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使い魔の夢-12

『デルタ』
 確かにそいつはそう言った、まるで前からアレを知っているかのように。
 何よ? あんた、まだ私に隠している事があるわけ? こないだ話した事が全部じゃなかったの!?
 ねぇ、答えなさいよ!……って!?
「危ない! 」

 呆然と立ち尽したタクミ目掛けてゴーレムがその巨大な右手を振り下ろす!

 ルイズは即座に杖を掲げ、『ファイヤーボール』の呪文を唱えた。
 放たれたのはいつもの失敗魔法だったが、爆発によってゴーレムの右拳は粉々に吹き飛ばされた。
 その様子を見た『デルタ』が動揺してる内に、
 パニクってるタクミを引っぱたいて正気に戻し、手を引いて走り出した。

 ちょっと待ってよ、このまま逃げてどうするのよ? 
 あのゴーレムと『デルタ』って奴を何とかしないといけないんじゃないの?
 他のみんなは今品評会の会場にいるんだから、ここにいる私達だけでどうにかしないと。
 私とこいつの二人だけで……、私とこいつ……あ!

「あんた、ベルトは!? ベルトはどうしたのよ!? 」
「~ッ、お前の部屋ん中だ! 」
 叩かれた頬をさすりながらタクミは答えた。
「ちゃんと付けてから外出なさいっていつも言ってるでしょうが、ホント使えないわね! 」
 タクミから手を離しルイズは立ち止まって、失った部分を再生させたゴーレムの方に向き直った。
 こいつの持ってる鉄砲の火力じゃアレには歯が立たない。自分が魔法でやるしかないのだ。

 その時『デルタ』は本塔の壁を手に持った銃で撃ち砕いて、宝物庫のある辺りへと入り込んでいった。 
 主の留守を守るかのように、ルイズたちに襲い掛かるゴーレム。

 迎え撃とうとするルイズをタクミが引き止めた。
「なにやってんだ、おい、逃げるぞ! 」
「放してよ! 何処に逃げるっていうのよ! 」
「今、俺たちがどうこうできる相手じゃねぇだろ! 」
 そうこう揉めているうちに、近くまで迫ったゴーレムの足が二人を踏み潰そうと―――

 間一髪、大きな何かが滑り込み、ルイズとタクミを掴んで、ゴーレムと地面の間をすり抜けた!

 気が付いた時には上空からゴーレムを見下ろす事ができた。
 何やら足で挟まれてるような間抜けな形なのは少し気に入らないけれど。
「……助かったわ……、え!? 」 
 すぐ上に見えたのは力強くはためかせた両の翼、空に溶け込めるぐらい透き通った青の巨体。
「これってウィンドドラゴン……! 」 

「そう」
 細くぼそっとした少女の声が聞こえた。どうやらこの竜の主のようだ。

「怪我はない? 」
 少女の声はやはり無機質なまま二人の安否を確認した。

 使い魔の夢

『星空に浮かぶ蝶の絵、確かに領収いたしました。 土くれのフーケ』

 声明の壁書と大きな穴が開いた宝物庫に学院中の教師達が集められたのは日が沈んだ頃の事だった。

「『土くれ』だと、遂にこの学院にまで手を伸ばしてきたのか! 」
「見張りの衛兵達は何をやっていたのだ!? 」
「衛兵などあてにならん! 所詮は平民ではないか! 
 それより見張り番のメイジは誰だったんだ!? 不審者の侵入など気にもしなかったのか!? 」
「わ、私です……」
「ミセス・シュヴルーズ! 泣いてあれの弁償ができるとお思いなのですか! 」
 彼等は口々に勝手な事を喚いて、責任の所在をシュヴルーズに追求しようとすると、

