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へっぽこ冒険者と虚無の魔法使い 第1話

第1話「使い魔は猛女」

トリステイン魔法学院に、今日も今日とて爆音が響き渡る。
「今度こそ、来なさい!」
桃色の髪の少女が一心不乱に呪文を唱え、手にした小さな杖を振る。爆発、轟音。
二年生に進級した際行われる、使い魔召喚の儀式。彼女はそれを失敗し続けていた。
「ゼロのルイズがまた1ゾロを振ったぞ!」
「魔法を失敗するたびに10点貰ってたらゼロのルイズは今頃10レベルだぜ!」
「1ゾロとか10レベルって何だよ?」
ルイズと呼ばれた桃色の髪の少女と似たような格好をした少年少女たちが、彼女を嘲笑する。
だがそれもごく一部、数人程度のことだ。それ以外の少年少女は白けた雰囲気を出していた。
「あー、ミス・ヴァリエール。もうすぐ日が暮れる、一先ず切り上げ明日にしてはどうだろう? 何も今日呼び出さなければ駄目、というわけでもないのだから」
一人だけ年齢も着ているものも違う、教師と思しき眼鏡をかけた中年の男がルイズに声をかける。
ちなみに、頭髪が実に寂しい。
「ミスタ・コルベール、あと一回! あと一回だけお願いします!」
「いや、しかしだね……」
ルイズがコルベールと呼んだ男に懇願する。白けた雰囲気の原因はこれだった。
最初のうちは皆が皆、嘲笑と罵声を浴びせていたものだが、何十回も続いたためいい加減飽きているのだ。
どんな面白い物事も、過剰となれば飽きが来る。
コルベールは教師としての権限を行使し、無理矢理やめさせても構わなかったが。
しかしルイズが、どれほど頑張っているか分かっているだけに、それが出来なかった。
「分かりました。しかし、次が本当の最後。これ以上は次の授業に差し支えかねない」
「はい! ……てぃび! まぐぬむ!」
嬉しそうに喜び、呪文を唱え始める。
(今度こそ、失敗するわけには行かないわ!)
ルイズは心の中でそう強く誓い、一言一句、発音の一つ一つにまで気を遣い詠唱を続ける。
「いのみなんどぅむ、しぐな、すてらるむ、にぐらるむ、え、ぶふぁにふぉるみす、さどくえ、しじるむ! 来なさい! 私だけの、神聖で、美しく、強力な使い魔よ!!」
結論から言えば、また爆発した。
「詠唱も、集中も完璧なはずなのになんでよー!!」
都合50回目になる召喚も、失敗かと思いきや……。
「おい、何かいるぞ!」
「ゼロのルイズが成功した!?」
「この世の終わりだー!」
「エルフが降ってくるぞー!逃げろー!」
爆発で巻き上がった粉塵が晴れ、何かが召喚されたと気付いた生徒たちは、パニックに陥った。
中には満足げに頷いてる赤毛の女や、召喚には興味なさそうに本を読んでいる青髪の少女も居たことは居たが……。
「成功した、本当に、成功し……た……?」
「っててて……イリーナ、重い、潰れる、退け」
「なっ! 私はそんなに重くありません!!」
ルイズは召喚が成功した、その事実に感涙に咽び泣く一歩手前、と言ったところで聞こえる二つの声に首を傾げた。
晴れた粉塵から姿を現したのは二人の男女だ。
一人はどこか斜に構えた雰囲気を持つ青年、ヒースだった。地面に倒れ、杖を片手にもう一人の人物に乗っかられている。
もう一人は少女だ、元気が有り余っているというのが声からでも分かるほど元気な少女、イリーナ。
地面に倒れているヒースに馬乗りになる形で乗っかっており、重いと言ったヒースの腹を殴った。ヒースが口から泡を吹く。
「……あんたたち誰?」
ルイズがそう声を発すると、パニックを起こしていた生徒たちの間から大きな笑い声が上がった。
「召喚に成功したと思ったら呼び出したのは平民だ! ……平民だよな?」
「流石ゼロのルイズ! 俺たちに出来ないことをやってのける! そこに痺れる憧れない!……格好は平民みたいだけど一人は杖持ってるぞ?」
「実は前もって地面に隠れて貰ってて爆発の隙に姿現したとかじゃないだろうな! ……貴族崩れじゃね?」
人間を召喚したルイズを嘲笑しつつも、ただの平民とは思えないようで彼らはぼそぼそと会話を続ける。
そんな状況に気付いたのか、じゃれ合っていたイリーナとヒースは身を起し、これまたぼそぼそと何事か会話をし始めた。
「……ヒース兄さん、この人たち邪悪じゃないです」
「ふぅむ、成る程な。“ゲート”も閉じたようだ。魔術師ギルドっぽい雰囲気と状況から察するに、何らかのマジックアイテムによる事故か?」
