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へっぽこ冒険者と虚無の魔法使い 第0話

第0話「呼ばれていいとも!」

ロードスという名の島がある。
引き篭もりたちが住まうクリスタニア大陸の北に位置し、誕生からして呪われており石化した破壊の女神が存在するためか戦乱が絶えず、魔境というべき土地が数多く存在しているため呪われた島と呼ぶものも多い。
大体五年後ぐらいに解放された島だの祝福された島だの呼ばれるようにはなるがこの話とは全く関係ないため割愛。

さて、クリスタニアの北に位置するロードスのそのまた北にアレクラストと呼ばれる大陸が存在する。
かつて世界を席巻した古代魔法王国カストゥールが繁栄した土地であり、今現在においても世界の中心と呼ぶべき大陸だ。
この大陸に存在するオーファンという国の首都に一軒の店がある。
青い小鳩亭、厄介ごと引き受けや遺跡発掘などを生業にする冒険者たちが集まる冒険者の店と呼ばれる一軒の店。
物語はこの小さな店から始まる、すぐ舞台変わるけど。


「マウナちゃーん、エール追加ねー」
「こっちは枝豆ー」
「俺はおあいそー」
「はーい!少々お待ちくださーい!」
割と繁盛している店内を切り盛りしているウェイトレスの女性、マウナが元気に声を返す。
邪魔にならぬよう纏め上げられた髪の間から覗く多少尖った耳を見れば彼女がハーフエルフだと分かるだろう。
「あー忙しい、だけどお店焼けちゃってから減った客足も戻ってきてるんだし、頑張らないとね。エキュー! これあそこのお客様に持っていって」
「はい!マウナさん!」
マウナの指示に元気良く答えたもう一人のウェイトレスの少女……否、少年が注文の品を受け取り客へ運ぶ。
エキューと呼ばれた彼はウェイトレス姿が異常に似合っているがれっきとした男だ、マウナの着替えを覗いたのがバレ罰として女装して働かされている。
「ああ、マウナさんは相変わらず可憐だ……特に尖った耳が」
「相変わらずだな、お前。たまには尖り耳と甘味以外に興味持ったらどうだ」
「全くです。エキュー! 今度一緒にトレーニングしましょう! きっと病み付きになりますよ」
エルフ狂い、これはエキューを知るものならば誰でも知っていることだ。彼は兎角エルフやハーフエルフの尖った耳を好む。
そんな彼の趣味に茶々を入れたのは、どこか皮肉気な表情をした長身の青年とファリスの神官帽を被った天真爛漫な笑顔の少女の二人だ。
「遠慮しておくよ、イリーナのトレーニングに付き合ってたら次の日動けなくなるから」
「それは鍛え方が足りないからです、だからこそトレーニングを!」
ファリスの神官帽を被った少女、イリーナがテーブルを叩く。すると軽く叩いたかのように見えたにも関わらず大きな音がたち、テーブルに置かれた皿やコップが跳ね上がる。
「イリーナ! テーブル叩かないでって言ってるでしょ! 壊れる!」
その音を聞きつけたマウナが大股でイリーナに詰め寄る。何せ店を再建して新しく購入したばかりのテーブルだ、壊れでもしたら大損害である。
「あぅ……ごめんなさい」
「そうだぞ、イリーナ。どこぞの半分エルフが機嫌悪くするからな。あ、レアな焼き鳥喰うの忘れてた。“ティンダー”」
「ヒィィィィィィィィィィィィィィス!!」
「怒ったマウナさんも可憐だぁ」
勢い余って物を壊しそうになって怒られたイリーナが謝り、長身の青年魔術師ヒースがマウナをいじめるためわざわざ発火魔法を使用しレアな焼き鳥を炙る。
マウナがティンダーもどきの詐欺にあったのは一年以上も前のことだ。
未だにそのネタをいじめに使ってくるヒースの頭をマウナは手にしたお盆で思いっきり殴り、そんなマウナにもエキューが見惚れる。
青い小鳩亭において非常に日常的な光景であった。