「これこれ。女性を苛めるものではない」
 それまで枢機卿と事の論議をしていたオールド・オスマンが秘書のミス・ロングビルを伴って現われた。
「オールド・オスマン! それで枢機卿は何と!? 」
「一通りの話を済ませたら王宮に報告するとだけ言ってな、帰って行きおった」
「それだけなのですか? 」  
「うむ。それだけじゃ」
 一瞬どよめきがあった後、オールド・オスマンはこほんと咳払いをして教師達を厳しい目で見回し、
「さて、先ほど誰が責任をとるかで揉めていたようだが、それは大きな間違いじゃ。
 君たちの中でいずれはこのようなことが起きると考えていた者はおったかのぅ?
 今回の一件を引き起こしたのは個人の不注意などではなく、
 魔法学院に賊は入ってこないだろうと鷹をくくっていた我等全員の思い上がりにこそある」
 教師達はお互い顔を見合わせ、恥ずかしそうに顔を伏せた。 
「ところで、犯行の現場を見ていたのは誰だね? 」
 再び咳をしてオールド・オスマンは尋ねた。
「この二人です」
 教師の誰かがさっと進み出て、自分の後ろに控えていた二人を指差した。

 ルイズが前に出た、巧もそばにいたが使い魔なので数には入っていない。
 そして、もう一人。
 青みがかった髪、ブルーの瞳、ルイズよりも小柄なメガネをかけた少女。
「おお、ミス・タバサか」
 巧達を助けた青い竜の主、タバサは、教師達にも一目置かれるような大物だったようだ。

 ルイズ達といち早く調査をしていたミス・ロングビルによって次のことが分かった。

 ゴーレムと『狂乱の環』を使い絵を盗んだ『土くれ』は
 そのまま馬で四時間ほどした所にある学院近くの森の廃屋に潜んでいるらしい。

 教師達は再びざわめき始めた。
『狂乱の環』を手にしてからの『土くれ』はやり手の魔法衛士を幾人も葬ってきている。 
 そんな強者と巨大なゴーレムが相手では自分達の実力でどうにもならないのではないか。
 王宮に報告し兵隊を差し向けてもらった方が確実だ、と。 

 弱気に成り下がっている一同を、オールド・オスマンが一喝した。
「ばかもの! 身にかかる火の粉を払えぬようで、何が貴族じゃ! これは魔法学院の問題じゃ!
 当然、我等で解決する! 今から捜索隊を編成する、我と思う物は杖を揚げよ! 」 


「で、そんなこんながありましてゆらり揺られて馬車の上、と」
 歌う様に語ったのはデカ乳赤髪女、キュルケ。いつかはこいつのせいで飯抜きくらったんだっけな。
「何よ、嫌なら志願しなければ良かったじゃない」
 ルイズが腕を組んでつまらなそうに言った。
「ふん、あの時も言ったでしょう。あんたばっかにいいカッコはさせないわ」

 早朝、森の廃屋に向かう捜索隊の馬車には今五人の人間が乗っている。
 そのうちの三人は、オールド・オスマンが飛ばした檄によって、捜索隊に志願した学院の生徒達。

 一人目は真っ先に杖を揚げた『ゼロ』のルイズ。
 二人目はそれを受けて渋々と杖を揚げたキュルケ。二つ名は『微熱』。
 そして、
 助けられた恩がなかったら声を大にして言いたかった。何なんだよ、お前は、と。

 三人目――――、『雪風』のタバサ。

 このメガネをかけた小柄な少女がさっぱりわからない。
 出発の前後、ルイズを素通りして巧に『よろしく』と自分から挨拶したかと思えば、
 巧の方から声をかけるとそっぽを向けて何も言わずに遠くに行ってしまう始末。

 一体、こいつは何を考えてるんだ、俺の事をどう思っているんだ。

 これまで巧が出会ってきたのは、
 良くも悪くもストレートに自分を露わにする人間ばかりだったのでどうにも調子が狂う。

 考えても答えが出そうになかったので巧はルイズの方に目を向けた。
 今もキュルケと何かを言い争っている。これで何度目だ、飽きないなお前等。

 ルイズが捜索隊に志願している以上、使い魔である巧が同行するのは当然のことだった。
 まぁルイズが志願しなくても、巧は自分一人でも『土くれ』の捜索をするつもりだったのだが。

『土くれ』は『狂乱の環』……デルタギアを持っている。
 恐らく奴に太刀打ちできるのはファイズである自分だけだろう。
 これ以上被害が増える前に、何としてでも奴を止めなければならない。
 何故ここにあれがあるのかを考えるのはそれか…… 

