あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのアトリエ-27


「さてと、皆さん」
この間まで、城下に裏切り者が!すわトリステインの一大事!と怯えていたコルベールも、最近はようやく落ち着きを取り戻して、いつもののんきな彼に戻っていた。
もともと彼は政治や事件にはあまり興味がない。
興味があるのは、学問と歴史と…研究である。
だから彼は授業が好きだった。自分の研究の成果を、存分に開陳できるからである。
そして本日、彼は嬉しそうに、でんっ!と机の上に妙なものを置いた。
「それはなんですか?ミスタ・コルベール」
生徒の一人が質問した。
果たしてそれは、妙な物体であった。長い円筒状の金属の筒に、これまた金属のパイプが延びている。
パイプはふいごのようなものに繋がり、円筒の頂上には、クランクがついている。
そしてクランクは円筒の脇にたてられた車輪に繋がっていた。
そしてさらにさらに、車輪は扉のついた箱に、ギアを介してくっついている。
一体何の授業をおっぱじめる気だろう?と、生徒達は興味深くその装置を見守った。
「えー。『火』系統の特徴を、誰かこの私に開帳してくれないかね?」
コルベールはそう言って、教室を見回す。教室中の視線がキュルケに集まった。
ハルケギニアで『火』といえばゲルマニア貴族であり、その中でもツェルプストー家は名門である。
彼女自身も『微熱』という二つ名が表す通り、『火』の系統が得意なのであった。
キュルケは授業中だというのに爪の手入れを続けながら、気だるげに答える。
「情熱と破壊が『火』の本領ですわ」
「そうとも!」
自身も『炎蛇』の二つ名を持つ、『火』のトライアングルメイジであるコルベールは、にっこり笑っていった。
「だがしかし、情熱はともかく、『火』が司るものが破壊だけでは寂しいと、このコルベールは考えます。諸君、『火』は使いようですぞ。使いようによっては楽しいことができるのです。
いいかねミス・ツェルプストー。破壊するだけじゃない。戦いだけが『火』の見せ場ではない」
「トリステインの貴族に、『火』の講釈を承る道理がございませんわ」
キュルケは自信たっぷりに言い放つ。しかしコルベールは動じずに、笑顔を浮かべるだけだ。
「でも、その妙なからくりは一体何ですの?」
実は気になっていたのか、キュルケが机の上の装置を指差す。
「うふ、うふふ。良くぞ聞いてくれました。これは私が発明した、油と火の魔法を使って動力を得る装置です」
クラスメイトはぽかんと口を開けて、その妙な装置に見入る。
ヴィオラートは持ち前の好奇心を発揮し、身を乗り出してその未知の機械を注視した。
「まず、この『ふいご』で油を気化させる」
コルベールはしゅこっ、しゅこっ、と足でふいごを踏む。
「すると、この円筒の中に気化した油が放り込まれるのですぞ」
慎重な顔で、コルベールは円筒の横に開いた小さな穴に杖の先端を差し込み、呪文を唱える。
すると、断続的な発火音が聞こえ、発火音は、続いて気化した油に引火し、爆発音に変わった。
「ほら!見てごらんなさい!この金属の円筒の中では、気化した油が爆発する力で上下にピストンが動いておる!」
すると円筒の上にくっついたクランクが動き出し、車輪を回転させる。
回転した車輪は箱についた扉を開く。するとギアを介して、ぴょこっぴょこっと中からヘビの人形が顔を出した。
「動力はクランクに伝わり車輪を回す!ほら!するとヘビくんが!顔を出してぴょこぴょこご挨拶!面白いですぞ!」
生徒達は、反応薄げにその様子を見守っている。ヴィオラートだけが、熱心にそれを見ていたようだ。
誰かがとぼけた声で感想を述べた。
「で?それがどうしたって言うんですか?」
コルベールは自慢の発明品が、ほとんど無視されているので悲しくなった。咳払いを一つして、説明を始める。
「えー、今は愉快なヘビくんが顔を出すだけですが、たとえばこの装置を荷車に載せて車輪を回させる。
すると馬がいなくても荷車は動くのですぞ!たとえば海に浮かんだ船の脇に大きな水車をつけて、
この装置を使って回す!すると帆がいりませんぞ!」
「そんなの、魔法で動かせばいいじゃないですか。何もそんな妙ちきりんな装置を使わなくても」
生徒の一人がそう言うと、皆そうだそうだとばかりに頷きあった。
「諸君!よく見なさい!もっともっと改良すれば、何とこの装置は魔法がなくても動かすことが可能になるのですぞ!
ほれ、今はこのように点火を『火』の魔法に頼っておるが、例えば火打石を利用して、断続的に点火できる方法が見つかれば…」
コルベールは興奮した調子でまくしたてたが、生徒達はまったく興味なさげに囁きあうだけ。