「そういえばイリーナ、珍しいわね。いつものグレートソードは?」
イリーナは普段必ずと言っていいほど持ち歩いている身の丈ほどあるグレートソード。何故か今日は持っていないのでマウナは尋ねた。
「グレートソードならブルスさんに一度打ち直してもらうためにグードンに送りました。所々傷んで私の手入れだけじゃどうしようもない部分が出てきましたか……ら……」
「あーまぁ色々あったものね、流石に打ち直しの必要もって……何、それ」
唐突に、本当に唐突にイリーナの前に銀の鏡とも言うべきものが中空に現れた。何の脈略もなく突如現れた銀の鏡に二人は暫し呆然とし、その鏡に気付いた周囲の人々の間にもざわめきが広がる。
「ひ、ヒース兄さん! 何ですかこれ!」
「あ?何ですかって何が……なんだこりゃあ!?」
イリーナの問いかけに先ほどマウナにお盆で殴られてからずっとテーブルに突っ伏していたヒースが顔を上げ、銀の鏡を見るなり素っ頓狂な声を出す。
「なんだこりゃってあんたも分からないの? いきなり出てきたんだけど」
「流石の俺様もこんな妙ちきりんな鏡は知らんぞ。……いや、もしかしてこいつは“ゲート”か?」
マウナが性格は兎も角非常に深い知識を持つヒースに尋ね、ヒースが推測を口にする。
「“ゲート”ってあれだよね。古代王国時代に作られた遠い場所と遠い場所を繋いで一瞬で移動できる門」
「おう、よく知ってたな。正確にはそれは付与魔術で魔法装置として固定化したもんだな、これは固定化する前の“ゲート”の魔法と見た。とはいえ本来の“ゲート”は俺の知識だと縦じゃなく床の上に横に現れるはずなんだが……」
意外に博識なエキューがヒースに確認する。ヒースも“ゲート”の存在に動揺しているのか普段の軽口や法螺が成りを潜め真面目に答えた。
「って、ちょっと待ってよ! ということはこれから何か出てくる可能性があるってこと? いやー! 変なのが出てきて暴れられたらまたお店が壊れるー! お母さんお父さん逃げてー!!」
「邪悪ですか? 邪悪ですね!? むぅん、腕が鳴ります!!」
折角再建した店がまた壊れるかもしれないという事実に錯乱するマウナ。それに対しイリーナは勝手に出てくるものを邪悪と断定し、ボキボキと指の関節を鳴らす。
「はっはっは、出てくる何かを勝手に決め付けるのはよくないぞ馬鹿二人。まぁこの“ゲート”を作った強力な魔術師がいるのは間違いないが……馬鹿! 迂闊に触るなイリーナ!!」
銀の鏡が現れてから既に一分近く経っているのに未だに何かが現れる様子がないのに業を煮やしたのか、そろりそろりとイリーナが銀の鏡を触ろうとし、それを見たヒースが声を荒げる。
しかしその声が間に合わずほんの僅か指先が鏡に触れると突然イリーナの体が銀の鏡に引きずり込まれるかのように動いた。
「わっ、わっ! ひ、ヒース兄さん!これ変です! 引きずり込まれそうです! っていうか耐えるの無理ー!!」
「だから触るなっつっただろうがー!」
首無し騎士の戦車の突撃を受け止め、ワイバーンを一刀の元に仕留めたイリーナの膂力を持ってしても耐え切れず銀の鏡に凄まじい勢いで引きずり込まれる。
「くそっ!」
ヒースは咄嗟に魔法の発動体である杖とイリーナの腕を掴んだ。無論、恐ろしい怪力のイリーナですら耐えられないというのに、割と力があるとは言えたった一人の力が増えたところでその勢いは止まらない。
エキューも咄嗟に腕を伸ばすが間に合わず、次の瞬間、銀の鏡と共にイリーナとヒースは青い小鳩亭からその姿を消した。
「イリーナ? ヒース? ……嘘でしょ?」
唖然としたマウナの呟きが静まり返った店内に酷く響いた。


用語解説
ファリス:正義と秩序を司る神様。イリーナはこの神の神官戦士でヒースも信者
ティンダー:古代語魔法。数センチ大の可燃物を発火させる
ゲート:古代語魔法。正式名称はディメンジョン・ゲート、遠く離れた場所と場所を繋げ行き来することが可能


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