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マジシャン ザ ルイズ 3章 (3)

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マジシャン ザ ルイズ (3)始祖の祈祷書

「ここまでする必要、あったのかい?」
森の中。
白目を剥き、涎を垂らしながら脳髄を陵辱されつくし、廃人となったシェフィールドが横たわっている。
そんな無惨な姿を見ながら土くれのフーケが、ワルドに問いかける。
「ここまで、というのは?」
「そりゃあ、あんた………
 別に、こんなことしなくても、捕まえて自分で色々白状させりゃ良かったんじゃないかってことさ」
「白状?この女が自分から真実を話すと思うのかい、君は。
 それに折角のミョズニトニルンだ、利用しない手は無いだろう」
ワルドがそう言いながら、もう既に在りし日の面影を残さないシェフィールドの額に手を当てた。
「そうだ、フーケ。
 今日から君がミョズニトニルンになってみるかい?」
「いらないよ、そんなもの」
「それは残念だ」
ワルドが呪文を唱え、手を離すとシェフィールドの額からルーンが輝き、続いてワルドの手に吸い寄せられるように浮き上がった。
「それじゃあ、これの使い道はおいおい考えるとしよう」


ワルドは変わってしまった。
レコン・キスタの大攻勢がニューカッスルの城を落としたあの日から…

当初、目的を達成した後、ニューカッスルの城内で合流する手筈のワルドであったが、合流場所の礼拝堂を貴族派が制圧した際、そこには生者の姿無く、ウェールズ皇太子の亡骸が横たわるのみだった。
礼拝堂に残る血痕や周囲の破壊状況、それに天を貫くように伸びた穴、それらの事柄から、ワルドはウェールズの殺害には成功したものの、虚無の担い手を確保する段で失敗したと結論付けられ、生存は絶望的と考えられていた。

だが、クロムウェルがニューカッスルの城に到着したその日に、ワルドは突然の帰還を果たしたのだった。
この時、フーケはワルドにそれまで何をしていたのかを問いただしたのだが、彼は怪しい微笑を返すばかりであった。

そう、後にして思えばこの時には、ワルドは既に別の何かに変質してしまっていたのかもしれない。


帰還後、ワルドはレコン・キスタ、クロムウェルの側近達の間で一つのグループを形成していった。
年齢も、性別も、身分さえ共通しない一団。
彼らの中に、唯一つ共通するのは、その空ろな雰囲気。

ある日、フーケがクロムウェルの居室に呼び出されると、そこにはワルドと、胸を貫かれ、どう見ても死体と成り果てたアルビオン神聖皇帝の姿があった。
「君に虚無の系統を見せてあげよう」
驚愕に体を「固定化」でもされてしまったかのようなフーケを見ながら、ワルドは愉快そうに言い放った。
「さあ、お目覚めの時間だクロムウェル皇帝陛下」
なんの邪気も感じさせない、聖者のような声色でワルドがそう詠うと、今度こそフーケの思考を完全に吹き飛ばす出来事が起きた。
「おはよう、ワルド子爵」
――死者が、蘇った――

その後、どういったやり取りがあったのか、当のフーケも覚えていない。
確かなことは、ワルドはグループのメンバーを増やしていき、瞬く間に新政府の中枢を影響下に置いてしまったということだ。
そして、今日のこの惨劇に至るのである。

「そいつは、生き返らせないのかい?」
「ん?君がそうして欲しいと望むなら、別にそうしても構わないが?」
足元で痙攣を繰り返す、ミス・シェフィールド。
生けるも死ぬるも、全く頓着しないという顔のワルド。

狂ってる。
そう思わずにはいられない、フーケであった。



「ルイズ、ちょっとお待ちになって」
部屋でのやり取りの後、その場を辞そうとするルイズにアンリエッタが声をかけた。
アンリエッタは指に嵌めた指輪を外し、続いて机にあった、古ぼけた本を手に取った。
風のルビー、始祖の祈祷書。
アンリエッタは王家にとって重要な意味を持つそれを、ルイズに手土産でも持たせるかのように渡した。
「ひ、姫さまっ!一体何を!?」
「ふふふ、ルイズ、忘れたのですか?私はもう少しすれば、ゲルマニアの皇帝と結婚するのですよ。
 この本は『始祖の祈祷書』。わが国の国宝です。
 トリステイン王室の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意しなくてはなりません。
 巫女はこの本を手にし、式の詔を詠みあげる習わしとなっています。
 ルイズ、私はあなたに式の『巫女』をやってもらいたいと考えています。
 お願いできますか?」
「姫さま…」
 アンリエッタのその言葉に、目頭が熱くなるルイズ。
 そのルイズの目じりをアンリエッタがそっと撫でる。
「そして、ウェールズさまのお持ちになっていた風のルビー。
 これもあなたに持っていてもらいたいの。
 この指輪はとてもとても大切なもの、大切なウェールズさまの指輪。
 でも、この指輪があると、弱いわたくしは、きっとウェールズさまを思い出して泣いてしまいます。
 けれど、ウェールズさまはそんなことを望んでいないでしょう、だからあなたに預けるのです。
 わたくしが幸せになって、ウェールズさまのことを受け止められるようになる日まで、あなたに持っていて欲しいのです」
笑顔のアンリエッタ、その瞳からははらはらと玉のような涙が零れ落ちる。
そんな姿に心をうたれ、ルイズは自然と膝立ちになり、深々と頭を垂れる。
「『始祖の祈祷書』と『風のルビー』、謹んでお預かりいたします、アンリエッタ姫殿下」
「頼みましたよ…ルイズ、わたくしの大切なおともだち、ルイズ・フランソワーズ」



