそこの住人となるわけじゃ。」
 そこまで聞いたマシロは、あまりの内容に慌てて真白姫を見る。
「死後の世界だなんて、もう死んだも同然って事なの?」
「安心せい、死んだわけではない。」
 そんな兄の姿を滑稽と見たのか、真白姫はクスリと笑うと、兄の肩を慈しむかのように優しく撫でる。それは、生前は認められなかったとはいえ、この世界でたった一人、自分と全く同じ血を持つ己の半身とでもいうべき存在相手ならではの親愛の情の現れ。
「とりあえず続けさせてもらうぞ。
 まあ、先程死後の世界と言ったが、妾の様に特殊な霊力や魔力を持つものならば、冥府に一度入っても、この様に再び狭間の世界までは出てこれるし、肉体の算段が付けば生き返ることすら可能なのじゃ。でだ、兄上の場合は肉体はどうも生きているようなのじゃが、その肉体と此処にある魂のつながりが随分と弱くなっているようでな、自然に現世に戻るのはおそらく不可能じゃろう。生き返りたいのならば、自分で現世への扉を見つけなければならん。
 じゃが、このままではそれも不可能じゃ。魂だけの状態では、おっつけ冥府に渡ることとなろう。無理にとどまり続ければ魂そのものが摩耗して消滅するやもしれんからな。」
 神妙な表情で真白姫の言葉を、一字一句漏らさぬように聞き続けるマシロ。そんなマシロに真白姫は問う。
「兄上。そなたは生き返りたいか?そのために消滅を覚悟の上であがき続けるか?それともこのまま妾と共に冥府に渡るか?どうじゃ、答えてみよ。」
 マシロは静かに目を閉じると言い放つ。
「ボクには待っていてくれる人たちが居る。守らなければならない誓いがある。そして、なによりボクは生き返りたい。」
 真剣勝負に挑むかのような強い眼差しで問う妹の姿に、一瞬怯みかけるも気合いを込め、強い意志を持って答えた。それが、不甲斐ない兄の為にやってきてくれた、この妹に対するに値する唯一の返礼であるかのように。
 そしてそれを聞き、真白姫は満足そうに笑みを浮かべた。
「ならば、妾の力を譲り渡そう。
 もし、他の者の事ばかりだのと、綺麗事じみた言葉で自分が生きたいという気持ちを誤魔化すようであれば、いっそ見殺しにしてやろうと思うておった。だが、妹である妾に正直に己の気持ちを言ってくれた。満足じゃ。兄として認めるに値する。
 故に兄上、妾にとって半身とでも言うべき兄上にこの力を託そう。」
「それじゃあ真白ちゃんが、」
 慌てるマシロに真白姫は、ただ優しく微笑み、
「何、元よりこの身は現在冥府に属するもの。そして死人たる妾が持っていても、何の役にも立たぬのだ。むしろ半身たる兄上に持っていてもらい、何事かの役に立ててもらった方が、妾としても嬉しいのじゃ。ではな、兄上。次に逢うのが遙かなる先であることを、遠く未来であることを祈っているぞ。」
 そう言い残すと霞がかかったようになり、やがてその姿は消えて行った。マシロは妹の名を唱えると、遙か彼方に見えてきた、光の方向へと歩き出した。その光は、命の息吹に確かに満ちていた。



 トリスティン魔法学院の生徒、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、正念場を迎え、息を荒くしていた。執念とでも言うべきか、そこには並々ならぬ集中力が垣間見える。そんな中、周囲の己を小馬鹿にしたヤジが飛び、彼女の心を傷つける。怒りに顔をしかめるルイズ。
『ルイズ、しっかりなさい。ここで何としても皆が息をのむような凄い使い魔を召喚して、私のことを見返させてやらなきゃならないんだから。』
 深呼吸と共に、心の中でゆっくりと練り上げるかの様に、自分に言い聞かせるルイズ。意を決して、召喚のための自分だけの呪文を、その桜色の愛らしい唇から解き放った。
「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ。気高く神聖で美しく高貴な、そして何者よりも強力な使い魔よ。私は心より求め、訴えるわ。我が導きに答えなさい!」
 ルイズは言葉と共に、その細くしなやかな杖を振り下ろした。手応えは十分あった。そう、杖へと伝わる力の流れが確かに感じられたのだ。呪文によって導かれた現象は、即ち爆発。いつもと同様の爆発だ。だが、その爆発がいつもの失敗魔法の爆発とは異なるものであることを、ルイズだけは確信していた。
『早く、早く土煙よ消えて。そして私の使い魔の姿を、その神聖で美しい筈のその姿をみんなの前に現して!』
 ルイズは居ても立っても居られない気持ちで、土煙の晴れるのを待ち続けた。そして薄れた土煙の中に見えたのは、人の形。果たして精霊か?はたまた亜人かとやきもきする彼女は、次の瞬間、自分の目で確かに、『気高く神聖で美しく高貴な』その使い魔の姿を捕らえ、ポトリとその愛用の杖を取り落とす。
 それは『気高く凛とした表情で高貴な装いに身を包んだ、神聖さすら感じさせる美しい容姿』の・・・・・・人間の女の子であった。

「えっとスミマセン、ここは何処なんでしょうか?」
 間抜けな表情で硬直している桃色の髪の少女ルイズ。そして状況が解らず平然とした態度でそんなルイズに問いかけるのは、召喚されし紫銀の髪の高貴な少女マシロ。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・『ブラン』・ド・ラ・ヴァリエールとマシロ・『ブラン』・ド・ヴィントブルーム
 それがこの同じ単語『ブラン(白)』を己の名に持つ2人の出会いであった。


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