あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのイチコ02


朝起きると、朝日を浴びながら幽霊が宙を漂っていた。
たしか寝る時はわら束の上辺りに居た、なのに朝起きてみたら窓際で浮いている。
こう言うのも寝相が悪いと言うのだろうか?

「それで、使い魔というのは何をすればいいのでしょうか?」
そのままほおって置くと中庭の上空に行きそうだったタカシマを起こた。
さっそく今日から使い魔として教育していこうと思う。
「まず、明日からは私が起きる前に洗顔用の水を汲んでくること、そして私を起こして洗顔を手伝って。それから着替えの手伝い」
「なるほど~、分かりました!」
「それじゃ、さっそくだけどその棚から着替えを出してくれるかしら?」
「はい!」
無駄に元気一杯な幽霊だと思う。
幽霊って言うのはこの世の未練とか一杯でうじうじと暗いものだと思ってたけど、中には違うのもいるみたいだ。
タカシマは意気揚々と衣装棚に向かっていく
「下からニ段目よ」
「はい、下から二段目ですねー……って、あら?」
「どうしたの?」
「ルイズさん、手がすり抜けてしまって棚が開けられません」

……そうだった。

結局、身の回りの世話という観点で言えばほとんど役に立たなかった。
なんせ生き物以外にはまるで触れないのである。
さらに温度も感じないという。
もし自分の意思で物に触れるようになってくれれば、極寒の雪山や灼熱の火山へ薬草や鉱石を取りに行かせられるのだけど。
ともかく使用人のように使うよな事は出来ないということだ。
別に今までと変わらないのだから構わないといえば構わないのだけど。

朝食を取りに寮を出ると、そこでクラスメートのギーシュに出会った。
「おはよう、ルイズ。コントラクトサーヴァントは爆発しなかったかい?」
といきなり嫌味を言ってきた。
昨日は呼び出してからしばらく一悶着あったせいで、クラスメートたちは召喚したのは見たけれど契約はしたかは知らないのだ。
「ご心配なく、一発で成功させたわ」
「それは良かった、せっかく成功させた使い魔が爆死したのではないかと心配していたのだよ」
一欠けらも心配などしてないくせに、ギーシュはにこやかにそう言った。
作り笑いだけは上手い男だ。
「ば、爆死ですか?」
タカシマが驚いたように声を上げたが、無視する事にする。
「ご心配してくれてありがとう。でも私たちは誰よりも上手くやってるわ、ねえ、タカシマ」
「は、はい」
爆死が頭の中から離れないのかどうも会話についてこれてない。
一度に複数のことをこなすのは苦手っぽいし。
「幽霊を呼び出すというのは初めて聞いたけど、君にしては良い使い魔に出会えたみたいだね。でも僕のベルダンディーには遠く及ばないかな」
なんだ、自慢したいだけだったのか。
ギーシュが召喚したのはジャイアントモール。大きなモグラである。
あまりかっこいいとは言えないが、貴重な鉱石を探し出してくれるし人が通れるほどの穴を掘ることもできる。悔しいが上等な使い魔を呼び出したと言える。
魔法の程度はクラスで下のほうだというのに、使い魔が立派だったということは彼の潜在能力は高いということだろうか?
努力しないから開花することは無さそうだけど。
「使い魔の自慢は他の女の子にでもしたら、私はあなたに構ってられる程ヒマじゃないの」
そう言って、ニヤニヤと人を馬鹿にした顔をしているギーシュを置いて食堂へと向かった。

「あの人、なんか嫌な感じですね」
「ギーシュの事? あいつは無視して良いわよ。ただの馬鹿だし」
確かモンモランシーと付き合ってるとは聞くけど、その割にはよく他の女の子にも誘いをかけている。
きつい言い方をすれば最低な男だ。
複数の相手を持つというのが、赤い髪の女を思い出すからさらに最悪だ。
「そう言えばタカシマ、あんたは何か食べるの?」
廊下の途中で足を止める。使い魔が食事を取るなら貴族の食堂とは別のはずだ。
幽霊と言うことは食事は要らないだろうか?
そもそも食事に触れるのだろうか?
「そう言えば全然おなかが減ってません、たぶん要らないのではないかと」
それはそれで便利だ。
「ふ~ん、それじゃあ一緒に食堂に来なさい」
主人と使い魔は一心同体、必要が無いならできるだけ一緒にいるべきである。
「あ、そうだルイズさん。私の事は名前で一子と呼んでください」
「ぇ? タカシマ・イチコじゃないの?」
確か最初、確かにこの子は「タカシマ・イチコ」と名乗ったはずだけど。
「あ、いえいえ。私の国では苗字を先に言うんです。ですから一子が名前なんです」
「へぇ、そうなの。じゃあイチコ、行くわよ」
そう言えばどこの国から来たのか聞いていなかった。
ハルケギニアには名前を後に言う国は無いはずだから東方のほうだろうか。
それとも小さな民族の出なのか?
「はい、ルイズさん」
イチコの元気な声を聞き、再び歩き始める。