コルベールの発明のすごさに気付いているのは、教室中捜してもヴィオラートのみであったようだ。
「コルベール先生、それ、すごいです!その発明は、世界を変えるかもしれません!」
ヴィオラートは思わず立ち上がって、叫んだ。教室中の視線が一気に注がれる。
「おお、ミス・プラターネ!やはり、気付く人は気付いておる!」
コルベールは、彼女が確か伝説の使い魔『ミョズニトニルン』であったことを思い出した。
フーケの騒ぎで、しばらく記憶の奥底にしまわれていたが…
コルベールはあらためて、ヴィオラートに興味を抱いた。
「その車輪を回す仕組みは、水車だけじゃなくて滑車、歯車にも応用できます」
「おお、さすがですな!一見しただけでそこまで解って頂けるとは!」
ヴィオラートの意見に、コルベールは目を輝かせて感嘆の声を上げる。
コルベールの発明を理解し、なおかつそれを補足してくるような女性はこの世界には、すくなくとも彼の周りには存在しなかった。あまりの感動に、思わずコルベールは目を潤ませて言う。
「失礼、続けてください」
彼が目頭を押さえる様子を不思議そうな顔で見守っていたヴィオラートが、さらに言葉を重ねる。
「その発明は、二つの点で今までになかった効果をもたらすと思います」
「ほう、二つの効果とは?」
「一つは、燃料さえあれば休みなく同じ仕事をしてくれるという事。例えば…そうですね、
溶鉱炉と繋げれば、大量のインゴットを休みなく得ることができるかもしれません」
「うむうむ」
「もう一つは、魔法がいらないって所です。魔法の使えない…平民の方々だけで、何かを創りあげる事ができます」
「いやいや、さすがにそこは手助けが必要ではないかね?」
「必要なのは経験と、知識だけです。この装置が完全なら、手助けは必要ないとは思いますが…」
「ん?」
「この発明の重要なポイントである、魔法がいらない…という部分が中途半端な完成度になっています」
「む…」
「そこを省略しては、この発明の価値が半減すると思うんですけど…」
「うーむ…」
コルベールは思わず唸った。ヴィオラートの指摘は、まさに彼が後回しにした箇所だったのだ。
上手い具合に点火する方法が、いくら考えても思いつかなかったからなのだが…
「それで、ですね…火をつける手段なら、いくつか知ってるので…」
ヴィオラートは黒板に装置の概観を書き、その脇にいくつかのアイテムとその名前を並べ始めた。
「これと、これを組み合わせて、ここに歯車を使ったら…でも、問題点がいくつかあって…」
コルベールは立場を忘れ、思わずヴィオラートの解説に聞き入ってしまう。
「で、これはタイタニウムを使えば解決可能なので…」
「ほう、タイタニウムとは何だね?」
授業そっちのけで独演会を始めてしまったヴィオラートと、
それを止めもせず逆に教えを請うかのように拝聴し、ついには技術者二人による検討会に突入したコルベール。
二人が我に帰ったのは、次の授業が始まり、入ってきたギトー先生が青筋を立てて怒鳴り散らした後だった。