 視線を感じた。荷台の端っこに座り込んだタバサの方からだ。
 手に持った本を読んでいるふりをして、
 巧とすぐ傍に置かれたファイズギアのケースを興味深そうに見つめている。
 こちらがそれに気付いたのが分かると、慌てて本に視線を向けて読書に集中し始めた。

「可愛いでしょう、あの子? ああいう初心な所が」
 いつの間にやら巧のすぐ横に来ていたキュルケが言った。
「お、お前……」
 初心ってなんだ、ていうか、そんなに近づくな。暑苦しいんだよ。
「タクミ……でよかったわよね。よく見ると結構いい顔してるじゃない。
 私も狙っちゃおうかしら? 」
「ツェルプストー! 人の使い魔に手を出さないでくれる! 」
 ルイズが般若のような顔をしてキュルケに詰め寄った。
「あら、ヴェリエール。あなたも彼にご執心な訳? 
 ま、そうよね。誰が見ても素敵ですものね、あたしのダーリンは」
「い、いつからそいつがあんたのダーリンになったのよ! 」
「運命によって出会い、結ばれる関係の二人には時間とかなんて意味がないのよ、お子様ルイズ」
「何が運命よ、て言うかね、誰がお子様なのよ、誰がー! 」

 また喧嘩か、ホントいい加減にしとけよお前等。そう言おうとしたとき、

「ここから先は徒歩で行きましょう」
 御者を勤めていた案内役のミス・ロングビルが馬車を止めて言った。


 深い森を抜け、一同は開けた場所に出た。森の中の空き地といった風情である。
 真ん中に廃屋が見えた。あれがフーケの隠れ家に違いない。

 五人は茂みに身を隠したまま、相談を始めた。
『土くれ』があの小屋の中にいるのならどうするべきか。
 まず作戦を提案したのはタバサであった。
 素早く動ける巧が偵察兼囮の役割をして、中にいるフーケを誘き出し、
 小屋から外に出た『土くれ』を残り全員の魔法の集中砲火で沈める奇襲策である。
 巧、ルイズ、キュルケの三人は無駄のない合理的なその作戦に賛同したが、
 一人待ったをかけた人物が居た。ミス・ロングビルである。
『狂乱の環』の鎧を纏ったフーケには囮一人ではたちどころにやられてしまうだろう。
 彼をフォローする形でメイジを一人同行させるべきである、と。
 そして、その補佐する役割を彼女自身が志願した。
 キュルケ、ルイズは自分が行くと言い張ったが、
 破壊力のある魔法を扱える生徒達三人には奇襲役として残ってもらいたいと言われると反論もできず、
 そのまま押し切られる形で巧とミス・ロングビルの二人が小屋に潜入することになった。

 小屋の中は部屋が一つしかなかった。
 人の気配もなければ、隠れられるような場所も見あたらなかった。
 もうここにはいないのだろうか? 

「これは……、盗まれた星空の蝶の絵、かしら」

 皆を呼ぼうかと考えていたその時、
 手がかりをさがしていたミス・ロングビルがチェストの中から何かを発見した。
 巧は近寄って額縁に収められた一枚のその絵を見た途端、視界が反転するような感覚がした。

 これは、

 これが『蝶』だと、『絵』だと。
 違う。全然違う。何もかもが違う。
 これは『絵』ではない……写真だ。
 この実在感は人の絵筆なんかで再現できるものではない。 
 映っているのも『蝶』なんかではない。
 特徴的なそのフォルム、微かに見える見覚えのあるロゴ。

 宇宙空間に浮かぶスマートブレインの人工衛星……! 

 何故、ここにコレがあるのか。誰が撮ったものなのか。

 目を皿にして注視した、そこに込められた全ての情報を掴むために。
 右隅に青い惑星の姿が見えた。さらに凝視する。
 雲に覆われて他は見えなかったが、昔、世界地図で見た西ヨーロッパが判別できた。
 これは地球だろうか。しかし、そうと思うには違和感があった。何故だろう。 

「……これは、アルビオンでしょうか」  
 自分と同じように右隅を覗いたミス・ロングビルが言った。
「何で、そうだって分かるんだ? 」
「いえ、この浮遊大陸の形はアルビオンでしょう? 」

 あ。そうだ。

 地球で言うイギリスに当たる部分がこの写真にはなく、小さな形の浮島がぽつんと惑星の左端にあった。
 じゃあ、この写真に写っている惑星はハルケギニアなのか、だとしたら。
 全てが繋がる。俺や『土くれ』が何故ベルトを使って変身できたのか。
 このハルケギニアにもスマートブレインの人工衛星があると考えられたのなら。 

 だが、この衛星はどうやって……、

「そうやっていつまでも自分だけで納得してないでさ、アタシにもちゃんと教えとくれよ!
 この絵のコレは一体何なんだい! 」

 突然、赤い電撃を帯びた右手が飛んできた!