王宮から学院までの帰りの馬車の中、ルイズはオールド・オスマンと向かい合って座っていた。
元々別件で王城へと向かうオスマンと同行する形で王宮へ向かった経緯から、帰りもまたオスマンと同じ馬車なのである。
そのルイズの手には、先ほどアンリエッタから手渡された指輪と本が置かれている。
ちなみに、ルイズ自身は先ほどのやり取りから、未だ心ここにあらずといった風体である。

「………それが風のルビーと始祖の祈祷書か、どれ、見せてもらっても構わんかのぅ」
「あ、はい。どうぞ」
オスマンの問いかけに我に返ったルイズが、慌ててオスマンにその本を手渡す。


「ふぅむ、まがいものではないかのぅ」
古びた革の装丁がなされた、ボロボロの表紙、色あせ茶色く黒ずんだ羊皮紙。
何も知らなければ小汚い古本にしか見えないそれ、『始祖の祈祷書』をオールド・オスマンが眺めながら呟いた。
「しかし、まがい物にしても、ひどい出来じゃ。何も書かれておらぬではないか」
「けれどオールド・オスマン。仮にもトリステインの国宝なのですから、本物じゃないんですか?」
「うーん、どうかのぅ。『始祖の祈祷書』なる書物は世の中には星の数ほどもあるからのぅ」
「はぁ」
流石に気になって、オスマンが広げている始祖の祈祷書を覗き込むルイズ。
確かに、そこには何もかかれていない。
「本当に何も書いていないんですか?」
「どうやらそのようじゃ、お預かりしたのはミス・ヴァリエール、君じゃ。何なら自分で確かめてみると良い」
オスマンの手から、始祖の祈祷書が再びルイズの手に戻される。
「時間がたち過ぎて消えちゃったのかしら」
ルイズが何の気は無しに、始祖の祈祷書を開く。
そして、なんらの心構えも無しに開かれた本より突然に光が発せられた。
この時、あまりの驚きに立ち上がった二人が馬車の天井に頭をぶつけたことを、誰が責められるであろうか。


光りだした始祖の祈祷書、そこに浮き上がってきたのは古代ルーン文字であった。
「オールド・オスマン!文字が、文字が浮き出ました!」
「むう!?わしにはその文字が読めぬのだが…ミス・ヴァリエール!そこにはなんと!?」
「は、はい!」
オスマンに急かされ、ルイズ自身の知的好奇心も膨れ上がる。
もどかしい気持ちでページをめくるルイズの指先が、無意識に震えた。

「虚無の系統……ここに書かれているのは虚無の系統についてです!」

興奮しながら読み進めるルイズ。
そこには序文と題された始祖ブリミルによる虚無に対しての注意書き、そしていくつかの呪文が記されていた。

だが、読めば読むほど、ルイズの中で何かが冷めていく。
この書によれば、虚無の系統は選ばれた読み手にだけ与えられるものらしい。
そこに書かれたいくつかの呪文、それらはルーン文字を読めば何となく意味が伝わってくる。
驚嘆すべき事実を突きつけられているにも関わらず、ルイズの心は凪いだ海のように静まりかえる。
やがて訪れる唐突なる理解。

「ああ、そういうことなんだ…」

そこに書かれている呪文こそが、キュルケとの勝負の日に自分が使った呪文であることを理解した。
一つが真の姿を見せると、ルイズの中で次々に疑問のピースが全体像を結び始める。
『伝説』、それこそが数多くの疑問の中核にあることを、彼女は知った。


                 彼女は大きな流れに翻弄されることとなるだろう
                 それを運命と言って流されるままになるか、決めるのは本人だ。
                         ―――熟達の魔道師オスマン


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