「……イチコ」
「なんですか?」
「私の事はご主人様と呼びなさい、アンタは私の使い魔でしょう」
「は、はぁ。分かりましたご主人様」

食堂に入ると一斉にこちらに目が向いた。
人間では無く幽霊であるものの、人の姿をしている使い魔は居ない。
やはり珍しいのだろう。
浮いてるし。

イチコは珍しそうに周りを見渡していたしている。
「キョロキョロしない、恥ずかしいでしょ」
「あ、ごめんなさい。でも私みたいな人というか真っ白な方々が飛んでいるもので気になりまして」
その台詞で彼女の目線を追う。だけどそこにはいつもどおりの食堂の風景。ステンドグラスに多くの石像。
だけどイチコの目は宙を飛ぶ何かを追うように動いている。
――あまり深く考えないほうが良い気がする。
「いいから前を向いてなさい、今日はただでさえ……え?」
居ない。ちょっと目を放した隙にイチコが背後から居なくなっていた。

「あの~、ギーシュさん。香水瓶を落としましたよ~」

という声が食堂全体に響いた。
今の声は二日目にしてすでに耳に慣れたイチコの声だった。
その大声に反応して食堂中の視線がイチコとギーシュに降り注いだ。
「ギーシュさん、ここです、ここ。高そうな香水ですし気をつけませんと」
と物に触れられないイチコは地面に落ちた香水を指差してギーシュに呼びかける。
ギーシュのほうはと言うと、引きつった表情で固まっていた。
そこへ下級生の女の子が近づいて来て。
「ギーシュさま、やはりモンモランシー様と……」
と言う。それに対してギーシュはしどろもどろに言葉を連ねるが下級生の女の子は泣いて走り去ってしまう。
「ギーシュ、今の子は誰かしら?」
そこへモンモランシーがギーシュに詰め寄る。
二股をかけた罰だろう。ギーシュにはっきりと引導を渡すとモンモランシーもその場を立ち去った。
誰が見ても自業自得だ。
だがギーシュはその状況が許せなかったらしく目線を彷徨わせ。
引き金を引いたイチコに目がとまる。


「キミ、どうしてくれるんだね。キミがはしたなくも大声で叫ぶから彼女たちを傷つけてしまった」
その言葉にイチコは眉をひそめる。
「それはギーシュさんが二股をかけるから悪いんじゃないですか。さっきだって言い訳をせずに謝るべきです!」
と反論した。
二股と言う行為がイチコにとってどうも許せなかったみたいで、顔を赤くしてまくし立てている。
ギーシュが言葉を弄して謝罪しろと言うも、イチコはギーシュが悪いの一点張り。
そんな討論を長々とやるほうがよっぽど恥をさらしているというのに、ギーシュは今更あとには引けなくなった様だ。
「イチコ、分かったから少し……」
と止めようとしたのだが。
「大体ですね、乙女心をなんだと思ってるんですか。純粋なんですよ、ギーシュさんの事が好きだったんですよ。
 なのにそれを裏切るような事をして恥ずかしく無いんですか?
 きっと今頃、一人で泣いてるはずです。今すぐ謝りに行くべきです!」
矢つぎに言葉が吐き出されて声を挟む暇が無い。
その勢いにギーシュも押され気味にはなる。だが、ここまで衆人の前でこけ下ろされ、それを認められるほどギーシュの心は広く無かった。
「ここまで貴族を正面から侮辱したんだ、それ相応の覚悟はあるんだろうね?」
「あります! どんな世界でも恋心を踏みにじって良い決まりはありません!」
「ならば決闘だ、キミが正しいと思うのであれば実力にて示してみろ」
「望むところです!」
「なっ……待ちなさい、決闘は規則で禁止されているわ」
そこでやっと口を挟む。
「貴族同士の決闘が禁止されてるだけさ、ミス・イチコ自分が正しいと思うならヴェストリ広場に来ると良い」
そう言うと食堂を出て行った。
「イチコ、決闘なんか認めないわ、よ……」
と振り向くと再びイチコの姿が消えていた。
替わりにそこに立っていたマルコリヌが
「幽霊の子ならギーシュが出て行くと同時に飛んで行ったけど」
と教えてくれた。
「あの馬鹿!」
私も慌てて食堂を出て行く。