 身を捻らせて紙一重で回避する。 

「……あんた」

 後ずさり、奇襲をかけたそいつと距離をとった。

「……やっぱり、知っていたのかい。この先住魔法のこともさ」

 それまでの温和な表情を一変させ、猛禽類のような目つきをしたミス・ロングビルの姿がそこにあった。

「……あんたが『土くれ』だったのか」
「ま、そういうことになるね。学院の秘書は仮の姿。『土くれ』のフーケ、これがアタシの本当の姿さ」

 こいつがデルタ……

「そう構えないでくれよ、さっきのは気が立ってついやっちまったのさ。
 悪かった、謝るよ。こんな事するために二人きりになったわけじゃないんだ」
 両手をぶらつかせ、こちらの警戒を解かせようとする『土くれ』。
「何の為だ? 」
 こんな回りくどい真似をしなくても、いつでも自分達を好きにできた筈だ。
「二人で話をするためさ」
「……」
「単刀直入に言うよ。アタシと手を組まないかい? 」 
「お前と? 」
「そうさね。あんたも持ってるんだろう、変身できる『環』をね。
 そのあんたとこのアタシが手を組めば、どんな敵でも怖い物無しさ。
 女、金、酒、あらゆるお宝を好き放題奪い尽くすことができる。
 えばり腐った貴族の連中共をブチ殺していくのも悪くない、いくらでも手を貸すよ。
 あんたもあのガキンチョにはいい加減辟易してるんだろう? 悪い話じゃないと思うんだけど? 」 
 恍惚の表情を浮かべながら『土くれ』は語る。
 それでも、俺にはわかる。あんたの、あんたのその目は……
「無理すんな」
「無理? 誰が無理してるっていうんだい?」

「あんた、俺を倒したくてしょうがないって目をしてるぜ」


「……………………」

『土くれ』は上半身をゆっくりとうな垂れさせてしばらく沈黙した後、 

「……そうかい、そう来るのかい」

 血走った目線を巧に向けて、

「……クックック、アハハハハハ、アーハッハッハッ! 」

 左手に持った杖を振り上げると、小屋の外の土から巨大なゴーレムを作り上げた!


「そうだね、遠くからの『錬金』になるからせいぜい二十メイル位のゴーレムだけどさ、
 あのお嬢さんたちのお相手するには充分じゃないかい? 」
「お前……! 」
「八割方はこんな事になると思ってたけど、実際なってみると結構来る物があるねぇ」
 そう言いながらフーケはマントを取り、身に付けたある物を巧に見せ付けるようにした。

「デルタのベルト! 」

 その腰に巻かれたのはデルタドライバー、右手には隠し持っていたデルタフォン。

 このままの状態で勝てる相手じゃない。 

 巧は上着のジャケットを捲った、それを見てフーケが笑う。

「成る程ね、あんたも準備万端だったわけだ」

 ファイズドライバーが巧の腰に巻かれていた。

「ヘンシン」

 フーケがデルタフォンを当て、音声入力を行う。 

 ポケットから出したファイズフォンにファイズコードを入力する。

『『Standing By』』

 二重に聞こえる電子音声のアナウンス。

「変身! 」 

 ファイズドライバーにファイズフォンをセットする。

 フーケもまた、デルタフォンをデルタドライバーに差し込んだ。

『『Complete』』

 廃屋全体に赤と青の光が満ち溢れていく――――

 ファイズとデルタ。

 地球という名の小さな惑星の片隅で幾度となくぶつかり合った二本のベルトは、 

 異世界ハルケギニアの地において再び対峙する時を迎えた。

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