「……私は誰って聞いてるの! 答えなさいよ!」
ルイズはイリーナが聞き慣れない言葉を発したあと、何故か頷きヒースと会話をするのを無視されたと思い叫ぶ。
「アー、相手に尋ねるときは自分から名乗るのが礼儀だと習わなかったか?」
ヒースに正論を言われ、ルイズはぐっ、と唸る。何故かこの男に言われると無駄に嫌だった。
「ミスタ・コルベール! 召喚のやり直しを要求します!」
「それは駄目です、ミス・ヴァリエール。
 確かに人間、かつ二人を呼び出したのはどちらも前代未聞で例を聞きませんが、召喚されたことには変わりがない。
 一度召喚されたものを使い魔とする、その伝統を曲げるわけには行きません。
 使い魔は一人に一つ、二人いるのならどちらを選ぶかは貴女の自由だ。
 さぁ、コントラクト・サーヴァントを」
素気無く却下を喰らい、ルイズは自らが呼び出した二人を見つめ、考える。どちらを使い魔として選ぶべきなのかを。
ヒースと呼ばれた男は杖を持っている。平民としか思えない服装から貴族では無いだろうが、杖を持っているのならメイジだろう。
そのヒースを兄と呼んだイリーナという少女。パッと見、杖を持っているようには見えないが兄妹ならば彼女も恐らくメイジだ。
魔法を使う使い魔。考えてみればこれほど凄い使い魔も早々居ないのではなかろうか? 相手が貴族崩れならば使い魔にしても問題はないだろう。
しかし念のために確認しておく必要がある。万が一にも貴族を使い魔になどした日には、大問題に発展しかねない。
「貴方たち貴族?」
「ふっ、初対面のお嬢さんに貴族と思われるほど、俺様はオーラをかもちだしているのか。流石俺様、凄いぞ俺様」
「違いますよ」
自己陶酔に浸るヒースのわき腹に肘を入れつつイリーナが否定する。
ならば問題は何も無い。そしてどちらもメイジならば、皮肉気で斜に構えた男などより、従順で素直そうな少女のほうを使い魔として選ぼう。ルイズはそう考えた。
何よりもファーストキスをあんな男に捧げるのは断固として嫌だ、女の子同士ならばノーカン。とも考えていた。
似たような年齢で発育も似たようなものだということで、親近感が沸いたのもあるかもしれない。
「感謝しなさいよ。貴族にこんなことされるなんて、普通一生無いんだから」
「はい?」
心の中でノーカンノーカンと呟きつつルイズは杖を振るう。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
詠唱を終え、きょとんとしているイリーナの額に杖をちょん、と当てたあと、顔を引き寄せその唇に自らの唇を押し当てる。
「~~~~~~~~~~~~っ!?」
突然キスされたイリーナは混乱し真っ赤になった。心の中でレプラコーンとスプライトが盛大に踊り狂う。
横でその様子を見ていたヒースも、口をあんぐりと開き驚いている。
「な、な、な、な、な、な、行き成り何を……熱っ!」
唇が離され、盛大にパニックに陥っているイリーナの左手の甲に、紋章が浮かび上がる。
使い魔のルーン、コントラクト・サーヴァントによって刻まれる使い魔の証。
ちなみにイリーナは普段から手袋をしているため、ルーンが浮かび上がっている様子は分からない。
イリーナは左手を押さえ、顔を苦痛に歪ませる。
「使い魔のルーンを刻んでるだけよ。我慢しなさい、すぐ終わるわ」
「ちょっとまて! お前イリーナに何をした!!」
ルイズがキスをした途端、イリーナが痛みに襲われた。これで関連性を見出せないわけがないヒースはルイズを掴み上げる。
大切な妹分が何かされて黙っていられるほど、ヒースはお人好しではない。
「放しなさいよ! さっき言った通り使い魔のルーンを刻んでるだけ、害は無いしすぐ終わるわよ!」
ヒースを振りほどこうとし、意外なほど力があるためそれが適わず、仕方なく答えるルイズ。
「使い魔だぁ? 人間を使い魔にするなんて聞いたこと無いぞ!!」
「私だって聞いたことが無いわよ!」
「喧嘩はいけませーん!」
口論する二人の間に、ルーンが刻み終わり、いつの間にか復活したイリーナが割って入る。
「あーゴホン! 失礼」
イリーナも交えて三人でぎゃあぎゃあ騒ぐ中、コルベールがイリーナの左手を取り、手袋を外し使い魔のルーンを確認する。
「これは、珍しいルーンだな……兎に角、おめでとう、ミス・ヴァリエール。
コントラクト・サーヴァントは一度で成功したようですね」
「あ、はい!」