私が広場に駆けつけたときにはすでに遅かった。
とめようとする声を遮るように、決闘開始の合図が高らかに宣言されてしまった。
決闘が始まってしまったら横から手を出すことは許されない。それは決闘をしている貴族と自らの誇りを傷つけることになる。
だけど、これは貴族同士の決闘じゃない。
「やめなさい、イチコ!」
「イヤです、私は絶対謝りません!」
ギーシュが出したのは青銅のゴーレム、ワルキューレ。彼の得意魔法だ。
身長は大人の男性ほどもあり、その重そうな外見とは裏腹に素早く動く。
それに対してイチコは丸腰だった。震えながらも視線をはずさずに前を見据えていた。
別に他人の、知りもしない相手の事に何故そこまでするのだろう。
私だって二股が良い事だなんて思わない。
だけど自分の身を張ってまで主張することではない。
「謝れば許してあげるよ、ボクだって女の子を殴る趣味は無い」
「謝りません!」
それが最後の忠告だった。
ギーシュが手の薔薇を一振りすると、ワルキューレはイチコとの差を一気に詰めた。
彼女の口から何かが小さく漏れたが、口を結んでその言葉を飲み込んだ。
ワルキューレは拳を振り上げ、そのまま振り下ろされる。
青銅で出来たそれは大型のハンマーで殴られるに等しい。
拳はイチコの腹に突き刺さり、そのまま背中から飛び出た。


広場に居た全員が絶句した。
まさか殺すとは思わなかったのだろう、誰もがこれをただのゲームだと思っていた。
生意気な使い魔を少し痛めつけるショーだと思っていた。
ギーシュ自身も目を見開いて驚いている。
その惨状に誰もが口をつぐみ、広場が静寂に包まれた。
そんな中、私は思い出していた。
よくよく考えれば……あの子って幽霊じゃない。
「あぁ、私を生んでくれたお父さんお母さんごめんなさい。わたくし高島一子はこの異世界で短かった生涯を閉じることになりました。
 そしてお姉さま、私は先に天国へ参ります。お姉さまがお亡くなりになった時にはぜひとも私が迎えに参りますので、ぜひとも長生きして幸せになってください」
そんなに喋る瀕死の人間は居ない。
「あんた既に死んでるでしょ!」
ワルキューレの腕を生やしたまま妙に長い辞世の句を読む彼女に対して叫んだ。
よく考えたら彼女が物理的な攻撃で死ぬわけが無かった。
「あれ?」
そのまま、ワルキューレの腕など無いかのようにふわふわと浮き上がった。
「あぁ、すっかり忘れてました。私って幽霊でした」
再びワルキューレの腕が振るわれる。胴を狙って横薙ぎに振るわれたその腕は、まるで何も無い虚空を振るったようにしかならなかった。
「そ、そんな……」
ギーシュが呟く。何度ワルキューレの腕を振るっても、足を蹴り上げてもイチコの体を素通りするだけだ。
「よぉし、今度はこっちから行きますよ~!」
と、何の反動もなく唐突に彼女の体は前へと進む。
ギーシュはそれに焦ってゴーレムをさらに六体作るものの、何の抵抗も無くすりぬけるイチコを止める事は出来ない。
ゴーレムたちは彼女を捕まえようとしてお互い衝突するだけである。
「覚悟してください!」
イチコがギーシュの目の前まで迫る。
自分の攻撃が何一つ通じない相手にギーシュは完全に混乱していた。
イチコが腕を振り上げる。
ギーシュはもう何がなんだか分からずに腕を前に突き出す。

「あぅっ!」

その手に突き飛ばされ、イチコは後方にふっとばされた。
ギーシュはポカンと口を開けて宙で回転しているイチコを見た。
そのままイチコは回転しながらゆっくりと宙を浮き、城壁をすり抜け、空へと消えていった。
全員がイチコの姿が見えなくなるまで空を見上げていた。
そしてそのまま彼女が帰ってくる気配が無いと分かると
「勝者、ギーシュ・ド・グラモン!」
審判の声が高らかに響いて、無駄に疲れる朝が終わった。
ところで自力で帰ってこれるだろうか?


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