アルビオンから帰還した後、ルイズは今まで以上に積極的に錬金術を学ぶようになった。
ヴィオラートに対してわずかに保っていた貴族としての体面や対抗意識が完全に打ち砕かれ、錬金術だけではなく人生の師としても学ぶものは大きい、という結論に達したのがその理由だ。
今までは嫌がっていた土に触れる作業や溶鉱炉を使う作業も、むしろ楽しそうにこなすようになった。
その結果、ルイズはインゴットや宝石の加工に意外な才能を発揮することになる。
「できたわ…完成よ!」
ルイズの目の部分に、極上品のメルクリウスの瞳がかけられていた。
「ルイズちゃんすごい!こんなに早くメルクリウスの瞳を作れるようになるなんて、あたしよりすごいかも!」
「そ、そう?」
ヴィオラートの賞賛の言葉に、顔を赤らめて答えるルイズ。
しかし次の瞬間、何かを思いついたような顔になってヴィオラートをじっと見つめる。
「どうしたの?」
怪訝な顔をするヴィオラートに、ルイズはにやりとした笑みを向けて言い放つ。
「ヴィオラートの、体重はよんじゅう…」
「わわわっ!だ、駄目だってば!ルイズちゃん!」
慌てふためくヴィオラートの様子を見て、ルイズは屈託のない笑い声を上げた。
「もー、ルイズちゃんったら」
思わず二人が笑いあったとき、声がかけられる。
「ヴィオラート、できたわよ、ほら」
赤い爆弾を三つほど小脇に抱えたキュルケだった。
その脇には試験管を持ったタバサと、バスケットを持ったシエスタが控えている。
ヴィオラートはまずキュルケの持った爆弾を注意深く受け取ると、あちこちひっくり返して点検を始めた。
「範囲を広くする効果がついてるね」
「そうよ。どうせなら一つで全部終らせたいじゃない?」
「この上の調合を考えると、広くするより狭くする効果をつけた方が便利なんだ。これも駄目って訳じゃないけど」
「へえ、そうなんだ。じゃあ上を見据えて、作り直してこようかしら…」
キュルケは爆弾を回収すると、作業場に戻って行った。

タバサは無言で、たった一つ琥珀色の液体の入った試験管をヴィオラートに手渡す。
「もう琥珀湯は完璧だね。次は…『たしなみ』でも作ってみようか?」
ヴィオラートのその言葉に素直に頷き、タバサは時間を惜しむように作業場へと戻る。
タバサは薬に一種異様なまでの関心を示し、めきめきと薬作りの腕を上げていた。
ヴィオラートはその熱意が加熱しすぎないように、うまく加減して技術を伝える事にしている。
「あ、あの、ヴィオラートさん、本当に私なんかが参加させていただいて…いいんでしょうか?」
遠慮がちに発言するシエスタに、ヴィオラートは優しく声をかけた。
「うん。むしろシエスタちゃんにはぜひ参加して欲しいんだ。錬金術に身分は関係ないってこと、証明して欲しいから」
「は、はい!頑張るます!」
気負いすぎた返事を返して、シエスタはバスケットを突き出す。中には、ミルクを使ったケーキが並べられているようだ。
「うん、いい小麦粉を使ってるみたいだね。品質もいいし、これなら一気に疲れが取れる効果があると思うよ」
「ほ、本当ですか?本当に私がそんな、立派なアイテムを…」
「そうだよ。ちょうどいいから、みんなが戻ってきたら休憩にしよっか?」
「はい!」
シエスタはテーブルの上を片付けてケーキを五つ並べ、用意していた紅茶をバスケットの底から取り出す。

「ねえ、ヴィオラート」
ルイズは紅茶の用意を始めたシエスタをちらりと見た後、錬金術書を広げて言った。
「ん?何かな?」
「次は、これを作ってみたいんだけど…」
ルイズがそう言って指差したのは、高度な技術を必要とする『カリヨンオルゴル』。
ルイズの今のレベルだと、『多分大丈夫だと思うんだけどな』というぐらいの難易度のアイテム。
「ルイズちゃん、失敗するかもしれないよ?」
一応、ヴィオラートはそう忠告するが、ルイズの決意は予想以上に固かったようだ。
「決めたわ!何だかこれを作らなきゃいけない気がするもの!」
目を爛々と輝かせて主張するルイズを止める気にはならなくて、ヴィオラートは結局やらせてみることにする。
自分だって、何回も失敗して技術を磨いたのだ。もし失敗しても、それはきっとルイズの糧となるはず。
そう考えた自分の思考に、なんだかまるで自分が先生になってしまったような気がしたので、ヴィオラートは自嘲気味に笑ってルイズを見つめる。
ルイズは張り切って、錬金術書をめくり続けていた。


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