サモン・サーヴァントは何十回も失敗したが、コントラクト・サーヴァントは一度で成功した。
その事実は、ルイズの機嫌を良くさせるのに十分だった。
「馬鹿な!今度は一度で成功!?」
「ありえねぇ! 6ゾロ振りやがった!」
「だから6ゾロって何だよ!」
普段は耳障りな同級生の言葉も非常に心地が良い。ルイズは今、16年の人生の中で最高の気分だった。
「そこまで! 兎に角今日はこれにて解散。さぁ、教室に戻るぞ」
コルベールが手をパンパンと叩き、またパニックに陥りそうだった生徒たちを戻るよう促す。
次々と空へ上がり、飛べないルイズに嘲笑と罵声を浴びせながら生徒たちは去っていく
「……んだぁ、今の」
ヒースは困惑していた。魔法で空を飛ぶこと自体は驚かない、自分も可能なのだから。
しかし上位古代語ではない別の言語を用いてそれを成したのだから、魔術師のヒースからしたら驚愕ものだ。
詠唱、動作、あらゆる点で古代語魔法と異なる魔法。
マジックアイテムの線を考えたが、それならばこのルイズと呼ばれた少女が飛べない、というのは不自然だ。
「……行くわよ、付いて来なさい。あんたもよ」
空を飛ぶ生徒たちを見つめ、悔しそうに唇をかみ締めていたルイズが二人にそう命令し、歩き出す。
「……どうします?ヒース兄さん」
「どうするもこうするも、とりあえず付いていくしかないだろう。状況がさっぱり分からん。
“センス・イービル”で悪意が感知出来なかったんだ、危険は無いだろうからな」
「さっさと付いて来なさい!」
既に大分進んでいたルイズが叫び、慌てて二人は付いていくのだった。


「つまりここはハルケギニア大陸の、トリステイン王国にある、トリステイン魔法学院。二年生に進級した際行われる使い魔召喚の儀式でイリーナが呼ばれ、俺がそれに巻き込まれ、現在に至る、ということか」
「そうなるわね、っていうかだからあんたたち二人居たの……」
ルイズの部屋に辿り着き、イリーナとヒースは状況説明を受けた。
しかし聞けば聞くほど信じられず、ヒースは思わず“センス・ライ”を使ったがそこに嘘は含まれておらず、信じざるを得なかった。
「ヒース兄さん、ということはここはアレクラスト大陸ではなく別の大陸ということに!?」
「うむ、そういうことになるな。実に困った、ハルケギニアという大陸は、さすがの俺様も聞いたことも無い」
「こっちからしたら、アレクラスト大陸だとか、オーファン王国だとかのほうが聞いたことないんだけど」
お互い説明し合い、ルイズは二人が別の大陸から呼ばれたということ、イリーナとヒースはここが別大陸で、使い魔として呼び出されたということを理解した。事実は違うのだが。
またルイズに戻る方法は無いか、と尋ねたら「知らない」と言われ、当面は二人ともルイズの厄介になるとも決定した。
行く当ても戻る当ても今のところ無いのだから仕方が無い。
イリーナは使い魔、ヒースはその保護者という形だ。
「そういえば、あんたたち家名が違うけど……兄妹じゃないの?」
「両親が家族ぐるみの付き合いをしてまして……幼馴染なんです」
ルイズは眩暈がした。
メイジの妹だから同じメイジだろう、と考え、使い魔にしたら妹じゃありませんでした、などと言われたのだ。
単なる平民の可能性が極めて高くなり少し泣きたくなった。
「ま、魔法は使えるわよね? ね?」
「あんまり得意じゃないですけど、使えますよ」
ほっとした、ルイズは16年の人生の中で一番ほっとした。そしてほっとすると同時に眠気が全力疾走で襲い掛かってきた。
「……眠い、私寝るからこれ、洗濯しておいてね」
そう言ってルイズは服を脱ぎ始める。
「ひ、ヒース兄さん、見てはいけませーん!!」
先ほどからぶつぶつと何か考え事をしていたヒースが、イリーナのボディブローの直撃を受け、白目を剥く。
ヒースの身体が床から浮いたのは言うまでも無く、それを見たルイズは、ちょっと引いた。
「あ、あんた見た目よりずっと力あるのね……兎に角、これ洗っておいてね」
服を脱ぎ終わったルイズが、イリーナに下着や服を渡し、寝巻きに着替えベッドに潜り込む。
「へ? あ、はい。……あのー私はどこで眠ればいいんでしょうか?」
ぺっ、とルイズがどこからか取り出した毛布をイリーナに放り投げ、床を指差す。
「えーっと……分かりました」
気絶したヒースを引きずり、廊下へ放り出し、纏っていた自分のマントを毛布の代わりに被せ、就寝前の祈りをファリスに捧げる。
部屋へ戻ると、ルイズは既に寝息を立てており、安らかな寝顔をしていた。それを見てイリーナは微笑む。
「おやすみなさい」
野宿ですら慣れているイリーナにとって、雨風凌げる室内というだけで眠るには十分な環境だ。
毛布を被り、瞼を閉じ、目の前で消えたことで仲間を心配させて無いか思いつつ、サンドマンの誘いに身を任せた。


それから多少時間が経過し、廊下に放り出されたヒースが意識を取り戻す。
「……イリーナのやつ、思いっきり殴りやがって」
痛む腹をさすりながら愚痴る。最もイリーナの怪力を誰よりも知っている兄貴分はそれでも加減してくれたことは良く理解している。
本気で殴られた場合、冗談抜きで死にかねない。元々の怪力に一流の戦士としての腕が合わさったその拳は、凶器と呼ぶに相応しい。
「しっかし、ハルケギニア、ねぇ。使い魔の契約の仕方といい、空飛んだときの魔法といい、異なる魔法体系が出来上がってるのか?」
ヒースが知る使い魔の契約は半日も掛かる準備と、三日にも及ぶ儀式のすえ成立するものだ。
使い魔にする対象にしても、召喚するのではなく予め準備しておき、契約する。
今は亡き彼の使い魔である鴉のフレディも、とある事件に巻き込まれたとき……その事件の発端に関わっているのだから巻き込まれたというのは正確ではないが。
兎に角、雛鳥だったところを助け、そのまま育て上げて契約したのだ。
「どっちかというと、異世界とか言われたほうがまだ信憑性があ……るぅ!?」
ふと窓から空を見上げ、満天の夜空にこれでもかというほど目立つ、二つの月を発見し、目を見開く。
「いや、まて、落ち着け俺、月は一つのはずだ、だけど今は二つある、じゃあ何故?アレクラストじゃ角度的に重なって見えるから一つに見えてただけか?よし、それだな! それじゃここが異世界じゃないと実証ダ」
動揺しつつも魔法を唱えるヒース。
“ロケーション”。詳しく知る人物や物の方角をどれだけ遠く離れていても、知ることが出来るようになる古代語魔法だ。
咄嗟に思いついた敬愛する師を探る。
「……嘘だろ、おい」
反応はなし。それは即ち、この世界にそれが存在しない、ということだ。
ヒースは必死に頭を働かせる。
狩人として育った身でありながら、魔術師ギルドに特待生として迎え入れられた、その高い知能をフル回転させる。
「“ロケーション”で人物を探知できないということは、ハーフェンついに過労で死んだか?」
最高導師が病気で倒れて療養中だったり、次席導師が色々やって石になって死んだり、帰ってきた次期最高導師は宮廷魔術師になってギルドじゃあんまり働かなかったり。
そんなこんなで、馬車馬のごとく働かされているハーフェン導師が死んだ可能性すら考え、念のため今度は仲間の半分エルフにヒースは“ロケーション”を使う。
しかし反応はやはり無く、異世界であるという事実を補強するだけとなった。
「異世界とかどうやって戻ればいいんだ、“ゲート”なんて使えんぞ俺様」
頭をガリガリと掻きながら、方法を模索する。
「そうだ、“アポート”で適当なものを引き寄せて手紙で状況を知らせれば……あ、精神力足らんわ」
既に“ティンダー”“センス・ライ”さらに“ロケーション”を二回も使ったヒースの精神力は限界に来ており、後一度初歩の魔法を使っただけで気絶するほどだ。
具体的には精神力残り1点。
「あー……とりあえず寝るか」
焦ったところで状況が変わるわけでも無い、ヒースはそう考え一先ず眠ることを決めた。
イリーナのマントを被り、心の中でファリスに祈りを捧げ、こんな状況に妹分を一人だけ放り込まずに済んだことに安堵しつつ、瞼を閉じた。

用語解説
センス・イービル:ファリスの特殊神聖魔法。ファリスの定める秩序に反する思考をしている人物に反応する
センス・ライ :古代語魔法。相手が嘘を喋っていれば嘘だと分かる。ただしどの部分が嘘か、などは分からず、本人が嘘だと思っていなかったり、紛らわしい言い回しだと反応しないことも
ロケーション:古代語魔法。良く知る人物や物の方角を探る
アポート:古代語魔法。自分の所有物を一時的に手元に引き寄せる。
場所がしっかりと分かっていないと不可能
スプライト:精神の精霊。羞恥心を司る。姿は透明なため見ることは不可能
レプラコーン:精神の精霊。混乱を司る。姿は全裸の小鬼
サンドマン:精神の精霊。眠りを司る。姿は全裸の小さな子供



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